日立の穴 第25号

−玉姫の名を冠した醤油屋発見−

地酒ならぬ地醤油(?)とでもいいましょうか、日立にも醤油を作っているところがあます。
「日立の穴」第1号で紹介した『みずきの庄』にも程近い場所です。海が近いからでしょうか?
味噌屋さんに醤油屋さんがあるなんて。                         


『玉姫醤油醸造』は創業明治17年、現在のご主人・佐藤善助さんで5代目。聞けば、元祖も“善助さん”、3代目も字こそ違えど“善介さん”だったのだそうです。
近くにある泉神社に祭られている祭神の名前が「玉姫之命」。そこからお名前をいただき『玉姫醤油』と名づけたのだとか。なんてロマンティック!
「今、日立市でオペラの活動があって、オリジナルストーリーが玉姫伝説を基にしたものなんです」それにちなんだ醤油も作ったのだそうです。

昔は、味噌屋さんや醤油屋さんがどこの集落にも1件はあったはず。戦前は日立市内にも20件ほどあったそうです。海があるから塩を手に入れるのも容易だったんでしょう。「昔はペットボトルなんてないから、こういう徳利に量り売りをしていたんですよ」環境問題が深刻な現在にはぴったりな販売方法ですね。ペットボトルやビンにつめて小売店で販売するのが流通の上で、企業にとっては一番なのでしょうが、量り売りが復活できたらいいのになあ。

醤油は大豆と麦から作ります。「基本的にはお酒と同じ。でも塩分があるからそれほど雑菌の心配はしなくていいの」蒸した大豆と炒って砕いた麦に、こうじを混ぜて寝かし、これを塩水につけたものを諸味(もろみ)といいます。『玉姫醤油』さんでは3月に仕込むのだそうです。
蔵の中に入ると、かすかに漂っていた香りが一段と強く感じられます。醗酵している諸味(もろみ)が茶色なので一瞬びっくり。よく考えれば当たり前なんですが、なんとなくお酒とだぶらせて考えてしまい、てっきり白い諸味(もろみ)を想像してました。
カビがはえないように、温度が上がりすぎないように、かくはん作業は欠かせません。「味噌は仕込んだら寝かしっぱなしだけど、醤油は手間がかかるんだよ」これを善助さんがお一人でやっているのだそう。
仕込みから2夏を越して、いよいよ絞り作業へ。諸味(もろみ)を麻袋につめて絞ります。これは麻袋につめる際に使う「きりん」という道具。「でも貴重なものなので壊れたら大変だから、使わないでしまってある」とのこと。
次に行うのが、火入れという作業。絞ったものを大きな釜に入れ、薪を燃やし、80度に温度を保ち、4時間かかる大仕事。
火入れが終わったら、釜の醤油をひしゃくですくってたるに移します。釜の底に残った醤油を吸い上げるのに、「吸い口」というのを使います。ろ過沈殿させて冷やして完成。こうしてようやくできる“醤油”。本当に手間と時間がかかるなあ。

善助さん、若い頃は東京で音楽活動をしていて、別に醤油づくりをする気はなかったといいます。それがなぜ5代目に?「結局、ものを作ることに興味があったんですよ。仕込んで、面倒見て、それが醤油になると嬉しいし、どんな醤油になるのか楽しみだし」

醤油市場は大手5社が50%のシェアを占めているとのこと、東南アジアなどで安価に生産される醤油には、値段の面ではかなわないでしょう。けれど、舌にびりりとこない、使い古された言葉を使えば、「まろやか」な味は、大手メーカーのそれとは全然違う。戦前から地元に密着してきたものが、現代では、あらゆる意味で「贅沢品」になっているように思えます。そういう現状に首かしげつつも、Make it a habit to choose better , even if SOY- SAUCE. 日立近郊なら配達もしてくれるこんなお醤油屋さん、内緒じゃもったいない。




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定休日:定休日不定
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