平成9年度 第1回 定例県議会 一般質問速報版

県議会本会議
平成9年3月6日


1.9年度予算案について

1-1 財政硬直化の克服と今後の財政運営

井手 義弘

 公明・新進クラブの井手義弘です。

 平成9年度予算案と県政一般の諸課題について橋本知事、教育長並びに担当部長にご質問いたします。

 具体的で前向きなご答弁をよろしくお願いいたします。

 今回提案されております平成9年度予算案は、一般会計の伸び率が4.8%、1兆1022億5百万円であり、消費税の導入に伴う都道府県清算金や市町村への交付金を除いた実質伸び率は、3.2%となっております。

 款別の内容を概観してますと、土木費や農林水産費などの公共投資関連の予算を前年以下に押さえ込み、民生費、教育費などに重点的に配分している点に特色があります。

 具体的な新規事業においては、私ども公明・新進クラブが、かねて、主張してまいりました「放課後児童クラブ整備事業」、「24時間在宅ケア推進事業」や「療養環境等整備資金・融資制度」等を採用されました。特に、「児童クラブ事業」については、国の政策をも先導する新規事業であり、高く評価するものであります。

 全体的に見れば、限られた予算を福祉・医療・教育・文化といった、県民生活に直結する分野に重点的に配分した予算であり、執行部のご努力の跡が見える予算編成であると思います。

 しかしこの予算には、いくつかの懸念材料がございます。

 まず財政の硬直化の問題であります。

 昨年度、幾分回復したとはいえ、県税収入の落ち込みは、容易には回復しておりません。法人二税の見込額1195億円は、平成3年度と比較しますと、300億円足りない計算となります。その上、この4月の消費税率のアップによる消費の冷え込み等を考慮に入れると、法人二税の基本となります企業業績の大幅な回復は、絶望的な状況であります。

 行財政改革を先送りにした、消費税率の引き上げ、特別減税の打ち切り、医療保険制度の改悪による国民の負担増などなど、政府の失政は、かねてから懸念されていた景気へのブレーキ効果として、現実のものとなっております。

 橋本政権の経済政策に不満の声が、茨城県民の中にも充満しているわけでございます。

 こうした歳入の不足を県債の発行と基金の取り崩しで繕っているのが、今年度予算の実態であります。

 平成9年度の一般会計の県債発行予定額は、1566億円に達しております。これは前年当初予算に比べ5.4%の増加となり、予算の伸び率よりも高い結果となっております。公債依存度は、地財計画の13.9%を上回り14.2%に達しております。平成9年度末の県債発行残高は1兆17億円と一兆円の大台を突破する見込みです。

 これを家計に当てはめてみると、県民1世帯当たり160万円の借金を抱えることになります。

 更に、忘れてはならないことは、この県債残高は元金の残高であるということです。

 ここに一つの試算があります。平成8年度末の県債残高見込みは、8917億円です。この8917億円の償還に必要な利子は、2600億円に及びます。期末残高は、利子を加えますと、3割近くが膨らみ、元利合計では、1兆1500億円の返済が迫られるわけです。

 県債の近年の発行状況を振り返ってみますと、バブル経済が破綻した平成5年度以降、県債の発行高が急増しております。具体的には、平成4年度が515億円であったものが、8年度が1480億円、9年度の発行予定が1566億円と、4年間で3倍強に膨らんでおります。

 このように増大した県債残高に対する償還額、すなわち返済額を推計してみますと、8年度の残高見込み8917億円に対して、10年度1036億円、11年度998億円、12年度1079億円、13年度1035億円、14年度978億円と9年度予算の公債費864億円を大きく上回る返済を迫られることとなります。

 これに、その年度ごとに、新たに発行される県債の償還が加わるわけですから、本年度と同規模で県債を発行した場合、私の試算では、10年度以降の公債費の割合は10%を超え、急速な公債費による財政の硬直化が大いに懸念されます。

 基金の取り崩しも深刻な状況にあります。

 平成9年度一般会計中の基金の取り崩し予定は、530億円でございます。8年度の取り崩し額が最終補正後で285億円でありますから、実に前年度の2倍近くの基金を取り崩すことになります。

 これによって、平成3年度末に1763億円あった一般財源基金は、8年度末には、358億円にまで減少し、ピーク時の五分の一近くに減少することになります。

 まさに、借金を重ね、貴重な預金を吐き出しながらの苦しい予算編成であります。

 こうした県債発行による公債費の増加や基金の取り崩しによるによる財政の硬直化ともに、近い将来問題になるのが退職金を含む人件費負担増の問題であります。

 平成8年4月1日現在で、県人事委員会が行いました職員給与の実態調査資料もとに、私どもは、独自の分析を加えました。

 知事部局、県警、教育庁などすべての県職員の人員構成をグラフ化してみますと、

 38歳と39歳を一つの頂(いただき)とし、34歳35歳をもう一つの頂とする、茨城の象徴、筑波山の姿を見事に描きます。

 現在58才59歳の年齢層の方々が約1000名に対し、ピーク時の年齢帯の方々は、その約3倍近くの2700名以上と高い数値を示すわけです。

 現在まで、比較的抑制傾向できた人件費は、今後10年以内に大きな伸びを示すことが懸念されます。

 更に、職員退職金もその増加が懸念されるわけであります。

 東京都の小金井市で、平成9年度の退職金を支払うため「退職手当債」の発行許可を国と都に申請する予算が提案されました。小金井市には、退職金用の基金がありますが、4年度に約20億円あった基金は、取り崩しが続いており、一方で、市の歳入はバブル崩壊後、決算で5年度から3年連続で前年度比マイナスを記録する状態となっております。

 こうした中で歳入が好転せずに必要な事業を進めれば、9年度には基金を含め退職金に回せる自前財源がなくなり、退職手当債発行が必要になるとされております。

 無論、他の市町村の状況と県の状況を単純に比較することは出来ませんが、対岸の火事として見逃すことは出来ません。

 本県の場合、平成8年度県職員の退職金の平均は、一人約2630万円であります。

 毎年、退職金の平均が1.7%上昇すると仮定してみますと、退職者がピークに達する18年後には、退職金の平均額は1.35倍、退職者が2.7倍になることが推計されますから、退職金のみで約830億円の財源が必要となります。これは現在の3.6倍の規模となります。

 現在、県には退職金に充てる積立制度、つまり退職金のための基金はありません。民間企業では考えられないことであります。厳しい経営環境の中でも、退職引当金を造成することは義務的行為として行われているわけであります。

 県においても、退職金引き当て基金を前向きに検討する必要を痛感するわけでございます。

 また、人員の適正配置や思い切った定員の再検討が必要であると思います。

 更に、給与制度自体の見直しも課題となりましょう。

 具体的に、本日は一点だけ指摘させていただきます。

 現在、県では退職時の特別昇給制度が認められております。県の規則等によって、退職日、当日に2号報以内で基本給の昇給が認められ、退職金はその昇給された基本給をもとに支給されるため、勧奨による退職の場合約50万円程度が退職金に上乗せされております。

 この特別昇給制度一つにしても、県民に対して合理的な説明を加えることは難しいのではないかと考えるものであります。

 収入が不足している家計で、借金を増やし、貯金を取り崩して収入以上の生活をしていたならばどうなるでしょうか。早晩この家計は崩壊し、企業であれば倒産してしまいます。

 収入を増やすことが難しい状況である現在、支出の削減を何よりも優先させるべきでありましょう。

 それが行財政改革であり、一切の例外・聖域を設けず、行革の断行が求められております。

 こうした現状を踏まえ、橋本県知事に対して財政の硬直化をいかに乗り越え、中長期的視点での県財政の舵取りをどのようにされようとしておられるのか、ご所見をお聞かせいただきたいと思います。

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知  事

 井手義弘議員のご質問にお答えいたします。

 まず、中長期的視点に立った県財政の舵取りについてでございます。

 本県の財政状況を中長期的な視点から見た場合、議員ご指摘のとおり、公債費や人件費などの義務的経費の増こうは避けられず、財政の硬直化が一層進む恐れがごさいます。

 こういった状況を十分認識し、中長期的な財政の健全性を確保することは極めて重要であり、歳入歳出両面からの対応が必要でごさいます。

 まず、歳出面についてでございますが、限られた財源を最大限に活用していくためには、常に事務事業の見直しを進め、不要不急な歳出の削減を図っていくことが重要でごさいます。

 このため、従来から進めている事務事業の見直しを更に強化し、総ての事業について、その事業の必要性や予算額の妥当性など、聖域を設けることなく抜本的に見直しを実施してまいりたいと考えております。

 また、人件費や公債費など義務的経費の増こうに対処するため、中長期的視点に立った定員の適正化や、大規模な事業の計画的な実施にも努めてまいる所存でございます。

 さらに、国の定めております各種財政計画、県計画の年度ごとの行政投資額、公債費など義務的経費の推移などを前提に、財政収支のマクロ的な検証を行いつつ一定の見通しを立て、これをシーリングの設定にこれまで以上に反映させるなど、今日の厳しい財政状況にふさわしい予算編成方法についても検討してまいりたいと考えております。

 また、歳入面についてでございますが、税源の滴養を積極的に図ってまいることが重要でございますので、様々な産業振興施策を展開するとともに、産業を発展させていくための社会資本の整備も合わせて推進してまいりたいと考えております。

 このような基本的方針に基き、特に歳出面については、いずれも緊急に対応あるいは検討する必要がございますので、総務部内に設置いたします「行政改革・地方分権推進室」を中心として、ゼロべース予算の考え方を導入する等、具体的な財政構造の改善に結びつく実効性のある方策を検討し、現下のかつてない厳しい財政状況に対処してまいりたいと考えております。

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1-2 予算編成の仕組みの抜本的見直しについて

井手 義弘

 さて、先程もゼロベース査定導入の答弁がありましたが、現行の予算編成の仕組みには、抜本的に改善すべきポイントが4つあると思います。

 その第1は単年度予算消化主義ということであります。次年度の予算を獲得するため、年度末には無理をしても事務費を使い切る、こうした悪癖があることを否定できません。努力の結果、削減できた予算を次年度に繰り越すことの出来る制度、いわば「予算削減報奨制度」等を創設する必要があります。

 第2には、事業ごとの費用対効果の成果が明確にチェックできる仕組みがないことです。貴重な税金をどれだけ投下すれば、どれだけの成果が得られるか。その具体的な成果を図る指標を明確化する必要があります。

 茨城県長期総合計画、いわゆる新県計画に「基本計画の目標水準」として、136項目の具体的な目標値が掲げられました。県は毎年この目標の達成状況を報告することになっております。

 こうした具体的指標を全ての事務事業に設定し、その成果を明確に検証していくことにより、わかりやすい予算になると考えます。

 すでに、三重県においては、こうした「事務事業評価システム」が今年度から導入されております。三重県はこのシステムを、民間企業の経営指導ノウハウを持つ「日本能率協会」と共同で開発したと聞き及んでおります。自治体予算の執行にも益々経営感覚が問われているのであります。

 第3には、縦割り行政の弊害であります。

 事業のダブリや効率的な執行を図るために、部ごとの垣根を取り払った予算編成が必要であります。先の三重県の例では、「情報」「環境」「文化」「高齢化・福祉」など各部に共通な19のテーマごとに関係の部課長会議で調整する「マトリックス予算」を編成しております。

 茨城県においても、今年度、企画部が所管する情報化の推進事業の中で、「茨城県高度情報化推進協議会」が運営するインターネットの拠点を、福祉部が所管する「茨城福祉工場内」に設置するなど、部分的には縦割り行政の壁を超えた先駆的な事業展開も試されておりますが、やはり多くの事業でその弊害を感ずるところであります。

 また、市町村では、現行の予算編成を、事業別の予算編成に再編成する試みが全国で進んでおります。都道府県レベルでも、我が県が先陣を切ってこうした改革に挑戦していただきたいと期待するものであります。

 そして、第4は、他でもありません「県民の協力」であります。

 行政の無駄を、県民の監視の目によってなくしていこうという発想は、今後、ますます大切になってくると思います。

 ギリシャの哲人、キケロは「権力は腐敗する」という名言を残しました。

 権力に自らを律する自浄作業はないとの厳しい指摘であります。一般に人間はより楽な方向へ、利害を有する方向へ流れるものです。

 3月5日、埼玉県は、食糧費文書の出席者名や場所、会合の目的などを、3月17日から全面する事を発表しました。

 行政や議会の中に、予算の無駄を牽制する仕組みを強化することは是非とも必要ですが、それ以上に、情報を大幅に公開して、県民の手による行政監視のシステム作りを手がける必要があります。

 県民への情報公開は、県の予算編成の仕組みの改善、行財政改革の大きな柱であると主張いたします。

 単年度主義の是正、成果指標の明確化、縦割予算の是正と事業別予算、そして県民への情報公開と4点にわたって、現状の予算編成の課題を述べてまいりましたが、総務部長に無駄を徹底的に排除する予算編成について、今後どのように取り組もうとしているのか、お伺いいたします。

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総 務 部 長

 予算編成の取組についてのご質問にお答えいたします。

 本県の財政は、かつてない極めて厳しい状況に直面しているところであり、予算編成の手法につきましても、従来の手法にとらわれない新たな手法について、早急に検討を加える必要があるものと認識いたしております。

 これまでのいわゆるシーリング方式のもとにおきましても、事務事業の見直しが積極的に行われるよう、見直しを行った場合には、その見直しに係る予算額を新規事業に係る要求枠として優先的に認める措置を講じたり、あるいは、要求に対する予算調整の過程で、これまでの事業の成果を十分に吟味したうえで、新しい予算につなげるなどの作業を行う等、様々な工夫をこらしてきたところであります。

 また、予算査定の初期段階で、要求された事業を県の長期総合計画の施策体系別に整理するなどの作業を通じて、目的・効果を同じくする事業につきましては、重複することのないよう整理統合を図っているところであります。

 さらに、このような見直しを進めていくためには、県民の皆様のご理解を得ることが重要でごさいますので、財源の確保状況なども含め、予算案について従来にも増して詳細な広報に努めているところであります。

 県債残高の増こう、基金の減少など本県財政を取り巻く状況はますます厳しさを増してくると考えられますので、今後の予算編成に当たりましては、限られた財源を有効に活用し、最小の費用で最大の効果を上げることが必要なことはいうまでもありません。

 このような観点から四つのご提言をいただきましたが、議員ご指摘の点も十分に踏まえ、研究しながら、さまざまな改善を加え、よりよい予算編成に努めてまいりたいと考えております。

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2.障害者の就業推進策と権利擁護について

2-1 就業の状況と推進策

井手 義弘

 水戸市の段ボール加工会社の前社長が、障害者の雇用助成金を不正に受給し、元従業員の知的障害者に暴行を加えていた事件が昨年1月に発覚しました。前社長は、雇用助成金詐欺と傷害罪、暴行罪など4つの罪で起訴され、裁判は先月27日に結審しました。検察側は、障害者に対する人格蔑視の悪質な犯行として、懲役3年を求刑しました。

 今回の事件は、被告に対する詐欺事件や暴行、傷害事件の裁判という枠を超えて、障害者の雇用推進事業のあり方、障害者の権利擁護のあり方などを問う社会問題となっております。

 障害者への雇用の門戸が広く開かれ、その人権を擁護するシステムが確立していたならば、今回の悲しい事件は未然に防ぐことができたでありましょう。この事件をふまえ、障害者の雇用推進策と権利擁護についてお伺いいたします。

 まず、障害者の雇用推進策を商工労働部長にお伺いいたします。

 法定雇用率の側面から、障害者の雇用の現状を見てみますと、身体障害者および精神薄弱者の雇用の現状は、県内の市町村等職員の場合、人数で448人、雇用率は2.03%であり、県職員は119人、2.07%となっており、法定雇用率をぎりぎり満たしております。

 また、県内一般企業は、雇用人数で2442人、雇用率で1.58%であり、民間企業の法定雇用率1.6%を下回っております。

 県内全体では、法定雇用率という最低の水準さえクリアできないでいるのが現状であります。

 一方、県内の公共職業安定所に職を求めている障害者の数は、平成9年1月末で859人と、景気の回復が進まない中で、障害者の雇用の状態は深刻な状態に陥っております。

 また、障害者の雇用は、単に何人の障害者を就業させたかという入り口の問題だけにとどめて良いのでしょうか?

 現在の障害者の雇用推進体制には、「法定雇用率の達成を主な目標としているために、障害者を多数雇用する企業の審査が甘くなっている。一方で、数字には表れない就職後の『障害者の生活の質』に関する問題には、対応が不十分である」との批判の声があります。

就業した障害者がどのような環境で働き、どのような待遇を受けているのか、喜んで働けているのか否か、クオ リティ・オブ・ライフQOLからの発想で、十分なフォローアップをすることが必要であると思います。

 3月4日の衆議院予算委員会分科会において、水戸公共職業安定所が、昭和62年以来、14回にわたって先の段ボール工場を訪れ、雇用された障害者の作業や生活の状況を調査していたにもかかわらず、虐待を見落としていた事実を、労働省は認めました。

 こうした点も踏まえ、障害者の雇用を進めるため、県はどのような対策を取られておるか、商工労働部長にお伺いいたします。

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商 工 労 働 長

 障害者の就業の状況と推進策についての、ご質問にお答え申し上げます。

 本県の障害者の雇用率の状況につきましては、民間企業においては前年同率の1.58%と、全国平均1.47%を上回っておりますものの、依然として法定雇用率1.6%をわずかに下回っております。また、市町村におきましては、法定雇用率2.0%に対し2.03%と法定雇用率を上回っておりますものの、前年と比べますと。0.05ポイント低下した状況にあります。

 このような状況を踏まえまして、各公共職業安定所におきましては、企業訪問等により積極的な求人開拓を行いますとともに、障害者と企業が一堂に会し、面接・選考を行う障害者合同面接会を開催しております。

 また、障害者の雇用の拡大を図るため、国の制度であります、障害者を雇用した事業主に支給される、「特定求職者雇用開発助成金制度」に加え、我が県独自事業として「重度障害者等雇用奨励金制度」を設けており、こうした援護制度の活用促進に努めておりますが、今後とも、より一層の周知徹底を図って参りたいと考えております。

 さらに、就職後のフォローアップについてでございますが、従来から行っております障害者との個別面接や事業主指導に加えて、今後は、今回の事件も踏まえまして、特に、入・離職の激しい事業所や、知的障害者を多数雇用している事業所を、重点的に訪問指導を行いますほか、家庭との連携を図るなど、工夫を凝らした方法により、障害者の雇用促進と安定を図って参ります。

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2-2 養護学校での職業教育と進路指導の充実について

井手 義弘

 次に、養護学校での知的障害がある生徒への、進路指導の充実について教育長に質問いたします。

 昨年3月、182名の生徒が、養護学校を卒業いたしました。養護学校に通っている生徒に働くことの基本的な内容を教育し、適切な進路指導を行うことは、養護学校の重要な役目であります。また、新たに卒業し、就職した生徒の就業実態を把握することも、学校側の責任の一つであると考えます。

 知的障害のある生徒の就業を進めるために、養護学校では、どのように進路指導を充実されるのか、教育長にお伺いいたします。

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教 育 長

 精神薄弱養護学校生徒の、就業を進めるための進路指導の充実について、ご質問にお答えいたします。

 養護学校の生徒の就業を進めるための教育活動につきましては、まず、生徒の将来における職業生活や家庭生活に必要な基礎的な知識と技能を習得させるとともに、勤労を重んずる実践的な態度を養うことが大切なことと考えております。

 そのため、高等部の職業教育において、木工、窯業、農園芸、縫製などの体験を重視した作業学習を展開しております。

 また、生徒が自己の能力や適性等を知るとともに、卒業後の社会生活に対する適応性を高めるために、企業や関係する機関などで、約二週間程度の「現場実習」を行っております。

 この現場実習は、企業等においても、障害者への理解が一層深まり、ひいては障害者の雇用にもつながる良い機会となっております。

 5地域で年3回開催し、@公共職業安定所や、A福祉事務所、B事業所、C保護者等と情報交換をしながら、職場開拓や卒業生の就労の状況などの把握に、努めているところでございます。

 さらに、各養護学校では、夏期休業中に卒業生の会や卒業生の保護者会を開催したり、各企業等を訪問し、卒業後の適応状況等の把握に努めております。

 今後とも、企業等や関係機関の理解と協力を得ながら、進路指導の一層の充実を図ってまいりたいと考えております。

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2-3 障害者の権利擁護

井手 義弘

 さて、今回の事件は、障害者の人権問題として大きくクローズアップされております。障害者の権利擁護の体制整備について福祉部長にお伺いいたします。

 2月25日の衆議院予算委員会において、新進党の北側一雄議員の質問に対して、小泉厚生大臣は、「この事件については、かなり事前に、苦情なり実情が、関係方面に申し出があったに関わらず、この悪質な事業主に対してしかるべき措置がなされなかったという点では、その話を聞いた人が、配慮なり、誠意にかけていたという面があったと思う」、「厚生省として、労働省をはじめ都道府県関係者とどのような施策を講ずべきか鋭意検討していきたいと思っております」との趣旨の答弁をしております。

 私は、この事件は、福祉行政の欠陥につけ込まれた事件であり、その欠陥を放置した行政側の責任も厳しく問われていると認識しております。

 障害者の権利を守るために、被害者からの訴えがあったならば、真剣にその訴えに耳を貸し、対応する責任があったのではないでしょうか?また、被害者の声を積極的に吸い上げる仕組みの整備も必要であると思います。

 滋賀県等では、雇用主や福祉事務所、労働基準監督署、職安、養護学校関係者、そして保護者が同じテーブルについて、地域の障害者雇用の実態について、意見や情報を交換するネットワークづくりを進めていると聞き及んでおります。

 今回のような悲惨な事件を二度と起こさないため、障害者の権利を守る体制づくりついて福祉部長のご所見を、お伺いいたします。

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福 祉 部 長

 障害者の権利擁護の体制づくりでございますが、議員ご指摘のように、障害をもつ方々のなかには、自らの意思を伝えることが困難なため、権利を侵害されやすい状況にある場合がございます。

 また、ノーマライゼーションの理念が普及するにつれ、障害をもつ方々の自立や社会参加意欲が高まってきておりますので、相談体制の充実や関係機関の連携を強化していくことが必要であると考えております。

 このため、福祉事務所などの行政機関の相談体制をさらに充実してまいりますとともに、精神薄弱者相談員や身体障害者相談員等につきましても、より一層の活動の充実をお願いしているところでございます。また、障害をもつ方々やその家族が、日常生活における悩みや就労などの諸問題について、気軽に相談することのできる窓口を設置するなど、相談体制を「充実するため、本年4月から新たに「障害者110番事業」を実施することとしております。

 この事業は、これらの相談に応じるほか「障害者110番事業推進委員会」を設置し、福祉、衛生、労働、教育等の関係行政機関と障害者福祉団体などの相互の連携を図りながら、相談事案について迅速かつ円滑に対応してまいります。

 今後、これらの事業を通して、障害をもつ方々の権利擁護についても積極的に取組んで参りたいと考えております。

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2-4 障害者入所施設の建て替え

井手 義弘

 更に、障害者の権利擁護に関連して、県の障害者・入所施設の建て替えについて福祉部長にお伺いいたします。

 現在、県福祉部が所管する社会福祉施設は27を数え、そのうち障害者の入所施設は8箇所で、850名以上の方が入所しております。

 私も、昨年6月から7月にかけて、県立コロニーあすなろ、内原厚生園、こども福祉医療センター、リハビリテーションセンターなど現状をつぶさに調査させていただきました。こうした施設はいずれも、昭和30年代後半から40年代に建てられた施設であり、その老朽化が進んでおります。特に昭和38年に建てられた「内原厚生園」と35年に建てられた「こども福祉医療センター」の病棟は、その痛みの程度が著しく、限界に来ているというのが実感であります。

 入所者の快適に生きる権利を擁護する立場から、早急な建て直しが必要であります。

 厳しい財政状況の中で、こうした福祉施設をどのように建て直していくのか、福祉部長のご所見をお聞きいたします。

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福 祉 部 長

 次に、県立の障害者入所施設の建て替えについてでございますが、議員ご指摘のとおり、いずれの施設も、昭和30年から40年代に民間施設に先駆けて整備してきたものでございますので、建物は老朽化してきている現状にございます。

 一方、入所者は障害の程度が重度化、重複化してきておりまして、これらに対する十分な対応も必要となってきておりますし、また、県立施設としての役割や機能の面からの見直しも必要となっております。

 このため、本年度、新たに民間の有識者なとからなる「県立社会福祉施設等あり方検討委員会」を設置し、県立施設としてのあり方や整備に関する基本方針等について検討を進めてまいりましたが、本年2月に当委員会からの提言がとりまとめられたところでございます。

 この報告書では、民間との役割分担を見直すとともに医療機関や研究開発機関などとの連携を図り、より高度な専門的サービスを提供していくことや、児童から成人まで関連性を持った施設(児・者一貫に対応した施設)として整備していくこと。

 さらには、地域福祉支援のための機能を持った施設として整備することなど、示唆に富む提言がなされておりますので、その提言内容を充分に踏まえて、計画的に整備をしてまいりたいと考えておりますが、当面、老朽化の度合いの高い「内原厚生園」、これは知的障筈児・者施設でございますが、この施設から先行して整備を検討してまいりたいと考えております。

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3.上海事務所の現状と東南アジア地域の拠点づくりについて

井手 義弘

 私は、茨城県議会東南アジア地方行政視察団の一員として1月28日より、9日間アセアン4カ国を訪問いたしました。

 全体の報告は、本定例会初日に副団長より報告がございましたので、ここでは割愛いたしますが、この有意義な行政視察の中で、学んだことから2点、生活環境部長と教育長にご質問いたします。

 今回訪れた現地企業のトップの方が、異口同音に語っていたことは、「今後の大きな課題は、優秀な『すそ野産業』、いわゆる部品や材料を供給してくれる中小企業が進出してくれることだ」と語っておりました。県内の中小企業も、今後ますます、この地域に進出していくことが期待されております。

 また、「単なる観光旅行ではなく、文化活動やボランティアなどの人的な交流も、加速度的に増えている」とのことでありました。

 このような現状を見て、県の情報の拠点がこの地域にも是非ともほしいと考えたのは、私一人ではないと思います。

 昨年秋、同様な目的で、中国上海に県の駐在員事務所が開設されました。先の議会で、橋本知事は、「海外情報の的確な提供に努めるとともに、経済活動や国際交流など、中国における様々な活動を支援するための拠点として、あるいは中国の本県への窓口として、その機能の充実に努めてまいります」と、上海事務所について語っております。

 上海事務所の現状と、それを踏まえ近い将来、東南アジア地域にも、こうした拠点を整備する必要があると思いますが、生活環境部長にお考えをお伺いいたします。

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生 活 環 境 部 長

 上海事務所の現状と東南アジア地域の拠点づくりについてお答えいたします。

 上海事務所につきましては、多くの県民の方々や県議会の皆様、また上海市政府関係者などのご協力を得まして、昨年11月27日、開設したところでございます。開設以来、3ヶ月を経過したわけですが、この間、ビジネスや友好交流などで事務所を訪問された方は、県内関係者71名を含め約190名(その他日本人55名、中国人64名)、また電話による問い合わせも月平均200件を越えております。現在の上海事務所の具体的な活動内容を由し上げますと、調査関係では、通信機製造メーカーなど県内企業(10件)からの市場調査や進出関連調査、輸入先の紹介等の依頼があり、上海の関係機関から情報や資料を入手し、対応いたしました。

 また、今月18日、日立港と上海港との間でコンテナ定期航路が新たに開設されますが、この航路が円滑に発展していくよう、今後、事務所としても中国における荷主開拓などの面で、支援していく考えでおります。

 さらに、中国における茨城県の窓口として、茨城と中国のビジネスや友好交流の機会づくりを進めるよう積極的に対応しているところでございまして、本県への中国側訪問団の派遣につきましても、既に4つの訪問団の調整を行っております。この一つとして、先月、約20名の農業視察団が来県し、県内の農業関係者と活発な意見交換を行ったところでございます。

 また、技術協力の分野でも、上海市と事務所が調整した結果、来年度に上海市の都市計画関係職員1名を受け入れる予定でありまして、様々な角度から茨城と上海の協力関係の強化を図っているところでございます。

 このほか、上海における本県関係者の連携を促進するため、今月13日には上海茨城県人会を設立することとしています。

 このように、事務所の役割は多面にわたり、利用も多いことから、これに的確に対応するため、4月には県経済界からも職員を一名派遣して頂き、事務所の体制をより一層強化し、県民の皆さまのニーズにあった事業の展開を図って参りたいと考えております。

 次に、議員ご指摘の東南アジア地域の拠点づくりについてでございますが、この上海事務所の設置に当たりましては、マレーシアやシンガボール、タイなど東南アジア各国を対象に、様々な角度から設置場所を検討し、この中で県民の皆さまが最も関心を持ち、経済面、交流面で要所となっている上海を選んだわけでございます。

 したがいまして、当面は、この上海事務所を充実・強化していくことが大切と考えておりまして、ご指摘の東南アジアの他の地域への拠点づくりにつきましては、上海事務所の充実強化が図られた上での次なる課題として受け止めさせていただきたいと存じます。

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4.マルチメディアを活用した教育の推進について

井手 義弘

 次に、シンガポールでの調査結果をもとに教育長にお伺いいたします。

 シンガポールは、人口299万人と本県と同規模であり、平成7年のGDPは、7兆4510億円であり、茨城県の県内総支出9兆8812億円と比べても見劣りのしない、東南アジア随一の経済規模を誇る都市国家であります。

 特に情報通信基盤の整備では、すでに日本を追い越して世界トップクラスの状況であります。人口1万人あたりのインターネット接続パソコンの普及率は、平成7年の数値で日本が21.61台であるのに対して、シンガポールは、77.69台と3倍以上の普及率となっております。

 現在シンガポールは、インフォメーション・テクノロジー2000(IT2000)という計画が進行しております。

 特にその中でも、1995年5月より稼働している「NL・ライン」と呼ばれる「シンガポール国立図書館ネット」は注目に値します。このインターネットによるサービスによって、自宅のパソコンから、国内図書館の全ての蔵書に対して書名や著者名、出版社や内容による検索が可能となりました。

 ある作家の本が読みたいとき、その名前を入力すると蔵書の一覧が瞬時に表示されます。そのうち、借りたい本をチェックすると、その本がどこの図書館にあるか、貸し出し中か否か、いつから、いつまで貸し出し中かが明示されます。そして、最後はその本がある図書館地図と連絡先が表示されます。まさに、インターネットの利便性を最大限に活用したシステムであります。

 また、学校におけるコンピューターの活用も大いに進んでおります。シンガポールの小・中・高等学校、356校の大部分にマルチメディア教室とコンピュータ教室が整備されております。原則として生徒ひとりに一台のパソコンが、小学校から完備しています。

 そうした、パソコンはインターネットに接続され、2割以上の89校がホームページを公開しておりました。

 「教育分野でのマルチメディア活用の先進事例は、シンガポールにある」ことを実感した視察となりました。

 こうした現状を踏まえ、教育長にご質問いたします。

 昨年9月、この一般質問壇上で、私は「全ての県立学校に一回線のインターネット接続を」と、提案させていただきました。県立学校へのインターネット接続事業はどのように進展しておりますでしょうか。

 また、「生涯学習センター」や「県立図書館」のデータベースをインターネット対応型に整備して、県民の利便性を高めることが必要であると思いますが、教育長はどのようなお考えをお持ちでしょうか、ご所見をお伺いいたすものです。

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教 育 長

 教育分野におけるインターネットの活用についての御質問にお答えいたします。

 まず、県立学校へのインターネットの接続についてでございますが、先の第3回定例会において議員の御質問にお答えいたしましたように、インターネットを学校教育において活用することで、教育上大きな効果が得られますので、今後積極的に導入していく必要があり、そのための環境整備が極めて大切であると考えております。

 そこで、県では、平成9年度と10年度の2年間で県立学校全校にインターネットを接続することといたしまして、平成9年度におきましては、55校について必要な整備を進めて参りたいと考えております。

 また、学校がインターネットを有効に活用できるよう、教育研修センターにネットワークサーバを設置し、様々な教育情報のデー夕べースを整備するとともに、学校におけるホームべージの開設、教材や資料の収集・活用のための支援をして参りたいと考えております。

 次に、生涯学習センターと県立図書館のデー夕べースをインターネットに対応して整備することについてでございますが、生涯学習センターにつきましては、水戸生涯学習センターにおいて、学習機会や催し物などの情報をデー夕べース化しており、現在、パソコン通信により、市町村の公民館等128施設の端末機や各家庭のパソコン等を通じて御利用いただいております。

 県立図書館につきましては、現在、図書館サービスの電算化に向けて、図書資料のデー夕べース化の準備を行っているところでございまして、平成9年度からシステムの構築やデー夕の入力に着手して参りたいと考えております。

 今後は、両施設の、インターネットへの接続に向けて、段階的に整備を進め、県民サービスの層の向上に努めて参りたいと考えております。

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5.県北臨海部の再活性化について

5-1 産業の再活性化策

井手 義弘

 最後に、県北臨海部の再活性化についてお伺いいたします。

 今、私どもが住む日立市は、産業の空洞化が深刻になり、人口の減少と景気低迷による危機的状況を迎えております。平成2年に803社あった製造業業者は、その後減少の一途をたどり、平成6年には673社と2割近く、落ち込みました。同じように、

 3034店あった商店は、平成6年には、2709店と一割以上減少しております。

 人口の減少も深刻であります。昭和58年206,260人に達した日立市に人口は、平成7年の国勢調査の結果20万人の大台を割り、更に減少を続け本年1月1日現在では、197,824人となっております。

 こうした深刻な状況の下、2月に決定されました新しい日立市の基本構想では、新たな人口施策として「交流人口」の拡大を掲げました。「にぎわいとふれあいのある街づくりを進めるため、日立市を訪れる人々を対象とした交流人口の拡大を図る」ことを、基本構想のベースに設定いたしたのです。

 私は、こうしたいわゆる定住人口だけではなく、交流人口を街の活性化の指標として取り上げるとは、非常に重要な視点であると思います。

 文化や教育、産業の振興という分野でも、県北臨海地域や隣接する常陸太田市、東海村などの広域的な広がり中で考えることに大きな意義があると思います。こうした発想が、単一の市から明確に打ち出されたことを、県としても重く評価すべきであると考えます。

 さて、この交流の拠点づくりを目指す日立市に対して、県が支援をすべきポイントが2つあると考えます。

 その第1は、交流の受け皿である日立市自体の体力の強化、産業の再活性化への支援ということであります。

 日立市の産業の弱点は、単一的な産業構造であったことは論を待ちません。産業の空洞化を克服するためには、高い技術力や豊富なマンパーワーを十分に活用しつつ、より多彩な産業を興す必要があります。

 今後、国においては、「特定産業集積活性化法」が提出され、研究開発支援施設や、人材育成施設などに対する補助や、中小企業の技術開発、新商品開発、販路開拓などへの補助事業が行われると聞き及んでおります。

 県においても、平成9年度予算では、「特定地域産業活性化特別対策」予算が計上されております。

 そこで、商工労働部長に、この対策の詳細と具体的な施策の展開についてご説明いただきたいと思います。

 さらに、こうした事業は、県と地元市町村との密接な連携が不可欠になると思います。また、地域の企業との連携も重要であります。特定地域産業活性化特別対策の推進体制についてご所見をお伺いいたします。

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商 工 労 働 部 長

 次に、県北臨海地域の産業の再活性化策についてお答えいたします。

 日立市を中心とした県北臨海地域においては、大企業の海外展開が進み、特に量産製品の部品等の生産に携わってきた地域の中小企業は、受注量の減少など厳しい経営環境にさらされております。

 こうした状況に中小企業が対応するためには、技術開発力、販売力並びに経営管理能力の向上等により、自立化を図っていく必要があります。

 このため、県といたしましては、これまで、中小企業への専門的技術者の派遣や新製品・新技術開発に対する助成、さらには、厳しい経営状況にある中小企業に対する低利の資金の提供等を行ってまいりましたが、平成9年度には、特に厳しい状況に置かれている県北臨海地域を対象とした、特別対策事業を実施することにしております。

 まず、特定大企業への依存から脱却するため、共同で受注先の開拓を行おうとする下請企業グループに対し、運営費の補助等を行う「共同受注グループ育成事業」を実施いたします。

 また、当地城の基盤技術の高度化を図ることにより、新しい産業を創出することを目指して、県の工業技術セン夕―が中心となり、産学官による共同研究開発を行う「新産業創出共同研究開発事業」を開始いたします。

 さらに、大学、大企業等が保有する末利用の特許等を活用して、中小企業が新技術・新製品開発を行う場合、その経費を補助する「産学技術資源製品化等支援事業」を実施いたします。

 なお、こうした事業を推進する上で、御指摘のとおり、地元の企業や自治体との相互協力は重要であります。

 このため、利用可能な特許の選定や中小企業の技術力向上のための人材の提供、共同研究関発テーマの検討、さらには、県の支援策と市町村の支援策との連携等について、地元企業、自治体との意見交換の場を設けるなど、これまで以上に緊密な話し合いを行いながら、実効性のある施策を展開してまいります。

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5-2 道路網整備

井手 義弘

 その第2は、交流のための血管、動脈の整備であります。具体的には、周辺市町村との道路網の整備促進であります。

 特に、南北の大動脈である国道6号線、並びに国道245号線の整備と東西の動脈である県道日立笠間線の整備は、緊急かつ重要な課題であります。

 まさに、日立を中心とする県北地域の道路網は、常磐高速道を除いては、動脈硬化、否、脳血栓で瀕死の状況に陥っております。

 そこで、国道6号日立バイパスの工事進捗状況と榊橋の掛け替え事業の進捗状況、ならびに県道日立笠間線についての今後の整備計画について、土木部長にお伺いたすものです。

 いま、日立市では、行政、議会、企業、そして市民が、その再活性化を目指して必死の努力を積み重ねております。県におきましても、地元自治体と一体になって、この県北臨海地域の振興に全力を傾注していただきたく強く要望いたすものです。

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土 木 部 長

 答弁に先立ち、一言ご挨拶を申し上げます。このたび、土木部長事務取扱を拝命いたしました人見でございます。誠心誠意務める所存でありますので、よろしくお願い申し上げます。

 それでは、日立を中心とする県北地域の道路網の整備についてお答えいたします。

 初めに、国道6号日立バイパスと榊橋の架け換え事業の進捗状況についてでございます。

 まず、国道6号日立バイパスでございますが、現在、国の直轄事業により、日立市旭町から田尻町までの延長4.7キロメートル区間につきまして、整備が進められているところであります。

 このうち陸上部の1.5キロメートル区間につきましては、切土工事等が概成しております。残りの海上部3.2キロメートル区間につきましては、高架部と埋立部からなっており、本年2月には公有水面埋立法の承認などがなされましたので、年度内には工事に着手する予定となっております。

 次に、榊橋の架け換え事業の進捗状況でございますが、全体延長2.3キロメートル区間のうち橋梁延長約500メートルについて整備が進められており、これまで久慈川に架かる橋梁区間の架設が完了しております。

 現在、日立市側の取付区間の用地買収、および高架橋の橋台や橋脚工事が進められているところであります。

 平成9年度は、上部工工事を進め、平成10年度には、橋梁を含めた前後の約1キロメートルが2車線で供用される予定であります。

 県といたしましては、引き続き、日立バイパスならびに榊橋の早期開通を国に働きかけてまいりたいと考えております。

 次に、県道日立笠間線の今後の整備計画についてでございます。

 県道日立笠間線は、臨海部の日立市から常陸太田市を経由して、笠間市に至る重要な路線であります。このうち、日立市から常陸太田市に至る区間は、大部分が未整備で、一部交通不能ともなっており、現在、重点的に整備を進めております。

 まず、日立市を縦貫する山側道路の一部区間となります、大久保町から金沢町までの2.2キロメートルにつきましては、平成8年度に橋梁の設計と併せて用地測量を実施しております。

 平成9年度からは、早期に工事に着手できるよう、用地買収を進めてまいります。

 さらに、金沢町から常陸太田市幡町に至る約5.5キロメートル区間につきましては、多賀山地を横断する山岳道路であることから、延長約1.4キロメートルのトンネルを含めたルートを基本として、事業化のための調査を進めております。

 平成9年度には、引き続きこの区間について、測量や道路設計などを進めるとともに、常陸太田市側の取付道路区間について事業化を図ってまいります。

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県北生涯学習センターについての要望

井手 義弘

 時間が限られておりますので、再質問に代えて、一点だけ要望を申し上げます。

 最後の質問で申し述べましたように、今、私の住む県北臨海地域は、産業空洞化の荒波のさらされております。

 そうした中で、地域の再活性化を進めるためには、人々の交流の拠点施設、マグネット施設が是非とも必要であります。

 特に、産業の拠点づくりだけではなく、文化や教育の拠点づくりが必要であります。

 幸い、日立市には、市民参加による生涯学習組織やボランティア組織が数多く、活き活きと活躍しております。

 昨年8月、私ども日立市選出の県議会議員5名は、会派の壁を超えて、現在計画されている「県の県北生涯学習センター」の日立市への誘致を橋本知事に要望いたしました。

 県北生涯学習センターこそ交流の核、拠点になりうる施設であると、その立地を期待する日立市民の声は日増しに高まっております。

 平成9年度予算案には、その調査費が初めて認められました。

 21世紀を展望した綿密なる調査・検討が行われ、日立市への建設が決定されることを期待するものです。

 知事並びに教育長に県北生涯学習センターの日立市への建設を重ねて要望いたしまして、私の質問を終わります。

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