◇台風第16号、第15号、二つの台風が秋を引き込む

 月の初めは、四国から中国地方をゆっくり北上した台風第12号の影響で、晴れ間が広がるものの時々雨の降る不安定な天気が続きました。上旬の後半から中旬にかけては、日本の東から張り出す高気圧におおわれて晴れて気温が高くなり、厳しい残暑となりました。しかし、中旬の終わりに台風第16号が関東地方の東を北上した後、下層へ寒気が入るようになり気温は低くなりました。下旬に入ると、日本海から南下してきた前線と台風第15号の影響で曇りや雨の日が続きました。台風が千島近海へ進んだ後、日本付近の気圧配置は大きく変わり、移動性高気圧におおわれるようになるとともに寒気が南下してきたたため、晴れて気温は平年を下回るようになりました。

 気温の推移をみると。上旬の平均気温は24.8℃、中旬の平均気温は24.9℃と平年より高くなりました。特に、中旬の気温は日立市役所観測開始以来2番目に高い気温となりました。それに対して、下旬の気温は23.5℃と平年より1.2℃低くなりました。この結果、月平均気温は22.9℃と平年より1.1℃低くなりました。一方、日照時間は月の初めと下旬の初めを除いて晴れる日が続いたため、186.2時間と平年の143%になりました。これは、9月の日照時間としては日立市役所観測開始以来2番目に多い記録です。また、台風第15号の影響で21日に125.0mmの降水量があったものの、月を通すと晴れる日が多かったことから、月の降水量は173.0mmとほぼ平年並みになりました。

9月の気象観測値
観測要素 観測値 平年値
月平均気温(℃) 22.9 21.8
月降水量(mm) 173.0 178.8
月日照時間(時間) 191.6 134.3
旬平均気温(℃)
観測値 平年値
上旬 24.8 23.6
中旬 24.9 21.9
下旬 19.1 19.8
旬日照時間(時間)
観測値 平年値
上旬 56.0 49.9
中旬 76.0 42.8
下旬 59.6 41.6

 ●9月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける850hPa気温の推移

2011年9月の日立市役所における日平均気温の推移 2016年9月のつくばにおける850hPa気温の推移(09時)

 ●9月の日立市役所における日最高気温と日照時間の推移

2011年9月の日立市役所における日最高気温の推移 2011年9月の日立市役所における日照時間の推移

 ●9月の気温(℃)と日照時間の記録

中旬平均気温
順位 気温
1 1999 25.4
2 2011 24.9
3 1954 24.8
4 2000 24.4
4 1990 24.4
平年値 21.9
日照時間(時間)
順位 気温
1 19.75 204.1
2 2011 191.6
3 2003 180.0
4 2010 177.6
5 2009 172.4
平年値 134.3

※順位は数値の高い方からで、1953年から2011年の統計

 下図の日平均気温の推移でみるとおり、今年の6月から9月は暑い時と涼しい時が繰り返し現れて気温の変化が大きくなりました。今年の場合、太平洋高気圧の張り出す中心が日本の南にあり、時々偏西風帯が本州付近まで南下してきて寒気が入ったため、暑い期間と涼しい期間が交互に現れました。これに対して、昨年(2010年)は6月中旬から気温が平年を上回るようになり、9月中旬まで平年より気温の高い日が続きました。特に、8月下旬になっても太平洋高気圧の勢力が強く、9月上旬にかけて気温はほとんど下がりませんでした。

 真夏日(日最高気温の30℃以上の日)の日数をみると、6月と7月は平年よりも多くなりましたが、8月は10日と平年よりも約1日少なくなりました。8月の真夏日になった日は7日と10日から18日にかけてで、中旬に真夏日となる日が続きました。また、熱帯夜(日最低気温25℃以上の日)の日数も7月が1日、8月が5日と平年よりも多くなりました。熱帯夜になった日は11日、14日と16日から18日にかけてで、やはり中旬に集中しました。一方、昨年の場合は7月中旬後半から9月上旬にかけて真夏日になる日が多く、日数も平年を上回りました。また、熱帯夜となった日は8月から9月上旬にかけてで、これも平年を上回りました。

●6月から9月の気温の昨年との比較
観測要素 6月 7月 8月 9月
月平均気温(℃) 2011年 20.6 25.0 25.3 22.9
2010年 20.5 25.0 27.1 22.7
平年値 19.2 23.0 24.9 21.8
月最高気温(℃) 2011年 33.3 34.4 35.6 31.2
2010年 30.7 33.0 34.7 35.4
真夏日の日数(日) 2011年 4 10 10 3
2010年 1 12 17 10
平年値 0.8 6.5 11.4 3.8
熱帯夜の日数(日) 2011年 0 1 5 0
2010年 0 0 11 4
平年値 0.0 0.3 1.9 0.3

 ●6月から9月の日立市役所における日平均気温の推移(2011年と2010年の比較)

6月から9月の日立市役所における日平均気温の推移(2011年と2010年の比較)

 ※上のグラフの元データ:1109data.xls(エクセル2000ファイル、96KB)

14日と24日の地上及び高層の天気図を比べてみると、気圧配置が大きく変化していることが分かります。14日の500hPa面高層天気図をみると、5880mの等高度線で示される太平洋高気圧が日本の南で東西に広がり、その北側が本州付近をおおっています。そして、-18℃の等温線で表される寒気は北緯40線にあります。地上天気図では東北地方と黄海に前線があり、この南側には暖気が入って気温が上がり、関東地方以西では最高気温が30℃を超えた所が多くありました。

 一方、24日の500hPa面高層天気図をみると、5880mの等高度線は日本のはるか南まで後退しています。そして、日本付近では偏西風が南に蛇行し、-18℃の等温線は朝鮮半島から東北地方北部まで南下しています。これに対応して地上天気図では前線が日本の南へ南下して弱まり、本州付近は日本海の高気圧におおわれています。上層から化像にかけて全体に寒気が入り、全国的に最高気温は30℃を下回りました。

 ●参考:9月14日と24日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図

9月14日09時の地上天気図 9月14日09時の500hPa面高層天気図
9月24日09時の地上天気図 9月24日09時の500hPa面高層天気図

◇台風第15号が東海から関東地方を縦断(9月21日)

 19日から20日にかけて日本の南海上を北東へ進んできた台風第15号は、21日14時に静岡県浜松市付近に上陸しました。その後、埼玉県から栃木県、そして茨城県北部をかすめて21日の夜遅くには福島県沖へ進みました。台風の東側を回る形で南から暖かく湿った空気が流れ込んだたため、東海地方から九州地方にかけての太平洋側では、総降水量が400〜1100mmの大雨となりました。関東地方でも本州付近に停滞していた前線の活動が活発になり、19日の朝から21日の夜にかけて断続的に雨が降り、北部と西部の山沿いを中心に総降水量が200〜400mmの大雨が降りました。また、台風が上陸した東海地方から関東地方の沿岸部、伊豆諸島を中心に、風速20m/s以上の非常に強い風が吹きました。

 日立市でも、南からの湿った空気が入り19日の夜から20日の夜にかけて断続的に雨が降りました。しかし、湿った空気の中心は東海地方以西に流れ込んだため、日立市役所における降水量は19日が0.5mm、20日が4.5mmと少ないものでした。21日になると、湿った空気の流入路が東へ移動してくるとともに、関東地方に停滞していた前線の活動が活発になり、雨が強く降るようになりました。特に、15時から17時にかけては北上する前線の通過に伴って発達した雨雲がかかり、強い雨が降りました。日立市役所では、15時21分からの1時間に26.5mmの降水量を記録しました。前線の雨雲が通過した後。いったん雨の降り方は弱まりました。しかし、台風の接近にともなって台風を取り巻く雨雲がかかり、18時から20時にかけて再び雨が強く降りました。台風が福島県沖へ抜けた22時に過ぎには、雨は止みました。日立市内の降水量は、南部支所の106.0mmから本山の188.0mmで、湿った空気の流れがぶつかる山間部の本山で降水量が多くなりました。

 停滞する前線の影響で、日立市では台風が近づいてきても風は強まらず、21日の夕方まで平均風速で3〜6m/sの北東の風が吹き続けました。しかし、16時に前線が通過して風向が南寄りに変わると風が強まり、台風が最も近くを通過した20時33分には最大瞬間風速24.4m/sの南南西の風を記録しました。台風が福島県沖へ進んだ22時過ぎには、平均風速で5〜7m/sとなり、台風が三陸沖へ離れた22日1時過ぎには風は収まりました。なお、日立市役所における気圧の推移グラフをみると22時22分に最低気圧980.4hPaを記録しており、台風はこの時間に最も日立市の近くを通過したものと思われます。

 ●9月20日〜21日の市内の降水量(mm)

観測地点
総降水量

最大1時間降水量

降水量
日時
日立市役所 127.0 26.5 21日16時21分
北部消防署 146.0 26.5 21日16時00分
本山 188.0 25.5 21日16時00分
西部出張所 131.5 22.5 21日19時00分
諏訪広場 131.5 26.0 21日16時00分
南部支所 106.0 19.5 21日16時00分
十王交流センター 166.5 31.5 21日16時00分

 ※総降水量は20日18時から21日24時までの合計

 ●日立市役所における気象観測記録(9月21日)

最大風速(m/s) 最大瞬間風速(m/s) 海面気圧(hPa)
風速 同風向 同時刻 風速 同風向 同時刻 最低気圧 同時刻
11.7 南西 20:48 24.4 南南西 20:33 980.4 20:22

 ●9月21日15時の地上天気図と台風第15号の経路図

9月21日15時の地上天気図 台風第15号の経路図

 ●9月20日〜21日の日立市役所における降水量、気圧、風向及び風速の推移

9月20日〜21日の日立市役所における降水量の推移 9月20日〜21日の日立市役所における気圧の推移
9月20日〜21日の日立市役所における風向の推移 9月20日〜21日の日立市役所における風速の推移

 ※上のグラフの元データ:110921da.xls(エクセル2000ファイル、472KB)

 ●参考:9月21日15時と19時の降水レーダー図

9月21日15時00分の降水レーダー図 9月21日19時00分の降水レーダー図

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作成日 2011/10/14
訂補日 2016/09/15
名前 日立市天気相談所