工事が進む<常磐新線>伊奈・谷和原地区区画整備事業
 Copyright Yoshihiro IDE (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp) 最終更新日:1997/Oct/10

不法投棄処理に20億円。県、土地区画整理事業費より捻出。

 東京の秋葉原と茨城県のつくば市を結ぶ常磐新線沿線の開発で、茨城県が造成を始めた伊奈・谷和原丘陵部特定土地区画整理事業用地に、大量の不法廃棄物が埋められていることが判明した。

 伊奈・谷和原丘陵部特定土地区画整理事業は、2005年度(平成17年度)に開業予定の常磐新線の鉄道整備と、その沿線274.haを、新たに都市機能を持った地域に整備する事業である。具体的には、広域幹線道路や一般住宅や集合住宅、2つの小学校と中学校1つなどの教育施設を建設し、商業や業務施設を誘致する計画である。(詳しくは、常磐新線のホームページまたは、茨城県のホームページを参照) 

 平成8年2月ごろ、伊奈谷和原駅(仮称)の予定地近く(谷和原村東楢戸)で、県が造成工事を始め、表層の土を取ったところ、下から大量の廃棄物が出てきた。

 県は工事を中断し、平成8年9月から平成9年3月まで、5,000万円をかけて区域内を調査した。周辺住民や地権者から聞き取り調査をし、8カ所をボーリングしたところ、調査したすべての場所で廃棄物が見つかった。合計面積では、5.7haに及ぶ。(左の図面@〜Gの箇所)

 特に、常磐新線と広域幹線道路が分岐する地点と調整池にまたがる地域(左の@)は、3.5haに及ぶ不法投棄が確認されている。

 井手県議は、97年10月10日現地調査を行い、同地点を2時間に亘って、重点的調査を行った。コンクリートの塊、鉄筋くず、鉄くず、ガラス瓶、ビニールシートなどが残土に交じって捨てられていた。残土が積み上げられ小山となった部分には、草が生い茂り、その間からコンクリートの固まりやパイルの破片が顔を覗かせている。平らな部分には、ガラスの破片や瓶の口金が露出し、うっかり歩くとけがをするのではと思われるほどである。埋設された投棄物の全体量は試算できず、その深さは15mに及ぶといわれている。

 この不法投棄問題には三つの視点があると思われる。

 その第一は、処分費用の問題である。

 県(企画部常磐新線整備推進課)では、事業計画を大幅に変更することは困難であることから、この不法廃棄物を撤去し、その予算を土地区画整備事業費から捻出する方針を固めた。

 撤去費用は20億円から30億円と試算され。この地域の平均土地価格は1u当たり12,000円程度であるから、面積当たりの投棄物処理費は、土地価格の3〜4倍に相当する高額のものとなる。

 廃棄物が埋まっていることを知りながら土地を県に売却した元地権者に撤去費を求める方法もあるが、朝日新聞社の報道によると、地権者の一人は「残土処分場として貸しただけで投棄の事実は知らない。多額の撤去費を負担しろと言われたら一家心中するしかない」と話しているという。買収金額の何倍もの撤去費を請求することは事実上不可能である。また、ゴミを廃棄した当事者である業者の特定も困難を極めている。1986年と1989年に、地元の廃棄物業者とその関連会社が廃掃法違反で検挙されている。しかし、その業者もすでに存続しておらず、損害賠償を請求できる状態ではない。

 土地区画整理事業という特殊性から、直接県民の税金からこの処理費が支出されるわけではないが(一般会計からの支出ではない)、結局、県が施工する事業での収入からこの費用が捻出されるわけである。総事業費750億円の同区画整備事業の予算が大きく膨れ上がることは事実であり、万が一事業が円滑に進まなかった際の費用負担等大きな宿題を後生に残すことになる。

草が生い茂った残土。コンクリート片や木片が露出している。

平坦部には、ガラスの破片や、瓶の口金、金属片などが散乱している。

建設残土から顔を出したコンクリートパイル。

 第二の視点は、この地域に投棄された廃棄物の危険性の問題である。

 10月10日に井手県議が行った現地調査等では、捨てられた廃棄物は建築廃材や缶・瓶類などの一般廃棄物しか確認できなかったが、重金属や毒性にある化学物質等が本当に存在しないか、十分に調査する必要がある。

 更に、第三の視点として、この土地の買収に関する経緯を明確にする必要がある。

 この地域では1986年頃こら、産業廃棄物が無許可で捨てられて問題になった。

 1989年、県は、この場所の約半分を、地元の農家から買い上げた。この農家の夫婦は、当時不法投棄を知っていたとみて、損害賠償を求めて提訴する予定。ただ、賠償額は、県が買った一部の土地についての数千万円程度とみられる。

 一方、廃棄物が大量に埋まっている中心部は県の借地で、不法投棄したと思われる業者に県が損害賠償を求めることはできない。この業者は1986年、この場所に不法投棄をして摘発され、1989年には関連会社が同様に摘発された。(当時の新聞記事を別項に掲載)

 県の買収は1989年5月ごろ始まった。県常磐新線整備推進課は、ごみは事件後、業者が撤去したと判断し、その関連会社から残土を約3億円で買い取った。

 なぜ廃棄物の有無について県がしっかりとした調査をしなかったのか、あえて犯罪を起こした関連会社から残土を買う必要があったのか、不自然な土地買収の過程に多くの疑問が残っている。

 

コンクリートや鉄筋の廃材が無造作に捨てられている。

投棄されているのは建築廃材だけではなく、家庭用の一般ゴミのようなものもある。

常磐高速にほど近い廃棄物投棄現場。建築廃材が露出している。奥の林の中にも廃材が埋められているという。

参考:産廃不法投棄処理に40億円、産廃処理の中間報告
参考:不法投棄産廃の処理に関する井手県議の見解


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