Copyright Yoshihiro IDE (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp) 最終更新日:1997/MAR/8
平成9年度茨城県予算(案)は、一般会計の伸び率が4.8%、1兆1022億5百万円であり、消費税の導入に伴う都道府県清算金や市町村への交付金を除いた実質伸び率は、3.2%となっている。
平成9年度の茨城県予算規模 | |||
単位:百万円 | |||
区分 | H8 | H9 | 伸び率 |
一般会計 | 1,051,231 | 1,102,205 | 104.85% |
地方消費税関連歳出のぞき | 1,051,231 | 1,084,812 | 103.19% |
特別会計 | 112,996 | 126,151 | 111.64% |
企業会計 | 92,032 | 88,528 | 96.19% |
計 | 2,307,490 | 2,401,696 | 104.08% |
款別の内容を概観してますと、土木費や農林水産費などの公共投資関連の予算を前年以下に押さえ込み、民生費、教育費などに重点的に配分している点に特色があります。
平成9年度茨城県予算款別 | |||||
単位:百万円 | |||||
款名 | H8当初(A) | H8当初構成比 | H9当初(B) | H9当初構成比 | 伸率(B/A) |
議会費 | 2,003 | 0.2% | 2,003 | 0.2 | 100 |
総務費 | 52,491 | 5 | 69,174 | 6.3 | 131.8 |
企画開発費 | 40,624 | 3.9 | 38,469 | 3.5 | 94.7 |
生活環境費 | 10,516 | 1 | 14,878 | 1.3 | 141.5 |
民生費 | 63,224 | 6 | 68,770 | 6.2 | 108.8 |
衛生費 | 39,003 | 3.7 | 35,940 | 3.3 | 92.1 |
労働費 | 6,717 | 0.6 | 7,804 | 0.7 | 116.2 |
農林水産業費 | 118,600 | 11.3 | 115,250 | 10.5 | 97.2 |
商工費 | 49,049 | 4.7 | 46,679 | 4.2 | 95.2 |
土木費 | 222,128 | 21.1 | 217,402 | 19.7 | 97.9 |
警察費 | 54,779 | 5.2 | 56,238 | 5.1 | 102.7 |
教育費 | 288,887 | 27.5 | 297,694 | 27 | 103.1 |
災害復旧費 | 2,343 | 0.2 | 2,846 | 0.3 | 121.5 |
公債費 | 73,749 | 7 | 86,417 | 7.8 | 117.2 |
諸支出金 | 27,018 | 2.6 | 42,491 | 3.9 | 157.3 |
予備費 | 150 | 0 | 150 | 0 | 100 |
合計 | 1,051,231 | 100 | 1,102,205 | 100 | 104.8 |
具体的な新規事業においては、私ども公明・新進クラブが、かねて、主張してきた
などが採用されました。特に、「児童クラブ事業」については、国の政策をも先導する新規事業であり、高く評価される。
全体的に見れば、限られた予算を福祉・医療・教育・文化といった、県民生活に直結する分野に重点的に配分した予算である。
しかしこの予算には、深刻な財政の硬直化の問題がある。
昨年度、幾分回復したとはいえ、県税収入の落ち込みは、容易には回復していない。法人二税の見込額1195億円は、平成3年度と比較すると、300億円不足している。その上、この4月の消費税率のアップによる消費の冷え込み等を考慮に入れると、法人二税の基本となる企業業績の大幅な回復は、絶望的な状況である。
行財政改革を先送りにした、消費税率の引き上げ、特別減税の打ち切り、医療保険制度の改悪による国民の負担増などなど、政府の失政は、かねてから懸念されていた景気へのブレーキ効果として、現実のものとなっている。
橋本政権の経済政策に不満の声が、茨城県民の中にも充満している。
こうした歳入の不足を県債の発行と基金の取り崩しで繕っているのが、今年度予算の実態に他ならない。
平成9年度の一般会計の県債発行予定額は、1566億円に達している。これは前年当初予算に比べ5.4%の増加となり、予算の伸び率よりも高い。公債依存度は、地財計画の13.9%を上回り14.2%に達している。平成9年度末の県債発行残高は1兆17億円と一兆円の大台を突破する見込み。
これを家計に当てはめてみると、県民1世帯当たり160万円の借金を抱えることとなる。
また、忘れてはならないことは、この県債残高は元金だけの残高であるということです。
平成8年度末の県債残高見込みは、8917億円。この8917億円の償還に必要な利子は、2600億円に及ぶ。期末残高は、利子を加えて計算すると、3割近くが膨らみ、元利合計では、1兆1500億円の返済が迫られる。
県債の近年の発行状況を振り返ってみると、バブル経済が破綻した平成5年度以降、県債の発行高が急増して、平成4年度が515億円であったものが、8年度が1480億円、9年度の発行予定が1566億円と、4年間で3倍強に膨らんでいる。
このように増大した県債残高に対する償還額、すなわち返済額を推計してみますと、8年度の残高見込み8917億円に対して、10年度1036億円、11年度998億円、12年度1079億円、13年度1035億円、14年度978億円と9年度予算の公債費864億円を大きく上回る返済を迫られることとなる。
これに、その年度ごとに、新たに発行される県債の償還が加わるわけですから、本年度と同規模で県債を発行した場合、私の試算では、10年度以降の公債費の割合は10%を超え、急速な公債費による財政の硬直化が大いに懸念される。
基金の取り崩しも深刻な状況にある。
平成9年度一般会計中の基金の取り崩し予定は、530億円である。8年度の取り崩し額が最終補正後で285億円でありますから、実に前年度の2倍近くの基金を取り崩すことになる。
これによって、平成3年度末に1763億円あった一般財源基金は、8年度末には、358億円にまで減少し、ピーク時の五分の一近くに減少することになる。
まさに、借金を重ね、貴重な預金を吐き出しながらの苦しい予算編成といえる。
こうした県債発行による公債費の増加や基金の取り崩しによるによる財政の硬直化ともに、近い将来問題になるのが、退職金を含む人件費負担増の問題である。
平成8年4月1日現在で、県人事委員会が行いました職員給与の実態調査資料もとに、分析を加えてみると、
知事部局、県警、教育庁などすべての県職員の人員構成をグラフ化してみますと、38歳と39歳を一つの頂(いただき)とし、34歳35歳をもう一つの頂とする、茨城の象徴、筑波山の姿を見事に描く。
現在58才59歳の年齢層の方々が約1000名に対し、ピーク時の年齢帯の方々は、その約3倍近くの2700名以上と高い数値を示す。
現在まで、比較的抑制傾向できた人件費は、今後10年以内に大きな伸びを示すことが懸念される。
更に、職員退職金もその増加が懸念される。
東京都の小金井市で、平成9年度の退職金を支払うため「退職手当債」の発行許可を国と都に申請する予算が提案された。小金井市には、退職金用の基金がありますが、4年度に約20億円あった基金は、取り崩しが続いており、一方で、市の歳入はバブル崩壊後、決算で5年度から3年連続で前年度比マイナスを記録する状態となっている。
こうした中で歳入が好転せずに必要な事業を進めれば、9年度には基金を含め退職金に回せる自前財源がなくなり、退職手当債発行が必要になる。
無論、他の市町村の状況と県の状況を単純に比較することは出来きないが、対岸の火事として見逃すことは出来ない。
茨城県の場合、平成8年度県職員の退職金の平均は、一人約2630万円となっている。
毎年、退職金の平均が1.7%上昇すると仮定すると、退職者がピークに達する18年後には、退職金の平均額は1.35倍、退職者が2.7倍になることが推計され、退職金のみで約830億円の財源が必要となる。これは現在の3.6倍の規模となる。
現在、県には退職金に充てる積立制度、つまり退職金のための基金はない。
県においても、退職金引き当て基金を前向きに検討する必要を痛感するわけでございます。
また、人員の適正配置や思い切った定員の再検討が必要であると思われる。
更に、給与制度自体の見直しも課題となりましょう。
具体的には、特別昇給制度は見直すべきである。
現在、県では退職時の特別昇給制度が認められております。県の規則等によって、退職日、当日に2号報以内で基本給の昇給が認められ、退職金はその昇給された基本給をもとに支給されるため、勧奨による退職の場合約50万円程度が退職金に上乗せされている。
収入が不足している家計で、借金を増やし、貯金を取り崩して収入以上の生活をしていたならばどうなるか。早晩この家計は崩壊し、企業であれば倒産に至る。
収入を増やすことが難しい状況である現在、支出の削減を何よりも優先させるべきである。
それが行財政改革であり、一切の例外・聖域を設けず、行革の断行が求められている。
茨城県の平成9年度予算の実態を多くの人に知っていただき、県政を厳しく監視していただきたい。