動燃東海爆発事故アーカイブ

 Copyright Yoshihiro IDE (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp) 最終更新日:1997/MAR/21


事故発生直後の経過を動燃報告書から検証する

   動燃は3月21日、茨城県に原子量安全協定に基づく「事故報告書(第一報)」を提出した。
 この報告書には、連絡・防災体制の日歩やミスがあったことが一切記載されておらず、原因と対策についても「明らかになり次第」報告するとして具体的な記載はない。
 また、報告書の記載も、今まで「確認」と発表した内容を「認識」と言い換えるなど曖昧な表現が多い。
 さらに、県や県警との発表と食い違う点も散見し、正確な検証が必要である。
 一方、科学技術庁への事故報告はインターネット上でも公開されているが、その情報と県への報告書の内容に違いが見受けられる。(インターネット情報は、1996/3/22 10:00現在のもので確認)
 科技庁報告と県報告との差違の説明が必要であろう。

3月11日(火)

動燃事故報告書の記述

備   考

10:06頃

  • セル換気系温度警報(FDT−152;設定値70℃)吹鳴。
  • ほぼ同時にターンテーブル上のドラム缶へのアスファルト充てん状況を監視するテレビカメラからの画像が白っぽくなったことを、制御室(G218)のテレビで認識。
  • アスファルト充てん室(R152)内で火災が発生していることを、操作区域(G115)から目視により認識。
  • 動燃からの県及び市町村への第一報では、火災発生時刻は10:08とされていた。
  • 施設内の状況を作業員から東海村消防本部が録取した火災の状況: 「アスファルトと廃液をエクストルーダにより混合させ,ターンテーブル上のドラム缶に充填する作業を行っていた、このターンテーブルには数本のドラム缶が乗っていたが,この中の1本よりカメラのストロボのような光が見えた,次の監視窓より見ると別位置のところのドラム缶1本より火柱が見えた,その後上司と2名で水噴霧のパルプ操作をし消火を行い,火が見えなくなった時点で退避した」
  • 「11日午前10時6分、ターンテーブル上のドラム缶へのアスファルト充てん状況を監視するテレビカメラからの画像が白っぽくなったことを制御室のテレビで確認した」。13日午後、科学技術庁で行われた会見で、野村保・動燃安全部次長は、火災はまずテレビカメラを通じて発見されたことを明らかした。前日までの発表では「アスファルト充てん室にカメラはなく、火災は隣接する操作室から目視で確認した」と発表されていた。このため、この13日、近岡理一郎科学技術庁長官のもとを訪れ、安全管理の徹底を求めた橋本昌茨城県知事も「テレビカメラの設置」を要望にいれていた。

10:10

アスファルト固化処理施設の1階で火災警報吹鳴。

 

10:12頃

操作区域(G115)内バルブを手動開によりアスファルト充てん室(R152)内に水噴霧を開始。

11本の水噴霧装置のうち5台を稼働させた。消火に使った水の量は、当初3.3トンと説明されていたが、3月21日約1トン程度であったと訂正された。

10:13頃

  • 操作区域(G115)から目視にて火が消えていると認識したので、バルブを手動閉により水噴霧を停止。
  • 環境施設部連絡責任者へ第一報。

 

10:13〜18

アスファルト固化処理施設においてβダストモニタ(β−4,β−5,β−3,β−6)の吹鳴。

 

10:14頃

第一付属排気筒排気モニタ指示値上昇。

 

10:15頃

現場指揮所設置。

 

10:18頃

排気ブロア(A07−K22,23,24)の出口側ダンパが閉となったことを制御室(G218)で認識。

 

10:22頃

操作区域(G115)から目視にて消火しているものと認識。

 

10:23頃

  • 給気ブロア(A07−K15,K16)手動停止。
  • 排気ブロア(A07−K18,K20)手動停止。

 

10:25頃

環境施設部連絡責任者から東海事業所連絡責任者へ電話にて第一報。

 

10:26

第三低放射性廃液蒸発処理施設局所排気モニタ発報。

  • 当初は10:34に、職員が作業をする施設内の別のエリアの放射能検知器が発報、放射能が漏れていることが確認された、と発表されていた。
  • 茨城県には、10:38に「火災」の一報が入った。ところが充てん室の外への放射能漏れについては「今のところない」と報告された。
  • また、10:40の科学技術庁への火災連絡でも、「放射能漏れはない」と説明している。
  • このため、核燃料規制課は正午から記者会見を開き、「現在のところ、放射能漏れは確認されていない」と発表していた。同課の職員の一人は「動燃が放射能漏れをいつ知ったのか、意図的に連絡を遅らせていなかったのかなどを明らかにする必要があるでしょう。現場は相当な混乱をきたしていただろうから、悪意はなかったと思いたい」と話していた。
  • 動燃は、火災を確認した際、アスファルト固化処理施設の内部や付近にいた業者に避難するよう指示した。しかし、延焼防止措置をとってから避難をしたため、時間がかかり、約30分ほど経過してしまったという。
  • 正午になって、県の問い合わせに対し「今のところ、放射能漏れはない」と回答している。
  • その後、放射能汚染の恐れがある施設を立ち入り禁止にし、13時ごろ、外部への放射能漏れの可能性に備えて、施設の出入り口のすき間をテープで目張りした。
  • 東海村役場に動燃側から放射能による被ばくが伝えられたのは13時ごろ。
  • 県に放射能漏れが伝えられたのは、さらに30分間後の13:30ごろで、放射能検知から約三時間半、たっていた。科学技術庁に「被ばく」の連絡をしたのは13:30。

10:32頃

現場指揮所より、アスファルト固化処理施設内作業員の退避を電話にて指示(制御室集合、確認後更衣室へ退避)。

 

10:34

環境施設部連絡責任者から東海事業所連絡責任者へ第一報 FAX。

 

10:37頃

東海事業所対策会議設置。

 

10:38

第一報 関係機関(国,県,動燃本社等)へ一斉FAXとともに電話連絡。

県・日立市・ひたちなか市などは一斉同報で受信。那珂町などは受信が10:41に遅れる。

10:39頃

本社環境本部へ、アスファルト固化処理施設で火災発生、環境への影響があるとの報告はないとの電話連絡。

 

10:40頃

東海村消防署へ電話にて連絡 → 現地確認のため来所。

10:58東海村消防本部出動

10:45

アスファルト固化処理施設内の立入り規制、立入り制限区域を設定。

 

11:05頃

東海事業所対策会議にて第三低放射性廃液蒸発処理施設局所排気モニタの発報を確認。

 

11:11頃

東海事業所対策会議議長(所長)が口頭でモニタリング車出動指示。

 

11:15頃

再処理保全区域の環境モニタリング開始。

 

11:30

第三低放射性廃液蒸発処理施設及び第二低放射性廃液蒸発処理施設の全域を立入制限区域に設定。

 

11:32

東海事業所対策会議に第一付属排気筒排気モニタのトレンドデータを連絡(10:14頃上昇しその後平衡状態と認識)。

 

11:45

茨城県へ環境及び従事者へ影響がないことを電話連絡。

この項目は、正式な事故報告書には掲載があるがインターネットでの情報には「12:00までの間に環境への影響があるとの報告はないと県に連絡。」と掲載されている。微妙な表現の違いに作為的なものを感ずる。

11:50頃

東海交番へ電話にて連絡。

県警では確認していない。

12:15頃

ひたちなか西警察署へ電話にて連絡。

県警では確認していない。

12:24頃

東海交番へ連絡(FAX)。

 

12:55頃

5名について、鼻スミヤ有意値有り。

被ばく者の確認(第一次5名)。

12:57

本社を通じて科技庁へ放管データ(空気、鼻スミヤ)FAX送付。

県報告には記載なし。

13:00頃

本社を通じて科技庁へ一部の作業者の鼻スミヤの結果に有意値ありと訂正の電話連絡。

県報告には記載なし。

13:05頃

環境モニタリングデータに異常がないことを確認。

県報告には記載なし。

13:29頃

本社を通じて科技庁に鼻スミヤ訂正情報を連絡(FAX)。

 

13:30

茨城県へ一部の作業者の鼻スミヤの結果に有意値ありと電話連絡。

科技庁報告には記載なし。

13:34頃

消化の状況確認のため、第1班入域(東海村消防員1名とPNC2名がアスファルト充てん室周辺に入域。13:43頃退域)。

 

14:00頃

茨城県へアスファルト固化施設内作業員が屋上に待避したことを電話連絡。

科技庁報告には記載なし。

14:02頃

5名について、鼻スミヤ有意値を新たに確認(計10名)。

 

14:52頃

本社を通じて科技庁へ電話連絡(鼻スミヤによる被ばく確認:56名中54名済、10名に有意量)。

県報告には記載なし。

14:00〜17:00

茨城県に電話にて被ばく者が発生していることを連絡。

科技庁報告には記載なし。

15:15頃

内部の放射能状況確認のため、第2班入域(PNC3名が通路、更衣室等に入域。15:28頃退域)。

 

15:43頃

東海事業所対策会議にて第一付属排気筒排気モニタのトレンドデータを入手。その結果、第一付属排気筒のI−129データが警報設定値以下ではあるが上昇していることを確認。

外部への放射線漏れの可能性を示唆する事実であるが、茨城県への連絡はなく、18:00の記者会見で初めて明らかにされた。

15:57頃 

東海から本社へ第一付属排気筒からの微量放出の連絡。直ちに科技庁へ口頭連絡。

県報告には記載なし。

16:21

東海から本社へ、第一付属排気筒からの放出データ第三低放射性廃液蒸発処理施設局所排気モニタのデータ、環境監視結果異常なしをFAX送付。

 

16:35

本社を通じて科技庁へ第一付属排気筒からの放出データ、第三低放射性廃液蒸発処理施設局所排気モニタのデータ、環境監視結果異常なしをFAX送付

科技庁報告には記載なし。

16:57

換気系再起動のため、第3班入域(PNC4名が制御室に入域。17:18頃退域)。

 

17:09

本社を通じて科技庁へ被ばく者8名のホールボディカウンタ測定結果をFAX送付。

 

17:20頃

アスファルト固化処理施設屋上から2名退出。

 

17:25頃

 屋上から退出した2名全身サーベイ異常なし。

 

17:54頃 

本社を通じて科技庁へ鼻スミヤ対象者59名に変更する旨電話にて連絡。

科技庁報告には記載なし。

18:00頃

記者発表会上において第一付属排気筒のヨウ素129の指示値が上昇していることを公表。

科技庁報告には記載なし。

18:18

本社を通じて科技庁へ残り2名の鼻スミヤについて異常ない旨FAX送付。

科技庁報告には記載なし。

20:04頃

爆発音の発生を確認。

  • 当初動燃は、爆発事故時刻を20:14分と発表していた。
  • 動燃東海事業所は、午前の火災で故障した排風機の修理のため、爆発直前に職員数人を同施設内に入れようとしていた。一歩間違えれば死傷者を出す惨事になりかねない状況だった。当時、爆発した「アスファルト固化処理施設」と渡り廊下でつながった「第三低放射性廃液蒸発処理施設」の更衣室や事務室では、排風機を再起動させるため、42人の職員らが準備中だった。このうち数人が午後8時ごろから固化処理施設に入る予定だったが、準備に手間取ったため、間一髪で難を逃れていた。小山副所長は「午後8時の段階ですでに消火が確認され大丈夫と思った。爆発後の午後11時過ぎは、爆発から3時間たっているので大丈夫だろうと思い、深く考えなかった」と説明。「職員が中に入っていた時に爆発していれば大変なことになっていた」と、死傷者の出た可能性があったことを認めている。

20:09

第一付属排気筒排気モニタ警報発報。

 

20:15頃

再処理工場運転停止指示(人員点呼指示)。

 

20:18頃

第一付属排気筒排気モニタの確認を指示。

 

20:22頃

東海より本社に連絡。

  • アスファルト固化処理施設で大きな音有り、エアロック室の扉が破損しているもよう。
  • 窓より発煙見られる。
  • 第一付属排気筒:データ上昇している。
  • 動燃東海は防護活動本部へ切り換える。

 

20:24頃

本社を通じて科技庁へ上記と同様の内容を電話連絡するとともにFAX送付。

科技庁報告には記載なし。

20:25頃

茨城県へ再処理工場の運転停止操作開始を電話連絡

科技庁報告には記載なし。

20:25頃

茨城県へ爆発音の発生及び第一付属排気筒のI−129モニタの警戒警報発報を電話連絡。

科技庁報告には記載なし。

20:40頃

本社に災害対策本部を仮に設置。

 

20:40頃〜

モニタリングポストにおける放射線測定結果に僅かな上昇有り。

 

20:41頃

東海村消防署へ電話にて連絡。

 

21:08頃

東海交番へ連絡(FAX)。

県警本部も認知状況を確認している。

21:16

本社を通じて科技庁へ、モニタリングポストにおける放射線測定結果は僅かな上昇が見られたが、通常の変動範囲内に復帰したことをFAX送付。

正式報告種のは記載なし。

21:30頃 

ひたちなか西警察署へ電話にて連絡。

 

21:40頃 

災害対策本部を設置。

 

23:10頃 

内部の状況確認のため、第4班入域(23:40頃退域)。

 

23:20頃 

分離精製工場の屋上カメラからは煙は見られないことを確認。

 

 

正式な報告書の注意書き

注:1 本資料は、平成9年3月20日の確認作業をもとに作成されたものであり、今後も確認作業により修正される可能性があります。

 2 警報の発報等については、主要なものについてのみ記載しています。

インターネット情報の注意書き

注:1 本資料は、平成9年3月20日の確認作業をもとに作成されたものであり、今後も確認作業により修正される可能性があります。

 2 警報の発報等については、主要なものについてのみ記載しています。

   

 

 


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