◇中旬まで暑い日が続く

 上旬から中旬にかけて太平洋高気圧の勢力が強く、気温の高い日が続きました。特に、中旬は日本の西側で偏西風が南に蛇行し、その影響で日本の東で気圧の尾根が強まり太平洋高気圧の勢力が非常に強まるとともに北日本から東日本へ張り出しました。このため、北日本から東日本では気温が平年よりも3から5℃高くなりました。また、東日本では秋雨前線の影響を受けることがなく、晴れの天気が続いて降水量が少なくなりました。下旬に入ると、中国大陸に停滞していた気圧の谷が東へ進み始め、太平洋高気圧の勢力は南へ後退していきました。このため、低気圧や南からの湿った空気の影響を受けるようになり、曇りや雨の日が多くなりました。また、西から寒気が入り気温は平年並みまで下がりました。しかし、下旬の後半には台風第17号が北上してきて南から暖気が入るようになり、気温は再び平年を上回りました。

 この結果、月平均気温は24.0℃と平年より2.2℃高くなりました。これは、9月の平均気温としては1999年9月の24.6℃に次いで、日立市役所観測開始以来2番目に高い記録です。また、日照時間は上旬から中旬にかけて晴れる日が続いたことから186.5時間と平年の139%になりました。一方、月の降水量は109.5mmと少なくなり、平年の61%でした。

9月の気象観測値
観測要素 観測値 平年値
月平均気温(℃) 24.0 21.8
月降水量(mm) 109.5 178.8
月日照時間(時間) 186.5 134.3
旬平均気温(℃)
観測値 平年値
上旬 25.3 23.6
中旬 25.6 21.9
下旬 21.1 19.8
旬日照時間(時間)
観測値 平年値
上旬 82.3 49.9
中旬 74.5 42.8
下旬 29.7 41.6

 ●9月の日立市役所における日平均気温と日照時間の推移

2012年9月の日立市役所における日平均気温の推移 2012年9月の日立市役所における日照時間の推移

 ●9月の気温(℃)と日照時間の記録

平均気温
順位 気温
1 1999 24.6
2 2012 24.0
3 1961 23.4
3 2000 23.4
5 1954 23.3
平年値 21.8
最高気温の平均
順位 気温
1 1999 28.9
2 2000 27.6
3 1994 27.3
4 2012 27.3
5 2005 27.2
平年値 25.5
最低気温の平均
順位 気温
1 2012 21.5
2 1999 21.1
3 1954 20.8
4 1961 20.4
5 2007 20.3
5 1975 20.3
平年値 18.9
日照時間(時間)
順位 気温
1 1975 204.1
2 2011 191.6
3 2012 186.5
4 2003 180.0
5 2010 177.6
平年値 134.3

 ※順位は数値の高い方からで、1953年から2012年の統計

 日立市役所における日平均気温の推移を見ると、下のグラフに示すように1日から19日にかけては26℃前後のほとんど変わらない気温で推移しました。しかし、19日になると中国大陸に停滞していた上層の気圧の谷がゆっくりと東へ進み始めました。これに伴って、日本の東の気圧の尾根はしだいに不明瞭になり、太平洋高気圧の勢力が南へ後退していくとともに西から寒気が入ってきました。日立市役所の日平均気温も、19日の25.2℃から21日は22.2℃、22日は22.0℃と、ようやく平年並みの気温に近づいていきました。

 旬別の平均気温を見ると、上旬が25.3℃、中旬が25.6℃、下旬が21.1℃と、上旬から中旬にかけては気温がほとんど下がらなかったことが分かります。そのため、中旬の平均気温25.6℃は、これまでで最も気温の高かった1999年の9月を抜いて、観測開始以来第1位の記録となりました。ただし、1999年の9月は真夏日が10日あったのに対して、今年の9月は最高気温が上がらず真夏日は1日しかありませんでした。一方で、太平洋高気圧が東から張り出して南寄りの風の入ることが多かったため、最低気温はあまり下がりませんでした。このため、最低気温の月平均は21.5℃と、1999年9月の21.1℃を抜いて観測開始以来最も高い気温となりました。

 また、過去5年間の夏日の日数を見ると今年の9月の夏日は23日あり、残暑の厳しかった2010年の19日を上回っています。このように、今年の9月は最高気温が高くならなかった割に最低気温が高く、上旬から中旬にかけて気温の変動が少なくて平均気温の高い日が続きました。

 ●9月上旬と中旬の気温(℃)の記録及び過去5年間の9月の真夏日と夏日の日数

上旬平均気温
順位 気温
1 2010 26.4
2 1961 26.3
3 1956 25.6
4 1999 25.5
5 2012 25.3
5 1994 25.3
平年値 21.9
中旬平均気温
順位 気温
1 2012 25.6
2 1999 25.4
3 2011 24.9
4 1954 24.8
5 2000 24.4
5 1990 24.4
平年値 21.9
真夏日と夏日の日数
真夏日 夏日
2008 0 21
2009 0 12
2010 10 19
2011 3 20
2012 1 23
平年値 3.8 15.7

 ※順位は数値の高い方からで、1953年から2012年の統計

 ●9月の日最高気温(日立市役所)と850hPa気温(つくば)の推移

2012年9月の日立市役所における日最高気温の推移 2012年9月のつくばにおける850hPa気温の推移(09時)

 ※上のグラフの元データ:1209data.xls(エクセル2000ファイル、252KB)

 ●参考:9月16日と22日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図

2012年9月16日09時の地上天気図 2012年9月16日09時の500hPa面高層天気図
2012年9月22日09時の地上天気図 2012年9月22日09時の500hPa面高層天気図

 ●参考:9月16日から23日にかけての09時の500hPa面高層天気図

 17日にかけて、本州付近は5880mの等高度線で囲まれた上層の高気圧におおわれていました。しかし、18日以降は高度が低くなる(高気圧の勢力が弱まる)とともに5880mの等高度線は南へ下がっていきました。そして、23日には日本付近に5880mの等高度線で囲まれた領域はなくなりました。

2012年9月16日09時の500hPa面高層天気図 2012年9月17日09時の500hPa面高層天気図 2012年9月18日09時の500hPa面高層天気図 2012年9月19日09時の500hPa面高層天気図
2012年9月20日09時の500hPa面高層天気図 2012年9月21日09時の500hPa面高層天気図 2012年9月22日09時の500hPa面高層天気図 2012年9月23日09時の500hPa面高層天気図

◇台風第17号が本州を縦断

30日、日本の南海上を北東へ進んできた台風第17号は、19時頃に愛知県東部に上陸しました。その後、関東地方西部から東北地方を縦断して1日の朝には三陸沖へ進みました。台風の北側に発達した雨雲が広がっていたことから、東海から近畿地方にかけての太平洋側で総降水量が100mmを超える大雨となりました。特に、紀伊半島では南からの湿った空気が山地に吹き付ける形となり、総降水量が200mmを超えた所がありました。また、日本の東の高気圧との間で気圧傾度が大きくなり、東海から関東地方南部で平均風速20m/sを超える非常に強い風が吹きました。日最大風速は、愛知県常滑市セントレアで25.3m/s、東京都 三宅村坪田で25.1m/s、東京都江戸川臨海で25.0m/sを観測しました。日最大瞬間風速では、東京都八王子で38.1m/s、静岡県御前崎36.1m/s、セントレアで34.5m/sを観測するなど風速が30m/sを超える所がありました。

 台風は中心の北側に雨雲が広がり、東側は北上するにつれて雲が少なくなっていきました。さらに、東海上から張り出す高気圧におおわれたため、30日の日立市は昼過ぎにかけて晴れました。その後、南から湿った空気が入り始めて雲が広がり、18時から24時にかけて雨が降りました。台風は本州に近づくにつれて西側から乾燥した空気が入り始め、上陸時には形が崩れていました。関東地方の通過時にも中心の北側に広がる雨雲は残っていましたが、それ以外の方向では雨雲がほとんど消えていました。このため、日立市内における降水量は6.0〜21.0mmと少なくなりました。今年の6月19日に台風第4号がほとんど同じ経路を進みましたが、そのときと比べると約1/10の降水量でした。

 関東地方南部では、昼頃から南東の風が強く吹き出しました。しかし、日立市では風はあまり強まらず、夕方まで平均風速で3〜4m/sの南東の風が吹き続けました。台風が東海地方に上陸した19時過ぎころから南東から南の風がやや強く吹き始めましたが、平均風速の最大でも7m/s以下でした。台風が東北地方へ進んだ24時前から吹き返しの南西の風が強まり、00時39分には最大瞬間風速22.7m/sの南西の風、00時46分には最大平均風速12.1m/sの南西の風を記録しました。台風の速度が60km/hと非常に速かったため、2時過ぎには風は弱まっていきました。なお、日立市役所における気圧の推移グラフをみると、1日00時18分に最低気圧995.5hPaを記録しており、台風はこの時間に最も日立市の近くを通過したものと思われます。

 ●9月30日〜10月1日の市内の降水量(mm)

観測地点
総降水量

最大1時間降水量

降水量
日時
日立市役所 7.0 4.5 30日22時22分
北部消防署 9.5 7.5 30日22時00分
本山 21.0 15.5 30日22時00分
西部出張所 11.5 4.0 30日23時00分
諏訪広場 6.0 4.0 30日22時00分
南部支所 6.5 4.0 30日22時00分
十王交流センター 8.5 5.5 30日22時00分
日立会瀬 8.0 4.5 30日22時21分
水戸(金町) 7.0 3.0 30日21時21分

※総降水量は30日18時から1日01時までの合計

 ●日立市役所における気象観測記録(9月30日〜10月01日)

最大風速(m/s) 最大瞬間風速(m/s) 海面気圧(hPa)
風速 同風向 同時刻 風速 同風向 同時刻 最低気圧 同時刻
09月30日 7.1 南南東 21:01 19.6 南南西 22:48 996.1 23:59
10月01日 12.1 南西 00:46 22.7 南西 00:39 995.5 00:18

 ●9月30日〜10月1日の日立市役所における風向、風速及び気圧の推移

2012年9月30日〜10月1日の日立市役所における風速の推移 2012年9月30日〜10月1日の日立市役所における風向の推移

 ●9月30日〜10月1日の日立市役所における気圧の推移と1日01時のアメダスによる風の分布

2012年9月30日〜10月1日の日立市役所における海面気圧の推移 2012年10月1日01時のアメダスによる風の分布

 ※上のグラフの元データ:120930da.xls(エクセル2000ファイル、576KB)

 ●参考:9月30日16時00分と22時00分の降水レーダー図

2012年9月30日16時00分の降水レーダー図 2012年9月30日22時00分の降水レーダー図

 ●参考:台風第17号の経路図

2012年台風第17号の経路図 2012年台風第17号の経路図(拡大図)

 ●参考:9月30日09時の地上天気図と気象衛星可視画像

2012年9月30日09時の地上天気図 2012年9月30日09時の気象衛星可視画像

 ●参考:9月30日21時の地上天気図と気象衛星赤外画像

2012年9月30日21時の地上天気図 2012年9月30日21時の気象衛星赤外画像

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作成日:2012/10/11
訂補日:2013/09/26
訂補日:2016/10/12
名前 日立市天気相談所