◇穏やかな晩秋

 上旬と下旬は、移動性高気圧におおわれて晴れる日が多くなりました、中旬は、本州付近を気圧の谷が3回通過し曇りや雨の日が多くなりました。しかし、低気圧の発達の程度は弱く、降水量は少なくなりました。この結果、月の日照時間は162.0時間と平年並になりました。一方、降水量は59.0mmと平年の73%にしかなりませんでした。

 気温の推移をみると、10月の終わりに今年の秋になって初めての冬型の気圧配置となった後、気圧の場が転換して日本付近へ寒気が入りやすくなりました。このため、9月の下旬を除いて6月の中旬から続いていた気温の高い状態は解消し、11月上旬、中旬と平年並みの気温になりました。しかし、下旬に入ると日本海を進む低気圧に向かて下層へ暖気が入る時があり、気温は再び平年を上回るようになりました。この結果、月平均気温は12.4℃と平年より高くなりました。

11月の気象観測値
観測要素 観測値 平年値
月平均気温(℃) 12.4 11.8
月降水量(mm) 59.0 81.2
月日照時間(時間) 162.0 161.9
旬平均気温(℃)
観測値 平年値
上旬 13.8 13.6
中旬 11.7 11.8
下旬 11.7 10.0
旬日照時間(時間)
観測値 平年値
上旬 62.5 53.2
中旬 46.4 52.3
下旬 53.1 56.4

 つくばにおける500hPa面の気温の推移を見ると、10月はほとんどの日で気温が平年より高くなりました。特に、下旬は月末に向かって気温が下がっていかず、09時の旬平均気温は-10.4℃と平年よ4.5℃高くなりました。しかし、10月30日に台風第14号が関東地方の南を北東へ進んだ後、気圧の場が大きく変わり日本付近へ寒気が南下してくるようになりました。500hPa面の気温は11月1日09時の-10.3℃から2日09時には-19.9℃まで下がりました。その後も、寒気の入りやすい状態が続き、上旬の09時の平均気温は-18.8℃と平年より2.3℃低くなりました。

 中旬から下旬にかけても500hPaの気温は平年よりも低くなりました。しかし、下旬になると低気圧が日本海を進むことが多くなり、南から下層へ暖かい空気が入るようになりました。このため、地上の気温は24日を除いて平年を上回り、下旬の平均気温は11.7℃と平年より1.7℃高くなりました。今年の11月は、10月までに比べて寒気が入りやすくなり、上旬から中旬にかけて6月以来ほぼ半年ぶりに気温が平年並みに戻りました。しかし、寒気の流入は断続的で冬型の気圧配置が続くことはなく、小春日和の多い穏やかな晩秋となりました。

 ●10月から11月にの日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaの気温(09時)の推移

 ※上記のグラフの元データ:エクセル2000ファイル(82KB)

 ※11月の観測データとグラフ:エクセル2000ファイル(92KB)

 10月29日と11月9日の天気図及び気象衛星可視画像を比べてみると、日本付近の寒気の違いがよく分かります。10月29日の500hPa面高層天気図をみると、日本付近の上層では西から東への流れとなっており、寒気は北海道付近までしか南下していません。このため、気象衛星可視画像に見るように、日本海はほぼ晴れの領域となっています。

 一方、11月9日の500hPa面高層天気図をみると、日本付近の上層では偏西風が南へ蛇行し、寒気は日本海の山陰沖まで南下しています。このため、気象衛星可視画像に見るように日本海は筋状の雲におおわれ、西日本ではその雲が太平洋側まで流れ出しています。

 ●参考:10月29日と11月9日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図及び10時の気象衛星可視画像

 ●参考:10月と11月の月平均500hPa面高度・偏差図

 10月は太平洋高気圧が日本の南で東西に広がり、暖かい空気が入りやすくなりました。また、日本付近は北海道の東に中心を持つ高偏差におおわれ、寒気の影響を受けにくい気圧配置でした。11月になると、偏西風が南北に蛇行して東シナ海を中心に気圧の谷場となり、日本付近も負偏差におおわれて寒気が入りやすくなりました。

※実線は等高度線、破線は偏差、破線の陰影域は負偏差を表す。


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作成日 2010/11/18
名前 日立市天気相談所