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 Copyright Yoshihiro IDE (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp) 最終更新日:1999/APR/05


平成11年度茨城県予算編成の概要

 1999年度の茨城県の予算は、戦後初めて前年度を下回った「マイナス予算」となりました。

 一般会計は、1兆789億7200万円。98年度当初予算を、約460億円(4.1%)下回り、借金にあたる県債の残高が初めて一般会計額を上回る1兆2538億円まで膨らみました。この県債の金利だけで一日約1億円に上る計算になります。不況の影響を受け、県税収入が98年度当初に比べて10.9%落ち込む中、県単独事業費を15%削減し、国補事業費を前年度並みを維持するなどして、財政健全化と景気対策の両面に配慮した予算編成となっています。

 県は国の景気対策と連動して、一月としては異例の第3次大型補正予算(98年度一般会計に511億円上乗せ)を編成しました。年度替わりでも切れ目なく公共事業を執行することにより景気を下支えする予算編成、いわゆる「15ケ月」予算が組まれました。この「15ケ月予算」で見れば、98年度予算をわずかではあるますが上回ることになりました。

歳入について

 歳入面を見てみると、県税の減収が著しく厳しい台所状況となっています。98年度も約240億円の税収不足になり、99年度も不況で企業の業績が芳しくない上、国の税制改正で法人税率が引き下げらる影響が出るため、県税収入、特に法人二税(法人事業税、法人県民税)は98年度当初に比べて24.8%(約280億円)の大幅減と見込みました。

 県税収入が落ち込む分、国からの地方交付税が22.2%(412億円)増加します。

 貯金にあたる一般財源基金は、338億円が取り崩され、歳入の不足分をカバーします。しかしこれらによって、自由に使える一般財源は1.3%減の約6392億円にとどり、一般財源基金は123億円にまで減少することになりました。

  平成11年度予算 構成比 平成10年当初 増減 前年比
県税 3,153億円 31.50% 3,538億円 -385億円 89.12%
国庫支出金 1,753億円 16.80% 1,791億円 -38億円 97.88%
地方交付税 2,270億円 16.50% 1,858億円 412億円 122.17%
県債 1,296億円 13.70% 1,535億円 -239億円 84.43%
諸収入 889億円 7.30% 820億円 69億円 108.41%
繰入金 414億円 6.30% 705億円 -291億円 58.72%
使用料及び手数料 219億円 1.90% 209億円 10億円 104.78%
分担金及び負担金 165億円 1.50% 172億円 -7億円 95.93%
地方消費税清算金 520億円 4.60% 521億円 -1億円 99.81%
地方贈与税 32億円 0.30% 31億円 1億円 103.23%
その他 59億円 0.40% 50億円 9億円 118.00%
  10,770億円   11,230億円 -460億円 95.90%

歳出について

 歳出面では、新県庁舎やつくば国際会議場といった大型の箱物公共事業が終了したのに伴い、一般会計全体で約460億円のマイナス予算となりました。

 県の単独事業費を15%削減し、一般行政費も目標を上回る16%を削減しました。職員の旅費や食糧費、印刷製本なども約8億円を削るなど、内部経費は限界まで削ったともいえます。

 県債残高1兆2538億円は、借金総額が年収を超えたようなもので、金利を加えた返済総額は1兆8000億円に迫まりました。99年度の公債費(県債の返済額)は約1000億円と、歳出全体のほぼ一割を占めます。

 県は昨年三月に策定した行財政改革大綱に従って、2003年度までに教育委員会分を含め約1400人の職員削減を進めています。しかし、人件費は減少するどころか、1.7%増えて約3497億円に達しました。知事部局、教育、警察を含めた退職者が昨年度に比べて約90人多い約3000人の見込みで、退職金の支出が人件費の圧縮にブレーキをかけたかたちになりました。

 これら公債費や人件費などの義務的経費は一般会計歳出の54.5%を占め、98年度より3.2%増加しました。逆に、公共事業などの投資的経費は、4.5%減って26.6%にとどまり、財政の硬直化が急速に進んでいます。

 99年度の新規事業には、いわゆる大規模な「箱物」事業は少なくなっています。県は昨年3月に策定した県行財政改革大綱の中で、総事業費約10億円以上の建築物などについて、30の具体的な事業名をあげて、規模の縮小・計画の先送りを決めています。このうち、新大洗水族館など一部は、経済対策の一環として98年度中に建設に着手しましたが、今回の予算案で先送りなどを解除する事業は一つもありません。

 「時のアセスメント」の観点から、県公共事業再評価委員会が現計画の再検討が必要と提言した緒川ダム計画は、約3000万円を予定していた建設を前提とした測量・調査費の計上を見送り、代わりに、継続か中止かを決めるための再検討経費約2000万円を盛り込んでおり、地元や国と調整を図りながら、6月ごろまでに結論を出す予定にしています。

 こうした大型公共事業を抑制し、私学助成費の増額や無認可保育所への初めての助成、2000年度から始まる介護保険制度への対応、中小企業向け融資枠の拡大など、教育・福祉、不況対策に配慮した点は評価にあたいすると思います。

  平成11年度予算 構成比 平成10年当初 増減 前年比 備 考
教育費 2,973億円 27.60% 2,930億円 43億円 101.47%  
土木費 1,790億円 16.62% 1,913億円 -123億円 93.57% 県単事業15%削減
農林水産費 1,010億円 9.38% 1,011億円 -1億円 99.90%  
公債費 1,003億円 9.31% 962億円 41億円 104.26% 県債の返済に使う予算
総務費 464億円 4.31% 836億円 -372億円 55.50% 新県庁舎の支出減
民生費 721億円 6.69% 719億円 2億円 100.28%  
警察費 592億円 5.50% 587億円 5億円 100.85%  
商工費 483億円 4.48% 438億円 45億円 110.27%  
企画開発費 353億円 3.28% 437億円 -84億円 80.78% 国際会議場予算減
衛生費 382億円 3.55% 373億円 9億円 102.41%  
諸支出 794億円 7.37% 802億円 -8億円 99.00%  
その他 205億円 1.90% 222億円 -17億円 92.34%  
10,770億円 11,230億円 -460億円 95.90%  

 
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