臍帯血バンクLIGO
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 以下の文は、厚生省臍帯血移植検討委員会の「中間まとめ」(概要)を、井手よしひろの責任でHTML化し掲載したものです。

臍帯血移植検討会中間まとめ(概要)

平成10年7月27日

1.はじめに

 臍帯血移植は、臍帯血を提供をいただく方の身体に侵襲を伴わない点やコーディネーションの手順を必要としない点等の利点があり、造血幹細胞移植の希望者に移植による治療の機会と選択の幅を広げることになるものと期待されているが、移植実施体制を構築するためには、技術的なあるいは運営・財政上の課題があり、厚生省において保健医療局長と医薬安全局長の発議により、これまで10回の検討会を開催し、今回「中間まとめ」を取りまとめた。

2.臍帯血移植の現状

 臍帯血移植は、わが国おいては、平成10年6月1日現在で50例(平成6年に第1例)が行われ、うち非血縁者間の移植は27例である。諸外国においても700例程度が実施された段階であり、臍帯血移植の症例の集積や分析は、必ずしも十分にはなされていないのが現状である。
しかし、一方でこの治療法に対する期待が全国的に高まっており、また本年4月から移植術について医療保険の適用が行われたところである。

3.非血縁者間の臍帯血移植の全国規模での取り組みの必要性

 現在、臍帯血バンクの取り組みが全国9か所で始まっているが、品質及び安全性の観点において、不均一な状況にあり、全国的に臍帯血を提供する体制は整備されていない。このため、統一した基準により臍帯血を保存し、その情報を全国的に提供する体制を早急に整備することが求められる。

4.臍帯血移植体制の整備に向けての考え方

(1)臍帯血移植の性格及び位置づけ

@臍帯血移植の性格

医療としての臍帯血移植は、移植した造血幹細胞が生体に生着し、生涯にわたり増殖、分化することにより疾病を根治させることを目指すという意味において、移植そのものである。

A臍帯血移植の位置づけ

他の治療法との間の相対的な有効性・安全性が確認されるまでの間は、骨髄提供者が得られない場合、または骨髄提供者が得られたとしても、患者の病状から骨髄移植の実施を待てない場合に臍帯血移植を行うことを原則とする。

(2)臍帯血移植の運営体制の整備に向けての考え方

以下の考え方に基づき、具体的な体制を構築するものとする。

  1. 善意・任意・無償の提供の尊重
  2. 公平・適正な使用
  3. 安全性・有効性の重視
  4. 利用者の利便性への配慮
  5. 迅速性の重視
  6. 関係者の協力体制の整備
  7. 十分な説明の必要性
  8. 個人情報の保護と情報公開
  9. 移植医療部門からの独立
  10. 目的外の利用の禁止
  11. 国際化への対応
  12. 効率性の確保

(3)具体的な運営体制のあり方

具体的な運営体制のあり方については、以下の考え方に基づき、構築していく。

  1. 採取・分離・検査・保存を行う施設は、臍帯血の採取から保存までのそれぞれの過程について、設備や人員などに関し安全性等に十分配慮されていることが必要である。
  2. 情報システム体制は、全国的な規模で臍帯血のHLA型及び細胞数の情報を共有・共同管理するとともに、それらの情報を公開することが必要である。
  3. 移植の適応・臍帯血の品質・移植成績等の評価については、客観的かつ中立的に審査及び検討を行う機関を設けるとともに、その結果について情報公開を行うことが必要である。
  4. 採取施設から保存施設への搬送については、時間内に分離保存ができるように必要な体制を保存施設において整備することが求められる。
  5. 保存施設から移植施設への雑送については、当面、それぞれの臍帯血バンクにおける実態に合わせて体制整備を図ることが実際的である。
  6. 移植を実施する施設は、一定数以上の移植経験を有すること等、寸分な体制の整った施設とし、その施設名について登録をするとともにこ必要な情報を公開することが求められる。
  7. 財政構造のあり方については、具体的な公的支援(医療保険の適用を含む。)を含め幅広く検討していくことが求められる。

(4)初期的段階における体制の整備

@安全な保存臍帯血の緊急整備及び情報の共有・管理

 初期的段階においては、安全な保存臍帯血の緊急整備に向け、地域における活力ある臍帯血バンクの充実を図るとともに、一方で全図的な見地から公平かつ安全な臍帯血移植の推進を図る必要があるため、国の支援の下、関係者(臍帯血バンク関係者以外の者を含む。)による以下に述べるような共同事業を行っていくことが求められる。

A共同事業の内容

 具体的な共同事業の内容については、以下の項目が考えられる。
  ア)各臍帯血バンクの連絡調整
  イ)採取・分離・検査・保存方法の標準化
  ウ)臍帯血の情報の共有・共同管理
  エ)各臍帯血バンクの運営及び保存臍帯血の品質・安全性についての評価
  オ)移植医療機関の登録
  カ)関係機関との連絡調整
  キ)適応等の評価(事後)
  ク)治療成績の評価
  ケ)提供児のフォローアップの評価
  コ)情報の公開
  サ)国際協力
  シ)共同研究

B共同事業に参加する臍帯血バンクの基準

 非営利性、安全性、供給実績、技術力、財政力、組織、設備、事務体制等の観点から評価基準を定め、共同事業に参加しようとする臍帯血バンクを公平・公正に審査を行い決定する。

C共同事業の実施

 (4)Aで述べた共同事業を円滑に実施するため、関係者(臍帯血バンク関係者以外の者を含む。)により構成する「臍帯血バンク連絡協議会(仮称)」を設置することが必要である。

D共同事業の審査・評価を行う機関の設置

 審査・評価を行う機関を共同事業とは独立して別に設置することが求められる。

E臍帯血移植に関する研究の推進

 臍帯血移植の基礎的研究、臨床的研究等、総合的に研究を推進することが必要である。

(5)必要とする保存臍帯血の目標数

臍帯血の保存件数については、5年を目途として2万個程度を整備し、HLA型の5抗原以上が適合する条件の下で、希望する者の9割以上に臍帯血を提供できる体制を目指す。

5 臍帯血移植を実施するための手順

 本検討会の中に作業部会において、安全かつ有効な臍帯血移植を実施するための手順を示した「臍帯血移植の実施のための技術指針」を策定した。

6 おわりに

 今後、本検討会において、臍帯血移植の実施状況を踏まえ、将来の運営組織のあり方等、臍帯血移植をめぐる諸問窺について、引き続き検討していくものとする。

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