Copyright Yoshihiro IDE  LastUpdate 2004.Sep.10

「ホームヘルパー廃止」という不見識な新聞報道について

産経新聞9月6日付記事は誤報、ホームヘルパーの量と質の拡大が重要
 9月6日付の産経新聞3面にショッキングな見出しが踊っていました。「ホームへルパー廃止へ 100万人利用者に波紋」との記事です。

 国の介護保険の見直しに際して、厚労省は原則廃止の方針を打ち出したと内容でした。

ホームへルパー廃止へ 100万人利用者に波紋 介護福祉士へ移行、担い手激減か
産経新聞(2004/9/6三面)
 主婦の副業として人気のある介護保険制度の「ホームヘルパー」(訪問介護員)が原則廃止される方針が示され、波紋を広げている。国は国家資格である「介護福祉士」の業務に一本化することを検討している。廃止が決まれば、介護福祉士に移行できない人も出るとみられ、全国で二十万人規模のヘルパーの雇用だけでなく、ヘルパーらの訪問介護サービスを受ける約百万人の利用者にも大きな影響が出るのは必至だ。(草下健夫)
 さて、この記事に記載されている「ホームヘルパーが原則廃止される方針」とは事実なのでしょうか。

 井手よしひろ県議が、県介護保険室を通して厚労省の老健局振興課に確認したところ、そのような方針は、現状では決まっていないということでした。

 確かに、「介護保険の見直しに関する意見」(厚労省社会保障審議会介護保険部会)には、以下のような提案がされています。

 介護職員については、まず、資格要件の観点からは、将来的には、任用資格は「介護福祉士」を基本とすべきであり、これを前提に、現任者の研修についても、実務経験に応じた段階的な技術向上が図れるよう、体系的な見直しを進めていく必要がある。現在、施設職員については、既に4割程度が介護福祉士の資格を有しているが、さらに質の向上を図っていく必要がある。一方、ホームヘルパーについては、実働者数約26万人のうち介護福祉士資格を有する者は1割程度であり、大半は2級ヘルパーである。2級ヘルパーは、事実上、介護職場における標準的な任用資格となっているが、介護福祉士の養成課程と比較すると2級ヘルパーは130時間であるのに対し、介護福祉士は1,6 50時間と大幅な開きがある。このため、当面は研修の強化等により2級ヘルパーの資質の向上を図ることを検討する必要がある。
 しかし、これをもってホームヘルパー制度の廃止を謳っているとするのは、当たらないと思います。

 介護の基盤を強固にするためには、地域で介護の担い手の層を厚くすることが必要です。茨城県においては、中学校でもヘルパー3級の講習を実施し、資格所得を推奨しています。もちろん、介護福祉士などの質の向上を図っていくことは課題ですが、それがホームヘルパーの廃止に繋がるとは考えられませんし、そのような愚行を行ってはなりません。

 産経新聞の記事は、あたかも来年の制度改正でホームヘルパー制度が廃止されるかのような誤解を読者に与える記事であり、明らかに誤報です。

 産経新聞の9月6日付記事について、9月9日厚生労働省が正式な見解を公表しました。
平成16年9月6日付産経新聞朝刊「ホームヘルパー廃止へ」との記事について

  1. ホームヘルパーは、在宅介護を支える重要な柱である。厚生労働省としては、ホームヘルパーを廃止することなど考えていない。記事は誤りである。
  2. 介護保険部会の意見書では、要介護者の重度化が進む(より重度の人を在宅で支えることが求めらている)、痴呆の方が増えている等の観点から、介護従事者の質の向上が重要と指摘している。
    そこで、「介護職員については、将来的には、介護福祉士を基本とすべき」として、将来の目指すべき方向を提示した上で、当面やるべきこととして、ホームヘルパーについては、研修の強化等によって資質の向上を図る、としている。
    したがって、今後の方向性は、「廃止」ではなく、「質の向上、充実・強化」である。
  3. 厚生労働省としては、高齢者の在宅生活を支える中心的なマンパワーとしてのホームヘルパーの役割は非常に重要なものと考えており、今後とも、利用者のニーズに応えることのできる質の高いホームヘルプサービスが提供されるよう、ホームヘルプ制度の充実に尽力する所存である。
(照会先)
厚生労働省老健局振興課
室橋(内3933)、高木(内3980)
3595−2889(直通)、5253−1111(代表)
 介護保険の見直しという重要な時期だけに、間違った情報は大きな影響を与えます。

 私のところにも、複数の問い合わせや今後が心配との声が寄せられました。

 琉球新報の投稿欄では、公的機関での会合でこの誤った情報が伝えられ混乱を増長している模様が伝えられています。(琉球新報の読者の声の欄にリンク)

 マスコミ報道については、書き手の十分な情報の検証と知識の集積が必要です。産経新聞の説明が求められます。


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