Copyright 井手よしひろ (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp) 最終更新日:97/05/26


ALS患者・家族の集い 平成8年11月2日(土)、茨城ALS患者・家族の集いが開催された。
 ALSとは、難病の一つで、足や腕の筋肉が萎縮して歩行や運動が困難になり、やがて呼吸も自分では出来なくなり、死に至る原因不明の病気である。(ALSについて
 茨城県には、50名前後の患者がいるとされ、抜本的な治療法がないため、その患者や家族は大変なご苦労を強いられている。
 今回の「集い」は総和町の海野佶さんの呼びかけで実現したもので、井手県議も、深刻な現状を伺うため「集い」に出席した。
 以下は、日本ALS協会茨城県連絡会の会議報告を転載させていただき、ALSへの理解を深め、対策を進める参考とさせていただく。
 尚 平成9年5月25日(日)には、ALS協会の支部が結成されました

茨城ALS患者・家族の集い

はじめに

 去る平成8年11月2日(土)午後13:30より、水戸市民会館102号室にて県内初の「茨城ALS患者・家族の集い」が開催されました。

 現在、筋萎縮性側索硬化症(ALS)という病気は原因もわからず、これといった治療法もない病気です。しかし、少しずつではありますが原因究明へ向けて様々な研究が進められ明るい話題も徐々に聞かれるようになってきました。患者さんの数が少ないため一人ひとりでは同じ仲間との交流の機会さえなく、新しい情報・知識を得る機会も少なくなり孤立してしまう傾向があります。この病気と闘い生き抜いていくためには、同じ病気に苦しむ人達が連携し交流を深め情報を交換し、より充実した環境創りをしていくことが、患者・家族にとっては必要なことです。

 当日は雨が降る生憎な天気の中、患者・家族、県保健予防課田中課長、井手県議会議員、菅谷総和町長を含めて80名以上もの方々に御出席頂いたことは、この病気に対する関心の高さの表れだと思います。

 当日の内容は患者・家族の日頃抱えている悩みや問題などを中心に話し合いが行われました。患者・家族の抱えている悩みや問題は大変深刻であり、患者・家族が少しでもより良い環境で生活できるように、今の現状を改善していかなければなりません。その意味でも、今回茨城県内で初めて集いが開催できたことは、今後の患者・家族のより良い環境創りへの第一歩を踏み出すことができたことだと思います。

 今後も患者・家族を中心に集いを定期的に開催し、保健・医療・福祉等の関係機関の協力を頂きながら、患者・家族をしっかり支援できる体制を目指して行きたいと思います。

 今回の集いの呼び掛け人であります、海野佶からのお礼を下記いたします。

謝礼文

 

 先日の第1回「茨城ALS患者・家族の集い」には雨天にも拘わらず多数の方に御参集頂き誠に有り難うございました。この様に多くの方に参加頂いた事は喜びであると同時に如何に多く方が悩みを抱えているかであり、改めてこの集いの継続開催の必要性を痛感しました。

 長期入院可能の病院の有無、在宅介護での問題点、ALSの世間的認知、その他いろいろなご意見が出ましたが、この問題は他人によって癒されるのではなく我々皆が力をあわせて一つづつ改善していかなければなりません。

 これを機に皆様で協力して我々患者・家族の生活環境を少しでもより良い方向に改善すべく努力して行こうではありませんか。

 よろしく。

海野 倍

 尚、当日の集いにおける内容については下記の通り取りまとめました。出席頂いた皆様より数多くの貴重なご意見を頂いたにもかかわらず、紙面の都合上により概要だけとなりますこと、御了承下さい。



集いの内容
日時 平成8年11月2日(土)13:30〜16:00
場所 水戸市民会館102号室
出席者 患者7名
患者家族35名
遺族2名
県保健予防課2名
県議会議員1名
総和町長1名
総和町保健センター所長1名
医師1名
看護婦6名
保健婦7名
ソーシャルワーカー1名
一般17名
報道機関4名
合計85名

集いの内容について

 当日の集いで患者・家族の皆さん、専門職・一般の方から頂いた数多くの貴重な意見を幾つかの大きなテーマ毎に分けることができますので、下記のようにまとめました。ご参考ください。

医療機関

 茨城県内の病院で神経内科を設けているところが少なく、診療報酬の問題、ALS患者は人手がかかるる等の問題によりALS患者が長期で入院できる病院が非常に少ない。特にその傾向は、症状が進行した患者さんほどよく見受けられる。呼吸器を装着した患者さんの場合、長期入院・転院はますます困難になる。例え、長期入院できる病院があったとしても、その病院の数が少ないため自宅から遠くなる場合や付き添い等必要な場合もでてくる。そのための移動距離、時間、経済的な問題は、家族にとって大きな負担となる。

 患者の家族も生活をしていかなければならない。それにもかかわらず、受け入れてくれる病院が少ない。そのために在宅介護をする場合、仕事をどうするかという問題もでてくる。仕事を辞めた場合には、生計の道が絶たれることになる。大変深刻な問題である。このような事が起きないためにも医療機関の受入体制改善が強く望まれる。当日の意見の中から幾つかを記します。

 当日の意見の中から幾つか記します。

患者家族 「茨城県内にはALS患者の受け入れ病院が少ない。在宅介護では限度があるので受け入れ施設の増加を要望する。」
患者家族 「長期入院出来る体制をつくって欲しい。家族付き添いが必要になると生活費をどうするかという問題がでてくる。」
患者家族 「自宅付近に受け入れ病院がないため、父親1人(71才)が付き添いのために毎日病院へ往復50Kmを通っている。」
患者家族 「差額べット代の負担が大きすぎる。」
事務局長 「国会の答弁では、医療のために必要上個室に入る場合、差額べット代を請求されることはあり得ない、とあるが、実際には請求されるケースが多い。病院側の事情もあるだろうが、ALS協会としては厚生省・医療機関に理解と協力を訴えて、改善を目指していきたい。」
事務局長 「茨城県内でもALS患者が長期入院できる病院は非常に少ない。しかし、県内にも国立療養所、国立病院があるのですから、その様な病院こそALS患者を受け入れる体制になって欲しい。」

在宅介護

 患者・家族自身が在宅介護を望んで在宅介護に移行する場合でも、長期入院が断られて在宅介護になる場合でも、在宅介護は、保健・医療・福祉・地域の人々の協力がなければ、成り立ちません。一人の命、人間としての尊厳を守るには、多くの人々の献身的な協力と支援体制の充実が必要である。

 現時点での県内における在宅介護の支援体制はとても充実しているとは言い難いものがる。保健・医療・福祉・行政との連携不足、ホームドクター不足、理学療法士・作業療法士等専門職のマンパワー不足など在宅介護における問題は数多くある。たしかに、一部の地域ではうまく連携がとれ在宅介護ができるところやその他の地域でも関係者の方々の御尽力により状況は改善されつつあるものの、家族の負担でなんとか成り立っている場合がほとんどである。

 人工呼吸器を使用した場合の在宅人工呼吸器療法の場合には、24時間体制の介護が必要となる。その場合、介護をする家族の精神的、肉体的、経済的な負担は大変大きく、患者だけでなく、家族に対するケアも重要になってくる。

 世間では介護、介護と声高に叫ばれているものの、実態が伴わなければ何も意味をなさない。介護の問題は要介護者全体の数からみても老人に対するものがほとんどであり、どちらかと言うと難病に対る介護の問題は遅れているように思われます。必要な人に必要な介護をすることが大切である。私達はALS患者・家族の置かれている現状をしっかり把握し、関係機関に働きかけていく事が必要である。患者一人ひとりの命、人間としての尊厳を守るには必要なことなのです。

 当日の意見の中から幾つか記します。

患者家族「リハビリも兼ねて患者を一時帰宅させての在宅介護を練習するも、24時間介護はあくまで人手が必要で、特に夜間介護が一番辛いところである。ヘルパー及び訪問看護の補助(割引)、夜間サービス等の制度を早急に対処してもらわなくては退院、在宅介護もしてやれないのが現状です。」
患者家族「24時間介護なので家族(妻のみ、子供なし)が非常に疲れるので何とか月に1、2回でも休ませたいので馴れた人のお助けを願いたい。ヘルパーさんを頼むと1日12、000円かかります。」
患者家族「父が毎日昼夜問わず面倒をみているので父の体も心配です。」
患者家族「在宅介護の場合は医療機関(ホームドクター)とのネットワーク、生活費の補助、自宅の改造費用、介護者の確保等の問題点が多い。」
患者家族「ヘルパーさんにも吸引をできるようにして欲しい。」
事務局長 「たしかに医師法の中には医療行為は医師の免許を持つものがおこなう、となっている。しかし、厚生省はヘルパーの吸引をするなとは言ってなく、練馬区などはヘルパーの吸引を認めている。行政側は現場の必要性をしっかり直視し、認識を改めるべきであり、私達も更なる働きかけが必要である。」
ヘルパー「患者・家族のためにも、たとえ資格がなくても行政、主治医の指導のもと研修を受けさせてもらい、ヘルパーにも吸引ができる体制にして欲しい。」

ALSの啓蒙

 ALSは確かに大変な病気です。しかし、周りの理解と協力があれば、患者さんは一人の人間として立派に生きることができるのです。

 ところが、ALSに対する社会的認知度は低く、医師の中にはALSの事を知らない人もいるくらいです。その様な状況の中では、患者さんに対する誤解や偏見もいい生まれてきます。決してあってはならないことです。

 患者さんの意識と感覚は正常であり、逆に私達の方が患者さんから教えられることが沢山あります。私達は患者さん一人ひとりの命、人間としての尊厳を守らなければなりません。そのためにも、ALSの啓蒙活動は必要なことであり、関係者の方々の協力を得ながら積極的に進めなければなりません。

 また、特に医療機関においてはALSの患者・家族の現状に目を背けることなく、関心を持ち理解してもらう必要がある。これは、保健・福祉についても言えることである。

連 絡

 今回の集いに大勢の方々に御出席頂き、数多くの貴重な意見を頂きました。しかし、解決していかなければならない問題は数多くあります。

 今後、定期的に意義ある会を催して行き、患者・家族のためのより良い環境創りへ向けて皆さんと一緒に取り組んで行きたいと思います。

 どうぞよろしくお願い致します。

 次回開催の内容・日程については決まり次第御連絡させて頂きます。

 意見・質問等何かありましたら、お気隆に御連絡下さい。

日本ALS協会本部事務局〒162東京部新宿区納戸町7−103
TEL03−3267−6942
FAX03−3267−6940
日本ALS協会茨城県連絡会〒306−02茨城県猿島郡総和町駒羽根712−16海野方
TEL&FAX0280−92−5244


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