◇暖かな師走から、寒い年の暮れへ

 上旬から中旬にかけては、北極からの寒気の南下が弱く、移動性高気圧におおわれて晴れて気温の上がる日が多くなりました。20日に北日本を低気圧が通過した後、冬型の気圧配置が続いて、上層に寒気が入るようになり、気温が下がりました。しかし、上旬から中旬にかけて暖かい日が続いたため、月平均気温は8.6℃と平年より1.4℃高くなりました。

 また、4日から5日にかけて、台風第27号がもたらした暖かくて湿った空気を持った低気圧が発達しながら本州上を進み、東海地方から紀伊半島を中心に100mmを超える雨が降りました。日立市でも4日から5日にかけての降水量が54..0mmになったため、月降水量は87.0mmと、平年の3倍近くになりました。一方、月の日照時間は182.9時間と、ほぼ平年並になりました。

12月の気象観測値
観測要素 観測値 平年値
月平均気温(℃) 8.6 7.2
月降水量(mm) 87.0 31.3
月日照時間(時間) 182.9 189.9
月日照率(%) 0.61 0.63
月平均気温(℃)
順位 平均気温
1 1968 9.8
2 1979 9.1
3 1957 9.1
4 1958 8.6
5 2004 8.6
月最高気温(℃)
順位 最高気温
1 2004 5 25.9
2 1990 1 25.5
3 1998 1 21.6
4 1955   20.8
5 1968 3 20.4
※気温の順位は値の高い方からで、1953年〜2004年の統計

 ●12月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける850hPa気温の推移

2004年12月の日立市役所における日平均気温の推移 2004年12月のつくばにおける850hPa気温の推移

 2日から3日にかけて、フィリピンに大きな被害をもたらした台風第27号は、4日には台湾南部を通過して、沖縄の南へ進みました。台風は、午後には温帯低気圧に変わった後、夜には消滅しました。しかし、4日の朝に東シナ海に発生した低気圧が、台風の暖かくて湿った空気と、中国大陸東岸に進んできた深い気圧の谷の影響で、急速に発達しながら本州上を東北東へ進みました。この低気圧は、4日09時から5日09時にかけて、24時間で中心気圧が28hPaも降下するという急激な発達をし、5日09時には三陸沖へ進んで中心気圧が976hPaまで下がりました。

 この低気圧の影響で、4日の夜遅くから5日の朝にかけて、東海地方から関東地方の沿岸部にかけて強い風が吹きました。東京都の大手町では、5日06時20分に最大瞬間風速40.2m/sの風を記録しています。また、東海地方から紀伊半島を中心に100mmを超える雨が降り、紀伊半島の尾鷲市や伊豆半島の天城山では、総降水量が200mを超える大雨になりました。この他に、低気圧に吹き込む暖かい南よりの風の影響で、5日の日中は東北地方南部から関東地方にかけて気温が上がり、埼玉県熊谷市で日最高気温26.3℃を記録するなど、各地で最高気温が25℃を超えました。

 日立市でも、5日の2時頃に北寄りの風から南西の風に変わるとともに、しだいに風が強くなり始め、低気圧の中心が通り過ぎた直後の8時前に、最大瞬間風速23.4m/sの西南西の風を観測しました。その後、風はやや弱くなりましたが、寒冷前線が通過した後、17時過ぎから19時頃にかけて、瞬間風速で10m/sを超えるやや強い西北西の風が吹きました。

 また、南西の風に変わるとともに気温が上がり始め、日中は低気圧の南側に入って晴れたこともあって、13時50分には日最高気温25.9℃を記録しました。12月に日最高気温が25℃を超えたのは、1990年12月1日の25.5℃以来で、これまでで最も高くなりました。上層に寒気が入ってきたため、寒冷前線が通過した14時過ぎから気温は急速に下がり始め、真夜中には10℃近くまで気温が下がりました。

  12月4日から5日にかけての低気圧通過時の気温、海面気圧、降水量、風向風速の推移(日立市役所)

12月5日の気温と海面気圧の推移(日立市役所) 12月4日から5日の降水量の推移(日立市役所)
12月5日の風速の推移(日立市役所) 12月5日の風向の推移(日立市役所)

  参考:2004年12月4日、5日の天気図と気象衛星から見た雲の様子

2004年12月04日09時の地上天気図 2004年12月05日09時の地上天気図
2004年12月04日09時の地上天気図 2002年12月05日09時の地上天気図
2004年12月04日10時の気象衛星可視画像 2004年12月05日10時の気象衛星可視画像
2004年12月04日10時の気象衛星可視画像 2004年12月05日10時の気象衛星可視画像

 気象衛星の雲画像を見ると、暖湿気が台風から低気圧へ移っていく様子がよく分かります。03日15時から21時にかけて、台風の東から北東側で雨雲が発達し始めました。この雨雲は、しだいに台風から離れて北東へ進み、04日の09時には低気圧になりました。一方、台風本体は下層雲の渦巻きだけになり、東へ進みました。

 台風からの雨雲を取り込んだ低気圧は、北からの寒気と南からの暖気の影響で急速に発達し、05日の03時にははっきりとした寒冷前線を伴って速い速度で東北東へ進み、09時には三陸沖へ抜けました。台風は、温帯低気圧に変わった後、低気圧の寒冷前線に取り込まれる形で、04日の夜には消滅しました。

 参考:気象衛星赤外画像(03日15時から05日09時)

気象衛星赤外画像:12月3日15時 気象衛星赤外画像:12月3日21時 気象衛星赤外画像:12月4日03時 気象衛星赤外画像:12月4日09時
気象衛星赤外画像:12月4日15時 気象衛星赤外画像:12月4日21時 気象衛星赤外画像:12月5日03時 気象衛星赤外画像:12月5日09時

y4.gif (1703 バイト)【観測日誌2003年へ】 home_h2.gif (1545 バイト)【ホームページへ】

作成日:2005/01/19
訂補日:2013/06/10
名前 日立市天気相談所