Copyright Yoshihiro IDE  LastUpdate 2002.Jan.21

身体拘束ゼロへの取り組み

 介護保険導入に伴い、介護保険施設などにおいてベットや車椅子に縛り付けるなどの身体の自由を奪う「身体拘束」が原則として禁止されました。茨城県においては、「県身体拘束ゼロ作戦」を展開し、身体拘束をなくすための取組に全力を挙げています。
 このページでは、厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」や茨城県介護保険室の資料をもとに、身体拘束ゼロへ向けての基本的な考え方をまとめてみました。

身体拘束とは

そもそも身体拘束は、医療や看護の現場で、患者や介護を受ける人の援助技術の一つとして行われてきました。手術後や知的能力に障害がある場合、安全を確保する観点から、ベットや車椅子、椅子に縛り付けたり、身体の自由を制限する着衣を着させるなどの行為を指します。
高齢者のケアの現場でも、その影響を受ける形で、高齢者の転倒・転落防止、点滴の際の事故防止、徘徊などの防止、脱衣やおむつを脱いでしまうことの防止などの目的で、身体拘束が行われてきました。

介護保険は「身体拘束を原則禁止」

介護保険法には、その第 条で身体拘束を原則禁止しています。
サービスの提供にあたっては、当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体拘束その他入所者(利用者)の行動を制限する行為を行ってはならない

介護保険で原則禁止されている身体拘束の具体的な例

  1. 徘徊防止のためベットや車椅子に胴や手足を縛る
  2. 転倒・転落防止のためベットや車椅子に胴や手足を縛る
  3. 自分で降りられないように、ベット柵を2本使用し固定したり、高い柵を使用する。または、ベット柵を4本つけてベットを取り囲む。
  4. 点滴・中心静脈栄養・経管栄養等のチューブを抜かないように、手足を縛る。
  5. 点滴・中心静脈栄養・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、ミトン型の手袋を使う(手足の自由を奪う道具や工夫をする)。
  6. 車椅子等からずり落ちたり、立ち上がらないように、腰ベルト(紐)、Y字抑制帯、テーブルをつける。
  7. 立ち上がる能力のある人に、立ち上りを妨げるような椅子などを使用する。
  8. 脱衣・おむつ外しを防ぐため、介護衣(つなぎ)を着させる。
  9. 他人への迷惑行為を防ぐために、ベットなどに胴や手足を縛る。
  10. 行動を落ち着かせるために、精神作用を減衰させる薬(向精神薬)を過剰に使う。
  11. 自分の意志で開けられない部屋に隔離する(鍵の掛かる部屋に閉じこめる)。

「身体拘束」がもたらす3つの弊害

身体的弊害
身体拘束は、様々な身体的弊害をもたらします。
例えば、本人の関節の拘縮、筋力の低下といった身体機能の低下や圧迫部位のじょく創の発生などの外的弊害。
食欲の低下、心肺機能や感染症への抵抗力の低下などの内的弊害。
車いすに拘束しているケースでは無理な立ち上がりによる転倒事故、ベッド柵のケースでは乗り越えによる転落事故、さらには抑制具による窒息等の大事故を発生させる危険性すらあります。
本来のケアにおいて追求されるべき「高齢者の機能回復」という目標とは、まさに正反対の結果を招くおそれがあります。

精神的弊害
身体拘束は精神的にも大きな弊害をもたらします。
本人に不安や怒り、屈辱、あきらめといった大きな精神的苦痛を与え、そして人間としての尊厳を侵す。 身体拘束によつて、痴呆がさらに進行し、せん妄の頻発をもたらすおそれもあります。
また、本人の家族にも大きな精神的苦痛を与えます。自らの親や配偶者が拘束されている姿を見たとき、混乱し、後悔し、そして罪悪惑にさいなまされる家族は多いといわれます。
さらに、看護・介儀スタッフも、自らが行うケアに対して誇りが持てなくなり、安易な拘束が士気の低下を招きます。

社会的弊害
こうした身体拘束の弊害は、社会的にも大きな問題を含んでいます。身体拘束は、看護・介護スタッフ自身の士気の低下を招くばかりか、介護保険施設等に対する社会的な不信、偏見を引き起こす恐れがあります。
そして、身体拘束による高齢者の心身機能の低下はその人のQOL(クオリティー・オブ・ライフ:生活の質)を低下させるのみでなく、さらなる医療的処置を生じさせ経済的にも少なからぬ影響をもたらします。

介護保険サービス提供者に求められる責務

介護保険においては、介護保険は原則禁止されています。しかし、「緊急やむを得ない場合」は例外的に身体拘束が容認されています。その要件、手続き、記録義務などをまとめました。

「身体拘束」を行う3つの要件(以下3つの要件をすべて満たすときのみ身体拘束は例が的に認められます)

  1. 切迫性:利用者本人または他の利用者の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高い場合
  2. 非代替性:身体拘束以外に代替する介護方法がないこと
  3. 一時性:身体拘束は位置的なものであること

身体拘束を行う場合でも慎重な手続きが必要

  1. 「緊急やむを得ない場合」の判断は、担当のスタッフ個人(またはチーム)で行うのではなく、施設全体で判断すること。
  2. 身体拘束の内容、目的、時間、期間などを利用者本人や家族に対して十分に説明し、理解を求めること。
  3. 介護保険サービス提供者には、身体拘束に関する記録の作成が義務づけられている
参考:「身体拘束ゼロへの手引き」(厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」編)

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