平成11年 第3回定例県議会予算特別委員会
速 報
<平成11年9月20日 月曜日>

井手県議の質疑要旨


 公明党の井手義弘でございます。
 最初にNPO支援の基本的考え方を、知事にお伺いいたします。
 現在、茨城県においては、13の団体がNPO法人として認証を受け、活動中であると伺っております。私は、このNPOは、今後の茨城県の行政運営にとって、欠くことのできないパートナーであり、大変重要な役割を担っていくと考えております。
 これまでの日本社会は、どちらかというと行政主導、行政依存の性格が強いものだったと思います。
 しかし、21世紀の社会は、自立した個人が社会との共生をはかりつつ、自己実現をめざす自由で多様な社会を目指さなくてはなりません。そのために行政は、これまで独占してきた福祉、教育・文化、環境、情報化、平和などといった様々な公益的分野に、民間の参加を促していくことが必要になります。
 また、急激な少子高齢化と財政の硬直化という厳しい現状の中にあって、効率的な行政運営のために、NPOやボランティア組織とのパートーナーシップの構築が、大変重要な視点になりつつあります。
 私見ではありますが、安心で安全な生活を保障する21世紀型の社会システム作りにあっては、個人や家庭の努力よって生活を守る「自助」と、政府や地方自治体行政による支援「公助」、そして新たな概念として、NPOやボランテイア組織など相互扶助による支援、いわゆる「共助」の体制を一刻も早く整える必要があると確信します。
 そのために具体的には、県や市町村などとNPOやボランティア組織との協議の場の整備や、県内NPO組織の情報を集約する場の整備などが不可欠です。
 こうした視点を踏まえて、知事よりNPOやボランティア組織との連携とその支援について、基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。

<NPO支援の基本的考え方:知事答弁>

 次にNPOへの業務委託並びに支援について、商工労働部長にお伺いいたします。
国の緊急雇用対策及び産業競争力強化対策の一環として「緊急地域雇用特別交付金」制度が講じられ、本県には、41億6500万円が交付される予定です。
 今定例会には、ティームティーチング制度の充実や介護保険相談窓口の充実などに所要の補正予算措置が講じられております。
 国が公表した特別交付金の活用事例をみますと、NPOや市民活動組織に、県や市町村が業務を委託して、教育・文化、福祉・医療、環境、産業振興、情報化など5分野にわたって新たな雇用の創出を目指すことが示されております。
 これを受け、神奈川県ではNPOに、
 外国籍の県民向けに、外国語でのガイドブック作成事業や障害者や高齢者のための外出支援ガイドブックの作成事業などを業務委託することになっています。
 また、神戸市では、NPO育成支援のためのアドバイザーの派遣事業を予算化したと聞き及んでいます。
 私は、茨城県においても、積極的なNPOへの業務委託や支援事業が予算化されるものと期待しておりましたが、今回の補正には具体化されず、大変残念で仕方がありません。
 今月9日には、主な県内NPOより連名で、緊急雇用対策とNPOの関わりに関する提言が知事並びに県議会議長宛に提出されております。その中で、説明会の開催を提案しておりますが、今後、緊急雇用対策事業に関して、NPOに対して説明会を実施するお考えがあるか、商工労働部長のご所見をお伺いいたします。

<NPOへの説明会開催:商工労働部長答弁>

 この緊急雇用対策予算は、2年間基金として運用されるわけです。今回の補正予算では、NPOやボランティア組織への業務委託や育成策が見送られましたが、今後、この基金枠をNPOへの業務委託や育成支援のために是非活用していただきたいと存じますが、重ねて部長のご所見をお伺いいたします。

<NPOへの業務委託:商工労働部長答弁>

 次に、広域通信制高等学校について総務部長にお伺いいたします。
 先の一般質問で日立選出の菊池議員より広域通信制の高校・翔洋学園高校についての質問がございました。所管の総務企画常任委員会でも鈴木正義委員より質疑があったとお伺いいたしております。
 この場では、もう少し具体的に同高校の内容ならびに準備状況をおたずねしたいと思います。
 まず、学校施設についてお伺いいたします。
 一般質問の模様が新聞で紹介されたため、開設予定の日立市大甕町の地元では、どこに校舎が建設されるのだろうか?グランド用地は何処なのだろうか?と話題になっております。
 私は、総務部より提供された資料をもとに、現地を確認いたしました。
 すると、校舎に予定されておりますのは、県道大甕停車場線と国道245号線の交差点近くの3階立てのビルと、その裏手のビルが該当の施設でした。
 グランド、体育館等の設備は全く計画されておりません。
 校舎の敷地面積は、わずか191坪余り。ここに、普通教室3室と特別教室、図書室などが整備される計画とお聞きしました。
 一般質問での総務部長のご答弁では、定員は400名とのことでしたが、開設4年後には、定員は1600名という大規模な高校になる予定です。
 翔洋学園高校は広域通信制高校という、私どもになじみが薄い高校です。
 この広域通信制高校の設置要件について、まず、ご説明いただきたいと思います。
 また、県から私立高校には、父兄の負担の軽減と教育環境の向上のため毎年多額の補助金が交付されています。県内はじめてのケースであります広域通信制高等学校へも、県からの補助金は交付されるのでしょうか?
広域通信制高校への補助金制度についても合わせてご説明ください。

<通信制高校の設置要件:総務部長答弁>

 次に、地元への設立者の説明についてお伺いいたします。
 翔洋学園高校は、福島県いわき市の電気設備会社を経営する方が、設立代表者として、現在、学校設置認可を申請中であります。
 3月に学校設置計画が承認されてから現在に至るまで、地元には高校開設の説明が全くなされておりません。
 日立市長を始め、県ならびに市の議会関係者など、翔洋学園高校側からの接触はないと聞いております。
もちろん地元住民や商店街組合にも説明がありませんので、どのような生徒が集まるのか、駅や道路が混雑したり、風紀が乱れたりしないだろうかと、無用な不安が増長されていると行っても過言ではありません。
 私は、一般質問の後早速、翔洋学園高校開設準備室と連絡を取り、設立代表者からご説明を伺いました。
翔洋学園側の説明によりますと、「学校開設事務のどの時点で地元への説明をして良いか悩んでいた」とのことでした。
 私は、県は、私学振興の立場から単に許認可の機能だけではなく、地元市民や地元行政機関、教育機関とのパイプ役を務める必要があると考えます。
 今後、翔洋学園高校をどのように指導されるか、総務部長にお伺いいたします。

<翔洋学園高校への指導:総務部長答弁>

 私は、現状の閉塞した感がある高等学校教育にあって、広域通信制高校の果たす役割は大きいと実感している一人です。
 その広域通信制高校が、地元日立市に開設されることを歓迎しております。
 ただし、その開設に当たっては、十分な準備と地元の理解が大前提であると考えております。
 県当局の適切な指導と慎重な審査を期待して、広域通信制高校に関する質問を終わります。

参考:翔洋学園高校の概要
参考:翔洋学園高校に要望書提出

チャイルドシート 続いてチャイルドシートの着用促進方策について県警本部長と保健福祉部長にお伺いいたします。
 乳幼児は大人と違って、自分で自分の安全を確保することができませんので、自動車乗車中の安全を確保するため、道路交通法が改正され、来年4月1日からチャイルドシートが義務化されることになったと聞き及んでおります。
 現在、県内のチャイルドシートの着用率につきましては、かなり低いものと記憶しております。
 チャイルドシートの普及を妨げている要因の一つに、シートベルトと異なり、その設置費用を利用者が負担しなくてはいけない点が挙げられます。
 チャイルドシートは、1万円前後から10万円以上のものまで様々な種類があるようですが、平均すると3万円前後のものがよく売れていると言うことです。着用義務期間が6歳未満となりますと、乳幼児の成長に合わせて、2〜3種類のチャイルドシートを買い換える必要があります。
 こうした負担の軽減を図ることが、着用率の向上を図る有効な手段だと考えます。
 こうした点を踏まえて、県内で調査したチャイルドシートの着用率、チャイルドシート義務化の具体的内容、 また、チャイルドシート普及に向けて、今後どのような施策を展開されるのか、県警本部長にお尋ねいたします。

<チャイルドシートの普及:県警本部長答弁>

 引き続き保健福祉部長にお尋ねいたします。
 ただいま県警本部長からは、市町村や交通安全協会が行うチャイルドシートのリサイクルについて積極的に支援、協力していくとのご答弁いただきましたが、各市町村でもチャイルドシートの普及のために、購入時の助成制度やリサイクル制度の導入を検討しているとお伺いしております。
 特に、国の補正予算の中に組み込まれました「少子化対策臨時特例交付金」を活用して、市町村がチャイルドシートの普及対策を行うことは、時期にかなった事業であると思います。
 ただし、この「少子化対策臨時特例交付金」の活用に関しては、厚生省から例示された事業にチャイルドシートの貸与事業が入っていなかったために、市町村によっては予算不足を理由に、ボランティア団体からのチャイルドシートの寄付申し込みを断ってしまった事例が、私ども公明党の調査で判明しております。
 そこで、市町村がチャイルドシートを購入し、貸与する事業が「少子化対策臨時特例交付金」の対象となるかどうかを、保健福祉部長にお伺いいたします。
 あわせて、具体的な県内市町村の申請状況を、お伺いいたします。

<少子化対策交付金:保健福祉部長答弁>

 最後に介護保険についてお伺いいたします。
 来年4月の施行に向けて、介護保険は、その準備作業が急ピッチで進められています。この夏には、65歳以上の高齢者、いわゆる1号被保険者の市町村毎の保険料試算が厚生省から発表されました。
 それによると、全国市町村の保険料は、加重平均で2885円と推計されています。
 同じように、茨城県においても、市町村の保険料試算が公表されました。
 茨城県の調査によりますと、平均で2356円、最高が2944円、最低が1508円とされております。
 この金額を全国レベルで比較してみますと、金額が具体的に公表されている37都道府県では、山梨県に次いで全国2番目に安い保険料となっております。
 「介護保険サービスが不足している地域ほど、保険料が安く設定される」といった短絡的な報道が見方もございますが、保健福祉部長に茨城県の保険料推計と全国平均との差をどのように認識されているか、ご所見をお伺いいたします。
 更に、先の一般質問で、共産党の立谷議員が、この保険料に触れ、共産党県議団独自のアンケート調査の結果と前置きしながら、最も高い保険料推計を3974円と公表しております。また、この独自調査の結果は、9月10日付けの同党の機関紙に掲載され報道されております。
 わたくしは、こうした推計値の一人歩きを心配するものであります。
 県の調査では、最高額2994円、共産党の調査では3974円。
 一号被保険者の保険料推計は、二号被保険者推計の基礎となり、介護サービスの報酬単価決定と相まって、介護保険制度の全体像を明確にする最も重要な数値となります。
 この金額に1000円近くの差が発生することに、驚きを禁じ得ません。この調査結果が正しいとすれば、県全体の保険料推計も大きな誤差が出ることになり、県民に大きな動揺を与えることになります。
 県はこの推計金額の差をどのように認識されていらっしゃるのでしょうか。
 保健福祉部長のご見解を、お伺いいたします。

参考:茨城県の保険料推計

<介護保険の保険料推計:保健福祉部長答弁>

次に、要介護認定についてお伺いいたします。
 ご存じのように10月1日より要介護認定の作業が開始されます。
 要介護認定は、あくまでも介護を必要とする本人の申請によって、保険者である市町村が要介護認定調査を行うことになっています。
 ところが、先日のマスコミ報道によりますと、群馬県前橋市の「群馬中央医療生活協同組合」が、訪問看護などで知り得た患者の情報を元に、ケアプランの作成を同医療生協に任せるという趣旨の「予約票」を書かせていたという事実が報じられております。
 こうした行為は、要介護認定も始まらない前から、本人の意思を無視して、お年寄りを確保しようとする、福祉の精神から全く逸脱した、儲け主義の典型的な行為であり、厳しく非難されるべきであると存じます。
 早速、厚生省は、この事件を重要視し、「ケアプランを作る特定業者の予約を取ることは、お年寄りの自由な選択を妨げることになり認められない」とする通知を各都道府県に出しました。
 茨城県においては、9月13日現在で23事業者が、居宅介護支援サービス事業者と指定されております。また、申請中の業者が163事業者に上っていると伺っています。
こうした県内の事業者が、このような逸脱行為を行なわないように、強力に指導する必要があると思いますが、 保健福祉部長のお考えをお伺いするものです。

<介護保険事業者の指導:保健福祉部長答弁>

 ありがとうございました。
 私は、介護保険の施行に当たって、現行の福祉制度が後退することがあってはならないと思います。
 その意味では、介護慰労金制度の存続や、要介護認定で自立と認定されたお年寄りの支援など、多くの課題が山積みされております。
 介護保険の万全なスタートのため、知事並びに関係部長の一層のご尽力を期待して、私の質問を終わります。


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