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 最終更新日:2004/Mar/4

日立電鉄存続問題の具体的視点
日立電鉄存続の可能性を企業・利用者・市民・行政が一体となって考えよう

日立電鉄大橋駅  日立電鉄鉄道部門の存続問題がクローズアップされています。既に、日立電鉄は取締役会で、3月中に来年3月末をもって、鮎川〜常北太田の廃線届けを国土交通省に提出する方針を決めています。
 これに対して、沿線住民や通学に利用する高校生の連絡協議会からは、存続を求める署名が提出されています。
 こうした存続運動が起こり、マスコミの報道も繰り返されてはいますが、一般市民の関心はあまり高まっていません。その要因の一つに、存続を求める運動自体が、「日立電鉄が無くなると不便になる」「チン電が無くなると寂しい」といった感情的な議論に終始し、電鉄線を廃止すること、存続することのメリット、デメリットが具体的に議論されていないことが問題ではないかと考えます。
 そうした地に足がついた議論のたたき台になればとの思いで、いくつかの問題提起をさせていただきます。

T.鉄道のメリットとは何か具体的に考察する

1.利用者にとって

(定時性と高速性)鉄道は、交通渋滞や天候の影響を受けにくく、正確な時間でより早く乗客を運べます。
具体的には、現在大みか駅〜常北太田の所要時間は25分程度で正確な運行が確保されています。反面、バス路線は同区間を30分以上かけています。(国道349号線にはバス路線がなく直接の比較はできません)

(安い運賃)鉄道は、バスに比べて運賃が安いという特長があります。また、通学や通勤手当の割引率が高いのも鉄道の優位点です。
大みか駅〜常北太田駅で、鉄道運賃は往復980円、バスは1120円と14%も割高です。
定期券利用者にとっては、6カ月定期で、鉄道が通勤109520円、通学69340円に対してバスは、通勤121550円(11%割高)、通学94180円(36%割高)となっています。
特に通学利用者については、年間で49680円の負担増となります。

大みか〜常北太田鉄道バス備考
所要時間25分30分〜40分バスが5分から15分遅い
往復運賃980円1120円バスが14%割高
6ヶ月通勤定期109520円121550円バスが11%割高
6ヶ月通学定期69640円94180円バスが36%割高

2.地域社会にとって

(大量輸送)1編成(2両)で250人から300人の乗客を運べます。バスは1台当たり40から50人しか運べません。
例えば、朝7時と8時台で日立電鉄は2000人の利用者がありますが、これを全部バスに変更すると40から50台のバスを走らせる必要があります。
これは、2分から3分に一台バスを新たに運行するということに他なりません。

(環境負荷が低い)電車は環境に優しい乗り物です。1人の人を1km運ぶのに排出される二酸化炭素量はバスが94gであるのに対して鉄道は17gです。バスの6分の1です。更に、自家用車と比べると10分の1以下です。

(地図や時刻表に掲載)鉄道は、地図や時刻表に載ります。駅は、まちづくりのシンボルです。地域の人の連帯感を育みます。
常陸太田市内または近郊には、4つの県立高校があり、2334人の生徒が通っていますが、内250人が日立電鉄を利用しています。高校生の通学が不便になれば、少子化とも相俟って県立高校の再編が進む可能性もあります。
歴史と教育の街・太田にとって死活問題になるかもしれません。

学校名生徒数日立電鉄
利用者
太田一高968118
太田二高61392
佐竹高58928
里美高16412
合 計2334250

U.日立電鉄の経営状況・収支推計を考察する

(営業係数)そもそも日立電鉄の経営状態が、他の鉄道会社と比べてどの程度であるかを明確にしたいと思います。
存続運動が実り沿線市町村・県が支援して経営努が続けられている鹿島鉄道の営業係数143円と比べると日立電鉄の117円は、突出した値ではありません。

鉄道名区間輸送人員輸送密度営業係数
鹿島鉄道石岡〜鉾田90万人640人143円
茨城交通勝田〜阿字ケ浦88万人1420人101円
日立電鉄鮎川〜常北太田177万人1516人117円
真岡鉄道下館〜茂木128万人1609人143円

(必要経費の試算)今回、日立電鉄本社が廃線を決断した理由の最大のポイントは、「安全に対する投資が確保できない」というものでした。
日立電鉄が公表している「維持補修・緊急安全点検結果等による自社工事負担金」という資料によると、平成16年度から20年度にかけて必要とされる「安全を守るための費用」が詳細に掲載されています。
<参考資料>維持補修・緊急安全点検結果等による自社工事負担金(日立電鉄提供:PDF1.6M)
しかし、私のような素人が見てもこの資料には、いくつかの疑問点があります。

(例−1:コンクリート枕木化)平成16年度から毎年1900本の木製枕木をコンクリート製に変換することにして、9900万円の予算を見積もっています。しかし、平成10から14年度までの5カ年の平均実績は、1081本です。これを平成14年度の単価で計算していると、約5800万円で済むことになります。

(例−2:自動券売機更新)8つの駅で自動券売機を更新することになっています。廃線になるより、このままで良いというのが利用者の実感です。6400万円の経費計上は疑問です。

(例−3:変電所増設)平成20年に変電所の増設が見込まれています。予算額は1億2000万円です。この増設は車両の冷房化が目的です。明らかに、廃線の理由に冷房化工事まで含むのは経費推計の水増しともいえます。

 県は、2004年3月4日に行われた県議会一般質問で、地元武藤県議の質問に答えて「今後の経営見通しは、修繕費や設備投資が過去平均の1.5倍以上と見積もられているなど厳しめのものとなっておりますが、その精査や一定の経費節減等を勘案した場合、会社の見方とは別の必要な支援額が少ない試算をすることも考えられます」との見解を示しました。
 廃線の是非や、利用者の増加策、支援のあり方などを行政や市民が同じ場で検討をする「場」を設けるべきです。日立電鉄は、その検討のたたき台となる出来るだけ詳細なデーターを、インターネット等で広く一般に公開し、存続へ向けての市民の知恵を結集する努力を行ってはなりません。それなくしては、「はじめに廃線ありき、数字は後から作った」との批判を免れません。

【参考資料】県議会一般質問における企画部長の答弁(2004/3/4)
 一方、先に会社が提示した今後の経営見通しは、修繕費や設備投資が過去平均の1.5倍以上と見積もられているなど厳しめのものとなっておりますが、その精査や一定の経費節減等を勘案した場合、会社の見方とは別の必要な支援額が少ない試算をすることも考えられます。
 この鉄道の存続を図るためには、これらの試算を前提としつつ、利用者への影響や鉄道による地域全体への様々な便益を踏まえ、存廃問題を地域の将来に関わる問題ととらえ、まずは地元市が、地域で支えるとの判断を行うとともに、市民による利用を促進していく必要があります。
 現段階では、地域を挙げた議論や市民意向の把握等が必ずしも十分でなく、県としましては、地域における検討に資するよう様々な情報提供を行いますとともに、地元市が支扱と市民による利用促進策を決めた傷合には、会社の意向も踏まえつつ、市とも十分に相談してその対応を検討してまいります。

V.検討すべきポイントの整理

1.運営形態の検討

公共交通を民間事業者にすべて任せてよいのでしょうか。例えば、鉄道施設を公営化し、運営を民間事業者に委託するといった選択も検討すべきです。

2.住民・利用者への説明責任

企業の財政面での理由のみで存続の是非が語られ、住民や利用者に正確な情報が伝わっていません。事業者と行政は、周辺住民には少なくても駅ごとに、高校生には学校ごとに、通勤利用者には大規模事業所ごとに、説明会、または意見交換会を開催すべきです。

3.廃線時期の再検討

以上のようなプロセスを踏むためには、来年3月廃線というのはあまりに唐突ではないでしょうか。最低でも日立電鉄の存続を前提に高校を選択した現在の高校1年生が卒業する2006年4月以前の廃線は検討すべきではありません。

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