◇気温の変化が大きかった8月

 太平洋高気圧の勢力が安定せず、暑い時期と涼しい時期がはっきりと分かれました。月の初めは、オホーツク海高気圧から吹き出す冷たい北東の風が入り、気温が低くなりました。上旬の後半から中旬にかけては、太平洋高気圧におおわれるとともに南から暖かい空気が入り、晴れて暑い日が続きました。しかし、19日に前線が本州上を南下した後は下層へ寒気が入り気温が低くなりました。その後、前線が日本海側まで北上していったん気温が上がりましたが、月末には台風第12号が北上してきて北東の風が吹くようになり気温は下がりました。このため、上旬の平均気温は25.4℃とほぼ平年並みに、中旬の平均気温は27.2℃と平年より3.3℃高く、下旬の気温は23.5℃と平年より1.2℃低くなりました。この結果、月平均気温は25.3℃とほぼ平年並みになりました。

 一方、日照時間の推移をみると、上旬から中旬にかけては高気圧におおわれて晴れる日が続き日照時間は平年を上回りました。しかし、下旬は前線や台風からの湿った空気の影響で曇りや雨の日が多くなり、日照時間は平年を下回りました。そのため、月の日照時間は186.2時間とほぼ平年並みとなりました。また、降水量をみると18日までは晴れて降水量の少ない日が続きました。19日以降は前線の影響で雨の降る日が多くなりましたが大雨になることはなく、月の降水量は83.0mmと平年の57%しかありませんでした。

8月の気象観測値
観測要素 観測値 平年値
月平均気温(℃) 25.3 24.9
月降水量(mm) 83.0 145.6
月日照時間(時間) 186.2 172.7
旬平均気温(℃)
観測値 平年値
上旬 25.4 25.2
中旬 27.2 24.9
下旬 23.5 24.7
旬日照時間(時間)
観測値 平年値
上旬 67.6 60.6
中旬 75.7 54.3
下旬 42.9 57.9

 今年の夏(6月から8月)は、下図の日平均気温の推移でみるとおり、暑い時と涼しい時が繰り返し現れて気温の変化が大きくなりました。6月下旬から7月中旬にかけては太平洋高気圧が勢力を強めて本州付近をおおい、晴れて気温の高い日が続きました。7月下旬に入ると、一転してオホーツク海高気圧におおわれ8月の初めまで涼しい日が続きました。その後、8月の中旬は太平洋高気圧が日本の南で西へ張り出し、南から暖かい空気が入って暑くなりました。8月中旬の平均気温は27.2℃と日立市役所観測開始以来3番目に高い記録となりました。しかし、下旬になると前線が南下してきて寒気が入り涼しくなりました。

 真夏日(日最高気温の30℃以上の日)の日数をみると、6月と7月は平年よりも多くなりましたが、8月は10日と平年よりも約1日少なくなりました。8月の真夏日になった日は7日と10日から18日にかけてで、中旬に真夏日となる日が続きました。また、熱帯夜(日最低気温25℃以上の日)の日数も7月が1日、8月が5日と平年よりも多くなりました。熱帯夜になった日は11日、14日と16日から18日にかけてで、やはり中旬に集中しました。

 昨年(2010年)は6月中旬から気温が平年を上回るようになり、9月中旬まで平年より気温の高い日が続きました。特に、下図の500hPa高度の推移でみるように、8月下旬になっても太平洋高気圧の勢力が強く、気温はほとんど下がりませんでした。それに対して、今年の場合は太平洋高気圧の張り出す中心が日本の南にあり、時々偏西風帯が本州付近まで南下してきて寒気が入ったため、暑い期間と涼しい期間が交互に現れ、気温の変化が大きくなりました。

 ●8月中旬の平均気温(℃)の記録と夏の真夏日及び熱帯夜の日数(昨年の夏との比較)

中旬平均気温
順位 気温
1 1972 28.1
2 1984 27.3
3 1973 27.2
3 1964 27.2
3 2011 27.2
平年値 24.9
真夏日の日数
2011年 2010年 平年値
6月 4 1 0.8
7月 10 12 6.5
8月 10 17 11.4
24 30 18.8
熱帯夜の日数
2011年 2010年 平年値
6月 0 0 0.0
7月 1 0 0.3
8月 5 11 1.9
6 11 2.2

※順位は数値の高い方からで、1953年から2011年の統計

 ●6月から8月の日立市役所における日平均気温の推移(2011年と2010年の比較)

夏の日立市役所における日平均気温の推移(2011年と2010年の比較)

 ●8月の日立市役所における日最高気温とつくばにおける500hPa高度(09時)の推移

8月の日立市役所における日最高気温の推移 8月のとつくばにおける500hPa高度(09時)の推移

 ※上のグラフの元データ:1108data.xls(エクセル2000ファイル、111KB)

 今年の8月と昨年の8月の天気図を比べてみると、太平洋高気圧の張り出し方と偏西風の流れに大きな違いのあることが分かります。今年の8月14日の天気図をみると、5880mの等高度線で示される太平洋高気圧が日本の南で東西に広がり、その一部が本州付近をおおっています。そして、-6℃の等温線で表される暖気が中国大陸から日本付近へ広がっています。地上天気図では沿海州に低気圧があり、日本の南の高気圧からこの低気圧に向かって暖気が入って気温が上がり、東北地方以南では最高気温が30℃を超えました。

 しかし、21日の500hPa面高層天気図をみると、5880mの等高度線は日本付近で東西に分かれ偏西風が南に蛇行して北緯40度線付近まで南下しています。これに対応して地上天気図では前線が本州南岸まで南下し、地表付近に北から冷たい空気が入って全国的に最高気温は30℃を下回りました。特に、東北地方南部から関東地方にかけては冷た以北との風の影響で曇りや雨の天気となり、最高気温は25℃まで上がりませんでした。

 一方、2010年8月28日の500hPa面高層天気図をみると、5880mの等高度線で示される太平洋高気圧は日本付近をおおい、さらに5940mの等高度線で示される高気圧の中心が関東地方の真上に位置してています。このため、下降流による昇温が起きて関東地方以西では最高気温が35℃を超えた所が多くなりました。

 ●参考:8月14日と21日の09時の地上天気図と500hPa面高層天気図

8月14日09時の地上天気図 8月14日09時の500hPa面高層天気図
8月21日09時の地上天気図 8月21日09時の500hPa面高層天気図

 ●参考:2010年8月28日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図

2010年8月28日09時の地上天気図

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作成日 2011/09/15
名前 日立市天気相談所