◇暖かかった師走

 上旬は、移動性高気圧と低気圧が数日の周期で交互の通過しました。11月の下旬から引き続いて暖かい空気におおわれ、晴れて暖かい日が多くなりました。中旬は低気圧が短い周期で通過し、曇りや雨の日が多くなりました。下旬に入ると、日本付近で偏西風の蛇行が大きくなり、強い寒気が入るようになりました。このため、下旬の後半からは冬型の気圧配置が続くようになり、晴れて乾燥した天気になるとともに気温も低くなりました。月平均気温は、下旬の前半まで暖かい日が多かったため10.9℃と平年より1.4℃高くなりました。また、3日と22日に低気圧が発達しながら本州付近を進んで一時的に強い雨が降ったため、月降水量は130.5mmと平年の4倍を超えてかなり多くなりました。一方、日照時間は184.5時間と平年並みでした。

12月の気象観測値
観測要素 観測値 平年値
月平均気温(℃) 8.5 7.2
月降水量(mm) 130.5 31.3
月日照時間(時間) 184.5 189.9
気温の旬変化(℃)
平均気温 旬平年値
上旬 10.9 8.5
中旬 7.9 7.1
下旬 6.8 6.1

 気温の推移をみると、地上の気温は11月下旬から平年を上回るようになりました。12月も下層へ南から暖かい空気が入り、下旬の初めにかけて気温の高い状態が続きました。特に、上旬は移動性高気圧におおわれて晴れる日が多くなり、旬平均気温は10.9℃と平年より1.4℃高くなりました。中旬になると天気のぐずつく日が多く、また中頃に一時的に強い寒気が入ったため気温は下がりましたが、それでも旬平均気温は平年を上回りました。

 しかし、22日に低気圧が本州南岸を発達しながら北東へ進んだ後、日本付近で偏西風が南北に大きく蛇行して北から寒気が入ってくるようになりました。さらに、25日以降は偏西風の流れから分離したブロッキング高気圧がアリューシャン近海からシベリアへゆっくりと西進し、これに東進を遮られる形となって日本付近に寒気を伴った上層の低気圧が停滞するようになりました。このため、日本付近では強い冬型の気圧配置が続き、地上の気温も下がっていきました。日立市役所における気圧の推移をみると、気圧系の変化がはっきり表れています。1日から21日までは、低気圧と高気圧が交互に通り気圧は上下の変動を繰り返しました。22日以降は日本の東で低気圧が発達して西高東低の冬型の気圧配置が続くようになり、気圧はそれまでよりも平均して10hPaほど低い状態で推移するようになりました。

 月を通すと、最初に述べたように平均気温は平年よりも1.3℃高くなりました。また、日最低気温が0℃未満となった冬日も25日の1日しかなく、1958年の0日に次いで少なくて下旬の後半を除けば暖かな師走でした。

 ●12月の冬日の日数

(1) 日数の少ない方

順位

日数
1 1958 0
2 2010、2007、1989、1979、1972、1957 1
3 2006、2003、1999、1998、1982、1968、1953 2

(2) 日数の多い方

順位 日数
1 2005 16
2 1985、1956 15
3 1983 13

 ※1953年1月から2010年12月までの統計

 ●12月の日立市役所における日平均気温と日平均海面気圧の推移

12月の日立市役所における日平均気温の推移 12月の日立市役所における日平均海面気圧の推移

 ●12月のつくばにおける850hPaと500hPa面の気温(09時)の推移

12月のつくばにおける850hPa面の気温(09時)の推移 12月のつくばにおける500hPa面の気温(09時)の推移

 ※上記のグラフの元データ:エクセル2000ファイル(96KB)

 20日の500hPa面高層天気図をみると、シベリア付近に上層の低気圧があって日本付近は西から東への流れとなっています。また、-30℃の等温線は北海道北部にあります。気象衛星可視画像をみると、北海道に気圧の谷に伴う雲が広がっている他は、本州から日本海、黄海、東シナ海にかけて目立った雲はなく、晴れの領域が広がっています。

 一方、31日の高層天気図をみると、シベリア東部にはアリューシャン近海から西進してきた上層の高気圧があって偏西風の流れを遮る形となっています。このため、シベリアから南下してきた寒気を伴った上層の低気圧(寒冷渦)が、日本海から北日本に停滞するようになりました。この寒冷渦は、高度約5200mで中心付近の気温が-42℃以下という非常に強い寒気を持っていました。日本付近にはこの寒冷渦の南側を回る形で西から寒気が入り、-30.℃の等温線は関東地方の南まで南下しました。気象衛星可視画像をみると、日本海には上層の低気圧に対応した収束雲が広がり、さらに黄海から東シナ海そいて本州の南まで寒気による筋状雲が広がっており寒気の影響が強いことを示しています。

 この後、ブロキング高気圧は西へ進んで弱まり偏西風は西から東へ流れるようになって、日立市では平年並みの気温に戻りました。しかし、1月上旬の後半から再びアリューシャン近海でブロッキング高気圧が発達し、寒い日が続くようになりました。

 ●参考:20日と31日の地上天気図(15時)と500hPa面高層天気図(09時)及び気象衛星可視画像(15時)の比較

2010年12月20日15時の地上天気図 2010年12月31日15時の地上天気図
2010年12月20日09時の500hPa面高層天気図 2010年12月31日09時の500hPa面高層天気図
2010年12月20日15時の気象衛星可視画像 2010年12月31日15時の気象衛星可視画像

※500hPa面高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。また、観測地点における上段の数値は、その地点の500hPaの高さにおける気温を、下段の数値は、同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。


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作成日 2011/01/20
名前 日立市天気相談所