お寺の風情 昨年の年末近く、帰省したついでに、お寺を2カ所訪ねた。 一つは三河の御津にある大恩寺。 もう一つは西尾にある長圓寺である。 大恩寺は、小学6年のとき、集団疎開で半年滞在した寺だ。 御津の駅からお寺に行く道は、今となってはすごく狭い。 車がやっと一台通れるかどうかの道である。 途中大きな道路が横切っていて、風景はずいぶん変化した。 そのとき以来、50年以上の日時が経過したのだから、それは仕様がない。 寺の門前は、昔は何もなかったが、今では料理屋の駐車場だ。 山門から上の階段横は、巨大な杉が植わっていたが、切り倒されて、明るくなってしまった。 総門はそのままだが、境内にあった、国宝の念仏堂は数年前に火事で焼け落ちてしまった。 今はあとかたもない。 国宝の建物の中で、遊んだり、勉強したなんて今では単に語りぐさになってしまった。 ![]() 寝泊まりした庫裡は、最近建て直されて、近代化した会館風になった。 昔のままのたたずまいは本堂と、その前の石畳、総門だけになってしまった。 懐かしさのあまり訪れても、これでは 「こんにちは」 という元気も出ない。 早々に帰ってきてしまった。 寺の前にある御津神社は、境内の木立も昔のままのようで、こちらの方が懐かしさがこみ上げた。 その帰り道に、西尾にある長圓寺に寄った。 ここはデンソーの工場のすぐ南側にある。 初めて行った寺である。 徳川譜代の大名、板倉氏の菩提寺であり、そこの住職が以前父の葬儀に来てくれた関係で名前は知っている寺。 一度は行ってみたい寺であった。 ここは、大恩寺と同様、いろいろな文化財もあり、また、寺の格も高く、古い。 ![]() 長圓寺は、大恩寺とは逆で、ほとんど古いまま手がつけられていないようだ。 本堂は部分的に補修されているのか、足場が組んであったが、庫裡や、住職の家なども、古いままのようであった。 板倉氏歴代の墓は、ちょっと奥まったところにあって、ここも、樹木の中、ひっそりとしたたたずまいである。 お寺らしい落ち着きがある。 夕方になったので、ゆっくりはできなかったが、古刹という風情であった。 同じ日に、対照的なお寺2カ所を見た。 宗派が違うとはいえ、その違いに、なんとなく、すっきりしないものが残った一日であった。 (2003.1.13) |