98/02/13 第2回 臍帯血移植検討会議事録 第2回 臍帯血移植検討会  平成10年2月13日(金) 13:00〜15:10          場所:全社協第3〜5会議室 出席者(敬称略) 青木 繁之   浅野 茂隆   有田 美智世  加藤 俊一   鎌田  薫 草刈  隆   小池 麒一郎  小寺 良尚  ○齋藤 英彦   迫田 朋子 関口 定美   田島 優子   中林 正雄   西平 浩一   原   浩 古市 圭治   陽田 秀夫 (○:座長) 議事次第 1 開催 2 議題 (1)造血幹細胞移植の位置づけについて (2)臍帯血バンクの運営の現状について (3)運営上の課題について  ア 臍帯血の利用体制の構築とその運営方法  イ 情報連携体制の在り方  ウ 必要な財源   (採取、検査、保存、搬送、移植登録管理、特に未使用の保存検体に かかる費用等) (4)その他 3 閉会                                                                                                                                ○事務局 定刻になりましたので只今より第2回臍帯血移植検討会を開催いたします。本日 はお忙しい中ご出席いただきまして大変ありがとうございます。最初に本日の委員 の出欠の状況でございます。高橋委員、平林委員が都合により欠席とのご連絡をい ただいております。また加藤委員が少し遅れるということです。省内の人事異動が ありまして2月1日付けで、血液対策課長に中島課長が就任されました。 ○中島血液対策課長 2月1日付けで血液対策課長を拝命いたしました中島でございます。よろしくお 願いします。 ○事務局  では会議が始まる前に資料等の確認をさせていただきます。資料1から資料6、 それと参考資料として独政府草案(仮訳)がございます。お揃いでしょうか。途中 不備がございましたら事務局にお申しつけください、以上です。 ○齋藤座長  では本日も活発なディスカッションをお願いしたいと思います。医学以外の分野 の方も委員の中には沢山おみえになりますので、もう一度くどいようですが、前回 までの主なバックグラウンドに触れさせていただきたいと思います。  白血病や再生不良貧血などの有力な治療法に、血液を作る細胞を移植する造血幹 細胞移植というものがあります。この血液を作る細胞をどこから採るか、どこに求 めるかによって骨髄移植、末梢血幹細胞移植、この本題の臍帯血移植というのがあ るのです。骨髄移植につきましては、日本におきましても公的バンクが6年前に設 立されておりまして、9万人のドナーを擁し、現在までに1,400 例に近い非血縁者 間の移植が日本で行われてます。現在は毎日1例以上、1年に約400 例の非血縁者 間の骨髄移植が行われております。  一方臍帯血移植は、不要になった胎盤を活用する点、あるいは必要な時に直ぐに 実施できるという大きな長所を持ちますが、まだ始まって歴史が浅いわけでありま す。しかし既にわが国でも9か所の民間の臍帯血バンクが発足しておりまして、現 在までに約30例の移植が行われており、一日でも早く全国的に積極的に臍帯血移植 を推進するシステムを作り、患者さんを助けたいというのが皆の願いであります。  そのための医学的技術上の課題と運営上の課題をご討議いただきますのが本委員 会の目的であります。技術上の課題につきましては、専門家による作業部会が既に 発足しております。また今までにも浅野先生の研究班、あるいは小寺先生の研究班 で、ある程度の指針がまとめられております。本委員会では主として運営上の諸問 題につきご審議いただきたいと思います。  前回の委員会でもいろいろな問題があることはよく認識できましたが、公的な資 金の導入、予算要求との関係で、本年の5月末までには数回の委員会を開き、一応 の結論を出したいと考えております。勿論、全ての面で完璧な物を作らないと発足 できないことはなく、できることろからスタートして、問題があればその時点で改 良する姿勢で議論をしていただけるとありがたいと思います。  本日はそこにございますように、前回ご指摘のあったご意見を踏まえまして議事 が組んであります。では最初に1としまして造血幹細胞移植の位置づけについてご 討論ねがいたいと思います。  これは2点ございます。1点は臍帯血移植を白血病や再生不良性貧血などの治療 法の全体の中でどのように位置づけるのかという点、もう1点は臍帯血を臓器と考 えるのか、あるいは血液製剤と捕らえるのかという点であります。  1点目の臍帯血移植を造血幹細胞移植全体の中でどのように位置づけるのかとい う点について、まず事務局の方から資料の説明をお願いします。 ○重藤室長補佐  事務局から説明させていただきます。  資料1でございます。白血病等の血液疾患に関する治療法という資料でございま す。造血幹細胞移植の対象となる主な疾患の治療の概念図ということで小児のもの を取り上げてございます。上からご覧ください。  腫瘍性疾患の白血病は年間約1,000 人程度、リンパ腫年間約600 人程度。非腫瘍 性疾患として再生不良性貧血が年間約150 人程度。先天性免疫不全症候群約50人程 度。概数でございますが、造血幹細胞移植の対象となる主な疾患と大体の人数です。  上の左の腫瘍性疾患の流れ図からご覧いただきたいと思います。まずこうした方 に対しましては抗ガン剤、薬で治療する化学療法をまずは行うということでござい ます。その療法によりまして5〜7割程度の方が治癒もしくは寛解される、治療し ない方につきましては、この中で不幸にしてお亡くなりになられる方と、治療は効 かないがまだ次のチャレンジをしたいというグループに分かれます。そうした方が 造血幹細胞の適用になると考えております。  次の非腫瘍性疾患の概念図をご覧ください。再生不良性貧血につきましても、薬 剤による治療法をまずは試みて、6〜8割の方が治癒する。治癒しない方で次のチ ャレンジをしたいという方が造血幹細胞移植の適用になるということでございます。  先天性免疫不全症候群の方たちは造血幹細胞移植の適応があるのではないかとい うことでございます。  こうした造血幹細胞移植の適応となる方たちに対して、今現在、先程座長からお 話がございましたように、骨髄移植推進財団というところがございまして、そこに 登録をしまして、善意のドナーからの骨髄の提供を受けるということがこれまで 1,000 件以上行われております。その1,000 件以上の大体の概略でございます。バ ンクを介して骨髄移植を提供するわけですが、しかしながら、HLAという白血球 の型を合わせるという必要があります。白血球の型で合う方は、大体数百から数千 人に一人ということでございますから、なかなか合う方がいらっしゃいません。そ れで、骨髄移植のドナーの数を増やすように努力はしているのですが、なかなか骨 髄提供者が見つからないという方たちがいらっしゃいます。  この方たちは今のところの現状で申しますと、骨髄ドナーを見つけている最中に 不幸な転帰を辿られたりということでございます。そういう方たちに、臍帯血移植 が試みられているのではないかというように事務局としては聞いておりますし、そ うであろうと思います。それを今後どう考えていけばいいのかということを、本日 ご議論いただければと考えております。  次のページです。これは成人の場合でございます。成人の場合も同じように、腫 瘍性疾患では白血病とリンパ腫、非腫瘍性疾患の再生不良性貧血等につきまして、 まず薬剤により治療法が試みられて、それで治療しなかったたちにつきまして造血 幹細胞移植の適応と考えております。それらの方たちで骨髄移植をまず登録をして、 骨髄移植を希望していても提供者がなかなか見つからない方たちに、臍帯血移植の 適応になる可能性があるのではないかということで、今のところ進んでいるのでは ないかと認識をしているところです。  小児と成人を含めてこうした現在の状況を、今後どのように考えていけばいいの かということをご議論いただきたいと思います。  次のページです。これは造血幹細胞移植の適用ということで、もう少し細かく入 ります。先程現況のところで骨髄バンクで造血幹細胞移植が今は行われていると申 しましたが、造血幹細胞移植のところで、今のところは次の3種類、造血幹細胞移 植の現状についてという表の3種類の治療法が今のところ考えられているのではな いかというように思います。まず同種骨髄移植、これは非血縁者間の骨髄移植でご ざいます。同種臍帯血移植です。これは委員の先生方にご議論をいただいているも のでございます。同種末梢血幹細胞移植というのがございます。これは薬を飲みま して末梢血中に幼若な血液の幹細胞を増やしまして、それを成分献血と同様な方法 で抽出をしまして、移植に適用するという方法でございます。以上の3種類がござ います。  その3種類につきまして、2段目のところに医学的な評価ということでございま す。同種骨髄移植につきましては既に治療法として確立しておりまして、全国規模 で今現在行われているところでございます。同種臍帯血移植につきましては治療法 として一定の成果は上げておりますが、まだ十分な数の症例に基づいた評価が確立 してないという状態と考えております。末梢血幹細胞移植ということにつきまして は、治療法として一定の成果は上げているが、ドナーの長期安全性については検証 中と把握しております。  日本における実施件数です。同種骨髄移植は約5,000 例です。このうち骨髄バン クを介したものが1,376 例というところです。同種臍帯血移植は日本の現状でござ いますが、平成9年12月10日現在で32例です。同種末梢血幹細胞移植は約100 例 ということでございます。  採取方法及びそれに伴うドナーへの侵襲というところで項目をあげさせていただ きました。それぞれにつきましては、骨髄移植は全身麻酔での骨盤刺針と数日間の 入院を要するということになります。臍帯血移植につきましては産後の臍帯と胎盤 から採取しますので、母体にも児にも何ら侵襲性はございません。同種末梢血幹細 胞移植につきましては、採取方法につきましては通常の成分献血と同様と考えてお りますが、ただ事前に末梢血の中で幹細胞を増やすための薬剤を注射しないといけ ないということで、その薬剤による副作用が起きる可能性があるという問題点がご ざいます。  保存についてです。骨髄移植につきましては保存は通常行いません。臍帯血移植 については保存する必要がございます。末梢血幹細胞移植については通例は不要と 考えられますが、場合により必要性があるということでございます。  造血幹細胞の性状及び白血球の型の適合度です。同種骨髄移植につきましては現 在のところ完全に白血球の型が一致するということを原則としております。臍帯血 移植につきましては完全に一致しなくてもいいという認識であろうかと存じます。 末梢血幹細胞移植のHLAの型は完全に一致することが原則ということでございま す。  情報ネットワークはそれぞれ必須・必須・必須となってます。  コーディネーターにつきましては骨髄移植は必要、臍帯血移植は不要、末梢血幹 細胞移植は必要。  登録から移植までの期間です。骨髄移植は3〜6か月。臍帯血移植は1か月以内 ですむであろうと考えられます。末梢血幹細胞移植については不明でございますが、 これは承諾とドナーの協力がいりますので、骨髄移植と同等の期間がかかるだろう とということでございます。  移植による先天性疾患の継承等の可能性ということでございます。通例骨髄移植 につきましては成人からの移植でございますので、血液の先天性疾患がそうした細 胞の中に含まれているということは殆どないのではないかと考えております。臍帯 血移植についてはまだ未検証でございますが、十分にそういうものの対策を取らな いとならないと考えております。末梢血幹細胞移植につきましては成人からの移植 であり、骨髄移植と同等と考えております。  最後の紙でございます。これは第1回目の検討会でお出しした資料で、またお出 ししたものでございます。もう一度現在のところの臍帯血移植の現状ということで、 生存率でございますが白血病等の腫瘍性疾患が46%、再生不良性貧血等の疾患が 78%、これが同胞間です。非血縁者間につきましては白血病等の腫瘍性疾患が43%、 再生不良性貧血等の疾患が60%です。次の表が参考として急性骨髄性白血病の生存 率、各病期毎の骨髄移植の成績を示させていただいております。第一期で術後3年 生存率が74%、二期が60%、三期が42%というような生存率でございます。 ただ、臍帯血移植は例数がまだ数が少ないので、それぞれの病期に合わせた生存 率の比較は現在は無理でございますので、一応これらを参考にしていただきながら、 本日臍帯血移植を血液疾患の治療方の全体の中でどのように位置づけていけばいい のかということについて、ご議論をいただければと思っております。よろしくお願 いいたします。 ○齋藤座長  ありがとうございました。今説明がありましたように白血病の中の治療法として は、まず化学療法があって、次に骨髄移植、骨髄移植は一種の化学療法ですが、そ れから臍帯血移植となっているのが現況であろうと思います。この点につきまして 少しご議論いただきたいと思います。 ○迫田委員  1ページ目の図の最後のところです。臍帯血移植の適応でないところで一番右側 ですが、これは現状という理解でしうょか。それとも提供する側のことを考えます と、最初に臍帯血移植のこれからの可能性ですが、最初に臍帯血移植の可能性を考 えて、それに合わない場合には骨髄移植とかという理解もできるのではないかと思 うのですが、医学的なところがわからないのでこれの意味を教えていただきたいと 思います。 ○重藤室長補佐  事務局がこれを出させてもらった意図は、現状をとにかく図にしまして、先生方 に整理していただきまして、それを基に今後の姿をご議論いただきたいということ でございます。現状ということでご理解いただければと思います。 ○原委員 只今の造血幹細胞移植の現状についてという表がございますが、その表の中の臍 帯血移植の最大の利点は、移植が必要になってから移植できるまでの期間が非常に 短いことだと思います。骨髄移植の期間が登録開始から3〜6か月になってますが、 数年前に私が知ったデータでは240 〜250 日が平均値だったと思うのです。最近は このくらいになっているのでしょうか。私は最近のデータを知らないのですがどう でしょうか。 ○小寺委員  財団の方からのお答えです。中央値が6ヶ月ということです。 ○齋藤座長  今迫田委員の方から、臍帯血にまずいってそれから骨髄ではないかというお話が でました。他の委員の方の意見も伺いたいと思いますが、私の意見もちょっと付け 加えさせていただきたいと思います。 確かに必要なときに直ぐにできるという利点があると思うのです。ただ何百例も 何千例もやられてないので、安全性がどの程度保障されているのかという問題が一 番大きいと思うのです。いかがでしょうか。 ○西平委員 私の理解ですが、元々これは臍帯血というのは非常に細胞の数が少ない、血液の 取れる量が限られているというのがあります。現在のところはこの資料にもあると 思うのですが、小児が主な対象です。私の考えでは現状はこうですが、まだ十分な 臨床的なデータがないということですが、将来はなにも骨髄を最初にやる必要はな くて、むしろできるだけ登録して、移植するまでの期間は短いですから、できるだ け臍帯血を優先的にやるべきではないか、ある程度の一定の成績が出て、保存件数 も十分にあればですね。むしろ逆になっている。あるいは理想的には、小児に関し ては全部を臍帯血に置き換えてもいいのではないか、全部というのは極端ですが、 骨髄も勿論ですが、できればそっちの方で、もし貧血の方でしたら、小児に限りま すと僕はそう思っております。 ○陽田委員  今のどっちが先かという議論についてですが、患者の側からいいますと、これは 同時に両方が検索できた方がいいわけです。患者さんに時間があるかないかという 問題もあるでしょうし、どういうドナー候補者が出てくるのか、それによってどっ ちを選ぶかという選択肢が沢山あって、最も良い方法を選択できることが患者さん あるいは主治医にとっては、いいわけです。ですからここでどっちが先かという議 論はあまり意味がないのではないかと思います。 ○関口委員  北海道の関口です。造血細胞移植には出発の歴史が各国にあります。今言われた ようにアメリカのニューヨークの血液銀行では臍帯血バンクは少数民族のためにバ ンキングをしないといけないという行き方でやったのです。ところが、やってみる と非常に成績がいいので一般の方に、骨髄移植に代わった方法としてやるという方 向にいってます。これは各国においてもっとも適したものに位置づけるのが一番い いのではないか。だからこれが一番先とか、これが後、という考え方でこれの位置 づけをしない方がいいと思います。 ○有田委員  今のことに関連してお話したいと思います。参考資料の後ろの方に、私たちボラ ンティアで請願署名をいたしております。今厚生大臣に宛てて63万です。衆議院議 長・参議院議長に対してもそれくらいの提出をさせてもらってます。これは100 万 を目処にしてまして3月には100 万を越える目処がたってます。その内容は臍帯血 移植への医療保険の適用と、公的臍帯血バンクの設立を求めるということと、この 資料の中には書いてませんが、臍帯血を血液事業の中に位置づけた血液事業法の制 定を急いでくださいというものも出しております。今の話し合いの中のことに関連 しまして申し上げます。  臍帯血移植は成績がまだ十分でないので骨髄移植の次という話がずーとありまし た。素人としては良いものはちゃんと使ってほしいという気持ちがあるのです。国 民世論としては医療方法や研究に順位を付けるのではなく、患者さんにとって一番 良いものを優先して欲しいということです。それをお医者さんたちや行政の方たち には特にお願いをしておきたいと思います。私たちの方から見ておりますと、先行 している組織や医療技術の人達の面子や組織防衛が感じられまして、後から良い研 究や医療が出てきたときに、時間がかかってしょうがないというもどかしい思いが あるのです。  骨髄バンクの運動をしたときにもそうでしたし、臍帯血の運動に取り組んだとき にもそうでした。臍帯血の運動に取り組んでもう7年目になります。諸外国では進 んでおりますが日本では今はこういう状況です。厚生省がこういう検討会をもって くださったことに関して本当に感謝しておりますので、患者さんの治療に一番良い ものは何か、国民にとって良いものは何かという視点でまとめてほしいと思ってお ります。 ○齋藤座長  ありがとうございました。 ○浅野委員  どちらが先かということは、ケース・バイ・ケースということになると思います。 患者さんの状況によって直ぐやった方がよろしければ、あるいはドナーが見つから ないときは、当然現段階でも臍帯血が第一優先になります。  ところで、治癒せずが造血幹細胞移植の適用になっておりますが、これは一般の 人達の移植の成績の解釈に誤解を生ずると思います。実際には化学療法で治癒しな いから移植されているのではなく、移植をするかしないかは、患者の自己決定です。 オプションが幾つかあってその中で良いと考えるものを選ぶということです。これ は大変なミステイクであることを指摘しておきます。 ○齋藤座長  ありがとうございました。 ○小寺委員  僕の理解では、非常に単純な臍帯血移植の潜在的な需要の数はどうなのかという のを見たものだと思うのです。僕はこういう表現の仕方であまり問題はないと思い ます。化学療法というもので治り得る確率をいっているわけです。ですから浅野先 生のおっしゃることもわかるのですが、これ自体はそれほど問題はない。この中で どうかというのは、これは患者さんが決められたりするのですが、基本的には小児 の場合であれば、半数以上が抗ガン剤等で治るから、それ以外の人が造血幹細胞移 植の適応になっていくという図表であろうと理解しているのです。 ○重藤室長補佐  事務局の意図でございます。いろいろ治療法は、手術するにしても何をするにし ても、患者さんの承諾を取ることは当たり前の話でございます。承諾をとって3つ が並列的というよりも、化学療法を中心に取り組んでいらっしゃる先生方もいらっ しゃいます。いろいろな先生方の考え方がございます。今のところの模式図的に治 療法を描くとこのように見えるのではないかというので、書かせていただきました。 ○浅野委員  治癒しないものが移植だけの適応になっているということになると、最後の成績 の見方も変わってて、それがいかにも移植の成績がよいということになります。決 してこのようには行われていないわけですから誤解を与えないように注意していた だきたい。治癒という表現も大変甘いですね。一般の人達が移植成績を間違って解 釈されるような書き方は困ります。 ○西平委員  再発の危険が高いものに対してはということですね。必要だと主治医が話をして、 同意が得られたら移植の方にいく、俺は移植は嫌だというのであればやらないとい うことですね。問題はないのではないかな。 ○齋藤座長  この辺はこういう可能性があるということを模式的に示したわけであります。 ○有田委員  関連です。私が先程申し上げたのは実にここのところです。公的な資料がこのよ うに書かれたら、これでこの後もいってしまうのです。骨髄バンクの運動に十数年 前に入りまして、最初の間違いというのがここと似たような状況の中からずーと尾 を引いているのです。医療面では素人ながらここまで臍帯血移植推進運動を続けて きたのは、専門家の出す説明不足の資料から起こる意図しない間違いが恐いからで す。どういう資料が参考にされたかによって、世論は形成されやすいのです。まと めかたに間違いがあったらずーと間違ってしまうのです。  私たちは悲しいかな厚生省の今までのいろいろな間違いを見てきておりますので、 これは意図的かなと疑心暗鬼になってしまうのです。人の命がかかってますからね。 そこを先生方は専門家でおられるので、これでもいいのではないかとおっしゃいま すが、私を含めて殆どが医療に関しては素人です。マスコミの皆さんも医療の専門 家ではないです。だからあれおかしいなと世の中の人々が感じたことは、先になっ て本当に間違っていたということは沢山あるのです。  浅野先生がおっしゃったこと、小寺先生がおっしゃったことは、ここは時間を取 るかも知れませんがしっかりとまとめていただけませんか。 ○齋藤座長  ですから1ページの子供に対する模式図を見ますと、例えば白血病の患者さんが おられたときに、化学療法で治せるものは化学療法をします。最初から非常にハイ リスクグループというか化学療法だけでは成績が悪いものに対しては、骨髄移植を 進めて、西平先生がおっしゃったように来ているわけです。実際はこれは今までの 日本においても5,000 例と30例というのについての流れを書いたものでありまして、 決してこれは先程からの議論がありましたように、将来ともこのまま行くわけでは ないのです。現状の認識ということで、臍帯血の経験が進んで、非常に安全性も高 い、良いということになれば、模式図も当然変わってくるのです。  これはあくまでも現在までの流れというふうにご理解いただきたいと思います。 よろしいでしょうか。 ○有田委員  しかし、浅野先生はそうではないとおっしゃっておられます。 ○浅野委員 とにかく、一般の方が誤解されないようにして下さい。 ○齋藤座長  ですから、先生、ここは2段目のカーブの書き方であって、もうちょっと書き方 を工夫をします。 ○浅野委員  治癒というのはおかしいのではないですか。寛解ということではないですか。第 一寛解期でも、移植を進める場合と進めない場合があります。とにかく完全に間違 っています。このままでは骨髄移植はいつも適切に行われ、成績も満足のいくもの と一般の人は信じてしまいます。本当にそうでしょうか。 ○齋藤座長  だからこれはなかなか簡単な模式図というのは書きにくいわけで、非常に専門的 なこういう時期はこうであるというのを付ければ別ですが、何か良い案があれば出 してください。 ○小寺委員  間違いがないようにいいますが、これはフローチャートではないのです。目に見 てこうやっていくというフローチャートではなく、結果を書いてあるわけですから、 そこを誤解されると、第一寛解期で適応がないのかということになりますが、それ は全部終わった後の結果として、今の現状と捕らえているということですから、あ えてそこのところを誤解されないようにということです。 ○齋藤座長 いろいろな議論があってケース・バイ・ケース、あるいは補完的なものという考 え方が現在の認識かと思います。次が第2点目です。臍帯血は臓器なのか血液製剤 なのかという点について議論をお願いしたいと思います。最初に資料を説明してく ださい。 ○重藤室長補佐  資料2です。骨髄液、臍帯血、輸血用製剤の相違ということでまとめさせていた だきました。まず1ページ目でございます。  目的でございます。骨髄液の目的は白血病や再生不良性貧血など、対象疾患及び 適応が明確。疾病の根治を期待するということでございます。臍帯血も同様で、白 血病や再生不良性貧血等対象疾患及び適応が明確である。疾病の根治を期待をする ということでございます。輸血用血液製剤は多様な疾患等で用いられます。補充療 法であり、症状の改善等を期待をするということでございます。  採取方法につきまして、骨髄液では全身麻酔下で採取するということです。臍帯 血につきましては出産後不要となった臍帯から採取するということでございます。 輸血用血液製剤につきましては採血業の許可を得て、献血により採取するというこ とでございます。  採取・保存の主体でございます。骨髄液の場合は採取医療機関における採取で採 取医療機関の内科医及び小児科医で採取をする。保存はしないということでござい ます。臍帯血につきましては、採取医療機関における採取で、産婦人科医または小 児科医等です。現在は各地域バンクで保存をされているということでございます。 輸血用血液製剤につきましては、医療法上の医療機関であり、かつ薬事法上の医薬 品の製造承認を取得し、かつ製造業の許可を取得した者となっております。  保存・使用です。骨髄液は保存はせず、採取後直ぐに移植医療機関に搬送して使 用する。採取された骨髄液は全て使用される。臍帯血は多様なHLA型の臍帯血を 保存する必要がある。保存した臍帯血のうち、実際に使用する件数は僅か数十分の 一程度ということでございます。輸血用血液製剤は保存をする。保存された血液は 概ね有効期間内に使用をされるということでございます。  体内での作用です。骨髄液は患者の体内で生着し増殖する。臍帯血につきまして も患者の体内で生着し増殖する。輸血用血液製剤につきましては、輸血された血液 細胞の寿命の間のみ存在する。  一般流通性です。骨髄液は提供者と患者が確定しないと採取されないので流通は しない。臍帯血につきましてはHLAの適合の必要性により流通性は低い。輸血用 血液製剤につきましてはABO型及びRH(D)型の適合が求められ、HLAに比 べますとかなり合わせる要素が少ないので製剤として流通しうるということでござ います。  供給方法です。骨髄液の場合は、移植側の医師等が採取病院から移植病院に搬送 するということです。臍帯血につきましては各地域のバンクより移植医療機関に提 供されているということです。輸血用血液製剤は製造業者が直接、または卸業販売 業者を通じて供給をされるということです。  使用する費用です。骨髄液の場合は移植骨髄穿刺の技術量として健康保険が適用 されております。臍帯血の場合については検討課題です。輸血用血液製剤につきま しては医薬品として薬価が収載をされております。  安全性の確保です。骨髄液につきましては財団法人骨髄移植推進財団のドナー安 全委員会、医療委員会でマニュアルに基づき安全性の審査及び指導を行っていると いうことです。臍帯血につきましては検討課題で今作業部会で作業をしているとい うことです。輸血用血液製剤でございますが、薬事法に基づき製造承認、製造業の 許可、流通管理としての販売業の許可、薬事監視等の規制がかかるということでご ざいます。  次のページです。臍帯血移植を骨髄移植と同様と位置づけたときにどういう利点 と欠点があるのか。それから血液製剤と同等に位置づけたときに、どういう利点と 問題点があるのかというものを簡単にお示しをした表でございます。  (1)骨髄移植と同様の位置づけをした場合です。利点は採取・保存・使用につ きましては、医療行為の一環として行うことができ、現在行われている各地での取 り組みを中断させる必要はないということです。供給体制の整備は各地での取り組 みを活用しさらに発展させることができる。法令等による規制では医療行為として 行うことができ、関係者合意の実施のための指針を作成し、それに従い実施するこ とができるということです。  問題点につきましては、採取・保存・使用につきましては安全性等の確保のため の指針を遵守することが必要であり、そのための組織を整備しなければならない。 供給体制の整備ですが、各地域で行われている採取保存体制の評価見直しと、そこ で既に保存されている臍帯血の品質審査が必要になる。情報ネットワークの整備が 不可欠である。法令等による規制は、法体系における指針の位置づけについて検討 が必要になるということでございます。  (2)血液製剤と同等と位置づけにした場合です。利点として薬事法に基づく各 規制をかけることで、医薬品としての安全性を確保できる。開発段階、GLP:医 薬品の安全性に関する非臨床試験に関する基準、GCP:医薬品の臨床試験実施に 関する基準。製造段階、製造業の許可、GMP:医薬品の製造管理・品質管理に関 する基準。国家検定。流通段階につきましては、卸売り販売の許可、取扱い・広告 に関する規制。使用段階は副作用情報の収集評価等、GPMSP:医薬品の市販後 調査に関する研究、再審査、再評価、副作用の報告義務。というようにかく段階で の規制がかけることができるという利点がございます。  問題点としては採取・保存・使用につきましては、現時点では薬事法上の規制を かけることが困難かつ現実的ではない。臍帯血を血液製剤と同様に扱うことにより、 臍帯血移植の推進にとって障害となる可能性がある。例えば必要とされる手続きに つきましては承認申請に向けた試験研究段階でGCP(医薬品の臨床試験の実施に 関する基準)に則った臨床試験の実施が必要となる。各採取・保存機関が製造承認、 製造業の許可を取得することが必要となる。製造方法・規格・試験方法等を定め、 各種試験によりその妥当性を証明することが必要となる。GCP(医薬品の臨床試 験の実施に関する基準)に則った臨床試験により人に対する有効性を証明すること が必要となる。  供給体制の整備についてでございます。製造承認申請以前に試験的に採取した臍 帯血については、製造承認の対象外となることからこれを移植に用いることはでき なくなります。今の現在の各地域での取り組みが生かせないということになります。 製造業者間の情報ネットワークの整備が不可欠となるということです。  次の紙の薬事法体系参考資料でございます。先程申しました各団体の規制という のが、それぞれ開発段階、製造段階、流通段階、使用段階についてどういう規制が かかるのかという模式図でございます。これは参考までにご覧いただければと思い ます。以上簡単にそれぞれ骨髄液、臍帯血、血液製剤の違いから、骨髄移植と同じ ような枠組みで捕らえるとどういう利点と欠点があるのか、血液製剤と捕らえる時 にどういう利点と欠点があるのかということでまとめ説明させていただきました。 ご議論よろしくお願いします。 ○齋藤座長  ありがとうございました。この点については専門家の鎌田先生何かご意見いかが でしょうか。 ○鎌田委員  早稲田大学の鎌田でございます。前回休みまして今日初めての参加ですが よろしくお願いします。前回の議事録を拝見しまして、臍帯血は臓器が血液かとい う、大変な議論がありまして宿題が出されていたように拝見しました。  臓器か血液かという議論は、本来は自然科学の方の方が専門かも知れません。法 律で割り切れるかも知れないというご趣旨で宿題が課されたのかも知れませんが、 法律学というのはこういう問題をすっぱり割り切るような性質の学問ではございま せんで、何らかの法的な効果と結びつかない区別をすることは、法律的には全然意 味のないことなので、これを区別することは法的にどういう意味があるのかという ことをまず問題にして、意味があるならその区別の議論をしましょうということに なるわけです。  具体的に考えますと、血液か臓器かというのは正確な分類では多分ないのだろう と思うのです。血液製剤類似のシステムに乗せるのか、あるいは移植医療としてこ れを捕らえるのかというのが本来の正しい分類の仕方だろうと思います。  法律的に問題があるとすれば、例えば血液製剤には製造責任法の適用があります から、臍帯血は血液製剤と同じように製造責任法の適用対象になるのかそれとも移 植医療の問題として製造物責任法の対象外として考えるのかとか、あるいは今ご説 明がありましたように、血液製剤は薬事法の規制が係っておりますので、血液製剤 と同じように薬事法の規制に服させるのが妥当であるのかどうか、そういう限りで のみ法的には区別する意味がある。それ以上には一般的にどっちかに区別する意味 はないのかという感じでおります。  ただ臍帯血というのは、非常に中間的な性格をもっておりますし、一番近いとこ ろにあるのは血液ですから、これとの対比で考えていくことは有益であろうと思い ます。ただ、血液自体がもともと臓器的性格をもっているものですから、血液を法 的にどう取り扱うのかということそれ自体がかなり難しい問題なわけです。  多少、外国の例なども見ますと、前回も、ドイツの連邦参議院を通過したと聞い ておりますが、政府草案の輸血法案がご紹介されておりましたが、ドイツの場合に は血液製剤も薬事法上の医薬品という前提から出発しております。その中で血液製 剤のに応じて、ここに付属の資料で目次が出ておりますが、採取の規制からルック バックといいますが、事故にあたっての遡及追跡システムという制度を作って、こ の中に血液幹細胞についての規定も盛り込まれています。  しかしながら、採血はそう自由にヨーロッパではできませんから、採血施設につ いての厳格な規制と採血方法の厳格な規制があって、その一環としての幹細胞の採 取の規制がされているのですから、ここで想定されているのは末梢血幹細胞の話で あって、臍帯血がこの中に入っているわけではないと理解しております。  フランスの場合には公衆衛生法の中で、医薬品に関する章と、人体の組織の章、 臓器から細胞に至るまで全部人体組織ですが、大きく二つにわけて、血液は医薬品 の章ではなく、人体の組織の章の中に入っております。人体組織の章中で血液製剤 の節とそれ以外の人体組織の節が分けられ、人体組織の節の一番最初に出てくるの が骨髄液というシステムになっております。ですから血液庁と医薬品庁は別の役所 になっていて、血液庁は血液製剤を扱うが移植用の骨髄液その他は血液庁医薬品庁 でも扱わなくて、むしろ移植担当官庁の方の所轄になっているというふうに聞いて います。血液自体も、国によっていろいろな取扱いのシステムが分かれている現状 です。  日本では輸血法ないし血液法はありませんから、具体的な法規制との関係で言え ば、血液製剤と同じように薬事法の適用対象にするのかどうかというのが、直接的 な法規制の問題としては中心的な問題になるだろうと思います。多分日本やあるい はドイツその他大部分の国でもそうですが、本来人体の一部というのは医薬品では ないはずですが、血液製剤が薬事法上の薬品になるのは、厚生省さんの方が詳しい と思うのですが、一定の開発製造段階を経て流通機構に乗って不特定多数の人に提 供されるという点で医薬品類似の規制が馴染むという考え方が従来の取扱いの基礎 にあったのだろうと想定されます。  その点を考えますと臍帯血移植は骨髄移植のように誰から誰という特定人間の移 植ではなくて、採取された段階では誰に行くのか分からないという意味では血液製 剤に似ているところがある。あるいは大量な保存をしないといけないという意味で も、血液製剤に似ているところがあるのかも知れません。しかし、元々血液製剤は 本来の医薬品とは違った性格をもっているのですが、それが臍帯血になるともっと 医薬品から距離が離れるわけです。その中で臍帯血を輸血用血液製剤と法律のレベ ルで同じに扱うというのはあまり合理性がない。  先だって輸血用血液製剤ではGVHD対策で放射線照射をしてくれという要望が ありましたが、あれも日赤さんは放射線照射した血液製剤を提供されることになっ たのだろうと思うのですが、これも先程説明がありましたように薬事法上の承認申 請のためにGCPに従った治験を経て、承認申請をして、製造承認を受けるといっ たようにその他開発製造販売の方法から流通の施設に至まで薬事法の審査を経るた めに、そう早急には対応できないというような事情もありますので、その意味で、 血液か臓器かというどっちかに分けてどっちかのルートに乗せるというのではなく、 臍帯血それ自体の特性に応じた最もいい取扱い方法をぜひ考えていくべきだと思い ます。  その時には先程らいご主張もありますように、患者にとってどういう形にするの が一番いいのかを基本に考えていただきたい。骨髄移植もあるし末梢血幹細胞の移 植も臍帯血移植もあって、それぞれ若干適応が違うと思いますので、その中で最善 の方法を、安全かつ円滑に患者が受けられるようにしていただきたい。  その意味では少なくともデータ類に関しては間違いなく統一的になっていって、 どのルートのデータも患者さんにいち早く届く、その中で最良の選択ができる。そ ういうシステムを作るにはどうしたらいいのかというのを、端的に論じていただい た方がよろしいのではないかというのが印象でございます。以上でございます。 ○齋藤座長  ありがとうございました。臍帯血は血液でもあり臓器でもありという両面性をも っております。最後にいわれましたように実際的には患者さんにとって一番分かり やすい良いシステムを構築することになろうと思います。 ○青木委員  この問題は前回私は中座したのですが、その時に提起した問題の一つでもありま す。厚生省のお作りになったこの資料、法律をがんじがらめにして血液にしたら、 大変な法律の締めつけがありますということをおっしゃりたいからお作りになった のでしょうが、そもそも鎌田先生のお話にもあったように血液そのものは本来的に は臓器です。赤血球も臓器であれば血小板も臓器です。  その中で私どもは35年間献血運動を進めてきた人間ですが、そもそも血液を薬品 とし扱うことが問題であるという基本的な考えをもっております。  したがって、日本ではずーっと長い歴史の中で輸血用製剤や血漿製剤を国として は薬品として扱ってきた、その結果として、世界一沢山の血漿を消費した。これが 日本の血液行政の実態であります。それは何かというと、血液を薬品として見てき たという部分が非常に大きいと思います。したがって諸外国でも薬品扱いをしてい る国は沢山ありますが、一般薬と違う、その特性をきちんと国内の法律あるいはそ れ以外のコンセンサスを得て決めているわけです。そこに国内の献血による国内自 給ということを各国ともいってきているわけです。  ですから基本的な考えは、血液は薬品だから、こういう法規制が沢山かかるとい うことではなく、日本が血液を薬品として見ているという観点を基本的に変えてお 考えいただかないといけないのではないか。それがそのまま行った結果として、去 年終わった「血液行政のあり方に関する懇談会」に端的に現れていると思います。  先程結論的に言われたように、造血幹細胞の採取にも幾つかの方法があるわけで す。それがどこの時点で、例えばこの臍帯血は今は問題ですから臍帯血をどういう 形での機関に乗せたら患者さんにとって一番良いのか、基本的にはそこだろうと思 います。つまり前回からいろいろ言われておりますように、採取は献血者の場合に は生身の腕に刺すわけですが、臍帯血は若干違いますが、それを回収して保存をし て供給するということは、骨髄バンクと違って、血液の仕事の中の流れの方が一番 相応しいのではないかというのは基本的な考えであります。  もう一つ臓器か血液かという分け方を前回ちらりといったのですが、これはここ で議論をする必要はないのかも知れないのですが、私は臓器の中に固定的な臓器と 流動的な臓器という分け方をさせていただいているわけです。固定的な臓器という のは心臓であり肝臓であり腎臓である。これが臓器移植法でいう臓器の取扱いです。 流動的な臓器は赤血球であり血小板であり造血幹細胞であろう、血小板を沢山含ん でいる血液は濃厚血小板といいます。それと同じように臍帯血の場合も血液である。 したがって臓器移植法では扱わないもの。しかももう一つの分け方でいくと再生が きくものです。血液と同じように、それを採取したあと、造血幹細胞は再生ができ るわけです。そのような分け方もあるということです。 ○関口委員  この問題については、私は血液センターの所長ですから血液製剤はどういうもの であるのかというのは説明するには一番適切な人間かと思います。骨髄液とか臍帯 血に共通しているのは、患者さんに使う方法です。全部輸血と同じに静脈輸注です。 その点からいうと見た目では血液かどうかわからない。多少の色は違いますが。そ の意味では血液と同じだということもできます。  しかし、同じことは沢山あるのですが、最もこのものが違うところは、輸血の血 液は薬のように代謝されて身体でなくなっていくわけです。代謝されるというか壊 れてなくなるわけです。それでも効果は十分なわけです。骨髄液とか末梢血の幹細 胞、臍帯血の幹細胞というのはなくなっては駄目で、生着し増殖するといういろい ろな機能を持つ成熟細胞になっていくわけです。あきらかに輸血の効果と違うとこ ろを求めていくわけです。  その意味からすると、あきらかに薬と違うということがいえるわけです。この意 味からすると臓器移植に匹敵するといっても過言ではないと思います。どうして過 言ではないかというと、今血液が臓器かどうかということですが、これは臓器と言 えるかも知れないのですが臓器ではないわけです。今青木さんが固形といいました が、血液はあくまで臓器に相当するものという表現をしているわけです。その意味 で成熟細胞を輸注する輸血と、造血の機能を持つ、血液を作っていくというものと を明らかにわけておかないといけない。後でいろいろな問題が起こったときに、こ れは血液による副作用と同じような扱いは当然できないわけです。あきらかに違っ た取扱いをしないと困るわけです。  どうして困るのかというと、今はこの問題だけです。これは浅野先生にお聞きし たらいいと思いますが、これからいろいろなセルセラピーが行われます。セルセラ ピーというのはいろいろな形にモディファイした細胞を人体に入れていくわけです。 こういうものが持ち上がってくる。それは今のように輸血用血液と同じにするのか どうかということも、そこでまた考えないといけない。造血幹細胞のうちの末梢血 幹細胞が、ヨーロッパではむしろ臍帯血より多く使っているという状況です。  そういうところから考えても、今ここで輸血用の成熟した血液を輸注して、それ はなくなってもいいという考え、入れたものがずーと新しいものになって働くとい うように者さんに投与してからの行方というものを、今のうちから分けておいた方 がいいのではないか、その意味で輸血用血液と造血幹細胞と一緒にすることはでき ないと思います。 ○小林局長  混乱があるといけませんので事務局からちょっと報告させていただきます。臓器 移植法の時の臓器というのは、心臓とか肺臓、肝臓・膵臓・小腸と大腸といろいろ いっております。その他にも骨髄移植とか血管移植をどう考えるのかというときに は臓器移植ではなく組織移植と申してます。臓器と組織と分けております。  その意味では血液は臓器という言い方は私どもはしておりません。ただ法律的に 定義しているわけではないのてすが、一般的には、臓器と組織を分けております。  血液等については臓器ではないということだけはご理解いただければと思います。 ただどういうものを正式に使っていくのかというのは、法律的に決めているわけで はありません。 ○原委員  先程から鎌田先生がおっしゃったように、現実の問題としては血液製剤と臓器と わざわざわける必要はないのでしょうが、臍帯血移植等は血液と一応は一線を引き ながら考えないといけないのだろうと思います。ただ扱う、運営するところはどこ かというと、いろいろな面で血液と同じうよに扱われる面があるのではないかと思 っております。採血する場所は違いますが、採血以降のいろいろな処理と方法は全 て血液センターが現在やっておられることです。その意味では血液に非常に近いの ではないかと思うわけです。  例えばここに一般流通性という先程の表がありますが、HLA型の適合の必要性 によりと書いてありますが、現在血液センターはHLAの一致した血小板を既に供 給しておられるわけです。その意味では全くこれも血液センターがしておられる現 実と一致したことというか、一致というのは語弊がありますが、現実にやっておら れる仕事の一部に入っておられるわけです。いろいろな点からいうと扱いは血液で あっていいのではないかと思います。  先程関口先生がおっしゃられたように副作用という面を考えますとGVHDとい うのは他の臓器では起こりませんし、また血液の照射ということをすれば血液製剤 でも起こってこないわけで、副作用という面から考えるとどうしても血液とは分け ないといけない一線を引かないといけないのは事実ですが、いろいろな扱いの面で 血液に類似した扱いをする方が非常に便利ではないかというふうな考えを私自身は 持っております。 ○迫田委員  私は前に関口先生のところをお尋ねしてお話を伺ったときのことで、何が違うの かというのがよくわからなくて伺ったときに、はっと先生がおっしゃったことでよ く理解できたことは、骨髄バンクというのはデータを扱っているところである。情 報ですね。それで臍帯血バンクになると、実際にその物があるところとおっしゃい ました。そういうことは患者さんにとっては直ぐに必要なときには、移植を受けら れるとかあるいは逆に言えば、安全性という意味では保存の機関にいかにきちんと 保存されるかとか、そういう意味でも、多分非常に大切な仕組みを作らないといけ ないということがあるのではないかと思いました。 今ここに利点として採取・保存・使用、骨髄移植と同様の位置づけとした場合に 医療行為の一環として行うことができ、現在行われている各地の取り組みを中断さ せる必要はないと書いてありますが、その先生のお話を思い出すと、そんなに簡単 にそのまま同じとして利点としてあげていいのかなと思いました。 ○草刈委員  原先生がおっしゃったように、技術的に共通なものはあるのは事実ですが、扱い 方によって随分違うということは先生も前提として発言なさっていると思います。 この資料の中で皆さんの中に誤解があっては困ると思っているのですが、ニューヨ ークブラッドセンターというのは米国赤十字社の血液センターではないので、純粋 民間企業です。赤十字というのは世界中で全部日本のように血液事業に関わってい ると思われる方がいるのですが、こんなにやっているのは日本しかないと言われて ます。  既に何回か議論が重ねられているのですが、どのように日赤の血液センターがお 役に立つのかというのを模索しております。技術的にサポートできるものはなにか とね。だから原先生がおっしゃる以前に我々はやっているわけです。  臍帯血は細胞移植のために用いられる造血細胞を移植するためのものというのは 厳然たる事実です。そういうことをちゃんと押さえておかないといけないと思いま す。  この臍帯血移植推進の主役は妊婦さんであることを忘れないでくれということで す。その側にいるのは産婦人科の先生です。コーディネーターは不要と言わないで 下さい。実はコーディネーター的な役割をする産婦人科の先生、あるいは今日は看 護協会の方がおられないが、助産婦の方が介助をなさるとすれば、そういう方がい ないといけないわけです。しかしドナーは胎児か妊婦さんであるのかというのは明 確にしてくださいと、この前にお願いしておきました。  骨髄移植の場合のドナーさんは、骨髄移植のために全てを犠牲にしてそこに行く わけです。社会生活も犠牲にして行くわけです。ありがたいことであると思います。 妊婦さんは健康な赤ちゃんを生むためにいるわけです。産婦人科の先生もそうなん です。100 %そうなのです。そのときに胎盤の血液が使われるから提供しますとい うことで、骨髄移植のドナーとは大分心情的に違いはありはしないかと思います。 そのときに是非、私たちは最近600 万人の方々から関口先生やここにおられる血液 センターで献血をお願いしますが、献血者を傷つける言葉があるのです。言葉には 注意していただきたいと思います。不要となった胎盤ということを言わないでくれ ということです。健康な赤ちゃんを今まで養っていた血液が、それを必要とする方 に役に立つことができるという言い方をすべきです。不要になったからくれという のはどうかと思うのです。これは有田さんの方が私の気持ちが分かってくれると思 います。陽田さんには分かっていただけると思います。意外とこういうことを医学 の方で、何かを推進しようとする方は、推進するという目的が先になってしまうの で、端的な表現になるのですが、気をつけていただきたいと思います。だからコー ディネートはいらないとはいわずにしていただきたい。その辺は仕組みとして考え ていただかないと、中林先生の立場はなくなってしまうわけです。  安全面とか技術面では私は外国のことは絶対に参考にしないといけないと思いま すが、社会の仕組みというのは日本の中での心情・文化というものを背景にして、 陽田さんと同じような気持ちで進まないと駄目だと思うのです。あまり無理強いと いうのは日本人には馴染まない、良いことをやっていただくのですがね。  私たちが一番傷つく言葉は、これは厳然たる事実ですからしょうがないのです。 製造業者だと言われるのです。日本赤十字社は。寂しいのですが法律ではしょうが ないのです。採血業者とかね。7,000 人の職員はそのことについては気持ちよく働 いてません。だからこういうときに使われるのは、行政がお作りになるのだから厳 然たる事実だからなんともいいませんが、外に出すときには製造者と書いていただ いた方がいいかなと思っております。失礼しました。 ○齋藤座長  いろいろなご意見を伺いまして段々運営の方に向いていると思いますので、次の 議題に進めさせていただきたいと思います。 ○有田  お願いします。関連です。 ○齋藤座長  運営のことですか、では運営のところでやりましょう。議題の2が臍帯血バンク の運営の現状と3も運営上の課題についてというのがあります。勿論これは全て本 日で結論がでることではございませんが、時間のある限りご議論願いたいと思いま す。 まずは、臍帯血バンクの運営の現状について事務局から簡単に資料の説明をいた だきまして、その後各地区の状況について説明をしていただく予定です。お願いし ます。 ○重藤室長補佐  では事務局より説明をさせていただきます。臍帯血バンク、公的なものとするの かは別としまして、現在の臍帯血の採取保存、そういうものの供給の体制はどうな っているのかということを把握した上で、今後、現在行われている体制をどのよう に発展をさせていって、よりよい臍帯血の供給体制を作っていくのかということの 参考資料として、まとめさせていただいたのが資料の3でございます。  1枚目をめくってください。今日本における臍帯血の保存の状況でございます。 これは前回も資料として出させていただいたものでございます。現在そこにありま すように神奈川臍帯血バンク、近畿臍帯血バンク、東海臍帯血バンク、東海大学臍 帯血バンク、静岡臍帯血バンク、北海道臍帯血バンク、中央血液センターバンク、 北部九州臍帯血バンク、東京臍帯血バンクというように、9つ程、今の各地での取 り組みの中で約1,500 件の臍帯血を採取して保存して、これから治療に活用しよう ということで、これらの地域は頑張って活動しているところでございます。  その中で特に代表的というわけではないのですが、私どもの方で資料のありまし たものをまとめさせていただいたものが次のページでございます。神奈川臍帯血バ ンクのネットワークの模式図と次のページ神奈川臍帯血バンクの要綱、東海臍帯血 バンクのフローチャート、次の東京臍帯血バンク、これはうちの方の手元にありま したもので、簡単な模式的なものがありまして、整理しやすいもので私どもの手持 ちの資料を活用させていただきました関係でその3つを資料としてまとめさせてい ただきました。  このような3つのバンクをどのように運営をしているのか、そういうものを理解 していくのが、今後このような地域でのバンク活動をどのように展開していけばい いのかということで、議論の一番の土台になろうかと存じます。  私から説明するというよりもそれぞれのバンク関係者の先生方がいらっしゃいま すので、お願いできたらと思っております。 ○齋藤座長  ありがとうございました。では西平先生お願いします。 ○西平委員  簡単に説明します。図を見れば大体わかると思います。平成7年9月の前から準 備委員会を開いて、こういうものを作ろうということでいろいろ考えたものでござ います。まず初めに、臍帯血バンクというからには臍帯血の検体そのものの数を増 やさないと全く機能しないということで、お金のない銀行と同じになってしまいま すから、数を増やそうということで採取施設を検討しました。今現在あるのは採取 施設がこのくらいあります。それから処理・保存という面になりますと、これはも っと採取の段階を経てから細胞を処理する技術とか経験を有する人がいないといけ ないということで、我々の神奈川子供センターと横浜市立大学と昭和大学藤が丘病 院で処理と保存は行っております。  検査に対しましてはHLAに関しては神奈川赤十字センターが全て行う、検体は 全てそちらに送る。それ以外の検査に関しては3つの施設で行います。保存施設と 処理施設のないところで採取されたものについては、全て神奈川子供センターに送 ってもらって我々が処理して保存するということです。それに関するデータについ ては、我々のところが事務局として臍帯血の量とか質の管理とかHLAに関するこ となどを管理して保存しております。  実際の移植がありますと、非常に沢山の書類がございまして、これは骨髄バンク に準じた書類をモディファイして使っております。実際に患者が発生した場合に問 い合わせて、HLAの合う臍帯血がありましたら、移植審議委員会を開いて、そこ で決めるということになってます。それについて、臍帯血バンクを作るからには要 綱が必要であるということになりまして、次のページですが、極めて簡単な要綱で、 素人が作ったものですから法律の専門家がみればおかしなところがあるかも知れな いのですが、一応このような要綱を作りましてこの基準に添って運営しているとい うことです。  主なことは、目的として臍帯血移植を推進することによって医療を進歩させよう ということと、臍帯血委員会を作って移植審議委員会、実際に移植する患者さんが 本当に移植に適用しているのかどうか、そういう疾患があるのか、現在の状況が本 当に移植に適しているのかどうか、臍帯血の量とか質に関して大丈夫か、というこ とをチェックしてから移植を行うということです。その他にもいろいろございます が時間の関係で省略します。  もう一つはまだ保険が適用されてないし、確立された移植療法ではございません ので、必ず移植を受ける、我々の場合には小児なのでご両親のあるいは親権者の同 意を受けて行う。さらに移植を行う施設の倫理委員会を通したものだけ移植を行う ということです。移植に関する責任ですが、移植の実施に伴う全てのことについて は移植を実施した施設が全て責任を取るということです。そういう条件で臍帯血を 提供してます。これを提供した側が、移植を上手くいかなかったからといって提供 した側が責任を問われますと、これは絶対に移植は提供できませんので、これは全 て移植をした側の施設の責任である。直接には主治医になるわけですが、そういう ことでないと、移植はできないと考えておりますので、そういう項目を入れており ます。移植医療というのはご存じのように骨髄バンクによる移植もそうですが、フ ィフティ・フィフティの治療ですので、これをやらないと患者さんそのものは殆ど 救命できないという状態のときに初めてこういう移植医療が行われるので、そうい うふうに考えております。 先程からの議論もありますが、単なる血小板の輸血とかの輸血と、移植という医 療行為を伴うものと明確に区別する必要があると思うのです。これは血液ではなく 移植医療です。先程関口先生がおっしゃった通りだと思うのですが、これは移植医 療なんです。単なる一過性の貧血あるいは出血を補うためのものとは全く違うもの である。患者さんも、やる主治医も非常な覚悟の上です。以上です。 ○齋藤座長 ありがとうございました。では引き続きまして東海バンクの小寺委員簡単にポイ ントだけお願いします。 ○小寺委員  私は東海臍帯血バンクの直接の責任者ではありませんが、地元のバンクでござい ますので代わって説明いたします。西平委員が話されたシステムというのは基本的 に全国の民間の臍帯血バンクに共通部分が非常に多いので、それは省かせていただ きます。  一応ポイントだけいいます。このような流れで臍帯血を採取・保存させていただ き、また登録医師からの受付において移植病院で臍帯血移植を行うということをや っております。一つは臍帯血採取施設は固有名詞を出してしまいましたが、今のと ころ4か所に限ってそこでお願いしているということです。  保存施設はさらに3か所で行い、この基準については厚生省研究班のガイドライ ンに添うように努めております。移植病院ですが、ここには2か所しか書いてませ んが、将来的には成人にも場合によっては体重の少ない人にも応用が可能かも知れ ないということで、非血縁者間骨髄移植の経験ベースなどを加味したもう少し多く の病院を認定しております。認定病院は条件の一つとしては、その施設の倫理委員 会において臍帯血移植を行いうるということが承認されていることとなっておりま す。  臍帯血と患者さんのHLAのデータの保管と照合というのは、愛知県赤十字血液 センター検査二課の方にお願いしてやっていただいているわけです。それとは別に 患者さんの移植適用の基準、その他、患者さん側のデータを保管する事務局という ものを別のところに置いてやっております。  当バンクの場合は、一応最近の経験から他地区の施設において、当施設と同じよ うな当バンクに入居されている今までの移植病院と同じような基準を満たしたとこ ろには、地区にも搬送するということになっております。  これは保存、その前後の検査ということはいろいろお金がかかるわけですが、そ ういう運営資金に関しては、今のところ旧東海骨髄バンクの方に援助をしていただ いているということです。以上です。 ○齋藤座長  ではもう一か所東京採血バンクの青木先生お願いします。 ○青木委員  東京臍帯血バンクの説明を簡単にさせていただきます。お配りされております資 料の東京臍帯血バンクの紙をご覧いただきたいと思います。まず東京臍帯血バンク のできた経緯です。これは先程から報告されたボランティア団体の非常に強い要請 で東京臍帯血バンクができたということが特徴でございます。私も7年あまり前か ら臍帯血バンク運動をやっております。公的臍帯血バンクが一日も早くできること を願って、それができるまでは個々のバンクでやるのは混乱が起きるのではないか ということで、ずーと東京の場合には作らないままできたわけです。  ボランティアの団体の皆さんの非常に根強い希望と、採取して子供が6か月にな る前までは使用できませんので、少しでも早く準備をする必要があるということで できたわけでございます。  したがいまして出来たのが去年の9月15日でございます。非常にまだ新しいわけ です。ここに最初の1ページ目の保存の数が東京臍帯血バンクには30となっており ますが、現在使用に耐えるものが67保存してございます、今まで68の採取をした わけですが、無菌試験で雑菌が一つ入っておりまして、一個は廃棄済でございます。  基礎的な東京臍帯血バンクの運営の考え方は、移植医が中心にいないということ です。つまり産婦人科医とデータを管理する団体、つまり献血供給事業団がそれを 担当しておりますが、搬入とデータ管理をする、ここが中心となってます。あくま でも移植医療に携わる先生はその移植に全力を上げて患者の治療をしていただくの が本分でありますから、運営そのものは違う中間的なところがやるべきであるとい う考えでございます。  この表にございますように、採取については指定医療機関として産科の医療機関、 私立の病院で浜田病院というお産の一番多い病院でございますが、それと順天堂大 学の浦安病院、慶応大学医学部、あとは都立病院がこれから加わろうとしておりま す。これの一番のポイントは24時間以内に分離保存しないといけないということで あります。私どもは365 日、24時間足がございますので、採取された、これは娩出 後の採血になります。娩出後5分以内の採取を終わった段階で、私ども事業団が回 収をする。保存施設としては東大医科研の細胞プロセッシッグ部門、こちらには無 菌室の完璧なものと、細胞プロセッシングの高度な技術がございますので、分離保 存については東大医科研の細胞プロセッシッグ部門でやっていただく。検査につき ましては本当は赤十字の技術が非常に高いわけでご協力いただきたいわけですが、 現在までの時点ではSRLという検査センターにご協力をいただいているわけでご ざいます。  私どものバンクの保存の方法はFDAのガイドラインをクリアしたもので国際的 に流通するという前提でございます。採取に当たっての検査は母親側の安全性の検 査、血液のHBVとかHIVとか安全性の検査を全てクリアする。胎盤の方の血液 についても安全性の検査は母親と同等にする。胎盤血のHLAにつきましては、全 てのローカスを検査をして保存しております。  もう一つは現在近畿臍帯血バンクと提携を致しております。将来的にはあと数カ 所と提携をしたいという考えでスタートしております。  ボランティアも含んで東京臍帯血バンク運営委員会というのを組織しておりまし て、そこで基本方針を決定する。運営委員会のメンバーは合計18名でございます。 会長が1人、参加の採取医療機関が3名、保存機関、細胞プロセッシング部門で1 名、骨髄移植経験者の有識者が3人、輸血医療関係者・大学あるいは病院の輸血部 長さんが3人、ボランティア団体から2人、事務局から5名という18名で運営委員 会を組織しておりまして基本的事項を決定しております。 あと暫く100 例を越しますと、患者さんの要望に応えるという考えでおります。 現在のところ運営委員会の決定は、誰が選択するのかということになりますと、患 者さんと主治医が相談して要望を出していただくということにします。現在インタ ーネットの解説に取り組んでおりまして、将来的には在庫の情報をインターネット で公表する。必要になった患者さん、あるいは主治医がその情報を見て東京臍帯血 バンクに注文をする、そして供給されるという形がいいのではないかという方向で ございます。以上です。 ○齋藤座長  ありがとうございました。ただいま3つの地域がそれぞれ工夫を凝らしてやって おりますが、何か事務局の方からございますか。 ○重藤室長補佐  今臍帯血の供給体制の説明がございました。資料の4が骨髄移植の実施体制の内 容でございます。1枚目を捲っていただきますと、これはこの前の資料でございま す。今の日本の骨髄移植体制はこのような模式図で行われているということをご参 考にご議論していただければと思います。次からの表は流れ図、それから係る費用 等についてでございます。そうした骨髄バンクがどのようにして運営されているの かということも参考にしていただきながら、現状の臍帯血の供給のための運営体制 のあり方をご議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○齋藤座長  現在各地域で行われている運営の現状と、次の議題の3の運営上の課題というの は重複しております。どのように情報のネットワーク化を進めるのか、あるいは責 任は誰にあるのか、今までお話は大分でましたが、後10分くらいこの点についてご 議論願いたいと思います。加藤委員東海大学の経験はいかがでしょうか。 ○加藤  前回も申しましたが、私どもは1施設で採取から移植まで完了するという前提で システムの構築を行ってまいりました。それは先程らい出ておりますように採取し たものが実際に移植されたときに、生着しなかった場合、その他の時にそれに対応 できるバックアップシステムができてないといけない。またこの医療がまだまだ試 験的な段階であるということ、それを考えますと、施設を越えての作業というのが、 我々が始めた2年前の段階ではまだ行うべきではないという判断が、私たちの大学 の倫理委員会の考え方で現在でもそれは変わっておりません。  先程らい3つの地域臍帯血バンクの現状についてのお話がございましたが、お聞 きのように全く異質のものを含んでおります。そのようなものを延長して足し算を して国のものを作ろうというのは最初から不可能であると感じております。  国が一つの基準を持って一つの医療を推進していくためには、今行われているの はあくまでも試験的な試行の段階であるということです。それを踏まえて公的なも の、骨髄バンクがそうであったように、そのように進めていくのが本筋であるしそ れを外れてはいけないと考えております。 ○有田  私も加藤先生のご意見と同じです。神奈川臍帯血バンク、東海臍帯血バンクのご 説明をお聞きしました。前回の検討会でも申し上げましたが、患者さんを抱えるお 医者さんたちが、やむにやまれぬ気持ちで材料を集めるところまで手を出してしま ったということです。医療の現場をそこまで追い込む行政に、憤りを覚えているわ けです。そういうことをしなくてもいいような環境を早く作らないといけないとい うのがこの検討会であると思います。  それで先程の厚生省が出された資料にもがっかりしたのです。もう一回参考資料 を見ていただきたいと思います。先程は署名の話をいたしました。後ろの方に地方 議会からの意見書というのが441 出ております。神奈川県もあります、横浜市もあ ります、名古屋市もあります。東京都もあります。村から都に至るまで、地方議会 がボランティアの署名活動と内容を同じくする意見書を厚生大臣、参議院議長、衆 議院議長に提出しています。先程鎌田先生のお話にもありましたが、法律は難しい ものではなく、国民が幸せになるためのものであるということですよね。  私たちはそこをいっているわけです。学問的に臓器なのか血液なのかという話で はないわけです。先程草刈さんがお話されましたが、どれだけ崇高な精神があって、 どれだけ良いことをしますとおっしゃっても、実際に国民の幸せのために何をして いるのか何をしたのかというのが私たちの評価です。  これは地方議会にしても市民感情にしても血液事業の中で今、この中に動かして いけば早い、そして供給の実績というものがあるから、一日早ければ患者さんもそ れだけ早く助かるのではないかという素朴な願いなのです。中央血液センターにも 何度も連絡をしましたが、無視されました。私たちは世界の医療現状、今の日本で の臍帯血における研究や医療の実績を見まして、実際に血液事業の中でモデルバン クとして動かしてみることにしました。血液事業の中に財団法人献血供給事業団と いう35年間血液製剤の供給を担っている厚生省が認めた公益法人があります。ここ に相談することにしました。ここも最初は赤十字をさておいてと二の足を踏まれま したが、それでは赤十字と同じ大事なときにすぐ対応できない体質ではないかとい うことで、再度交渉しました。私たちは東京の移植医の先生やボランティアや患者 さんと一緒になって、財団法人血液供給事業団が臍帯血事業に取り組めるように国 会議員の人にもお願いしました。厚生大臣にもお話にいきました。  そういう形で東京臍帯血バンクというのを去年の9月に立ち上げました。ですか ら地域バンクといいましても、神奈川臍帯血バンク、東海臍帯血バンク、その他の お医者さんたちがやむにやまれぬために作ったバンクとは少し違って、公的バンク が動くとなったときに直ぐに対応できる、これ以上のものができればもっといいの ですが、私たちが考えうる限りで知恵を集めた中で、これが一番良いのではないか という形で今動いております。それは患者さんの立場を第一とするシステムです。 ○齋藤座長  ありがとうございました。各地それぞれに大変に工夫を凝らされて一番良いとい うことをやっておられるのが現状だと思います。ここで十分にまた何回も今後あり ますから、ご討議いただいて、徐々に良いものを作っていくという段階だと思いま す。  それでこれは運営上の問題はいろいろまだご議論があると思います。一当たりも っとも大事な財源をどうするのかという話をしていただいて、それで全体を通して 議論に入りたいと思いますので資料の説明をお願いしたいと思います。 ○重藤室長補佐  資料の5でございます。臍帯血移植及び骨髄移植に係る費用という資料でござい ます。1枚目骨髄移植臍帯血移植にそれぞれ分けて、移植の段階でどのくらいの経 費が係るのかということでございます。まず造血幹細胞の採取にかかる費用のとこ ろでございます。骨髄移植の場合には骨髄穿刺15万円、入院料は大体4日と想像し まして15万円、投薬検査が16万円、その他14万円です。これは試算でございます が、大体60万円の経費が係ります。これは全て健康保険の適用となっております。  臍帯血移植につきましてはまだ費用は未定でございます。考え方としてはどの程 度の数量の臍帯血を保存するかによって異なります。年間4,000 件を集めるという ことにしますと、4,000 件というのはまた後で説明します、大体100 件程度、これ はお子さんの骨髄移植が100 件程度で、大体その程度の臍帯血を希望しながら受け られない方がいらっしゃるという実績から、大体100 件程度の移植が行われると仮 定すると、大体1件あたり約480 万円係るということになります。その480 万円の 根拠です。次のページです。  臍帯血の採取保存に係る費用の積算でございます。これも推計でございますので、 採取費用と検査費用、処理保存費用、事務費というものを足しあげて、大体1件あ たりどのくらいかということになると、表の一番右の下のところです。1件当たり の合計が109,231 円です。これは推計です。この費用は臍帯血の採取保存に要する 最低の費用の積算でございますので、保存施設の維持とか管理とかデータとの管理 費等、それに係る諸々の経費については含まれておりません。  次のページです。臍帯血の採取・保存・検査に係る費用です。HLAの型の適合 を考慮し、約2万検体を確保すれば臍帯血を希望する患者の95%に提供することが でき、これを例えば5年間で集めるとすると年間4,000 件台の採取ということにな ります。当面臍帯血の適応を小児の患者とすると、年間で100 件程度の移植が行わ れると予測されるということです。費用につきましては、1検体当たりの採取・検 査・保存の費用は、先程の価格で若干多めに見積もって約12万円です。それを 4,000 件で年間経費が4億8千万、これを年間100 件程度という数値で割ると480 万という試算でございます。  最後のページです。なぜ20,000件を目標にしたのかということでございます。こ れにつきましては、骨髄移植は全てのHLAの型が適合することが基本でございま すが、臍帯血を1ミスマッチまで実施すると仮定した場合には、大体95%程度の確 率ではないかということで、その程度のことを見込んで、大体年間、最初の1ペー ジに戻りますが、年間で4,000 件を集めて100 件程度の移植が行われるとするとい う仮定で480 万円ということでございます。  1ページ目の次の段の移植に係る医療費でございます。骨髄移植につきましては、 移植術が21万円です。入院費・投薬検査、その他の費用合算で約1,300 万円程度係 る。臍帯血移植についてはまだ未定でございます。ただ技術的にはいずれのところ からそうした造血幹細胞をもってくるのかという違いでございます。ここの移植に 係る医療については、ほぼ骨髄移植と臍帯血移植が同等であろうと考えております。  次の造血幹細胞の斡旋に係る経費ということです。肝という字が誤植です、直し てください。骨髄移植の場合には骨髄移植推進財団が斡旋にかかる諸々の手続きを しております。これの大体の目安でございますが、登録料が3万円、コーディネー ト料が10万円、3次検査料11万円、ドナー保険料14万円、ドナー管理費12万円 ということで、これは患者さん負担で50万円というものが払われています。  臍帯血移植としてはこうした経費をどのようにしていくのかです。  その他のところでございます。骨髄移植につきましては平成9年度実績でござい ますが、骨髄移植推進財団に普及啓発とかコーディネーターの活動費等として1億 7千万円ほどです。日本赤十字社に骨髄データバンクの登録費等につきまして4億 2千万円ほど国庫で当てているということでございます。ここのところも臍帯血移 植の場合どうするのかということでございます。以上費用につきましてご説明をさ せていだたきました。 ○齋藤座長  費用の話がでました。何かこの点についてご意見あるいは補足はございますでし ょうか。 ○迫田委員  伺いにくいことではあるのですが、どうしても全身麻酔というのが常に気になっ てます。時に陽田さんにお伺いしたいのです。麻酔事故というのは今まであったの かどうかということと、その場合に例えばちゃんとした保障のためのいろいろな経 費というのがあると思うのですが、その点はどうなっているのかを教えていただけ ませんか。 ○陽田委員  私が答えるよりも小寺先生の方がいいようです。 ○小寺委員  骨髄移植の場合には血縁者と非血縁者間があります。血縁者間に関しては、中央 のどこかでドナーのことについて全国的なデータを集積しているというシステムが 今のところないです。非血縁者間骨髄移植に関しては、これは全て100 %骨髄移植 推進財団でドナーをフォローアップしているわけですが、そこで生じた事故です。 まず全体でいいますと、全体では血縁者では不幸にして、わが国で数年前に1名骨 髄採取後に副作用でお亡くなりになったという例が1例あります。それ以降はない と思います。  非血縁者間骨髄移植については、つい最近、これは今日か昨日の新聞に少し出て ました。麻酔後に原因ははっきりわからないのですが手の指に軽い痺れが長期に残 ったので、骨髄移植推進財団が入っていた保険が発動されたという例がございまし た。それが最も重いものでございます。  その他、麻酔中、麻酔直後の様々な障害というのは、幸い重篤なものはないので すが、非常にバラエティにとんだものがございます。 ○迫田  そういう危険というものはここに書かれている中のものになっているのでしょう か。保障制度ですね。国庫補助の中からという理解でよろしいのでしょうか。 ○小寺委員 国庫補助ではなくて、基本的にはこれは患者さんの負担による保険から出ており ます。それによって支払われているのです。 ○迫田  ドナー保険料というのがそれに当たりますか。 ○草刈委員  小寺先生がおっしゃった血縁間の1例はあるいは脊髄麻酔であって全身麻酔では ありません。 ○有田委員 小寺先生に質問です。骨髄ドナーの事故があったときの保障というのは患者さん が責任をもつという制度になっているということでしょうか。国とか財団がドナー の事故を保障する責任の所在というのはきちんとしたものがあるのでしょうか。 ○小寺委員  責任の所在は財団ということになります。 ○有田委員  金額については患者さんが負担をするということでしょうか。 ○小寺委員  患者さんのご負担金の中にドナーの保険料が含まれているという点では、患者さ んが間接的に負担をされているということになります。 ○有田委員 そうしたら国や公のところは、金銭においてドナーの事故に対する保障はやって いないということでしょうか。 ○小寺委員  その点では難しいです。計算の仕方が難しいのです。ようするに財団全体の予算 の中で、どれだけがどのように割り振られるのかということになります。ですから 例えば患者さんの健康保険料そのものが直接保険会社に振り込まれて、そこで何か が発生した場合に保険会社が払うということの単純な図式からすれば、財団を仲介 して、財団が責任をもって保険会社がそれを払うということであると思うのです。 責任の所在というのは財団だと思うのです。 ○有田委員  では金銭的には患者さんが全てを負っているということですね。 ○小寺委員  全てと言われるとちょっと難しいのです。保険に関していうならそうだと考えて いいのではないでしょうか。 ○有田委員  その他にはないですね。ドナーの保障というのは。 ○小寺委員  障害が起こったときでしょうか。障害が起こったときの保障は保険です。あとは 財団としていろいろなレベルで財団の職員なりそれから業務委託を受けたコーディ ネーターとかが接触するとか、そういうものの人件費とか、そういうものはまだ保 険では払われませんので、財団の出費ということになるわけです。  いわゆる保険料、ドナーさんに払われる障害保険料というのは患者さんのご負担 ということになると思います。 ○齋藤座長  時間が近づいてきました。その他で参考資料で資料6というのがあります。先程 殆ど有田さんの方からご説明があったと思います。請願書の受付状況がありまして、 その前に第1回の委員会で細かい数字が間違っていたところが、日本における臍帯 血移植の現況、次のどんな症例に32例が実施されたのかというのの訂正のものが入 っております。3枚目に先程申しました医学的技術上の課題に対する作業部会の2 月4日に開催された目的あるいは検討課題が載っており、また作業部会の委員の名 簿が4ページにございます。5ページにはこの検討会ですが、第2回が本日で2月 13日の後、第3回と第4回が既に委員の方々から日程を調整させていただきまして、 そのように決まっております。まだ数分ございますので、全体を通じてご発言いた だきたいと思います。 ○草刈委員  骨髄移植推進財団での登録をしている方は9万人、延べでは10万を越してますが HLAの検査をやらせていただいたのですが、全て日本赤十字の血液センターでや らせていただいております。非常に確度の高いことをさせていただきました。同時 に今まで臍帯血バンクにも厚生省の研究班に関口先生が班員として加わっておりま すし、今日の傍聴席にも何人かの実際に臍帯血をサポートしている日赤血液センタ ーの技術者や所長たちが見えてます。皆で一所懸命支えようとしております。是非 良い運動で、斎藤先生のお陰で和やかにやっているのですが、何か良いことをしよ うとしても、罵り合うことがあるのです。お前は何をしているのかとね。これはこ ういうときには非常に危ないのです。私はこういうことをする、お前はしてないと いうと具合が悪いのです。皆で良い知恵を出して、国民のために良いものを出すと いうことで斎藤先生今後もご議論をまとめていただいて、やっていきたいと思いま す。 日赤は本当はこれだけのことをしたのだと声高に言う組織ではないのですが、何 人かの人が傍聴して私が黙っているとあとで怒られるようなので、申し上げます。 失礼しました。 ○中林委員  産婦人科医の立場して一言お話したいと思います。先程、草刈先生からお話があ りましたように、不要という言葉は不要だと思います。産婦人科医としては臍帯血 はいろいろな研究用、当然異常な赤ちゃんのための血液検査等をやることになって いるので、大学病院になるほどこういうことで採取をするのは難しいということが ありますので、不要という言葉は止めていただきたいと思います。  もう一つです。これも草刈先生がおっしゃいましたが、産婦人科医と妊婦さんの 本来の使命は、母子ともに安全ということです。そこにこういう業務を何となく乗 せればいいというお考えだとすると、それは大変に危険なことです。これで例えば 母子が亡くなった場合には臍帯血を一所懸命取っているうちに亡くなったという責 任はどうなのか。するとある一定の人材、一定の基準を満たす施設をその地区でど う決めるのかは別として、きちんと決めていかないと、後で大きな事故になったと きに、それでは誰が責任を取るのかとなります。移植をした人とかということにな っても、それが全部産科のことまで責任は取れないわけですから、この辺は十分に 予算的な措置もなければ動かない。産科医が余暇にやってくれということでは済ま ないということは、それぞれ移植を担当なさった方が、単に産婦人科に頼めばいい と思わないでいただきたいと思います。 ○陽田委員  今日の議論が少し未消化で終わって、また次回から続きがあるのだろうと思いま す。私はいつも患者さんの側から発言をさせていただいております。今骨髄バンク が稼働しておりますし、臍帯血バンクが始まり、将来的には非血縁の末梢血幹細胞 の移植も道が拓かれた場合、対象となる患者さんは基本的に一緒です。患者さんの 側からの利便性から、この辺の一体性を考えたとき単なる臍帯血バンクの検討だけ ではなく、3つ一緒に考えていく必要があるのだろうと思うのです。そこのところ を、例えば骨髄とかにない臍帯血固有の採取・分離・保存というところについては、 どうあるべきかというのはフリーであると思うのですが、少なくとも患者さんの窓 口になるところについては、その辺の3本を一緒に考えないといけないと思います。  また、国際的な協力関係を考えたときに、どちらかというと日本の患者さんがい かに諸外国からいただくかという議論が先行してしまうのですが、日本の国民の善 意によって海外にいかに協力できるかということを考えたときに、外国から日本の 骨髄も含めた臍帯血の検索がしやすいシステムを、ぜひ考える必要があると思うの です。その辺も含めて組織のあり方を検討すべきであると思います。 ○齋藤座長  勿論本日いろいろご議論いただいた点はまだ到底結論には達しないわけでして、 毎回回を重ねて後3〜4回はやると考えております。あとご発言のない委員の方で 何かございませんか。 ○古市委員  座長のご努力により重要な問題が全部皆さん率直なご意見がでて、非常に良かっ たと思います。この調子なら5月にはできるなと思います。 ○田島委員  基本的なことで実は分かってないことをお尋ねしたいと思います。再来年度に厚 生省の方で予算措置を講じて発足しようとしておられる臍帯血バンクといいますの は、いまここで実際に運営しておられるような法人格も何もない、医療機関でのボ ランティア活動というような形の、実際に採取する機関とか保存する機関というの も、それぞれの医療施設でまとめるという形のものであると思うのですが、このよ うなものをお考えなのか、あるいはもっとバンク自体が採取とか保存施設を持つ規 模のものを想定しておられるのか、そこがわからないのです。 ○齋藤座長  それはまだ決まってなく、これからディスカッションを通じてと思います。 ○小林局長  まだ具体的にどうしようということを決めてあるわけではございません。皆さん 方のご議論を聞き、どうしたらいいのかということを決めていくわけであります。 ただ、今日の段階で費用の話が出てきました。実は結局これは国の費用を入れると いうことは国民の皆さんに払っていただく税金で埋めていくわけですから、本当に 必要な限られた経費できちんとやることが大切であるということです。そのために 費用のことも考えて、トータルで考えないといけないということはあると思います。  費用は今の段階では、我々事務局でもまだ全然話はしてません。今日の段階では 皆さん方のいろいろなご意見を聞いていかないといけないと思っている段階です。 ○田島委員  すると予算措置を講じる余地はかなり大きくあるということでしょうか。 ○小林局長  実は平成10年度予算は金額はちょっと記憶してないのですが、厚生省は平成9年 度予算から10年度予算について、人口の高齢化に伴って実際には予算は8,000 億増 をしないと対前年と同じ事業が組めなかったのです。ところが今回与党の内閣に決 まった答えは、厚生省はそこから3,000 億しか認めない、5,000 億超は厚生省の予 算を削りなさいという厳しい政府全体としての方針であったわけです。  ですからそれが今11年度についてどうだというのはまだ分かりませんが、一応税 制改革の3か年計画にそってきちんと財政再建をやるという政府全体の方針の中で すから、決して財政的には悪い状態にはないと考えていいわけです。ただその中で も厚生省の中にも無駄な予算があるのでしょう。担当者は全員必要であると思って いるが、それは全体としてみれば優先順位の番号がつくから、その時にこの臍帯血 がどこにつくのかということの判断ではないのでしょうか。だから今の段階でどう だということについては言えるわけではない。勿論、かかる予算の経費でも厚生省 の中でも財政を担当している者としては金額が少ない方がベターであるというのは 当然でしょう、といってそれで事業が上手くいかないなら、形は作ったが動かない では困る、その辺は検討していかないといけないと思うのであります。  一つ、お願いです。実は今回のシステムを組んでいて大変に問題になるのは、臍 帯血をとって保存して、その中で使われるのがほんの一部である。するとその他に ついては先程おっしゃったように外国で使っていただくとか何かというのがあれば いいのですが、そのために外国の方が助かるならいいのですが、そのまま使わずに 破棄ということになると、集めていただいた苦労も保管している経費も検査の経費 も全部無駄になってしまうわけです。そこを何とか技術の進歩でもっと広くの方が 使えるとか、それともシステムで上手く使える方法ができるのか、その科学的医学 的なつめをもっと改善する方法はないのか、そちらに向けての少しでも明るい話が ありますと、大変に有り難いと思います。  何かあったら次回で結構ですがご議論いただければと思います。 ○齋藤座長  ありがとうございました。 ○浅野委員  田島先生がおっしゃったことは大変重要なことだと思います。私達は将来も視野 に入れて考える必要があるということだと思います。ところで今日までの話により 一応骨髄移植と臍帯血移植のいずれも技術的には可能となっているということがよ く分かったわけです。重要なのは、患者さんを中心に置いた議論であろうとと思い ます。臍帯血移植が骨髄移植や末梢血移植とどの点が違うのかがはっきりしている わけですから、その個々の違いににおいて臍帯血バンクの最も良い仕組みは自ずか ら明らかになると思います。臍帯血では細胞を保存するという点が最も大きな違い であるのですが、このことをまずよく認識しておかなくてはならないと思います。 これによって理想的なバンクの仕組みが骨髄バンクとは全く違うということです。 そのことを十分に認識した上で最後に、臍帯血バンクと、現在の骨髄バンクをどの ように関連づけるのが患者にとって最も良いか。このように順を追って議論しない と、消化不良になるという感じです。次回はぜひお願いします。 ○齋藤座長  それは当然です。最初の2回くらいでいろいろな問題例を出していただいて、そ れを後3〜4回で整理することになると思います。本日は、3つの造血幹細胞移植 が上手く全体としてジクゾーパズルのように組み込んだシステムということにおい ては、皆さんが全て意見が一致されていると思います。現実的にどうするのか、予 算との関係も含めまして、次回以後のご議論をいただきたいと思います。ありがと うございました。 (以上) 問い合わせ先 厚生省保健医療局エイズ疾病対策課臓器移植対策室    担 当 重藤(内2361)、眞鍋(内2364)    電 話 (代)03-3503-1711