アセアン行政視察

 Copyright Yoshihiro IDE (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp) 最終更新日:1997/FEB/10


マレーシア

政治経済状況(マレーシア大使館:藤原一等書記官)

最近の政治状況

  1. 現マハティール政権はきわめて安定している。(現在17年間首相を務める)
  2. 1996年10月に行われた政府与党の役員選挙で、マハティール首相(71歳)・マンワール副首相(49歳)が再選された。
  3. 1999年に行われる議会の首相選挙が21世紀のマレーシアの動向を大きく左右することとなる。
  4. 1982年にマハティール首相は、マレーシアの国造りを日本や韓国に学びたいとの「東方政策」(Look East) を発表した。この政策により、15年間で4000人以上の留学生が日本で学んだ。

経済情勢

  1. マレーシア経済は、天然ゴム・スズ・パーム油・石油などの典型的な一次産品輸出国として発展した。
  2. 1985〜86年に一次産品の下落により、独立後初めてのマイナス成長を経験し、外国資本導入による工業化に向けて政策を転換する。
  3. 1986年外資導入を緩和し、現在は100%の外資を受け入れている。1992年より日本からの直接投資を中心に、外貨の導入、多国籍企業の輸出に支えられて8〜9%の高度成長が続いている。

経済の課題

マレーシア経済の脆弱性は、その規模の小ささと外国資本依存体質にある。

  1. 外資依存型経済であり、部品・中間財産業は未発達。地場産業の未発達。
  2. 技術者の不足による賃金の高騰、高離職率(Job Hopping)
  3. 外国人労働力の受け入れ(就業人口800万人、内170万人は外国人労働者)
  4. 産業廃棄物処理施設の不足
  5. 経済加熱によるインフレ懸念

日系企業の現状視察(東芝エレクトロニクス・マレーシア:安島社長より聴取)

社名Toshiba Electronics Malaysia
設立1973/9/10
生産開始1980
資本金40億円
従業員1800名
日本からの出向者社長以下10名
事業内容電子部品(現在の主力は16M-DRAM)の製造
メモリーの本体であるウェハース部分は日本で製作し、輸入する。
マレーシア進出のメリットと課題
  • 低い人件費
  • 半導体製品を使う生産地に近い
  • 深刻な課題
  • @慢性的な労働力不足
    A人件費の高騰(毎年10%程度の人件費上昇)
    B離職率(Job Hopping)が高く、熟練した技術者が少しでも良い条件の企業に転職してしまう
    Cサポートする地元企業(下請け業者)の未成長
    Dインフラの未整備
視察の感想その他
  • 技術畑の安島社長を中心に、日本の工場でも見られない生産工程を導入して生産性の向上に努力している。
  • 半導体市場はまさに生鮮食品と同じ市場といわれている。設備投資が大きく、各社の生産が軌道に乗ると一挙に値崩れが起きる。
  • 生産性の向上と付加価値の高い製品の政策が課題であろう。

日系企業の現状視察(JVCエレクトリック・マレーシア:藤田社長より聴取)

社名JVC Electronics Malaysia
設立1988/3
生産開始1988/12
投資額9300万RM(リンギット・マレーシア)
従業員2630名(内邦人は29人)
平均年齢24.5歳、平均出勤率95.6%、平均基本給36,200円
日本からの出向者社長以下29名
事業内容オーディオ(CD、MDコンポ)、VTR用モーター
近年日本向けのCDコンポの輸出が拡大(生産量の20%)
マレーシア進出のメリットと課題
  • 低い人件費
  • 英語を理解し、手先が起用、視力がよい
  • 日系企業の進出(1300社を越す)
  • インフラの整備が進む(東洋一の飛行場が98年後半に完成、南北縦断高速道網、港湾施設の充実、100以上の工業団地が整備されている)
  • 技術者やエンジニアの不足・・・求人難
  • 労働賃金の上昇
  • ジョブポッピング
  • GSP(特恵関税)が廃止され競争の激化
  • 地価の高騰、公共料金の上昇
視察の感想その他
  • 女子行員がベルトコンベアーに張り付く典型的な労働集約的工場の様相
  • 稼働以来10年を迎え、今後の収益性の不安があるとの説明もあり。


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