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茨城県議会議員 井手よしひろ (e-mail:master@y-ide.com)

海鵜<ウミウ>捕獲場所の再建問題の経緯
伝統文化の継承のため地域、県、国を挙げての協力が必要

十王鵜取り場の再建について・岐阜市長らが知事に要望 2003/11/20

橋本知事に要望書を手渡す岐阜市の細江茂光市長 今年6月に崩落した十王町の鵜捕り場の再建問題で、鵜飼いで有名な岐阜市の細江茂光市長、鵜匠の代表山下準治さん関市の収入役、犬山市の収入役、十王町の和田浩一町長ら18名が、茨城県の橋本昌知事を訪ね、積極的な県の支援を要望しました。
 全国の鵜飼い開催地の大部分が、十王町で捕獲された鵜を使って、鵜飼いを行っています。十王町からの鵜の供給が止れば、2〜3年の内に鵜飼いそれ自体ができなくなる懸念があります。こうした事態を背景に、今回の岐阜市長らの要望活動となりました。
 細江岐阜市長は「貴重な文化遺産として、鵜飼いを続けていきたい。捕獲場の改修に理解と協力をお願いしたい」と県の協力を要望しました。その上で、十王町からウミウの供給を受けている全国11市町で「ウミウ捕獲技術保存全国協議会」を設立し、協力していく考えを表明しました。
 橋本知事は捕獲場が県立公園内にあることや県財政の厳しさを挙げ、「どう再建できるか検討したい」と答えるに止まりました。
 懇談の中では、十王町側から再建に1500万円から4500万円かかるとの試算が説明され、橋本知事からは資金面を含めた多面的な協力が、岐阜市など協議会側に要請された。
 懇談終了後、愛知県犬山市の加藤博之収入役は「応分の負担はしなくてはいけない。これから全国協議会で話し合っていく」と述べました。
 県は、「全国の鵜飼いを行っている市町村や主催団体が協議体を設置し、その団体が主体となって鵜捕り場の再建に取り組むことが必要。原則的には、その団体が費用を負担すべきで、県は、建築の許可を与えるかどうかの判断をする立場である」との姿勢を崩していません。
 今回の要望でも、開催地の熱意は伝わりましたが、再建への具体的な道筋については進展がなかったようです。
 井手県議は、国をも巻き込んだ広範な運動が不可欠と主張しています。十王町当局、開催地との連携を密にして早急な再建策の具体化を図って行きたいと思います。

要 望 書

茨城県知事 橋本 昌 殿
岐阜県岐阜市・岐阜県関市・愛知県犬山市

 日本独自の文化を伝える鵜飼に欠くことのできないウミウの捕獲につきまして、貴御当局の格段のご配慮に卸し、厚く感謝申し上げます。
 貴県十王町で捕獲されたウミウは、全国十数ヶ所の鵜飼開催地で使用され、それぞれの地域の文化伝承・観光振興のために重要な役割を担っております。
 特に長良川鵜飼は、1300年の伝統を誇り、燃え盛るかがり火と、それを映す水面の揺らめきの中で、鵜匠と鵜が織り成す古典絵巻を繰り広げ、毎年十万人以上の乗船客の実績を上げております。
 しかし、平成15年6月18日から19日未明にかけてウミウ捕獲場が完全崩落し、捕獲が困難となり、鵜飼開催地の今後の鵜飼運営に少なからず不安を覚えたのであります。ウミウ捕獲が長期間不可能になりますと、必然的に鵜飼に対する影響も大きく、ひいては日本の鵜飼文化の根幹を揺るがす事態にもなりかねません。後世に鵜飼を伝えていくためにも、ウミウ捕獲場の再築は急務であります。
 そこで鵜飼事業、鵜飼文化の公共公益性の観点から「ウミウ捕獲技術保存全国協議会(仮称)」を早急に設立し、支援・協力できる体制づくりを考えております。
 これらの事情をご賢察いただき、ウミウ捕獲場の再築に、格段のご高配を勝りますよう、強く要望申し上げます。

ウミウ捕獲場所の再建に調査予算計上 2003/9/17

 十王町の伊師浜海岸にある全国唯一のウミウの捕獲場所が崩落した問題で、十王町の和田浩一町長は2003年9月17日、鵜捕り場の再建向けて、調査費を計上することを明らかにしました。
 捕獲場は花園花貫県立自然公園の第二種特別地域で、伊師浜国民休養地、海岸保全区域に指定されている県有地にあります。海面はアワビやウニ漁の漁業権の指定もあり、県の許可を得て再建するには公共性の確保や後継者の確保、工事や捕獲作業の安全性が求められていました。
 これらの課題に対し、個人での捕獲を観光協会などの公共団体などで代わって行うことのほか、地元伊師浜地区の関係者らと協議して後継者育成に努めることなどを前提に、県と調整していくことになりました。
 9月3、4日に福岡県で開催された「第十回全国鵜飼サミット」に出席した和田町長は、日本の伝統文化である鵜飼いを支えていくために、「ウミウ捕獲技術保存全国協議会」の設立を提案し、参加した鵜飼い地から合意を得ました。この協議会を主体に、ウミウ捕獲に関わる関係機関への支援要請や捕獲場の維持管理を行う方針です。
 崩落地は断崖絶壁で設計の難しさ、軟弱な地盤、土砂の排出量などの多くの課題があります。そのため、現地の調査測量のための費用として約157万円を町の予算に計上しました。工事方法や工事費の積算を行い、県に事業計画書を提出し、早期の再建を目指す方針です。

十王町鵜捕り場再建について県に申し入れ 2003/9/12

 井手よしひろ県議は、6月に崩落した十王町伊師のウミウ捕獲場所(鵜捕り場)の再建について、県観光物産課幹部と懇談しました。
 捕獲場の再建に関する県の基本姿勢は、以下の4点をクリアすることが前提条件であり、費用も設置者が全額負担するのが当然という厳しいものです。
 前提4条件とは、公益性・永続性・安全性・必要性が満たされているかということです。
 公益性とは、十王町伊師浜での沼田弘幸さんの鵜捕り事業が、個人の生業の域を越えて、公的な資金を投入するだけの公益性があるのか、という点です。
 永続性とは、沼田さんの事業に後継者が存在し、継続的な事業展開が可能かという点です。
クリックすると大きな画像をご覧になれます  安全性とは、いかに公益性が高い事業であっても、崩落の危険性を100%取り除くことができない状況の中では、行政として再建には慎重にならざるを得ないということです。
 最後に必要性とは、こうした難しい課題の多い十王町の現地点に再建する必要性があるのかということです。鵜飼いの鵜は、十王町以外の鵜(例えば中国産の鵜)ではだめなのかという声もあり、鵜の郷・十王というイメージを守るだけであるのならば、現状の危険な場所にこだわらず、安全な場所に再建してもよいのではないかという意見もあります。
 こうした基本的な条件をクリアするために、県は「全国の鵜飼いを行っている市町村や主催団体が協議体を設置し、その団体が主体となって鵜捕り場の再建に取り組むことが必要。原則的には、その団体が費用を負担すべきで、県は、建築の許可を与えるかどうかの判断をする立場である」との頑なな姿勢を崩していません。
 全国各地の鵜飼い開催地の鵜匠や首長らが一堂に会する「第10回全国鵜飼サミット」が9月3日、4日福岡県杷木町で開催されました。今年のサミットでは、崩壊したウミウ捕獲場の再建問題も話題に上りました。沼田さんが個人の生業として続けてきた「鵜捕り」を十王町と全国の鵜飼い地が協力して、より安定的な鵜の供給を目指し、捕獲場の維持管理や事業後継者の育成を主な業務とする「ウミウ捕獲技術保存全国協議会」の設立が決まりました。鵜捕り場の再建に向けて具体的な一歩がしるされたと言えます。しかし、残念ながら再建の費用負担の問題は先送りされました。
 十王町の鵜捕り場の再建は、今やっと行政のテーブルに載ったところです。全国協議会の体制整備と地元十王町と茨城県の姿勢が問われています。歴史と伝統のある日本の鵜飼いを守るために、地域の貴重な観光資源を守るために、努力を続けて行かなくてはなりません。


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