日立の穴 第5号

−こんな所に何の工場!?−

茨城と言えば、豚肉、梅、納豆、なんて無い知恵を絞ってイメージするものを考えてみ
ました。常陸太田は広大な田園と果樹園が有名ですね。そこに何の看板も出ていない、
一体何を作っているのか判断のつかない工場があるらしい、という情報を得ました。 
しかも常陸太田農協のすぐ側であるということ。さて、何を作る工場なのでしょうか。
のどかな風景が続くその近辺に行ってまいりました。               

ああ、一体それはどこなんでしょう。農協の前の道を何回か行ったり来たりした後、降参して農協に入って聞きました。 「それならあそこです」と、すぐおしえていただきました。当り前でした。斜向かいと言っても過言ではない位置にそれはありました。 何やら殺風景なブロック塀に囲まれ、なんとか教団のサティアン風の怪しげな工場。 本当にここでいいのだろうか、と、頭をよぎる大きな不安。 建物に近寄ると益々広がるのもの静で冷ややかな空気。 すりガラスを通して見えるのは、何やら部品が整然と積み上げられた感じのシルエットのみ。 ここは『根本きのこ園』のはずですが、どこがそうなのかちっともそれらしくありません。 あ、パートの奥様らしきご婦人を見つけました。 「ここは、きのこ園だとお聞きしたんですが?」「そうですよ。」やったよかった。
そうしてやっとお会いできた工場の主は、考えていたような中年以降の方ではありませんでした。 なんでこういう人がここでキノコなんでしょう。 聞いてみると、発端はお父上のお知り合い関係でした。 若干26歳でエノキタケに身を捧げる(?)決意をしてからのことを、もっと聞いてみましょう。 「この辺では他にエノキを作っている所はあるんですか?」「日立の方に1つ、友達ですが、最近始めた所があるくらいですか。」 だいたいエノキタケの生産で主なのは長野県で全国生産の50〜60%を占めます。 茨城県内では、他には県南の方に大きくしている所があるくらいと言うことです。
では、早速エノキタケの工場を見せていただきましょう。整然としたこの部品工場のような雰囲気。 中はまるで大きな冷蔵庫のようなドアが沢山です。1つ1つ密閉されるようになっています。 「まず、培地をつくります。この器をきれいに洗浄殺菌して、中にオガクズなどをつめます。その後、無菌室でエノキの菌の植え付けを行います。」 はああ、『菌』。そうですね。キノコは菌類でしたね。つまり、少しでも雑菌が入ると、それがキノコの菌と同様に繁殖してキノコはだめになってしまう。 従って、植え付けには神経を使うわけです。「全身宇宙服のようになって、無菌室で延々とエノキ菌の植え付けをするんです。」 夜も昼もないそうです。だいたいエノキタケは2ヵ月ほどで出荷できる大きさになります。お鍋の季節、エノキタケの晴れ舞台は毎年10月から2月。 その2月前から、ここでは昼夜問わずの作業が始まります。「すごく働くんですね。」「いえ、1年の半分は死ぬほど働いて、あとはどっかに行ってます。」 「どっか?」ここでやっと本人の風貌と仕事が一致を見ました。山登り、ダイビング、そして究めつけはいつ帰るとも知れない海外放浪。 「いいですねえ。」「そのかわり仕事の時は寝る暇もないこともありますから。」そうそう。働かざる者遊ぶべからず。
どうぞ。」入ったのはすりガラスから透けて見えた、何か部品のようなものが積み上げられたモノがズラっと並んだ部屋でした。 「こんな風に、生育の時期によって部屋を移動させていってやります。」同じ様な部屋が沢山あります。 それぞれエノキタケの生育期によって、湿度、温度などが管理されたエノキタケの寝室です。 最後の部屋では、どなたか棚で作業していました。 「何をしているんですか?」「紙を巻いてます。」 そうです。分かった!それで売っているエノキタケは、皆お行儀良くああいう形になっているんです。 「なるほど。」なるほどなるほど。こういう具合に丁寧に育てられた幸せなエノキタケは、計量されて、1つ1つ見慣れた包になっていきます。
「このエノキを収穫した後の培地はどうするんですか?また再利用できるんですか?」「いいえ、もうダメです。容器はまた洗浄して消毒して使用しますが。」 なんと無駄な!とお思いの皆さん、安心してくださいね、これが実は良くできています。 「あそこに使った後の培地を積んでおくと、近所の無農薬農家の方が、肥料にって持って行って下さいます。それで沢山野菜をもらったりするんです。ありがたいですよお。」 うわあ、いい生活です、、、。
余談ですが、一般に言われるエノキタケというのは、暗い室内で傘が大きく成長しないようにして育てたもので、 普通に育つとエノキタケの傘も大きくなるそうです。たまに間違って傘が大きくなってしまったエノキタケは、出荷できないので自分達で食べるそうです。 「そっちの方が歯応えがあって良いって言う人もいますよ。」「はあ、、、。」エノキは奥が深いですね。
皆さんが良く知っている某有名デパートやスーパーにも、『根本きのこ園』の美しいエノキは出荷されています。 知らないうちにお世話になっているかもしれませんね。

まだまだ知られていない怪しい(失礼しました)ものが沢山ある。 しかもそれは立派に何かを生産しているなんて、日立も捨てたもんでもない!



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