平成10年度 第3回 定例県議会 一般質問速報版

県議会本会議
平成10年9月9日

補正予算と行財政改革の推進について 2002年サッカーワールドカップ ダイオキシン対策 化学物質過敏症について 不登校対策

 公明の井手よしひろです。

 先の参議院選挙においては、この平成大不況を作り出した自民党橋本内閣に対して、厳しい審判が下されました。それを引き継いだ現小渕内閣は、かつて連立を組んだ社民党土井党首より、崖っぷち内閣と揶揄され、支持率も昨日公表された世論調査によると16%と低迷しております。

 国民の政治や行政に対する怒りは、頂点に達しています。

 いまこそ為政者は、国民・県民の声に謙虚に耳をかし、当面の課題に勇気をもって挑戦しなくてはなりません。

 以下、大項目で5点に亘り、県政の諸課題につきまして知事及び関係部長、教育長にお尋ねいたしますが、県民が納得できる、明確で前向きなご答弁をよろしくお願いいたします。

 

補正予算と行財政改革

 まず、補正予算と行財政改革の推進ならびに今後の財政運営について知事、総務部長にお尋ねいたします。

 平成10年度当初予算の編成に当たっては、平成9年度予算に比べて、県単事業は15%カット、国補事業は10%カットの緊縮型予算を編成し、財政の健全化に向け、その第一歩を踏み出しました。

 しかし、この予算編成によって、重要な事務事業予算が大幅に削られました。

 例えば、情報化社会へ対応するための「地域情報化推進事業費」や「インターネット活用情報発信事業費」が大きく削減されています。

 福祉分野では、民間の社会福祉法人への「施設整備補助事業」や「ケアハウス整備補助」、「老人福祉施設緊急整備費補助」など、高齢社会への準備のための予算が削られ、「乳幼児の医療費無料化」に一部個人負担が導入されました。

 医療の分野では、保健所の運営費を含む庁費が大幅に削減され、精神障害者のリハビリ事業やデイケアなどの事業予算が減額されました。

 教育分野でも、老朽化した県立学校の校舎改築費や体育館改修費などが減額され、生涯学習に関する予算や、教員の研修予算も大幅に削減されました。

 こうした県民の生活に直結した予算の削減に対して、私ども公明は、県財政の健全化を図り、21世紀の県政発展の万全な体制を作るという一点で、断腸の思いで平成10年度予算に賛成したのです。

 景気対策に最大の努力を傾けることは、現時点において、緊急かつ重要な施策であります。したがって、私は、知事が提案されましたこの積極補正予算を、可とするものではあります。

 しかし、今回の補正予算は、従来型の公共事業に大きな予算を割いております。21世紀を見据えた情報、福祉、医療、教育などの分野、特に箱ものではないソフト事業には、ダイオキシン対策など一部を除いて、補正予算の恩恵は期待したものを大きく下回りました。非常に残念な結果であります。

 また、県財政の健全化という視点で、歯止めを失った感のある県債の増大には、大きな危惧を抱いております。同時に、この補正予算が、茨城県行財政改革大綱の大幅な後退にならないか、大いに心配をしている一人であります。

 今回の補正予算では、新たに355億円の県債の発行が予算化されております。この結果、本年度の県債発行予定額は、1890億円と過去最大規模となります。そして、県債発行残高は、1兆1500億円を越えることが見込まれます。

 この数値を、本年3月に県が公表した茨城県行財政改革大綱に基づく「財政収支見通し」と比べてみると、平成10年度の県債発行の試算値は1300億円であり、財源対策債300億円を加えた県債発行見込み額は1600億円であります。したがって、行財政改革の重点3カ年の初年度でありながら、すでに300億円近くの見込み差が生まれていることになります。

 このままでは、近い将来、茨城県は借金の返済に要する公債費の増大によって、がんじがらめの状態になる危険性があります。

 そこで、今回の補正予算と県の行財政改革の推進について、知事のご所見をお聞かせいただきたいと思います。

  

 井手義弘議員のご質問にお答えいたします。

 まず、補正予算と県の行財政改革の推進との関係についてのお尋ねでございます。

 今回の経済対策は、波及効果の期待できる社会資本の整備などを中心に、過去最大規模の対策を講じることとしたところでありますが、その中で、福祉・医療・教育の分野につきましては、老朽保育所の改築やゴールドプラン関連のケアハウス、特別養譲老人ホーム等の整備、あるいは教育施設の整備を前倒しで進めるなど、合わせて125億円の予算を措置しており、議員ご指摘の分野にも配慮をしたところでありますので、ご理解を賜りたいと存じます。

 今回の補正予算の財源としては、国の財源借置に基づき、特例的に認められる県債を出来るかぎり活用したところであり、その結果、今後の公債費の増こうなど財政指標の面で、一時的には好ましくない影響が出てくることは確かであります。

 しかしながら、内外の社会経済情勢の変化に対応して、臨機応変の措置をとることも、大変重要なことであり、特に、今回の経済対策は、深刻な経済情勢を踏まえ、現下の最重要課題として、国と歩調を合わせ、景気回復に向けた緊急の対応をするものであるところから、やむを得ない措置と考えております。

 なお、補正予算の財源として活用した県債としては、補正予算債あるいは地域経済対策事業債が多くを占めておりますが、その償還については交付税措置がなされており、後年度の財政負担の軽減が図られているところでもあります。

 また、今回の県債の発行により、県債残高がさらに増こうしてまいりますが、今後の県債の管理に当たりましては、償還方法の見直しを行うことにより、公債費負担の中長期的な平準化を図ってまいりたいと考えております。

 また、一時的に財政悪化を容認せざるを得ないものの、本県の厳しい財政状況を考慮すれば、その他の面での財政健全化への取り組みは益々必要性が増しているところであり、今後とも、行政組織・機構の簡素、効率化や事務事業の見直し、計画的な定員の適正化、内部管理経費の節減など行財政改革に真撃に取り組み、より一層効果的、効率的な行財政運営の実現を図ってまいる所存であります。

  

 今、日本経済は、橋本政権の失政によって、政策不況のまっただ中にあります。平成9年度の経済成長率は、戦後最低の0%を記録しました。

 県内企業の収益も低迷しております。こうした状況の中、県の歳入の1/3をしめる県税収入の動向が注目されます。

 平成10年度の予算編成では、県税収入を平成9年度当初比で、3.4%増の3537億円と見込んでいます。

 しかし、昨日の知事の一般質問に対する答弁によりますと、7月までの課税状況は、地方消費税の平年度化による寄与分があるのにもかかわらず、前年に比べ横ばいと伸び悩んでおります。このままの傾向が続くとすると、私の試算では、百数十億円以上の税収の不足が見込まれることになります。

 そこで、総務部長に、より詳細に主な税目の課税状況と県税収入の見通しについて、お伺いいたします。

  

 県税の主な税目別の課税状況についてお答えいたします。

 平成10年度の県税収入予算につきましては前年度比で3.4%増と見込んでおりますが、7月未現在の課税状況は、前年同期と比べてほぼ横ばいの状況でございます。

 主な税目をみますと、昨年度創設されました地方消費税が、平年度化により大幅な増となっておりますほか、自動車税が、保有台数の伸びにより、2.7%の増加となっております。

 一方で、県税収入の3分の1を占める法人二税につきましては、景気の低迷を反映して、大部分の業種で前年度を下回っており、14.6%の減となるほか、自動車取得税が7.7%の減、軽油引取税が5.7%の減となっております。

 また、個人県民税は、特別減税の影響により12.7%の減、県たばこ税は昨年度実施された市町村への税源移譲の影響が残り、15.9%の減となっております。

 今後の税収見込みにつきましては、景気の動向の不透明さもあり、現時点において、正確な額を見込むことは困難でございますが、現在の状況から判断する限り、現計予算額を確保することは、大変厳しい状況にあると考えております。

  

 また、この春策定した「財政収支見通し」は、わずか5ヶ月あまりで、大幅な見直しが迫られております。

 先程も述べましたように県債の発行見込み額に、すでに300億円近くの差が出ております。県税収入の試算の基礎となっている経済成長率の見込みの3.5%は、もはや夢物語でしかありません。

 こうした県の厳しい財政を、多くの県民にも正しく認識していただくためにも、財政見通しの改訂を行い、不退転の決意で行財政改革を推進するべきと考えますが、総務部長のお考えをお聞かせ下さい。

  

 次に、行財政改革の推進についてでございます。

 現在、県におきましては、本年3月に策定いたしました「茨城県行財政改革大綱」に基づき、簡素で効率的な行財政運営を目指し、行財政改革に取り組んでいるところでございます。

 行財政改革を推進するためには、議員ご指摘のとおり、多くの県民に県財政の現状と将来の姿をご認識いただくことが是非とも必要であり、そのためにもわかりやすい財政収支見通しといったものを作成することが大切であると認識いたしております。

 このことから、大綱におきましても、毎年度、中期財政収支見通しを作成し公表することとしております。

 今年度の財政収支見通し(平成10年度〜15年度)につきましては、300億円の財源対策債を歳入に計上した平成10年度当初予算をベースに改訂を行い、去る6月に開催いたしました行財政改革推進懇談会に提出し、公表したところでございます。この収支見通しの改訂に当たっては、3.5%の名目経済成長率のケースに加え、新たに1.75%のケースについても試算しております。

 この試算を前提にしますと、平成15年度の財源不足額は、3.5%のケースでは900億円、1.75%のケースでは1500億円にものぼるものと予想され、大変厳しい状況が見込まれております。

 今回の経済対策等により県内景気が一刻も早く回復に向かうことを期待しているところでありますが、その場合でも、来年度以降多額の財源不足が生じることは避けられないものと考えられますので、行財政改革の必要性はなんら変わることがないものと認識いたしております。

 従いまして、今後とも、全庁一丸となつて行財政改革に取り組み、21世紀に向けて確固たる行財政基盤の構築に努力してまいりたいと考えております。

  

 更に、国が実施しようとしている特別減税や所得税や住民税の最高税率の見直しによって、地方の財政基盤が大きく揺らぐ危険性があります。

 開会中の臨時国会の所信表明演説において、小渕首相は、住民税の最高税率の見直しを示唆しました。現行の15%を10%に引き下げるという具体的な数字も報道されております。

 この大不況を乗り切るためには、思い切った減税政策を採り、個人消費の拡大を図る必要があります。しかし、その減税の責任は国が負うべきであり、負担を県や市町村に転嫁することは、絶対に許されません。

 現在進められている国の減税政策は、減税補填債や交付税特別会計借入金といった、地方の負担でまかなわれていると言っても過言ではありません。

 この上、住民税の最高税率の見直しなどが断行されますと、県の財政計画は大きな変更を余儀なくされます。

 こうした国の動きは、地方分権という時代の趨勢に逆行する愚行、愚かな行為であります。

 知事を始め、県の執行部はあらゆる機会を使って、国に地方財政の独自性の確立を、強く要請すべきであります。

 この点につきまして、総務部長のご決意をお伺いいたします。

  

 次に、今回の減税論議と、地方財政の独自性についてでございます。

 国においては、経済対策の一環として、個人所得課税の最高税率を50%に、法人課税の実効税率を40%程度に引下げることを表明したところであります。

 地方税としては、住民税、法人事業税等が減税の対象となるわけでありますが、昨日知事が申し上げましたとおり、地方財政に与える影響は甚大なものがあり、税・財政を所管する部としましても、極めて憂慮しているところであります。

 この税制改正に関しまして、地方としては次の点で問題があるものと考えております。

 まず第一に、法人事業税は本県税収の約3割を占める基幹税目であり、財政面に与える影響が大きいことが挙げられます。

 第二に所得課税でございます。現在、検討されている所得税10%の引下げは、最高税率が適用される、課税所得3000万円以上であるのに対し、住民税5%の引下げは、700万円以上を対象としていることから、住民税納税者の減税適用範囲が所得税に比べて大幅に広くなり、地方の減収が、より大きくなることでございます。

 本県の財政は、税収の伸び悩みに加え、過去の数次にわたる景気対策としての諸事業の実施等に伴い、公債費が増加しており、極めて厳しい状況にあります。今後、県債の償還財源が一層必要となる中にあって、減税により自主財源の相当部分を失うとすれば、大変な問題になると認識しております。

 減税の内容については、現在政府部内で検討が進められているところでありますが、是非とも、地方への負担が過大なものとならないように、県議会のご指導を仰ぎながら、茨城県としてなし得る最大限の努力をしてまいりたいと考えております。


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2002年ワールドカップについて

 次に、2002年サッカーワールドカップ鹿島開催についてお伺いいたします。

 2002年日本・韓国大会へのカウントダウンが、すでに始まっています。

 この世界的イベントの当事者として、私ども茨城県民も、知恵と力を結集して、その準備に当たらなくてはならないと思います。

 橋本知事におかれましては、フランスに赴き、開催会場の模様、運営や警備のあり方、ボランティアの現状等をつぶさに視察されました。

 そこで、知事にフランス大会を目の当たりにした率直なご感想と、今後の課題について、どのようにお考えになっているか、総論としてお伺いいたします。

  

 次に、ワールドカップフランス大会の視察結果についてお答えいたします。

 私は、去る6月18日から24日までの7日間、日本対クロアチア戦を中心にワールドカップフランス大会を視察してまいりました。オリンピックをしのぐ世界最大のイベントと言われる大会であり、しかも、日本ではまだ経験したことのない大会でありますので大会運営、警備、交通輸送状況など多くの点で参考となったところであります。

 特に、セキュリティに関しましては、会場入口で厳重なボディーチェックを受けたことや、スタジアムの屋根の上に銃を持った警備員が配置されていたことなど会場内での対策のほか、会場外においても大規模な交通規制が行われるなど、徹底した対策がとられておりました。

 また、各会場には約1000人、全体で12000人のボランティアが配置され、入口でのチケット確認、会場案内、警備などそれぞれの役目を意欲と誇りをもって誠実に遂行していた姿が印象的でありました。

 さらに、私の訪れたナント市では、世界中から訪れた観客や関係者に楽しんでもらえるよう、様々なイベントが催されており、町全体で世界の人々を温かく歓迎していた姿が大変参考となりました。

 さて、本県が開催地となる2002年大会までいよいよあと4年となったわけであります。

 県といたしましては、今後、大会運営を円滑に進めるために、日本組織委員会や関係機関等と十分に連携を図りながら、交通輸送や警備、宿泊対策、ボランティアの確保などに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 また、ワールドカップの開催は、本県を世界にアピールする絶好の機会でもありますので、全県的な気運醸成に努めるとともに、世界中から集まる方々を温かく迎え、楽しんでいただくために、趣向を凝らした交流の機会を設けるなど各種イベントで歓待し、国際交流の進展や本県のイメージアップにつなげていきたいと考えております。

 このように、2002年のワールドカップ開催については、本県を訪れる方々が安心して楽しんでいただける大会とすべく、フランス大会の貴重な体験を十分参考にしながら、本県で、そして鹿島で開催してよかったと評価されるよう、その準備に万全を期してまいりたいと考えております。

  

 次に、鹿島開催に関して具体的に5点、企画部長にお尋ねいたします。

 第1点目は、カシマサッカースタジアムの改修工事計画についての質問です。

 7月には入札が行われ、今定例会に予算案件が提出されております。今後の具体的な工事計画はどのようになっているのか、特に、Jリーグ公式戦との関係を中心に、ご答弁いただきたいと思います。

  

 2002年ワールドカップについてのご質問にお答えいたします。

 まず、カシマサッカースタジアムの改修工事計画についてであります。

 本年7月及び8月にスタジアムの増築工事等の入札を行い、今回、これらのうち4件の工事請負契約につきまして、議案を提出し、御審議をお願いいたしているところでございます。

 建設工事の予定といたしましては、できれば、この秋には着工し、平成13年5月の竣工を目指して進めてまいりたいと思います。

 工事期間中のJリーグの試合開催についてでありますが、工事を短期間かつスムーズに行うために、工事期間中は、スタジアムを全面閉鎖することが望ましいところでありますが、鹿島アントラーズのホームスタジアムであることや地域住民が地元での開催を強く望んでいること等諸般の事情を考慮し、可能な限り、カシマサッカースタジアムで試合を行いながら工事を進めて行きたいと考えております。

 このため、例年3月から11月にかけて行われているJリーグの公式戦の期間以外の時期に、集中的に工事を行う予定であります。

 しかしながら、その一方で、ワールドカップの開催に向け、限られた期間内での工事でありますので、照明や給排水などが使用出来なくなること、屋根工事により観客の安全性が保たれなくなることなどにより、シーズン中であっても、スタジアムで試合を行うことが困難な期間が生ずることが予想されます。

 このため、今後、県といたしましては、できるだけJリーグの試合の開催に支障の出ないよう、工事日程について十分調整したいと考えておりますが、一部の試合について、スタジアムでの試合開催が困難となる場合が生ずることもあるということについて、御理解賜りますようお願い申し上げます。

  

 次に警備体制・フーリガン対策をお聞きします。

 フランス大会でも、マルセイユでは、イングランドのフーリガンが、警官隊と衝突、さらにチュニジアのサポーターともビールびんを投げ合うなどして50人が負傷、100人以上の逮捕者を出ました。引っくり返されて炎上する車、血を流しながら路上をさまよう人たちの映像を見て、「こんな暴動が、茨城でも起こるのか」と、ショックを受けたのは、私一人ではないと思います。

 鹿島開催に向けて万全な警備体制を検討する必要があります。

 例えば、開催期間中、アルコール類の販売制限を検討する必要も出てくると思います。また、街頭に多く設置された自動販売機も、その無防備な姿に犯罪を誘発する可能性が指摘されています。フランス大会では、自動小銃を携帯した警察軍が要所要所の警備に当たっておりましたが、我が国においては、こうした武器による威嚇は、自治体レベルでは対応出来ません。

 こうした点も含めて、会場の警備体制、特にフーリガン対策の進め方についてご所見をお伺いいたします。

  

 次に、警備体制についてであります。

 ワールドカップの開催にあたりましては、世界各国から選手、役員はもとより報道関係者や多くの観客が訪れることになるものと考えられますので、開催国といたしましてはこれらの方々の安全を保障するための警備対策は非常に重要なものと認識しております。

 このため、先のフランス大会におきましては、その警備状況の調査のため県警察本部に警備担当官2名の派遣を依頼したところであります。

 また、大会運営の主体となる日本組織委員会におきましては、大会全体の警備計画を策定するため、警備専門委員会を本年10月を目途に設置する予定であります。この専門委員会は、警察庁などの関係省庁や開催自治体及び警察本部のほか関係団体で構成され、要人警護やフーリガンに係る情報の収集管理や警察と民間警備のあり方等について検討することとなっております。

 このため、本県における警備対策といたしましては、日本組織委員会が設置する警備専門委員会の警備計画の検討経過を踏まえ、県警察本部と連携を密にしながら、本県での円滑な大会運営や安全かつ快適な観戦機会を提供できるよう、フーリガン対策をはじめ、警備に万全を期してまいりたいと考えております。

  

 更に、大会成功にはボランティアが欠かせません。

 フランス大会においては、会場の警備だけでも、観衆100人に対して1人の警備ボランティアが動員されました。カシマスタジアムで換算すると、400人以上の警備ボランティアが必要になる計算です。警備ボランティアは、最悪の場合、混乱や争乱に対応する必要があるわけですから、誰でもが簡単にできるというわけではありません。

 その他のボランティアを加えると、1000人以上のボランティアが必要になると思われます。

 開催地の鹿島地域だけで、こうしたボランティアをまかなうことができるのか、より広域的で広範なボランティアの育成と組織化が不可欠であります。

 こうしたボランティアの確保と育成についてのお考えをお聞きいたします。

  

 次に、ボランティアの育成・確保についてであります

 ワールドカップを成功させるためには、フランス大会の例を見るまでもなく、多くのボランティアの方々の協力が不可欠であります。2002年大会におきましても、フランス大会と同程度のボランティアの確保が必要であると思われますが、ボランティアの確保と育成についての具体的な計画につきましては今後、日本組織委員会において検討されることになっております。

 このような中で、ボランティアの確保につきましては、幸いにも本県には、Jリーグ開幕の年に、カシマスポーツボランティアが発足し、現在約400人が登録されており、Jリーグ開催時には、駐車場案内や場内整備等を中心に幅広く活躍いただいております。

 ワールドカップ開催時には、これらの方々に中核的な役割を担っていただきたいと考えておりますが、フランス大会の例を見ますと1試合1000人程度のボランティアに活躍いただいておりますので、更に、広域的に幅広く掘り起こしを行い、ボランティアの確保に万全を期してまいりたいと考えております。

 また、ボランティアを育成していくことも重要でありますので、今後、日本組織委員会における検討結果を踏まえながら本県独自のボランティア育成計画を作成し、積極的にボランティアの育成に努めてまいりたいと考えております。

  

 次に、ワールドカップをより県民に身近なものとするために、また茨城を全世界にアピールし、町おこし、地域おこしの起爆剤とするために、参加国のキャンプ地誘致を提案いたします。

 今回のフランス大会では、日本代表は、「エクスレバン」という地方都市にキャンプを張りました。1ヶ月近くこの町に滞在した日本代表チームに対して、マスコミ各社が取材に訪れたため、試合が行われた都市よりも「エクスレバン」のほうが記憶に残ったのが事実であります。

 2002年大会では、参加32カ国の半分16カ国が、日本国内でキャンプを張ります。

 外部から遮断でき、夜間照明の完備したサッカー競技施設と交通アクセス、室内練習場、宿泊施設などが完備していることが合宿地の条件になると考えられます。警備の都合やマスコミの取材から距離をおくことを考えると、都心からある程度離れたほうが、条件は有利であると思われます。

 茨城県内では、福島空港の利用を考慮すると、日立を中心とする県北臨海部や奥久慈・大子地域など、その立地条件を満たす場所は数多くあります。

 県は、市町村との連携の上、積極的に合宿地の誘致を図るべきだと提案いたします。

  

 次に、キャンプ地の誘致についてであります。

 キャンプ地に関するフランス大会の例を見ますと、各国代表は3週間程度のキャンプを行うものと見込まれ、屋外及び屋内練習場、ナイター設備などが各キャンプ地に整備されておりましたが、2002年ワールドカップにおけるキャンプ地の条件につきましは、日本組織委員会において今年度中にとりまとめる方針と伺っております。

 従って、現時点におきましては、県内においてキャンプ地の適地があるかどうか定かではありませんので、県といたしましては、今後、日本組織委員会の動向を踏まえつつ、キャンプ地を誘致するかどうかについて検討してまいります。

  

 また、カシマサッカースタジアムに愛称をつけることを提案いたします。

 私個人といたしましては、アントラーズを育て、茨城のサッカー熱の基盤作りに大きな功績を残した、ブラジルの世界的なサッカープレーヤー・「ジーコ」氏の名前を冠した愛称などが、最もふさわしいと考えております。

 検討委員会等を設置していただき、一般公募の手法をとり、より多くの県民に参加していただくのも一つの方法かと思います。

 以上5点、2002年ワールドカップを大成功させるため、企画部長のファイトあふれる答弁を期待するものです。

  

 次に、カシマサッカースタジアムの愛称募集についてであります。

 カシマサッカースタジアムの正式名称は、「茨城県立カシマサッカースタジアム」であり、鹿島アントラーズのホームスタジアムとして、そして、日本初の全席屋根付きサッカー専用スタジアムとして全国的に名を知られるスタジアムとなり、テレビ、新聞などでは「カシマスタジアム」が定着している状況であります。

 しかしながら、近年、スポーツ施設にも、正式名称のほかに、いわゆる愛称がつけられ

 るものが見られるようになってきておりますが、さきほども申し上げましたように「カシマ」という名が全国的に浸透していることも念頭におきながら、今後の課題として研究してまいります。


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ダイオキシン対策

 次にダイオキシン対策について触れたいと思います。

 今年6月4日、摂南大学の宮田秀明教授は、新利根町にある城取清掃工場周辺住民の血液中のダイオキシン濃度に関する調査結果を発表しました。

 工場から約2キロ以内に住む、20代から80代までの60人を対象に、一昨年、平成8年3月に採血が実施されました。今回、60人の内、18人の血液検査の結果が公表されました。

 それによると、周辺住民の血液脂肪中に、欧米先進国や国内のこれまでの調査の平均的濃度に対して、男性で4倍、女性で7倍のダイオキシン類が検出されるという、大変ショッキングな検査結果となっています。

 特に、30代の女性からは、463.3ピコグラムという、平均の23倍以上の異常な高濃度汚染が報告されています。

 私ども公明は、平成8年に城取清掃工場を現地調査して以来、一貫して抜本的なダイオキシン類調査の実施を要望して参りました。

 特に、この宮田教授の調査結果が発表された直後の6月12日、知事並びに衛生部長に対して、住民の不安を払拭し、今後のダイオキシン対策の基礎とするための大規模な住民の血液検査を提案いたしました。

 その中で、

 ○検査に当たっては、周辺市町村さらには国とも十分協議をし、統計上有効な相当数の検査を実施すること。

 ○検査方法、検査機関等を公表し、県民に調査の過程を全面的に公開すること。

 ○複数の検査機関による分析を行い、より客観的な数値を今後のダイオキシン対策の研究に役立てること。

 などを具体的に要望しました。

 知事はじめ衛生部のご英断により、今補正予算には、6800万円の血液検査を含む健康調査に要する予算が計上されました。さらに、ダイオキシン類の測定機材の整備予算も具体化いたしました。

 そこで、今後の健康調査の具体的な進め方について、衛生部長にお伺いいたします。

  

 ダイオキシン類関連健康調査の今後の進め方についてお答えいたします。

 去る8月28日に専門家や住民代表、さらには行政関係者からなります健康調査検討委員会を開催し、実施計画の素案を示したところでございます。

 その概略を申し上げますと、調査内容は、

 調査対象地区は、城取清掃工場周辺並びに同工場からの影響がないと見られる地区、調査対象者は、対象地区に10年以上居住する20才以上の合計120人とするなどでございます。

 しかし、この健康調査を実施するに当たりましては、血液の分析手法、健康診断の実施方法など、種々課題もありますので、検討委員会の委員から選出されました国立環境研究所の統括研究官や筑波大学社会医学系教授など分析や公衆衛生などの専門家で構成する専門部会を、来たる9月24日に開催し、これらを検討することにしております。

 そして10月には調査の方法や対象を決定し、採血や健康診断に入り、調査結果につきましては、できる限り早い時期に公表したいと考えております。

 この調査こつきましては、調査対象の規模や調査の方法などにつきまして、国や全国の自治体からも関心が寄せられておりますので、精度の高い信頼性のある健康調査にしたいと考えております。

 また、調査を実施するうえにおいては、採血や健康診断を行うに際し、地域住民の理解と協力が不可欠となってまいりますので、今後とも、住民の方々や関係する市や町と十分に協議をしながら、この調査を進めてまいりたいと思っております。

  

 また、住民の不安を払うために、老朽化した城取清掃工場の処理量をできるだけ縮小する必要があると思います。

 そのために、処理しなくてはならないゴミを他の処理場に振り向けることはできないでしょうか?

 県が、積極的にその調整役を果たすべきと考えますが、生活環境部長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

  

 ダイオキシン対策についてのご質問に、お答え致します。

 まず、城取清掃工場の、処理量の縮小についてでございます。

 龍ヶ崎地方塵芥処理組合では、現在、1日当たりの可燃ごみの収集量150トンのうち城取清掃工場で、40トンを焼却し、残り110トンを、民間に委託して処理しております。

 現在、当該組合におきましては、来年4月に稼動予定の、新しい焼却施設を建設しておりますが、その完成を待たずに、さらに、操業を縮小、あるいは停止することとしますと現在、焼却している日量40トンのごみの取扱いについて、その受入先の問題や、新たな委託に伴っての、経費の増加の問題が生じてまいります。

 このため、県と致しましては、縮小、あるいは停止に伴って生ずることとなる、これらの問題を解決するためには、受入れ余力がある周辺の市町村に、焼却処理を委託することが、最も効果的であると考えられますので、これらの施設での受入れについて、龍ヶ崎地方塵芥処理組合の、意向を踏まえながら、関係市町村との調整を、行ってまいりたいと考えております。

 今後とも、城取清掃工場に係る諸問題が、円満に解決されるよう、積極的に努力して参りたいと考えております。

  

 ダイオキシン発生の大部分は、ゴミ焼却施設と言われています。

 老朽化した小規模の処理施設を、大規模に集約し、24時間連続運転化、高温度燃焼化施設に更新する必要があります。

 そうした趨勢の中で、今、鹿島地域の1市2町で計画中の「再資源化センターならびにRDF化施設の整備計画」は、全国的に見ても先駆的な事業であり、その成功が大いに期待されております。

 特に、一般ゴミからできるRDFと鹿島臨海工業地帯の諸企業から排出される産業廃棄物を、一緒に燃焼させる今回の再資源化センターの発想は、いくつかの優れた特徴を有しております。

 その第1は、発生するダイオキシン類を、圧倒的に削減することができること。

 第2は、産業廃棄物の燃焼を、一般廃棄物系RDFを混燃させることによって、容易にコントロールする事ができること。

 第3に、RDFと産業廃棄物を燃焼させることでできる電力や熱水などのエネルギーを再利用できること。

 第4に、産業廃棄物を受け入れることで、一般廃棄物の処理費用を補填できること。

 などの多くのメリットを持っています。

 県は、住民の理解を得ながら、ダイオキシン対策として「再資源化センター並びにRDF化施設整備」を、強力に進めるべきです。

 今後の具体的整備計画について、生活環境部長よりご答弁いただきます。

  

 次に、鹿島地域の再資源化センターとRDF化施設の整備促進についてでございます。

 この再資源化センター計画につきましては、議員ご指摘のとおり、

     

  1. 一般廃棄物をRDF化して、産業廃棄物と一緒に焼却し、電気や蒸気として、エネギーを回収する資源循環型の計画であること。
  2.  

  3. また、一般廃棄物焼却炉のダイオキシン対策という観点から見ても、国の方針にも、県の広域化計画にも、合致するもので、ダイオキシンの発生を大幅に削減できること。
  4.  

  5. 更に、センターの運営の大部分を.産業廃棄物の処理料金で賄うなど、一般廃棄物の処理費用を大幅に軽減できること。

 など、数多くのメリットがある事業でございます。

 このため、再資源化センターにつきましては、平成13年4月稼働を、目標といたしまして、建設に向けて、地元関係者の同意を得るべく、調整を進めているところでございます。

 また、当初、RDF化施設は、1市2町それぞれが、建設することとしていたところでございますが、神栖町には、再資源化センターが建設されることから、1市2町の役割分担を図るため、RDF化施設につきましては、鹿嶋市と波崎町の2箇所に建設することと変更し、現在、準備を進めているところでございます。

 この事業は、臨海工業地帯と、1市2町が、一体的に発展してきた鹿島地域の特徴を、十分に取り込んだ、廃棄物処理における、地域内完結型の先駆的なシステムでありますので、県といたしましても、新会社の設立や施設の整備に向けて、積極的に取り組んで参りたいと考えております。


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化学物質過敏症対策

 次に、化学物質過敏症の対応について、衛生部長と土木部長にお伺いいたします。

 化学物質過敏症は、頭痛や全身けん怠感、不眠、便秘、動悸といった症状のほか、自律神経、循環器、消化器、免疫機能などに様々な障害が現れます。

 何らかの化学物質に、ある程度の量さらされ、その後、同じ物質をわずかでも吸引したり、食べたり、触れたりすると、こうした症状をきたすようになります。他の化学物質にも反応して症状が出ることもあります。

 身の回りには、原因となる可能性のある化学物質があふれています。

 室内では建材や接着剤、洗剤、漂白剤、芳香剤、防ダニ・防菌グッズ、食品添加物、など。

 屋外では排ガスやディーゼル粉じん、殺虫剤、塗料、農薬などの可能性が高いといわれています。

 化学物質過敏症の具体的な症例として、ある女性の手記の要約を紹介したいと思います。

 「平成8年6月に新築し、新居に引っ越ししました。

 翌年4月頃の夜、頭が急におかしくなりました。

 どう表現したらよいのか分かりませんが、頭の中心だけがそこにあつて、その回りがどこかへ飛んでいってしまいそうになったり、頭の中が真っ白になってしまったり、頭だけが逆さになって落ちていくような感じで一晩中眠れませんでした。

 翌日、脳外科でCTをとって調べましたが、結果は異常なし。肩凝りが原因だろうと言われました。

 そして、咳が出始め、家の中に居ると、スーッと喉に何か煙のようなものが入り込むのが分かるようになりました。喘息のような苦しい咳が続くようになりました。

 この頃から耳鳴りがひどくなり、時には気が狂いそうになります。

 これらの事がきっかけで、原因は家にあるのではないかと思い、毎日窓を開け放し、少しは安全だと思われる和室に避難しました。

 しかし、それでも症状は変わらず、呼吸器科の医師に相談したところ、「ぼくにはそういう知識がないから分かりません。喉がいたかったら耳鼻科で診てもらってください」と聞く耳を持たない様子でした。翌日、耳鼻科を受診し、シックハウス症の疑いが高いとの診断を受けました。換気を充分にすること、空気清浄器を使ってみること、木炭を置くこと等アドバイスをされました。

 しかし、その効果はなく、苦しくて家に居られなくなり、知り合いの家や親戚の家などを転々とした後、兄の会社の社宅が借りられ、7月19日に新しい家から古い家に引っ越ししました。

 その頃には、すでに多種類化学物質過敏症になっていました。

 カーテンをはじめ冷蔵庫、ガスレンジ、電話、プラスチック類等、次から次へと反応し、本当に途方にくれました。

 古い家ならどこでも良いと思ったのも間違いでした。その社宅のすぐ北側には、ゴミの焼却場があり、南側には交通量の多い交差点がありました。大気汚染にも反応してしまい、毎日咳き込んでは、痰や血を吐いており症状は悪化するばかりです。でも他には行くあてもありません。

 今は、一日も早く無害な家に直してもらうことを願うのみです。この暑い夏が過ぎれば、多少なりとも症状が和らぐのではないかと、涼しくなるのが待ち遠しいです」

 このように、ある日突然、普通の生活が出来なくなる現代病が、化学物質過敏症なのです。

 そこで、県が早急に対応すべきことを2点、提案させていただきます。

 その第1は、化学物質過敏症対策には、全庁をあげての総合的な体制整備がまず必要です。直接医療部門を所管する衛生部、建築の指導や公営住宅を所管する土木部、化学物質の排出源を所管する生活環境部や農林水産部など、総合的な体制をまず確立しなくてはなりません。

 また、保健所の対応強化も必要です。

 すでに、東京都の三鷹武蔵野保健所等では、「あなたの住まい調べます!!」とのチラシを作成し、部屋の空気の汚れや室内化学物質の濃度測定などを、無料で調査するサービスを実施しています。

 茨城県においても、化学物質過敏症の相談窓口を各保健所に常設し、いつでも誰でも相談できる体制を作ることが急務です。また、「すまいの110番窓口」を開設し、ホルムアルデヒドの濃度分析や、患者の住む家に出向いて相談にのれる体制を整備することを提案いたします。

  

 次に、化学物質過敏症の対応についてですが、化学物質過敏症は、現在のところ、正式な疾病として認知されていない状況にあり、国において、厚生省や関係省庁により調査研究が行われている段階にあります。

 化学物質過敏症とは、大まかな分類方法でも15万種類もあるといわれます化学物質の中で、人によって、それぞれ異なる特定の物質に過敏に反応するというものでございまして、建物の塗装や、消毒薬にも敏感に反応するため、病院にも行けない人もいるなど、対応は非常に難しくなっております。

 しかしながら、このような健康被害で苦しむ県民がいるという事実をふまえ、何らかの対策を講じる必要性があると考えております。

 このため、昨年8月から衛生部薬務課を窓口として「化学物質過敏症患者の会」との情報交換を行って参りました。

 また、保健所におきましても居住環境における衛生対策等に関する相談を受ける体制をとっております。しかし、化学物質過敏症に関しましては、原因物質が多岐にわたり、因果関係の特定もできないことが多いことから適正な診断を受けるよう助言することのほか具体的な指導には苦慮しているのが実情となっております。

 この問題は、学に身体的な症状だけにとどまらず、その要因として住宅や環境にまで広く関係してくるものと認識しており、様々な行政分野をあげて取り組む必要があるものと考えております。

 現在衛生部では、国の調査研究等の動向をはじめとして、最新の情報の収集・提供に努めておりますが、今後は関係部局による連絡会議等を発足させ、国との連携のもとに、対応策などの検討を進めて参ります。

  

 第2点目は、県営住宅の内装材、塗料などの再検討をすべきであります。県は、ホルムアルデヒド、トルエン、有機リン剤などを極力使わない公営住宅の建設、改良に努力すべきであります。

 東京都では、東久留米の都営柳窪アパートの改装に際して、塩化ビニールの内装材を使わない布張りの壁、床も化粧合板を使用せず、白木の板張りを採用しました。この結果、化学物質過敏症の患者の症状が改善したとの報告があります。

 県営の住宅から、化学物質過敏症への対策をまず始めることが重要だと思います。

 以上2点の提案を踏まえて、化学物質過敏症の対応について、衛生部長と土木部長にお考えをお伺いいたします。

  

 化学物質過敏症対策に関連する、県営住宅の対応についてお答えいたします。

 県営住宅を設計・施工する場合に、内装や塗装工事等の仕上げや材料は、建設省が監修した公共住宅建設工事共通仕様書に基づき選定しているところであります。

 近年、議員ご指摘のとおり化学物質過敏症に関連してシックハウス等の問題が提起されてまいりました。

 そのため、建設省、厚生省、通産省及び林野庁等が協力して平成8年度に「健康住宅研究会」を組織し、平成10年3月に「室内空気汚染低減のための設計・施工ガイドライン」が公表されたところです。

 このガイドライン、ホレムアレデヒド、トルエン、キシレンの3物質と木材保存剤(防腐剤等)、可塑剤(塗料等を柔らかくして施工性を良くする薬剤)、防蟻剤(しろあり被害を防ぐために塗る薬剤)の三つの薬剤を優先的に取組むべきものに選定し、これらの低減を推進するための設計・施工の基本的な考え方や手法を取りまとめたものです。

 県におきましても、このガイドラインを参考にしながら、安全な県営住宅の建設に努めてまいりたいと考えております。


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不登校対策

 最後に、不登校対策について質問いたします。

 県教育庁は、去る8月6日、平成9年度の公立小・中学校の長期欠席等に関する調査結果を発表しました。欠席の主な理由を「学校嫌い」とした児童生徒の数に注目してみますと、中学校では、2725人、2.41%。小学校では、591人、0.30%と、いわゆる「不登校」が、その深刻さを増している状況が明らかになっています。

 不登校の数を学級数で割ってみますと、中学校では、1クラス当たり0.82人にのぼり、1クラスに1人弱は不登校の生徒がいる計算になります。

 全国平均が、2.00%であることを勘案すると、茨城県の中学生の不登校率、2.41%は、平均をコンマ4%以上上回る、かなり高率であると言わざるを得ません。

 こうした不登校の急増は、子供たちにとって、そして社会にとって、学校の意味が大きく変わりつつあることを示す数値として、受け止めなければならないと思います。

 平成4年、文部省は、「不登校」について「特異な子どもの特異な行動」という見方を、「どの子どもにも起こりうる行動」と転換させました。そして、「不登校」への対応策の見直しを進め、不登校の子どもたちが、学校以外の公的な指導教室や民間施設などで指導を受けた日数も、学校への「出席扱い」にする方針を定めました。

 いわゆる「義務教育」とは、子供達が小学校や中学校に行くことを、義務として強制している概念ではありません。

 義務教育の義務とは、親が子供に教育を受けさせる義務を規定した言葉であり、より広義に解釈するならば、国や地方自治体が、子供達に教育の場を提供する義務を、定めることに意味があります。

 情報があふれ、価値観が多様化した今、学校が「教育の場」を独占するのは困難です。唯一絶対のやり方、道しか認めない硬直したシステムではなく、別のルートも開かれ、またやり直しもきく柔軟なシステムを構築することが、義務教育段階でも必要な時代に入っているのではないでしょうか。

 こうした時代、社会の変化の中で、その重要性が増した施設は、「適応指導教室」と「民間施設」です。

 「適応指導教室」は、県内で19市町村に設置されていると聞き及んでおります。そこには、学校には登校できない小学生が22名、中学生が120名登録され、自由に通っています。

 しかし、全市町村に設置されることが望ましいと思われるこの教室も、その整備が遅れています。

 1教室当たり100万円の県費補助が、平成5年度から始まりましたが、その補助は現在、2つの教室に限られております。早急に補助枠の大幅な拡大が必要です。

 また、現在開設されている教室も、市町村毎にその設備に大きな差があることが残念でなりません。図書館の一部に、まるで間借りするように設置され、そこで学ぶ子供達のプライバシーの保護もままならぬ教室もあります。

 補助枠の拡大とともに、その内容充実を図ることが必要です。

  

 こうした受け皿整備とともに、気軽に相談できる電話相談窓口の整備が急がれています。

 24時間、365日、無料で相談できる電話。そして、教育関係者だけではなく、広く民間のボランティアに支えられた「茨城県版チャイルドライン」の創設が望まれます。

 子供達の生活時間帯の変化や、親に聞かれたくない悩みを相談することを考えれば、深夜の電話相談も取り扱う必要があります。

 長電話を心配せずに、じっくりと相談するためには、フリーダイヤルによる無料相談体制を作ることが必要です。

 さらに、学校という組織を背景に持った教育関係者だけではなく、広くボランティアを募り、対応する事が重要です。

 相談を受けた子供達に、指導をするという姿勢ではなく、まず、一にも二にも子供の声を聞くことがポイントだと考えます。

 この取り組みは、福祉部などとの連携によって、県をあげて取り組む課題でもあると思います。

 適応指導教室の充実や茨城県版チャイルドラインの設置など、不登校対策について、教育長のご所見をお伺いいたします。

  

 児童生徒の不登校についての御質問にお答えいたします。

 まず、適応指導教室の充実についてでござますが、議員の御指摘のとおり、不登校の状況は深刻さを増しておりまして、この問題の解決は、本県教育の大きな課題のひとつであると受け止めております。

 県といたしましては、不登校の対策に当たりまして、

 一つには、不登校の未然防止を図ること

 二つには、不登校に陥りそうな児童生徒、あるいは、不登校に陥った児童生徒に援助の手を差しのべること、という二つの視点から様々な施策を展開しているところでございます。

 御質問の適応指導教室は、不登校に陥った児童生徒が通う学校外施設でございまして、現在19市町村に設置されておりますが、ここに通った児童生徒のおよそ半数が学校に復帰するなど、不登校対策において大きな役割を果たしております。

 そのようなことから、県では、市町村に対して適応指導教室の設置を積極的にはたらきかけているところでございますし、県独自に運営費の補助制度を設けております。国におきましても、平成11年度からこのような学校外の施設への補助について検討しているようでございますので、その動向等も把握しながら、適応指導教室の一層の設置促進を図ってまいりたいと考えております。

 また、施設や設備につきましては、そこに通う児童生徒の数に違いがあるなど、市町村の事情が異なりますので差があることは事実でこさいますが、県といたしましては、各適応指導教室が与えられた条件の中で十分にその機能を発揮できるよう、引き続き運営についての指導・助言に努めてまいりたいと考えております。

 次に、「茨城県版チャイルドライン」の創設についてでございますが、不登校の問題に限らず、児童生徒の様々な悩みや心配事の解消を図る上で、教育相談の果たす役割は極めて大きなものがあると認識しております。

 そのため、教育委員会といたしましては、従来、各教育事務所や教育研修センター等に教育相談の窓口を設け、児童生徒をはじめ保護者や教職員からの相談に応じているところでございまして、特に今年度からは、児童生徒が一層利用しやすいものとなるよう、各教育事務所と教育研修センターの相談終了時間を、週のうち3日について、それぞれ2時間延長したところでございます。

 議員御提言の「茨城県版チャイルドライン」につきましては、これにある程度類似したものとして、国が、平成11年度から3年計画により24時間対応の「子どもホットライン」を全都道府県に設置することを検討しており、このほどその概要が示されたところでございますので、国の動向を見据えながら教育相談体制の充実を図ってまいりたいと考えております。

 県といたしましては、今後とも、児童生徒一人一人の状態に応じてきめ細かに対応するという視点を重視しながら、各種の施策を積極的に展開しまして、不登校対策の一層の充実を図つてまいりたいと考えております。


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