茨城県のダイオキシン対策

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ダイオキシン分析装置が完成

井手県議ら公明県議団の要望実る

茨城県のダイオキシン分析室

茨城県のダイオキシン分析室の入り口で、 井手県議(左)、鈴木孝治県議(中)、足立寛作県議(右)
 99年5月6日、「ダイオキシン分析室」の開所式が水戸市石川町の県公害技術センター内で行われました。この分析室によって、ダイオキシン類の環境調査に素早く的確に対応出来るようになり、これまで民間に委託していたダイオキシン濃度の測定を、県が自前で行えるようになりました。
 井手県議ら公明党県議団は、平成10年春より繰り返し自前の分析装置の導入を県知事に要望し、県では、国の補助もつくことになったため、昨年の補正予算で整備を決定しました。総工費は1億8000万円、県が1億1400万円、環境庁と科学技術庁の補助金が6600万円となっています。
 平成11年度は県内34地点の大気や土壌、水質、底質の環境モニタリング調査と、民間の産廃焼却施設8施設の排出実態調査など、計約100検体の分析を予定している。
 また、住民の健康保護や不安解消のために調査が必要な場合にも、分析が行われる予定。今まで、民間への委託では結果を得るまでに3〜6カ月必要でしたが、分析室では約1カ月で結果を得られるという。
 分析室は55平方メートルで、高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計などを備え、国立の研究機関と同等の分析能力を持つ最新式の装置です。都道府県レベルでの自前の分析装置を持つのは、全国で7番目となりました。
ダイオキシン分析室

ダイオキシン分析フローチャート


高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計を
視察する井手県議(左)ら公明議員団

1)前処理

 環境試料(ダイオキシンが含まれている土壌、空気、水など)中のダイオキシンの分析は最終的には高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計によって、種類の特定と種類別の濃度が測定されます。

 しかし、いきなり同分析計で測定出来るわけではなく、その前にこ多大な時間と多くの操作を要す前処理が不可欠です。試料中のダイオキシンを抽出したり、分析の妨害になる物質を除去したり、環境試料は濃度が低いので濃縮したりする処理操作が必要です。

 なお、公害技術センターでは血液中のダイオキシン濃度を測るための前処理は行えません。

2)高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計

 高分解能ガスクロマトグラブ質量分析計:

 環境中に存在するダイオキシンは極微量であり、かつ210もの種類があります。その濃度はピコグラムオーダー(ピコ:1兆分の1)、すなわちPPM(百万分の1)のさらに百万分の1という濃度ですので、超高感度の分析装置が必要です。

 茨城県で導入したガスクロマトグラフ質量分析計はこれに対応できる分解能60,000、感度(信号とノイズとの比:S/N)100以上の性能を持つ装置で、国立研究機関等で用いられているそれと同一能力を有します。日本電子製で、価格は一式約7000万円です。もちろんコプラナーPCBも測定できます。

 分析とは:

 環境試料は多種類の混合物からできています。これら混合物から測定する物質を分離し濃度を決める事を言います。

 ガスクロマトグラフ質量分析計は大きく分けて@ガスクロマトグラフとA質量分析計から構成され、それに自動試料注入装置であるオートサンプラーと有機物(ダイオキシン等)の種類を特定し、濃度を計算するデータ処理装置が付随しています。

 ガスクロマトグラフ:

 ガスクロマトグラフのオーブン(恒温槽)の中には長さ約25〜60メートルのキャピラリーカラム(毛細管)がコイル状に巻いて入っています。キャピラリーカラムの内側には液相が薄く塗布してあり、このキヤビラーカラムの中を加熱によりガス化した前処理済みの試料が通過すると塗布した液相と、試料を構成する他種類の有機物(混合物)との親和性(液相への溶解性)等の違いからカラムの通過時間に遅速が生じ、混合物を分離します。

 質量分析計:

 ガスクロマトグラフで分離された有機物はさらに質量分析計に導入されます。ここでは熱電子線などによって有機物をイオン化してから高い磁場(電磁石のN極とS極の間)の中を通過させると各イオンの持つ重さの違いによって軌跡が曲げられ、まげられる度合いの程度によってさらにイオンが重さごとに分解される。さらに電場を通過することによって高い分解能が得られるようにしてあります。

3)分析体制

 ダイオキシン分析のためには高度な分析技術や知識が必要です。平成10年度には国の研究期間に2名研修に派遣し、人材の養成を行いました。11年度にも更に1名の研修を予定しています。

 専門の技術者1名あたり年間50〜60試料の分析が出来るとされています。当分は3名体制で運用しますので、平成11年度100試料、次年度から200試料程度の分析を行う予定です。

 なお、一試料あたり10万円の費用がかかるとされています。


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