アセアン行政視察

 Copyright Yoshihiro IDE (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp) 最終更新日:1997/FEB/10


アセアン諸国行政視察報告

はじめに

シンガポールの風景 私は、茨城県議会東南アジア地方行政視察団(山口武平団長・新井昇副団長、団員13名)の一員として、1月28日より2月5日まで、アセアン4カ国の行政視察を行った。

 議員の派手な海外視察のあり方や、厳しい地方財政の中で多額の視察の経費をかけることの是非、執行部や職員などに多大な経費と労力がかかることへの批判など、県民の皆さまに様々なご意見をいただいている時期の視察なり、自らにその責任の重さを厳しく問いかけながらの視察となった。

 県民の税金から支出されたお金によっての視察であり、調査であり、勉強である。事前の準備を始め、日程的にはかなり厳しいスケジュールではあったが、視察団全員、視察の意義を十分に認識し、その目的をほぼ達成できたと総括している。

 ただ、一点だけ難をいえば、日程の都合でシンガポールの訪問が土曜・日曜にかかり、大使館や企業の公式訪問が出来なかったことが非常に残念であった。9日間という予定であるから土日が日程に入るのは避けられないのであるが、一番関心の高かったシンガポールで公式行事を設けられなかったことは、次回の視察実施の際は調整を万全に行うべきであろう。(土曜日の休業日にもかかわらず、住友金属の駐在事務所の方4名が、私的に懇談の機会を作って下さり、大変有意義な時間を過ごすことが出来た。深く感謝を申し上げるものである。)

 今後とも、この視察の成果を地元産業の空洞化解消の問題や、情報基盤整備の課題、商業・流通業の発展施策などに十分に活かして、アセアン視察が県政発展のため大きな成果を残したと、県民の皆さまに評価されるよう一層の努力を決意するものである。

視察地とその目的

 茨城県の県議会議員は4年の任期中に一度海外の行政視察を行い、一期の議員は東南アジア諸国への行政視察を行うことが慣例となっている。

 今、東南アジアの諸国は、まさに旭日の勢いで経済発展を成し遂げ、アメリカ、ヨーロッパ、そして日本とともに、世界経済の四極目を形成しようとしている。

日本からの貿易、資本投資、ODA、人材の交流なども、この地域を抜きにしては考えられない重要な地位を占めている。

 また、茨城県に住む我々のとっても、ビジネスによって東南アジア地域と煩瑣に交流していることも事実であり、観光を含めれば、茨城県民との結びつきも益々太くなるに違いない。

 更に、県内の企業が数多くこの地域に現地法人を作り進出していることも見逃せない。

 今回の海外視察の当たっては、視察地としてアセアン四カ国を選定したものであるが、単なる慣例であるといった消極的な選択ではなく、どうしても今の時期に見ておく必要のある国が選ばれたと確信する。

 アセアン諸国4カ国の視察のポイントを、私は個人的には、次のようにまとめてみた。

4カ国共通の視察ポイント@各国の国情を自らの目で確かめる
A各国の経済状態と政治状態の大使館での聴取
B日系企業の役員からの現地法人の状況聴取
C茨城県出身者からの現地生活の実態聴取
D各国の通信基盤(電話・インターネット・テレビ・衛星放送など)の実地調査
E流通業の状況調査
インドネシア視察のポイント@発展可能性では東南アジア随一といわれるインドネシア経済の現状(日本大使館)
Aスハルト政権の今後(日本大使館)
B土浦市に親工場を持つ日立建機の現地法人社長からの現状聴取
C日立市に親工場を持つ日立製作所の現地法人社長からの現状聴取
D通信基盤(電話・インターネット・テレビ・衛星放送など)の実地調査
E流通業の状況調査
マレーシア視察のポイント@東南アジアの優等生といわれる経済の現状(日本大使館)
Aマハティール首相政権の今後とルックイースト政策について(日本大使館)
B本格的な半導体工場(東芝の現地法人)社長からの現状聴取
C水戸市、岩井市に工場を持つ日立ビクター現地法人社長からの現状聴取
D通信基盤(電話・インターネット・テレビ・衛星放送など)の実地調査
E流通業の状況調査
シンガポール視察のポイント@流通業の現状の現地調査
観光客を対象とするショッピングセンターと地元のショッピングセンターの比較調査
A通信基盤(電話・インターネット・テレビ・衛星放送など)の実地調査
B鹿嶋市に工場が立地する住友金属現地社員との情報交換
フィリピン視察のポイント@アジアの病人と酷評された経済状態の現状(日本大使館)
Aラモス政権の今後(日本大使館)
Bコンピュータ部品工場(日立製作所小田原工場の現地法人)社長からの現状聴取
C通信基盤(電話・インターネット・テレビ・衛星放送など)の実地調査
D流通業の状況調査

全体的感想

マニラ湾の夕日 今回の海外行政視察の感想を一口でいうならば「百聞は一見に過ぎず」と言うことになろう。

 今までの東南アジア諸国に対する、私の認識はいかに浅薄で、偏ったものであるか、稚拙なステレオタイプにとらわれていたか大いに反省させられた。

 アセアン諸国は、実に多彩で、個性的である。経済体制、政治体制、民族、文化そして宗教など軒を接する国々が、これほど多様性と独自性を持っていることは、私にとって、奇跡に近い驚きであった。

ツインタワー インドネシアは、人口1億9千万人で世界第4位、面積は日本の5.2倍もある大国。資源と国土、人材に恵まれた発展の可能性を大きく秘めた国。

 アジアの優等生マレーシア。その首都・クアラルンプール町の美しさ、マニラツインタワーの2本の尖塔はアジアの、世界のランドマークとして私の目に焼き付いた。

 ある人が箱庭都市といったシンガポール。マレーシアから追いだされるようにして独立した都市国家が、英知と情熱を結集して築いた芝生と高層建築の街。

 フィリピンは、人々の笑顔が印象的な国。自由をこよなく愛する国民性が、高い教育水準が、経済成長のビックバンを予感させる。マニラ湾の大きな夕日が未だに眩しい。

 アセアン4カ国の違いと特徴を肌身で感じることができただけでも、私にとって今回の視察は大きな収穫があったといえる。

アセアン4カ国の概要

インドネシア マレーシア シンガポール フィリピン
人口(万人) 19,200 1,910 280 6,618
面積(万平方キロ) 190.000 33.000 0.060 30.000
人種 マレー系 マレー系・中国系・インド系 中国系・マレー系・インド系 マレー系
宗教 イスラム教 イスラム教 仏教・イスラム教・ヒンズー教 カソリック
言語 インドネシア語 マレー語 英語 英語・フィリピノ語
政治的中心者 スハルト大統領 マハティール首相 ゴー・チョクトン首相 ラモス大統領
国民総生産(億ドル) 1,676 687 658 633
1人あたり国民総生産(ドル) 880 3,520 23,360 960
平均給与 20,000 26,000 150,000 18,000

アセアン4カ国経済成長

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