◇局地的な大雨

 月の前半は、オホーツク海高気圧からの冷たい空気が入り、平年よりも気温の低い日が多くなりました。月の半ばからは、太平洋高気圧が強まり、南から暖かい空気が入るようになって、気温が高くなりました。このため、月平均気温は20.3℃と平年より1.2℃高くなりました。また、上旬から中旬にかけて、寒気を伴った上層の低気圧が本州付近を通過することが多く、一時的に強い雨の降る日や、降水量の多くなる日がありました。日立市でも、7日と19日には雷を伴って一時的に強い雨が降りました。9日と16日には、南から湿った空気が入り込んだ影響もあって、降水量が多くなりました。特に、16日は南東からの風と地形の影響も加わって、市の中部から北部にかけての沿岸部で、総降水量が120mmから230mmに達しました。この結果、市役所における6月の降水量は265.5mmと、平年の1.5倍になりました。一方、日照時間は103.6時間と、ほぼ平年並でした。

6月の気象観測値
観測要素 観測値 平年値
月平均気温(℃) 20.3 19.1
月降水量(mm) 265.5 169.4
月日照時間(時間) 103.6 114.7

 ●6月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける850hPa気温の推移

2006年6月の日立市役所における日平均気温の推移 2006年6月のつくばにおける850hPa気温の推移

 14日から15日にかけて、寒気を伴った上層の低気圧(寒冷低気圧)が、バイカル湖の東から中国大陸東北部へ南下してきました。この後、低気圧は動きが遅くなり、18日頃までほとんど同じ場所に停滞しましたが、この低気圧の南を回る形で、西からの湿った空気が、15日から16日かけて本州を東へ進みました。

 日立市では、寒冷低気圧東側の暖気との境界に広がる雨雲がかかり始めた15日の夕方から、弱い雨が降り出しました。16日に入ると、寒気の前面の南風に伴う暖湿流による発達した雨雲がかかり始め、雨が強まりました。特に、茨城県から栃木県の北部にかけては、南からの暖気と北側の寒気との境に収束域が形成されるとともに、南からの湿った空気が山地へぶつかって上昇する影響で雨雲が発達し、降水量が多くなりました。

 日立市内では、収束域の北側に入り、山の東斜面に位置して南からの気流が当たる市の北部から中部にかけて、降水量が多くなりました。日立市役所における、15日15時の降り始めから16日17時までの総降水量は、130.0mmでした。また、山間部にある本山における総降水量は224.5mmでした。それに対して、山地の南端に位置する南部支所における総降水量は42..5mmと、市役所の1/3でした。なお、浸水の被害やがけ崩れの状況から市の北部の十王町でも、降水量が200mm近くに達したものと思われます。(市内6地点の降水量データ(htmlファイル)

15日から16日の降水量(mm)

観測地点
総降水量

最大1時間降水量

降水量
日時
日立市役所 130.0 21.5 16日06時00分〜07時00分
北部消防署 139.5 22.0 16日08時00分〜09時00分
本山 224.5 29.0 16日09時00分〜10時00分
西部出張所 89.5 13.0 16日06時00分〜07時00分
諏訪広場 123.0 21.5 16日06時00分〜07時00分
南部支所 42.5 9.5 16日06時00分〜07時00分
※総降水量は、15日15時から16日17時までの値。

 参考:市内6観測地点の15日から16日にかけての降水量の推移

日立市役所 北部消防署 本山あかさわ山荘
日立市役所における15日から16日にかけての降水量の推移 北部消防署における15日から16日にかけての降水量の推移 本山あかさわ山荘における15日から16日にかけての降水量の推移
西部支所 諏訪スポーツ広場 南部支所
西部支所における15日から16日にかけての降水量の推移 諏訪スポーツ広場における15日から16日にかけての降水量の推移 南部支所における15日から16日にかけての降水量の推移

 日立市役所では、16日の6時から9時にかけて、1時間に15mm以上のやや強い雨が降りました。このときの風向の時間変化を見ると、前日の夜から6時までは南西の風が吹いていましたが、6時過ぎから9時過ぎにかけては北東の風に変わり、その後南東の風へと変わりました。一方、南部支所の風向の変化を見ると、16日の3時頃に南東の風に変わった後は、北東の風に変わることなく、昼過ぎまで南東の風が吹き続けました。

 アメダスで、16日8時の風向の分布を見ると、茨城県の中部から千葉県にかけては南南東の風がやや強く吹いているのに対して、この北側では北から西よりの風が吹いており、この間で風が収束している様子が見られます。同じ時刻の降水量レーダー図を見ると、この収束域に沿って、北側に発達した雨雲がかかっているのが分かります。

 日立市周辺の降水量(6月15日15時から16日17時まで)の分布を見ると、茨城県北部の山沿や山地の東斜面に当たる北茨城から日立市役所にかけて降水量が130mmを超えたのに対して、多賀山地の南側で、平野部にある日立市南部支所や常陸太田市中野、水戸では、降水量は40〜70mmと北側の地域に比べて少なくなりました。このように、今回の雨では風の収束と地形の影響の違いにより、市の北部と南部の間では、降水量に3倍近い差が生じました。

 参考:日立市周辺の15日16日にかけての降水量分布と16日8時の降水量レーダー図

日立市周辺の15日16日にかけての降水量分布 16日8時の降水量レーダー図

 参考:16日8時のアメダスによる風向分布と15日16日にかけての風向の推移

16日8時のアメダスによる風向分布 日立市役所と南部支所における15日16日にかけての風向の推移

  参考:6月16日の地上天気図と高層天気図及び気象衛星可視、水蒸気画像

2006年6月16日09時の地上天気図 2006年6月16日09時の500hPa高層天気図
2006年6月16日09時の地上天気図 2006年6月16日09時の500hPa高層天気図
2006年6月16日09時の気象衛星可視画像 2006年6月16日09時の気象衛星水蒸気画像
2006年6月16日09時の気象衛星可視画像 2006年6月16日09時の気象衛星水蒸気画像

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作成日:2006/07/13
追加日:2013/05/30
名前 日立市天気相談所