特別養護老人ホームの待機者は解消されるのか?

(誰でも希望すれば特養に入れるのか?)

 Copyright Yoshihiro IDE (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp) 最終更新日:1998/Jan/24
 

一層高くなる特養ホーム入所への壁

 結論からいうと、待機者の解消にはならないと思われます。反対に、特養ホーム入所の壁は一層高くなります。

 茨城県内の特別養護老人ホームの待機者数は約1000名と言われています。

平成8年の特養ホームの入所者数は4776人、11年度の目標値が5780人ですから、今後の整備計画は最大1000名程度でとなります。

つまり、目標が完全に達成しても、現在の待機者を入所させるだけの入所数しかないことになります。

 介護保険制度の基本的考え方は、在宅介護重点主義であり、施設介護者を積極的に家庭に戻すことに大きな力が入れられています。こうした、視点は、次のような全国介護保険担当課長会議資料の一節からも明確に読みとれます。

全国介護保険担当課長会議資料<平成10年1月13日(火)>

○老人保健福祉計画は、従来、特別養護老人ホーム等の整備の目標を設定するために作成されたものとして理解されるきらいがあった。このため、特別養護老人ホームへの入所を真に必要とする者か否かについての吟味が不十分なまま、いわゆる「待機者」の数ばかりが強調され、特別養護老人ホームの需要が適正な水準を超えて肥大化する傾向にあったのではないかと思われる。
○しかしながら、幾つかの地方自治体が実施した調査を通じ、「待機者」として各地方自治体が把握しているものの中には、特別養護老人ホームにおける24時間の専門的な処遇を必ずしも必要としない者や在宅サービスを全く利用していない者も含まれていることが確認されている。
(待機者11,977人:本当に必要とする人数8,701人・72.6%)
○このため、「待機者」の数をそのまま所要定員数として認織することは、正確でないものと考えている。
○したがって、都道府県におかれては、介護サービスの実施主体である市町村に対し、在宅サービスを適切に提供しながら、特別養護老人ホームへの入所を真に必要とする者を的確にとらえるなど、個々の者に係る介護サービスの需要を厳密に把握するよう、指導されたい。厚生省としても、単に「待機者」の数が多いことのみをもって、施設サービスと在宅サービスとの不均衡を放置したまま、特別養護老人ホームを整備する必要性を認めるべきではない、と考えている。
○また、在宅サービスの提供が十分でないために、特別養護老人ホームに入所せざるを得ない場合や、要介護状態が改善したにもかかわらず、特別養護老人ホームを退所するに至らない場合も、少なくないものと考えられる。このような状況を改善するためにも、訪問介護(ホームヘルプサービス)一日帰り介護(ディサービス)等の在宅サービスの基盤整備を推進するとともに、介護利用型経費老人ホームや高齢者世話付住宅(シルバーハウジング)などにおいて在宅サービスを利用しながら生活する環境を整備することが重要である。
○介護保険制度においては、特別養護老人ホームに入所している者が要介護認定を経て特別養護老人ホームにおける24時間の専門的な処遇を必ずしも必要としなくなった場合には、適切な介護サービース計画の作成による居宅復帰を始めとする「在宅生活(介護利用型軽費老人ホーム(ケアハウス)等における生活を含む。)」の検討が求められることになる。介護保険法施行時において特別養護老人ホームに入所している者であって、要介護状態に該当しない者については、要介護被保険者とみなす経過措置を適用することとしているが、今から、在宅から施設へ、あるいは、施設から在宅への円滑な移行が図られるよう、入退所計画の作成やそれに基づく入所前又は退所後の在宅サービスの提供を実践する必要がある。このため、平成9年度から、「特別養護老人ホーム入退所計画実践試行的事業」を実施しているところであり、平成9年度においては、47都道府県市が実施する見込みとなっている。同事業については、平成9年度中に追加協議を受け付ける用意があるばかりでなく、平成10年度においても、引き続き実施する方向で検討しているので、取組が立ち後れている地方自治体においては、特段の努力をお願いする。
○なお、介護保険手業計画等の作成及び老人保健福祉計画の見直しに当たっても、特別養護老人ホームへの入所を共に必要とする者の数を厳密に見込むことにより、将来の介護サービスの需要の把握を行うことが重要であることは、もちろんである。

 


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