Bessei Objection!

「日本を守る国民会議」が国会周辺で配っているチラシ
  「家族を崩壊させるー『夫婦別姓法案』に反対の声を!」について


このチラシには、 「この法案に対し、各方面から数々の問題点が指摘されています。」  とあります。
掲げられている、その「問題点」について考えたいと思います。

その1 「結婚制度」自体が崩壊へと進み 既婚夫婦でも対立と離婚騒ぎが...
ここでは、『「婚姻改姓」は、夫婦の絆を固める厳粛な通過儀礼である』 と書かれています。
けれど、これは本末転倒ですよね。
互いにこの相手といっしょにやっていこう、 という個人と個人の主体的な意志があって、 はじめて夫婦になるという「形」ができていくのです。
「形」が夫婦の絆を作るわけではありません。
(事故で、小指をなくしてしまったら、みんな『や』 のつく人になるのかな。)
パートナーが自分と違う姓を名乗ったくらいでは損なわれない絆があるから、
共に生活していけるのだと思います。

「事実婚が流行して・・・結婚制度それ自体の崩壊へと進んでしまう」 という内容のこともかかれていますが、 法的保護の受けられる別姓結婚ができるのであれば、 「事実婚の流行」ということにはならないはずです。
けれども、 フランスのように事実婚が当然のこととして社会に受け入れられ、 婚外子が出生数の半分近くを占める国が現にあります。
(「フランスにはなぜ恋愛スキャンダルがないのか」 という本に書いてありました。)
日本で事実婚が流行し、 今ある結婚制度が崩壊したところで何が問題なのだろう、 という疑問は残ります。

また、「一年以内に既婚夫婦が別姓へと変更が出来るため、 このことが夫婦の間に争いの種をまき、 離婚騒ぎが増えることは必至」とあります。
さきに書いたことに通じますが、 パートナーが自分と異なる姓を名乗ることが 離婚にいたる争いにまでなるなら、 それはこの際離婚したほうがいい夫婦なのではないでしょうか。
まあ、これは言い過ぎとしても、このことに関しては、 問題があるのは「別姓」ではなく、「一年以内」のところです。
今回の法案にはいくつかの問題がありますが、 そのひとつがこの「一年以内」に「配偶者の同意を得て」変更できる、 ということだと思います。

その2 親子の一体感を弱め、子どもに精神的負担を与える...
「自分と異なる姓を持つ父か母」を持つことが、 「子どもに精神的負担を与え、親子の一体感を弱め」ることに なるでしょうか。
別姓夫婦の存在が普通である社会なら、 こんなことが子どもの精神的負担になり得るはずはありません。
(私事ですが、今でもうちの非嫡出子たちはケロリとしています。)

「子どもの姓を巡っての夫婦間での奪い合い」とありますが、 これは、夫婦が互いに自分の家名を継がせたがる、 ということだと思います。
(別姓法案のおかげで、家意識が強まるわけですね。)
これも法案の問題点で、結婚届けを出すときに 子どもの名前をどちらか一方のものに決める、 というのを改める必要があります。
できるかどうか、つくるかどうかわからない子どもの名前を決めるのを 「トラタヌキ」というのではないでしょうか。

その3 家系はおおいに乱れ、老人扶養やお墓はおろそかに...
「『家』軽視の風潮は決定的」とありますが、 「家」というのは、家族を構成するひとりひとりから成り立っているもので、 ひとりひとりの居心地がよければ、それはいい家族、 いい「家」なのだと思います。今の「家」の枠組みを、 正しい揺るぎないものとした上で、 個人はその形にあわせて無理をしなくてはならないというのは、 またしても本末転倒です。
四角い箱に詰めるために、卵に四角くなれ、というようなものですね。

「祖先のおまつりや、お墓の維持に重大な影響を与え」るというのは、 なぜか別姓導入にいい顔をしない人たちにはたいへん説得力があるらしいです。
そういう人たちは、死んで骨になってからも、 お墓に花がそなえてない、とか、ワシの三回忌の供物をけちった、 とか言って化けて出るのでしょうか。
それではとうてい仏様などとは呼んでもらえませんよ。

「我が国の福祉制度を補完してきたともいえる『三世代同居』の風習」 というのは、 「我が国の福祉制度があまりにも貧しいためにしなければならなかった 『同居』の風習」と言ってもいいと思います。
老人にとって在宅介護が一番幸せ、 と主張した国会議員(今は首相をしていますが)もいました。
家族(主として女性)が面倒をみるのはあたりまえ、 美しい風習だと言われてきたおかげで、 政治家たちはまともな福祉政策を怠けていられたのです。

その4 新たな女性差別が生まれる...
(ここに関しては、何度読んでも笑ってしまうので、 そのまま書いてみます。)

「夫婦別姓制は、女性を社会的不利益から守るものとされています。
しかし、夫と異なる姓を主張する嫁を、夫の親や親族が冷たくあしらい、 同族とは認めず親族からつまはじきにするような、 新たな差別の風潮を生み出す可能性も十分あります。
女性を助けるどころか、老年を迎えた女性自身の不利益を招く問題なのです。」

わっはっは。

その5 別姓夫婦は同姓にはもどれない 別姓結婚流行で青年結婚に悲劇が...
「時代の流行で別姓結婚をした青年男女が、結婚後に 初めてその深刻さに気づいても、同姓にもどることはできません。」 とありますが、いったん離婚して、 同姓結婚しなおせばすむことじゃないかな?
もっとも、このチラシの書き手は、離婚というのを「悲劇」と 捕らえているようなので、耐え難きを耐え、しのびがたきをしのんで 無理にでも結婚していれば幸せなのかもしれません。

その6 夫婦別姓法案に反対する国民の声を政府に...
「選択的夫婦別姓」に、なぜ「反対」しなくてはならないのか、 どうしてもよくわかりません。
「選択」なのだから、 自分は別姓にしたくないというのならしなくていいのです。
あくまで家を第一に考えて、お墓もおろそかにしたくないのなら、 そうすればいいのです。ほかの誰かが別姓結婚をしたからといって、 あなたの家族が崩壊し、お墓にクモの巣がはるわけではないのです。
なのに選択の余地を作ることにすら反対するというのが、理解できません。
結婚した夫婦は、みな同じ形にさせなくては気がすまないのでしょうか。
「個人主義」が「国力衰退」の原因だとも受け取れる記述がありますが、 むしろ、多様性を認めない視野の狭さがこの国を 滅ぼしていくことになると思います。

夫婦も、家族も、学校も、社会も、国も、 それらを構成するのは個人です。制度が個人の選択肢をせばめて、 そこからはみ出す人たちに不利益を強いるのはまちがっています。
制度は個人に対して中立であるべきで、 モラルまで押しつけようとするのはもってのほかです。

「選ぶ自由」は個人の権利です。
今回の法案にはまだ問題点もあり、 それはこれから改善されていかなくてはなりませんが、 とにかく一歩踏み出さなくては。

付記
この民法改正法案が今国会に提出されませんでした。

「軽々に判断せず、国民の総意を踏まえて対処してほしい。」 (松岡利勝代議士)(5月22日)

たいていのことは勝手に決めてしまってから 「国民の皆様のご理解が得られると信じている。」
などとのたまう人たちが「総意を踏まえて」なんて言うと 笑っちゃいますが、 これで、幸か不幸か、考え、アピールする時間はあると いうことになります。
いろいろな人たちがいて、制度が個人の生きていくやり方に口を出さない、 成熟した社会にしていきましょう。


国会議員連絡先 |他の国 |民法改正案 |すすめよう! 民法改正ネットワーク |パンフレットより |声明文より |笑チラシ