井手よしひろの意見と主張
茨城県議会議員 井手よしひろ (e-mail:master@y-ide.com)


井手県議の寄稿文が茨城新聞(2002/5/13)に掲載されました

 茨城新聞5月8日付けの「県民の声」(日立市早川和文さん投稿)ならびに5月9日付け「茨城春秋」について、県議会議員の一人として、個人的な感想・意見を述べさせていただきます。

 多くの県民は自費でパソコンを購入し、学び活用している。なぜ、県議会議員だけが、県からパソコンの支給を受けるのか?「県政をリードしていく者として、率先して自分でパソコンを購入し、政策立案に役立てていくのが筋ではないか」とのご意見でした。この点については、全く同感であり、反論の余地はありません。

 私の所属する会派(茨城県議会公明党議員団)では、新県庁舎に移転して間もなく、ISDN回線を導入し、所属議員全員がLANで結ばれ、インターネットを活用できる環境を、会派でお金を出し合って整備しました。勿論、毎月の通信費やプロバイダーの利用費も、使っているパソコンも自前です。個人的には、6年前の96年4月よりホームぺージを公開しております。

 他の会派の状況は詳しくは判りませんが、多くの議員が自宅や事務所、県議会の控え室でパソコンを活用している状況は同じだと推察します。(自分自身で使っていない議員も、秘書や政策担当スタッフは、ほぼ100%パソコンを活用していると思います)

 今回の議論の発端になった「新県議会IT化推進事業」は、一人一台パソコンを支給するということだけが大きく取り上げられていますが、議論の本質は違うところにあると、私は考えています。
(パソコンの購入は買い取りではなく、リース契約になる見込みです。したがって、支給ではなく貸与になると思われます)

 この事業の目的は、IT時代にふさわしい情報基盤を議会の中に構築することです。

 私は、議会の本会議場をはじめ、委員会室、控え室などあらゆる場で、パソコンから会議録や執行部の議案に関するデーター、インターネットのデータなどが自由に活用できる情報空間を整備することが一番大切だと考えています。そのためには、いわゆる従来型のLANではなく、ブロードバンドに対応した光ファーバーの引き込みや無線LANの設置を提案しています。

 議会や委員会の審議の際、より詳しい情報や記録、最新のデーターを活用することは県政の活性化に不可欠です。執行部と議会がより真剣で高度な論戦を交わすためには、議員には情報という武器がどうしても必要になります。その武器を提供してくれる道具がパソコンになるわけですが、そのパソコンを十分に活用する環境が未だ県議会には整っておりません。

 他県では、議席にすでに一人一台のパソコンが設置された議会もあります。電源コンセントと、インターネット用のコネクターを整備している議会もあります。
(議場へのパソコンの持ち込みは議論の余地があるかも知れません。日本の国会の状況はよく解りませんが、アメリカ連邦上院議場へのノートパソコンの持ち込みを禁止規定が、97年11月に制定されたことは意外な事実です。地方議会においては、持ち込みを黙認または正式に認める議会が、急速に増えているのが実情です)

 私は、このような先進事例をよく研究して、議会の活性化のために基盤整備を急ぐ必要があると確信しています。

 そしてできれば、議会や委員会の傍聴をしていただく県民も、県の執行部も、マスコミの関係者も、様々な議会関連情報をパソコンやPDAで享受できる「ユビキタス議会」を、全国に先駆けて茨城に構築したいと思っています。

 今後、議会事務局がその具体的事業展開について素案を作成し、議会で論議を尽くしていく手順となっています。議論の過程や結果は、より広く、より詳細に皆さまにご報告していくことが大事です。

 今回、県民の皆さまから寄せられたご意見を真摯に受け止めて、議会の活性化により真剣に取り組んで参ります。今後ともご指導よろしくお願いいたします。

PDA(Personal Digital Assistance)
個人用の携帯情報端末。手のひらに収まるくらいの大きさの電子機器で、パソコンのもつ機能のうちいくつかを実装したものをいう。液晶表示装置や外部との接続端子を搭載し、電池や専用バッテリーで駆動する。シャープのザウルスやApple社のNewton、カシオのカシオペア、Palm Computing社のPalm、Handspring社のVisorなどが有名。

ユビキタス
ユビキタスコンピューティング (ubiquitous computing) のこと。ユビキタスとは、「遍在する」という意味のラテン語。生活や社会の至る所にコンピュータが存在し、コンピュータ同士が自律的に連携して動作することにより、人間の生活を強力にバックアップする情報環境。1989年にXerox社のパロアルト研究所が提唱した概念であるが、携帯電話などを中心とした小型情報端末の進化に代表されるコンピュータの小型化や、インターネットの爆発的な普及などの通信技術の発展・浸透に伴って、再び注目が集まりつつある。ユビキタスコンピューティングにおいては、コンピュータはその存在を意識させることなく、必要に応じてネットワークに蓄積された個人情報などを参照しながら、自動的に他のコンピュータと連携して処理を行う。
ここでは、その前段階としていつでもどこでも誰でもが、パソコンやPDAを介してブロードバンド・インターネットに接続できる環境を指しています。

茨城新聞1面 2002年4月30日付

◆全県議にパソコン 情報収集能力アップへ 操作、活用に格差
 IT化に対応するため、県議会議員全員にパソコンが支給される。インターネットや電子メールの交換などを通して情報収集能力を高め、政策立案に少しでも役立ててもらうのが狙い。現在、六十六人いる県議のうち、ホームページ(HP)を立ち上げているのは「十数人」(県議会事務局)。パソコンの操作や活用をめぐっては議員間でかなり格差があり、是正対策が課題となる。今年は十二月に県議選が行われる予定のため、実際の配置は選挙後になる見通しだ。
 県議にパソコンを支給する背景は、インターネットで申請や届け出ができる「電子県庁」が現実のものとなる一方で、高度情報通信網の整備に伴って県民のパソコン普及率が急速に高まることが予想され、県議にとってもIT化への対応は避けて通れない課題となるためだ。県は本年度、「県議会IT化推進事業」として九百二万円を計上している。
 政策立案能力を高める手段とするとともに、たとえば、メールなどを通して地域住民の声や要望をその都度、把握するのに役立ててもらう狙いもある。
 ただ、実際にパソコンを支給しても、議員によっては「宝の持ち腐れ」となる懸念もある。パソコン支給は次期選挙で選ばれた議員が対象となる見通しだが、現職をみた場合、平均年齢は五十二、三歳。パソコンを操作したことのない議員にとっては、かなり抵抗があると思われる。
 パソコンを自在に活用している県議はまだ一部で、未経験の議員たちにパソコンの利便性や必要性を理解してもらい、どのようにして”体感”してもらえるかが、格差是正への課題となる。
 県は議会事務局を中心にワーキングチームを早期に立ち上げ、配置する時期や講習方法など具体的な検討を始める方針。
 県議会事務局によると、都道府県議会で全議員にパソコンを配置しているのは全体のほぼ四分の一を占める。しかし、パソコンの機能をフルに活用しているケースは「まだ少ないのでは」とみている。

茨城春秋 2002年5月9日付

 ここまで読者の皆さんから批判の声が相次ぐとは、正直予想もしていなかった。四月三十日付の一面に掲載した「全県議にパソコン支給」の記事である
▼翌日には「県議へパソコン支給は時代遅れ」「全県議にパソコン―にもの申す」などのタイトル付きで、批判の投書が相次いで編集局に寄せられた。はがきあり、ファクスあり。そして七十歳の男性からは、パソコンを使ってのメールでの投書もいただいた
▼八日付の「県民の声」に掲載された投書は、そのうちの一つである。指摘の内容はほぼ同じ。県民の多くは自費でパソコンを購入し、自分で学んでいる。県議だけがなぜ県から支給を受けるのか。「県政をリードしていく者として、率先して自分でパソコンを購入し、政策立案に役立てていくのが筋ではないか」との意見だった
▼何らかの事業を推進するに当たっては、当然反対もあれば賛成もある。長期的な視点にたって、それが結果的に県民の暮らしや福祉の向上につながるものであれば、反対の声があっても事業を推進していかねばならないときもある
▼ただし税金で事業を行う以上、できるだけ多くの県民の理解を得る必要はあるだろう。今回の事業は果たしてどうなのか。「会派ごとのホームページ開設に若干の補助を出すとか、知恵の出しようはあるのではないか」。そんな意見もあった
▼市民の声に真摯(しんし)に耳を傾ける。政治や行政に対する信頼感はそうしたところから生まれる。


Webメニュー選択画像