◇月の後半は台風が3個続けて接近または上陸する

 上旬は太平洋高気圧が本州付近へ張り出し、晴れて気温の高い日が続きました。9日に台風第6号が日本の東を北上した後、大陸から移動性高気圧が本州上へ進んできて一時的に冷たい空気におおわれ、気温が低くなりました。月の後半になると日本付近で高気圧が東西に分かれ、本州付近は上層の気圧の谷場となりました。このため、曇りや雨のぐずついた天気が多くなり、気温は平年並みになりました。この結果、月平均気温は25.6℃と平年より0.7℃高くなりました。また、月の後半は日照時間が平年より少なくなったことから、月の日照時間は173.1時間(平年比100%)と平年並みになりました。一方、月の前半はほとんど雨が降りませんでしたが、月の後半は上層の寒気や台風の影響で大雨となる日があり、月の降水量は348.0mm(平年比239%)と平年よりかなり多くなりました。

8月の気象観測値
観測要素 観測値 平年値
月平均気温(℃) 25.6 24.9
月降水量(mm) 348.0 145.6
月日照時間(時間) 173.1 172.7
旬平均気温(℃)
順位 観測値 平年値
上旬 27.1 25.2
中旬 25.0 24.9
下旬 24.9 24.7
旬日照時間(時間)
順位 観測値 平年値
上旬 75.5 60.6
中旬 47.6 54.3
下旬 50.0 57.9

 ●8月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移

2016年8月の日立市役所における日平均気温の推移 2016年8月のつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移

 ●8月の日立市役所における日最高気温と日照時間の推移

2016年8月の日立市役所における日最高気温の推移 2016年8月の日立市役所における日照時間の推移

 今年の8月は上旬と月の後半とで天気が大きく変わりました。上旬は太平洋高気圧におおわれて晴れる日が続いたのに対して、月の後半は上層の気圧の谷場に入り、南から湿った空気が流れ込んで雨が降りやすくなりました。特に、3週続けて台風が関東地方に接近または上陸したことと、上層の寒気により大雨となったことから月降水量が348.0mmとなり、8月の降水量としては1989年8月の降水量391.0mmに次いで観測開始以来2番目に多い記録となりました。

 また、天気がぐずついたことから、月の後半は上旬に比べて気温が低くなりました。このため、真夏日(最高気温30℃以上の日)の日数も10日と平年を下回り、過去5年間では最も少なくなりました。しかし、南からの湿った空気に伴って暖かい空気が入りやすくなり、気温は下がりにくくなりました。この結果、極端に気温が上がる日は少なかったものの、平均気温は2014年、2015年よりも高くなり、夏日(最高気温25℃以上の日)の日数も31日と、過去5年間では2012年と並んで最も多くなりました。

  ●8月の降水量の記録と過去5年間の月平均気温と真夏日及び夏日の日数
8月降水量(mm)
順位 降水量
1 1989 391.0
2 2016 348.0
3 1988 316.0
4 1977 304.2
5 1986 286.0
平年値 145.6
平均気温(℃)
平均気温
2012年 26.3
2013年 25.8
2014年 24.9
2015年 25.0
2016年 25.6
平年値 24.9
真夏日の日数
6月 7月 8月 9月 10月 年合計
2012年 0 11 17 1 1 30
2013年 0 7 14 1 1 23
2014年 0 7  15 0 0  22
2015年 0 12 12 1 0 25
2016年 1 1 10 ** ** 12
平年値 1.0 7.1 11.2 3.4 0.1 22.8
夏日の日数
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 年合計
2012年 0 0 3 22 31 23 3 82
2013年 0 0 4 19 30 18 5 76
2014年 0 5 7 23 26 8 3 72
2015年 1 2 8 24 24 11 2 72
2016年 0 4 8 25 31 ** ** 68
平年値 0.6 2.7 7.5 19.3 23.6 14.5 2.4 76.5

 ※順位は降水量の多い方からで、1953年〜2016年の統計で、

 ※真夏日及び夏日の日数の2016年の年合計は、8月31日までの値。


◇8月の日立市内の気温と降水量

 8月の日立市内の気温の観測結果を比較すると、平均気温は引き続き日立市役所が最も高くなりました。次いで、最も北に位置する十王交流センターが市役所とほぼ同じ気温でした。一方、山間部にある西部支所と本山、標高の高い諏訪広場は気温の低い方になっています。市内7地点の平均気温は24.2℃で、7月より2.0℃高くなりました。また、水戸の月平均気温は25.9℃と日立市の平均よりも1.7℃高く、7月に引き続いて水戸の気温は日立市内平均よりも高くなっています。

 一方、月の降水量の市内平均は371.5mmで、7月の平均降水量44.2mmよりも330mm近く多くなりました。観測地点の間の差は7月とほぼ同じで、最も降水量の多かった本山の464.5mmに対して、最も少なかった十王交流センターは283..5mmと1.4倍の差でした。また、市内7地点の平均降水量371.5mmに対して水戸の月降水量は394.5mmと、ほとんど変わりませんでした。

 ●8月の日立市内と水戸の気温、降水量の観測結果

8月の気温(℃)の記録
観測地点 平均
気温
最高気温 最低気温
気温 日時 気温 日時
日立市役所 25.6 36.2 09 14:54 19.9 14 01:55
十王交流センター 25.5 36.7 09 15:11 19.3 14 04:53
北部消防署 24.1 34.9 09 15:01 18.5 14 03:08
本山(中学校跡) 22.3 31.6 09 14:48 15.3 14 01:48
西部支所 23.5 33.9 09 14:44 15.2 14 05:02
諏訪広場 23.3 34.1 09 14:37 16.1 14 03:56
南部支所 25.1 36.7 09 15:07 20.0 28 00:58
上記7地点の平均 24.2 -

-

-

-

日立会瀬 25.9 36.5 09 14:42 19.9 31 04:46
水戸(金町) 26.3 36.9 09 14:08 19.7 14 04:34
8月の降水量(mm)の記録
観測地点 月降水量 日最大降水量 1時間最大降水量
降水量 降水量 日時
日立市役所 348.0 130.0 23 56.0 23 11:59
十王交流センター 283.5 64.0 17 32.5 17 01:57
北部消防署 296.5 58.5 17 33.0 17 01:56
本山(中学校跡) 464.5 88.5 17 43.0 17 02:06
西部支所 415.5 97.5 17 50.5 17 02:09
諏訪広場 369.5 132.0 23 68.0 23 11:46
南部支所 423.0 228.5 23 53.0 23 19:34
上記7地点の平均 371.5 -

-

- -
日立会瀬 368.5 142.0 23 48.0 23 11:54
水戸(金町) 394.5 153.5 23 56.5 17 01:15

 ※日立会瀬と水戸(金町)は気象庁の観測地点。


◇上層の寒気による雷を伴った局地的大雨(23日)

 23日、日本海へ寒気を伴った上層の気圧の谷が進んできました。この気圧の谷は南北に立っており、一時的に関東地方まで寒気が南下しました。つくばにおける高層観測の結果を見ると、高さ5500m付近(500hPa面)の気温は22日21時の-3.5℃から23日21時には-6.1℃まで下がりました。また、日本の東に中心を持つ高気圧の西の縁を回り、本州付近には南から湿った空気が流れ込んでいたことから、23日の未明から気圧の谷の南東側に当たる関東地方の沿岸から東海道沖で雨雲が発達しました。10時頃から、この雨雲の一部が茨城県を北北東へ進み始めました。雨雲は水戸市を通過することから急速に発達し、日立市を通過して12時過ぎには福島県沖へ抜けました。

 日立市内では、雨雲の中心が通過した市役所より南の地域で、昼前に雷を伴って1時間降水量50mmを超える激しい雨が降りました。日立市役所では、10時から13時までの降水量が70.5mmになり、11時59分までの1時間に56.0mmの降水量を記録しました。これは、日立市役所観測開始以来第6位の記録です。一方、市の北部では市役所の半分以下の降水量で、最も北に位置する十王交流センターでは9時から13時の降水量は22.0mmでした。

 午後に入ると上層に寒気が入ってきて、茨城県中部から栃木県、群馬県にかけて雨雲が発生してきました。雨雲は東へ進んでいきましたが、茨城県中部の雨雲は同じ場所で発生を繰り返したため、南北の位置はほとんど変わりませんでした。栃木県から群馬県の雨雲はしだいに南下して茨県中の雨雲と一体化して東へ進んだため、茨城県中部では繰り返し激しい雨が降りました。日立市内では、南部の地域にこの雨雲の北端がかかり、昼過ぎから夜の初めにかけて、雷を伴って激しい雨が降りました。南部支所では、13時から20時までの降水量が171.0mmに達し、19時34分までの1時間には53.0mmの非常に激しい雨が降りました。22時過ぎには雨雲は東海上へ進み、晴れてきました。

 午後の雨は帯状に発達し雷雲によるものだったため、日立市内でも地域により降水量に大きな差が出ました。市の北部に位置する十王交流センターの23日の降水量は40.0mm、1時間最大降水量は16.0mmでした。一方、市の南部に位置する南部支所では23日の降水量が228.5mm、1時間最大降水量は53.0mmでした。なお、南部支所の23日の降水量228.5mmは南部支所観測開始以来第2位の多い記録でした。

 ●8月23日の降水量(mm)

観測地点
降水量

最大1時間降水量

最大10分間降水量

降水量
日時

降水量
日時
日立市役所 130.0 56.0 23日11時59分 13.5 23日11時55分
十王交流センター 40.0 16.0 23日11時54分 5.5 23日11時05分
北部消防署 58.0 26.0 23日12時15分 7.0 23日12時05分
本山 78.0 26.5 23日12時12分 9.0 23日11時41分
西部出張所 49.5 36.5 23日11時39分 12.5 23日11時22分
諏訪広場 132.0 68.0 23日11時46分 16.0 23日11時23分
南部支所 228.5 53.0 23日19時34分 15.5 23日19時27分
日立会瀬 142.0 48.0 23日11時54分 15.5 23日11時52分
水戸(金町) 153.5 39.5 23日19時42分 14.0 23日19時01分

 ※降水量は、23日01時〜24時までの合計。

 ●日立市役所における1時間降水量(mm)の記録

順位 降水量 年月日 時 刻 備    考
1 88.0 1999/10/27 21時14分 雷雨(発達した低気圧)
2 77.0 2008/08/14 17時34分 雷雨(暖湿流)
3 73.0 1980/09/03 19時10分 雷雨
4 66.7 1962/08/24 16時06分 雷雨(寒冷前線)
5 60.7 1962/07/14 01時45分 雷雨(寒冷前線)
6 56.0 2016/08/23 11時59分 雷雨(上層寒気)

 ※1953年〜2016年8月23日の統計で、順位は降水量の多い方から

 ●南部支所における日降水量(mm)の記録

順位 降水量 年月日 備    考
1 230.0 1986/08/04 台風第10号から変わった低気圧(茨城県通過)
2 228.5 2016/08/23 雷雨(上層寒気)
3 195.5 1991/09/19 台風第18号(銚子沖通過)
4 170.0 1999/10/27 発達した南岸低気圧による雷雨(992hPa)
5 166.0 1996/09/22 台風第17号(銚子沖通過)

 ※1983年1月〜2016年8月23日の統計で、順位は降水量の多い方から

 ●8月23日の降水量の推移(十王交流センターと南部支所)

 ※日立市内の10分間降水量(上のグラフの元データ):160823pr.xls(エクセルファイル127KB)

 ●8月23日10時〜12時の降水レーダー図

 千葉県から北上してきた雨雲が茨城県内に入って発達し、11時から12時にかけて日立市を通過して福島県沖へ進んだ。

 ●8月23日15時〜19時の降水レーダー図

 13時前から茨城県中部で雨雲が発達し、東西方向に帯状に広がる。その後、栃木県から南下してきた雨雲と一体化し、ゆっくりと南下していった。

 ●参考:8月23日21時の地上天気図と500hPa面高層天気図


◇月の後半、3個の台風が関東地方に影響する(17日、22日、30日)

 初めに述べたように、今年の8月は日本付近で高気圧が東西に分かれ、本州付近から日本の南にかけて大きな気圧の谷場となりました。日本の南の気圧の谷場では台風が次々と発生し、東西に分かれた高気圧の間に沿って北上してきて、北日本から東日本へ影響を与えました。特に、月の後半は東の高気圧が北へ勢力を伸ばし、この高気圧の西の縁を回って南から湿った空気が本州付近へ流れ込みました。このため、台風に伴う湿った空気と合流して、地域によっては大雨となった所がありました。

 関東地方へ影響した台風は下表の3個で、台風第7号と第9号はマリアナ諸島で発生した後、ほぼ真っ直ぐに北上してきました。そして、台風第7号は関東のすぐ東を、台風第9号は関東地方南部に上陸した後、ともに北日本へ進みました。台風第10号は八丈島の東で発生した後南西へ進み、沖縄の南東海上で反転して再び八丈島の東へ戻ってきました。その後、向きを北北西へ変えて関東の東をを北上し、東北地方へ上陸しました。

 台風第7号と第9号はあまり発達せず、並みの勢力で北上してきました。このため、日立市では降水量は多くなりませんでした。一方、台風第10号は日本の南で一時非常に強い勢力まで発達しました。しかし、関東の東へ進んできたときには勢力がやや衰えたことと、関東地方からは離れて進んだため日立市には台風の雨雲がかからず、降水量は多くなりませんでした。また、風も台風第7号と第10号に関しては、あまり強く吹きませんでした。台風第9号は関東地方南部に上陸した後、茨城県西部を北上したことから吹き返しの南西の風が一時的にやや強く吹きました。しかし、風の強まっている時間が短かったことと平均風速が15m/sを超えなかったことから、大きな被害はありませんでした。

 ●関東地方に影響した台風の概況

台風名 月日 日立市役所における観測記録 台風の経路
総降水
量(mm)
最大平均
風速(m/s)
最大瞬間
風速(m/s)
最低
気圧(hPa)
台風第7号 8月17日 74.5 10.5 18.5 985.6 小笠原の東から北北西へ進んだ後、関東の東から三陸沿岸を北上し、17日に北海道へ上陸
台風第9号 8月22日 36.5 11.6 27.2 989.5 東経140度線に沿って日本の南をまっすぐ北上し、22日昼過ぎに千葉県館山市に上陸。東北地方から北海道へ進む。
台風第10号 8月30日 39.0 10.3 20.0 976.3 日本の南を北東へ進んだ後、関東の南東で向きを北北西へ変え、関東の東を北上し岩手県へ上陸。日本海へ進む。

 ※台風名のリンク先に、日立市内の観測記録を掲載しました。

 ●台風第7号の経路図と8月17日03時の地上天気図

 ●台風第9号の経路図と8月22日15時の地上天気図

 ●台風第10号の経路図と8月30日09時の地上天気図


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作成日 2016/09/14
名前 日立市天気相談所