2000/10/23update

第3回公明党全国大会 重点政策(案)
21世紀「健康日本」の構築 ―― “活力と安心の生活大国”をめざして ――


第2部


四 安心できる少子高齢社会へ改革を進めます

 相当な混乱が予想された介護保険制度は、与党三党が制度開始前に決定した特別対策の効果もあって、おおむね順調なスタートとなりました。しかし、要介護認定の公平性の確保、ホームヘルプサービスの不適切な利用等改善すべき点も多く指摘されております。介護保険制度の抜本的な見直しの検討とともに、制度改善を早急に行わなければなりません。また年金、医療、福祉各制度も少子高齢社会にふさわしい制度へと改革を進めてまいります。

1 安定した年金制度の構築

(1)基礎年金の充実と雇用との連動

 財源における税負担を2分の1とし、現役世代の保険料負担を軽減します。年金水準は物価スライドのみでなく、高齢期の負担(介護保険料等)を踏まえた見直しを行います
 また、雇用制度改革を通じ60歳台現役社会の実現するとともに、高齢者がその能力を職業を通じて発揮できる生涯現役社会の実現をはかります。

(2)厚生年金における世代間負担の格差の是正

 厚生年金等の報酬比例部分は、負担と給付の関係を明確にし、世代間の負担の格差を是正するという視点から、段階的にその方式を積立方式へ移行します。

2 介護保険制度の安定運営の確保と改善

(1)介護基盤の整備

 地域によっては基盤整備が遅れているところがあります。特に、特別養護老人ホーム、デイサービスセンター、痴呆性高齢者グループホーム等の整備についてはゴールドプラン21の前倒し実施を進めます。また、介護保険導入により自立と認定される高齢者の「住」の受け皿として高齢者生活福祉センターの設置要件の緩和をはかるとともに、一層の整備を促進します。

(2)介護相談員派遣事業・福祉用具貸与の改善

 介護相談員派遣事業など介護サービスの質の向上のため、自治体における取り組みに対する支援を強化する必要があり、支援のための予算の増額をはかります。福祉用具貸与業務については、弾力的な運営ができるよう改善します。

(3)保険料や利用料などの利用者負担への対応

 低所得者に対する保険料の軽減対策にさらに取り組むとともに、利用料にかかる低所得者対策について、社会福祉法人による利用料の減免措置などがより多くの自治体で実施されるよう制度の周知徹底をはかります。また、平成13年10月に向けて、さらなるきめ細かな低所得対策を検討します。

(4)介護予防・自立支援事業の取り組みについて

 介護保険制度が始まって、介護予防・自立支援事業の必要性が高まっていますが、市町村の実施体制にはかなりの格差が見られることから、市町村の介護予防拠点整備のための財政支援を行うとともに、運営費についてもさらに拡充をはかります。

(5)障害者に対する一元的な介護サービスの給付

 一般の障害者も介護保険の対象として一元的にそのサービスを受けることができるよう制度の見直しを進め、障害者に対する介護サービス水準の充実をはかります。

3 子育てと仕事が両立できる環境を整備

(1)保育サービスの充実

 待機児の解消のため、保育サービスの量的な拡充をはかるとともに、民間参入を進めることにより、より利用しやすい多様な保育サービスを実現します。一時保育、駅前保育、病後児保育等の多様なサービスを整備します。また、幼保一元化を推進します。
 核家族化のなかにあって、子育てに対する不安、負担が児童虐待などの一因となっているという指摘を踏まえ、子育て支援センターの整備など地域における子育ての支援体制を充実します。

(2)育児・介護休業制度の拡充

 働きながら子育てが安心してできる環境を実現するため、育児・介護休業手当の引き上げをはかります。また男性も利用しやすくなるよう改善します。

(3)乳幼児医療体制の充実

 乳幼児(就学前児童)の医療費の無料化をはかるとともに、出産育児一時金の増額や母子保健の充実に取り組みます。また小児科救急医療体制の整備を進めるとともに、不妊治療に対する経済的負担の軽減をはかるなど支援体制の拡充を進めます。

(4)豊かな住環境の整備

 公的住宅の供給、家賃補助、民間特定優良賃貸住宅等の制度を進め、子育てに相応しい住宅環境の実現、都市部に著しい家賃負担の軽減をはかります。

4 健康日本を支える保健・医療制度の確立

(1)21世紀の健康長寿社会の実現

 健康長寿社会の実現のため、地域における生活習慣病対策や健康づくり対策を進め、保健・医療・介護の連携を強化します。また、健康な高齢期の創造のため、脳卒中対策の推進や痴呆の原因究明、介護の充実、さらには骨・関節についての研究からリハビリまで総合的な対策を「メディカル・フロンティア戦略」として積極的に進めます。

(2)新たな高齢者医療制度の創設

 75歳以上の後期高齢者を加入者とする新たな高齢者医療保険制度を創設し、介護との適切な連携の下に給付を行う制度とします。

(3)医療提供体制の総合的な改革

 高度化、複雑化する医療のなかにあって、インフォームド・コンセント(医師の十分な説明と患者の同意)の充実、医療の質の評価の確立などを通じて患者のための質の高い医療の実現をはかります。
 また、医療提供体制における機能に基づく体系化、競争原理の導入、情報化を進めることにより、医療提供体制の効率化をはかるとともに、診療報酬体系の改革や薬価差益の解消等、薬価制度の改革により、適切に医療技術が評価される制度を確立します。
 同時に離島、過疎地など、地域の実情に応じた医療提供体制の一層の整備を進めます。

(4)感染症対策の推進

 現行の予防接種法を改正し、高齢者を対象とするインフルエンザ予防接種の公費負担を実現します。また、予防接種、医療相談及び情報提供を行う予防接種センター機能の整備を推進します。さらに、エイズ、クロイツフェルト・ヤコブ病などの新興感染症に対して、医療機関、薬局、諸外国からの情報を収集する拠点となる感染症情報センター機能の充実を図るなど、感染症危機管理体制の整備を推進します。

(5)免疫アレルギー疾患対策の充実

 国民病とも言われているアトピー性皮膚炎、花粉症、気管支喘息、リウマチなどの免疫アレルギー疾患の病因・病態の解明、治療法に関する研究を推進します。また、国立病院・療養所における免疫異常ネットワークの充実をはかり、診療体制を拡充します。さらに、免疫アレルギー性疾患に関する正しい情報の普及を推進するとともに、アレルギー専門医の育成とアレルギー科の増設をはかります。

(6)音楽療法士のための身分法の制定

 音楽療法は、近年において、医療施設や福祉施設、児童施設など幅広く行われており、その効果や医療費節減が期待できることなどに多くの関心を集めております。音楽系大学を中心に専門のカリキュラムが組まれており、音楽療法士をめざす人も年々多くなっていることから、音楽療法士の身分法の早期制定をめざします。

(7)医療におけるITの推進

 医療情報の標準化や電子カルテの普及推進をはかるとともに、地域医療を充実させるため、かかりつけの診療所と専門病院をネットワークで結んで画像診断、病理診断等を行う遠隔医療の充実をはかります。

5 障害者施策の拡充

(1)障害者総合福祉法の制定

 福祉、雇用、住宅施策など分立する障害者施策を統合し、ノーマライゼーション社会を確立するための「障害者総合福祉法」を制定し、自立と参加を支援する総合的な障害者福祉施策を推進します。

(2)障害者プランの拡充

 現行の障害者プランの着実な実施を推進するとともに、ノーマライゼーション社会の創造に向け、引き続き新たなプランを策定し、障害者施策の充実をはかります。また、重度心身障害児福祉など、その量的な拡充が切実に求められる諸領域について、早急な基盤整備をはかります。さらに、社会福祉法人のあり方の見直しを進め、小規模化など規制緩和を進めることにより、より弾力的で地域に密着した福祉サービスの実現をはかるとともに、成年後見制度の基盤の整備、福祉オンブズマン制度の確立を通じて障害者の権利を擁護する体制を確立します。

(3)高次脳機能障害者に対する医療体制

 交通事故等による重度障害者や高次脳機能障害者に対する医療体制を強化するとともに、受け入れ医療施設の拡充を進めます。

(4)補装具・日常用具等へのIT活用

 心身に障害を持つ人も含め、できるだけ多くの人がそれぞれの意欲と能力に応じて社会に参画し、ともに支え合う社会を作っていく必要があります。そのため、障害者にとっても使いやすいユニバーサル・デザイン(誰もが使いやすい、楽しみやすいデザイン)による端末機器、補装具、日常用具等の開発支援を進めます。

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