動燃東海爆発事故アーカイブ

 Copyright Yoshihiro IDE (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp) 最終更新日:97/04/12


10:22問題の報告書

 4月12日、動燃(動力炉・核燃料開発事業団)から、茨城県知事に対して、一連の虚偽報告(10:22問題)の報告書が提出されました。
 この問題は、県民の原子力施設への信頼を根底からくつがえす重大事です。動燃当局の厳正な対応を望むとともに、政府科技庁、司法当局の厳しい処分を要望するものです。
 ここでは、報告書の全文を掲載する。なお、文上の画像等の挿入は、リンクの設定はWeb管理者の責任で行いました。

現在までの調査結果(10:22問題)

  1. 報道機関から科学技術庁へ本件に関しての問い合わせがあり、科学技術庁から動燃に問い合わせがあったため、再度確認したところ、科学技術庁に3月21日に提出した報告書「再処理施設アスファルト固化処理施設における火災・爆発事故について(第1報)」の記述に誤りのあることが4月8日午後に判明した。
     動燃としては、本件に関して特別調査班を設置し、調査を行い、いわゆる10時22分問題については事実関係が明らかになったので報告する。
  2. 3月11日10時13分頃、火災の発生及びその消火について、現場の運転員から職員A(主査)を経由して、担当役から環境施設部長(以下「部長」という。)に電話連絡があった。部長は、この連絡を受け、直ちに、ガラス固化技術開発施設内に現場指揮所を設置するとともに関係者を招集した。
     10時20分頃に、部長は、事故対応のため現場指揮所に集まってきた関係職員に対して自分が第1報の電話で知っていた情報、即ちアスファルト固化処理施設でドラム缶から煙が出ている、水噴霧器で火は消えた、火災かどうか確認中である旨の説明を行った。この様子を聞いていた職員Bは現場指揮所のホワイトボードに部長が発言した時の時刻10:22を含め「10:22 水噴霧器で火は消えた。火災かどうか確認中」と記載した。
    現場指揮所のホワイトボード
    その直後(10:24)現場指揮所に到着した同部技術課長(以下「技術課長」という。)は、ホワイトボードの記載を見て、これを事実と考え、担当役の書いたFAX連絡文書第1報に「10:22水噴霧で消火した」と加筆し、事業所連絡責任者の総務課長に送付し、総務課長は外部関係者に送付した。その後、多数の報告が次々と現場指揮所に殺到し始めたため、この10:22という時刻の意味することは正確に再確認されることなく経過した。
    第1報FAXの虚偽記載事項の拡大図
     その後15時04分から16時20分頃までの間に、火が消えた時刻が10時13分であることを知った技術課長は、17時前後の現地本部からのFAXによる時系列確認依頼に対し、10時22分とされていた消火時刻を10時13分に訂正する旨の回答をFAXにて送付した。更に18時過ぎに現地本部から届いたプレス発表文案に対し、技術課長は、消火時刻を10時22分から10時13分に訂正するよう現地本部の総務課長に電話にて依頼した。
     この現場指揮所の技術課長と現地本部の総務課長の双方のやり取りについては、総務課長は、「『既に10時22分という時刻は外部に出しているため、訂正は難しい。10時22分には何かしたのではないか。』と言った」旨述べている。これに対して、技術課長は、「総務課長に対し、『消火の時間としては事実ではないので、削除する』旨要請したが受け入れらなかったので、最終的に自ら、『10:22消火しているのを目視で確認』との記載のある訂正文を送付した」と述べている。このような経緯で、「消火しているのを目視で確認」と偽りの記載がなされた。
  3. 上述の経緯で、技術課長は、10時22分の時刻が削除できず、『10:22消火しているのを目視で確認』したことにせざるを得ないと判断したので、技術課長は、その裏付けを作る必要があると考え、職員Aに「消火の再確認をしたことにしてくれ」と依頼した。職員Aは運転員2人に同趣旨の依頼をし、運転員に了解させた。
     技術課長は、18時30分頃、現場指揮所内で「10時22分に消火を再確認」と述べ、このことについてはほぼ同時にホワイトボードに記載された。
     技術課長から職員Aへの依頼の結果について、環境施設部処理第二課長は、「その内容で了解された」旨を技術課長に伝えた。
     19時前後、このことを踏まえ、技術課長は、総務課長とのあいだで電話とFAXで「10:22消火しているのを目視で確認」を記載することの確認を行った。
  4. 東海事業所防護活動本部では、13日から時系列班を設置し事実関係の確認作業に当たり、時系列の作成をしていた。時系列班から依頼され、環境施設部内の時系列の聞き取り役をしていた職員C、Dは、3月15日頃にアスファルト固化処理施設の運転員から、11日10:22に実施されたとされていた目視による消火確認が、実際は行われていないことを初めて知り、上司である部長にその事実を報告し、善後策の指示を仰いだ。部長は、職員C、Dに時系列は今まで10:22消火の目視確認を行ったとの報告をしてきているので変えられないと述べた。
     職員C、Dは、技術課長に対しても同様の報告を行ったが、同課長は、職員C、Dに時系列は今まで10:22消火の目視確認を行ったとの報告をしてきているので変えられないと述べ、訂正は行われなかった。
     担当役は12日、職員Aから10:22の確認はなかった旨の話を聞き事実関係を知り、技術課長に事実と異なるがこれで良いのか確認したが、変えられないとのことであったので、運転員に対し裏付けについての協力を要請した。
  5. 更に、3月20日、部長は、環境施設部処理第一課長(以下「処理第一課長」という。)同席の下に、関係する運転員4名を呼び、「3月11日10:22に消火の目視確認をしたことにしてくれ。」と依頼した。
  6. 以上のような経緯により、事実に基づく時系列の修正がなされず、「10時22分に目視により消火していると判断した」との法令報告の偽りの記載に繋がった。
  7. なお、4月7日に科学技術庁の事故調査委員会による運転員に対する事情聴取が予定されていたが、ヒアリング前に1名の運転員から「事情聴取の場に出たら真実を言わざるを得ない」との話が出た。この時点で処理第一課長から、本人に対して、「これまで通りなんとかやってもらえないか」との意味の説得がなされたが、本人は意思を曲げなかった。その後、事情聴取の控えには、本人も出席すべく待機していた。
     技術課長は、本人に対して居室に戻るよう指示した。また、事故調査委員会には交替勤務で今すぐは連絡が取れないので出席できないと伝えた。
  8. なお、法令報告の10時22分の記述が偽りであることを東海事業所幹部が知った時期は次のとおりである。
     4月8日、科学技術庁からの情報に基づく本社からの指示で、管理担当副所長は、職員Aに問い合わせた。その結果10時22分の記述に偽りの記載があることを知った。その後、その旨副所長は本社へ連絡し、本社は、科学技術庁に報告した。また、18時30頃、副所長は、技術課長、担当役及び職員Aを呼び10時22分の記述に偽りの記載があることを再確認した。
     所長、運転担当副所長、研究開発副所長は、同日18時40分頃、管理担当副所長から知らされた。

以 上 

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