日立の穴 第7号 |
この界隈はまさに工場地帯。自然、ちょっと飲みに行くのも力任せな場所が多い
のが現実です。そんなアフター5事情の中で以前から異彩を放っているのが、日
立にある『楽天』という系列です。大みかにも旧家をそのままにしたレトロな店
が出来て喜んでいましたが、またまた今度は海岸線というべき245号線からすぐ
の場所に、変わったものを作ったという情報が入りました。行ってきます!
大みかの灯台のある公園と言えば、皆さん良くご存じですね。あのあたりにあるそう
なんですが。確かグレーのマンションかなんかの下とか・・・。おお、もしかしてあ
れ?なんか地味だし木がはえてて入りにくいなあ。はああ。あ、これは確かにそれら
しい。へんてこな『楽天食堂』という看板。そして入口近辺に沢山置いてある、おび
ただしい空瓶。「こんにちは。」と入ったのはいいけれど、大失敗をしました。「す
みません。スリッパを。」そうです。なんと土足で入ってしまいました。ここはスリ
ッパでゆっくりできるんですね。すみませんでした。
入ると突然別世界に来たようでした。どこかの古い洋館に来てしまったような雰囲気
。落とし気味の照明は、これからの夜の楽しさを誘うようです。丁度心地良い明るさ
、とでも言うか。ちょっと疲れてゆっくりしたい時に優しい明るさです。
楽天はどの店もこんな風に、初めて来たのにどこか懐かしい記憶を呼び起こすような
感じを覚えます。それは徹底してこだわっている床、家具、インテリアが醸し出すの
でしょうね。
「床もこだわっているんですよ」そうです。さっき土足で入ってしまった私は、床を
改めて見てすまなさ倍増でした。黒光りして良く磨き上げられた美しい床。これだけ
でもうっとりするようです。良く見れば、壁には昔のポスターやアナログ版のジャケ
ットがかかり、壁自体も古い時代の新聞でできていました。真っ白いスーパーマーケ
ットやガソリンスタンド、パチンコ屋に慣れた目には、その優しいトーンは新鮮です
。
この『楽天食堂&バー』は昨年の8月にできました。オーナーの、こだわりなく、お
いしいものを地域のニーズに合わせて提供していきたい、という柔かな考えが3つあ
る楽天をそれぞれの雰囲気に作り上げているのです。東京の三鷹に生まれて、大学は
広島に。その頃飲食関係でしたアルバイトが今日につながっています。九州の小倉で
友人と小さな店を持ち、30才になったころにご婦人の故郷である日立に1号店を出し
たのです。「街が楽しくなるお店を。」というのが1番のコンセプトだそうです。
「食べ物の好き嫌いは?」という質問には「ほとんどありません。メニューも自分で
考えますよ。」と答えが返ってきました。だからちょっと他にないおいしいモンがあ
るんですね。「来てもらって食べてもらって飲んでもらうだけじゃない、良い時間を
過ごして欲しいと思っています。時間を売っているんですね。」
妙に落ち着いてしまいますよ、ここは。60〜70年代のアナログな音がBGMにかかり、
ゆっくりと時間が流れていくようです。部屋は雰囲気の違う2つのエリアに分かれて
います。1つは御飯を食べる雰囲気。もう1つはお酒を飲む雰囲気。それぞれ境はなく、どちらでも
何でも飲んで食べればいいのです。
「ドリンクメニューが充実してますね。こんなに沢山ある。」「あ、これでも抑えて
いるんですけどね。ワインはグラスで気軽に飲めるようになっていますよ。」「本当
ですね、テイスト、というのは初めて見ましたちょっと飲んで好きだったらもう1つ
大きいのを頼めばいいですよね。」「そうです。」「グラスならいくつかの種類も楽
しめますね。」
『もっと上手に店を利用して欲しい』というのが最後の言葉でした。生活の中で、そ
の人の良い時間を持って欲しい、そしてそれは来てくれるお客さんの気持ち次第だ、
ともおっしゃっていました。そうですねえ、と、私は考えました。例えばこんなにゆ
っくりしたい場所で、一気飲みしたり大声で騒いだら、さぞかしみっともないし周り
の迷惑でしょうね。来る人達が作る、そんな気持ち大切にしたいです。
![]() |
Back Home |