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 Copyright Yoshihiro IDE (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp)最終更新日:1998/May/02


遅れた茨城県の血液自給体制

 人命を救う貴重な輸血用血液。県内では各病院の需要に追いつかず、県外からの補給で賄っているのが現状だ。県外からの供給は1995年度で3600単位に上った。県外へ供給した分を差し引いた「輸入超過」も29,964単位になり、過去最高になった。茨城県の献血率は全国ワースト2位。しかも献血者数が減少の一途をたどっている現実がある。

更に、平成9年には、茨城県赤十字センターでの労使紛争が起こり、長期に渡って献血体制がストップするという不祥事も起きた。日立献血ルーム「さくら」の開設を機に、献血体制の一層の強化が臨まれている。

 

献血者数

日赤茨城赤十字センターの労使紛争の経緯
年月日
主な内容
労 使 紛 争 の 経 緯
97年8月21日
組合全面スト突入

茨城県赤十字血液センター(川口隆司所長)の職員が加入する日本赤十字労働組合茨城血液センター支部(大月要委員長、78人)が、夏期一時金をめぐって無期限ストライキに入る。

採血業務が全面的にストップ。

センターには日赤労組と別の組合の二つがあり、看護婦の多くが日赤労組に加わっているため、採血ができなくなった。病院への供給は別の組合員や非組合員で続けている。

センターには、赤血球や血小板は4、5日分、血しょうについては1週間分の備蓄がある。不足分が出ても、中央血液センター(東京)の調整で、他県からの補給を受けられるという。

 組合側は7月、県地方労働委員会にあっせん申請をしたが、話し合いが決裂していた。日赤の血液センターの労働争議で、職員が全面ストに突入したのは異例中の異例。

97年8月28日
部分ストに戦術変更

全面ストを部分ストに変更したが、採血業務は全面的に停止。

97年9月2日
一部採血業務再開

 県赤十字血液センターが、13日ぶりに一部で採血業務を再開した。

採血をしたのは、2つある献血ルームのうち、水戸市南町3丁目の水戸献血ルームで、午前9時半から午後4時15分まで開いた。同労組は、一時ストを解除したが、28日から部分ストを続けている。

97年9月11日
献血中止相次ぐ

献血中止が相次ぐ。県内で計101カ所で採血が中止され、これだけ多く中止になったのは、県内では初めて。

97年9月22日
移動採血業務再開

スト一時解除した。県赤十字血液センターは移動採血車での業務をこの日、水戸市など2カ所で再開した。しかし、同支部は「戦術的判断から一時的に解除した」と説明。

97年9月23日
東京より採血車

日立よかっぺ祭りでも、献血計画が大きく狂う。日立中央ライオンズクラブ(森秀男会長)は、22日に予定していた献血が中止されると連絡を受けた。 同クラブは、35万CCの献血を目標に活動している。善後策として、採血車2台を用意して、中央血液センター(東京)から看護婦5人の応援を得るなど、特別態勢で献血を実施する予定だ。

97年10月20日
県議会で労使紛争が取り上げられる

県議会予算特別委員会で、県赤十字血液センターで続いている労使紛争の問題が取り上げられる。

県は同センターの日曜、祝日の勤務手当が日赤の規定を3割近く上回ることや、職員が同センターから献血ルームまでの移動にタクシーを利用している実態などを明らかにした。

牛尾光宏・県衛生部長は「長期にわたる異常な労使関係から発生した体質そのものが問題。今後は日赤本社と連携を強め、組織の体質改善を図る」との考えを示した。

 同センターでは今年6月、夏の一時金支給額をめぐり、2つある労組のうち日赤労組茨城血液センター支部(大月要委員長、組合員76人)との交渉が決裂。同支部は、8月21日から4日間の全面ストの後、1カ月間は部分ストを実施した。現在は平日のみ、献血業務を実施している。また、県地方労働委員会が、同支部からの不当労働行為救済の申し立てを審査している。

今回の紛争について同センター側は「財政難の中の一時金では、全国一高い上乗せ金を要求通り支払う余裕はなく、組合側に理解を求めたい」として、当初の減額方針を貫く構え。一方、労組側は「組合は譲歩しているのに、執行部は減額案を一歩も譲ろうとしない」と批判している。

 さらに、同特別委でこの問題を取り上げた石川多聞議員(自民)は、組合が9月4日、全国の組合委員長あてに出した「(執行部を)支援する血液提供は慎重な対応と非協力の態度を取るよう交渉を申し入れること」などと、呼び掛ける文書の存在を指摘。これに対し、牛尾部長は「関東近県ほか29の血液センターからの支援を得ており、業務に支障はない」と述べた。

97年10月29日
県から正常化勧告出される

茨城県が、県血液センターに採血業務の正常化を求める勧告を文書で行った。

勧告は、今回の紛争が県内での血液必要量の約9割を県外に依存する異常事態を招いていることを指摘し、速やかな事態収拾を求めた。

県が同センターに勧告書を出すのは初めて。

牛尾光宏・県衛生部長は、川口隆司・同センター所長らを前に勧告書を朗読。医療機関への血液供給が慢性的に不足している県内の血液事情を挙げたうえで、今回の事態について「県議会や県医師会などから厳しい批判が出ており、新しい血液センターを設立すべき、との意見すらある。早急に全職員を挙げて血液の自給自足、経営の健全化に向けた体制整備を図り、県民の信頼を回復するよう勧告する」とした。

これに対し、川口所長は「勧告を重く受け止め、センターの改善に努めます」と述べた。

97年12月1日
労使紛争一応の決着

◇一時金、地方労働委員会の勧告を受け入れ

県赤十字血液センターの労使が1日、県庁で橋本昌知事を立会人とし、経営改善や労使関係の健全化に努力するとした確認書に調印した。夏の一時金をめぐる労使対立から7月以降、スト通告が解除されないなどの異常事態となっていたが、一時金問題は県地方労働委員会の和解勧告受け入れで決着。

◇団体交渉も再開

確認書に調印したのは同センターの川口隆司所長と、対立していた日本赤十字労働組合茨城血液センター支部の大月要委員長、さらに同センター職員のもう一つの労組である県赤十字血液センター職員組合の川又英治委員長、立会人の橋本知事の4人。

確認書では

  1. 県民の善意に応えられる献血体制の確立
  2. 経営収支の改善
  3. 健全な労使関係と交渉ルールの確立

の3点に努力すると明記。具体的な改善点として、時間外勤務に関する協定締結や献血ルームの職員配置など14点を別紙に掲げた。

また、夏季一時金問題では、労組側が出した不当労働行為救済申し立てに対し、地労委が先月26日に提示した和解勧告を、労使双方が1日までに受け入れた。センター提示額を了承する代わりに、センター側が示していた5カ年計画の減額方針を見直すことで合意したという。

98年3月9日
「血液供給安定化懇話会」開催される

血液センターの労使対立で、業務が混乱した県血液センターの慢性的な血液不足の改善などを目指して発足した「血液供給安定化懇話会」(会長、阿部帥・筑波大副学長)の初会合が、水戸市内で開催される。

委員から血液センターの体制不備を指摘する厳しい意見が出た。

懇話会は、血液センター労使や県のほか、県医師会、献血者団体代表、学識経験者など14人の委員で構成されている。

支部の説明では、県内の献血可能人口に対する献血率は全国最低水準で、血液の他県依存率も32・9%(昨年9月末現在)と、全国平均の5・8%から突出。事業収支でも隣接県が軒並み黒字の中で、今年度は5億5000万円程度の赤字になる見込みだという。

こうした現状に対し、委員の綿引忠・水戸献血連合会会長は「善意の献血者から採血し切れていない」と不満を表明。望月貴・県衛生部次長も「人が集まる会場に移動採血車が来ず、他県に比べて稼働率が低い」と述べるなど、批判が相次いだ。

一方、血液センターの小林栄一事務部長は昨年末、労使と県が交わした確認書に基づき、採血体制の拡充策を説明。「職員の時間外勤務が可能になり、今後は採血時間を延長できる見通しになった」と述べた。

98年5月1日
日立献血ルーム「さくら」が開設

県内で3番目の献血ルーム「さくら」が日立市にオープンした。

参考:日立献血センター「さくら」のHP


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