茨城県のダイオキシン対策

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「ダイオキシン・神話の終焉(おわり)」を読む
一連のダイオキシン報道・対策への警鐘

ダイオキシン 神話の終焉(おわり) ダイオキシン対策とは何んであったか?

 最近、我が国のダイオキシン対策について、疑問を投げかける主張を多く見るようになリました。
 特に、東京大学生産技術研究所教授・渡辺正氏、目白大学人間社会学部教授・林俊郎氏の共著Γダイオキシン−−神話の終焉(おわり)」(日本評論社)は、ダイオキシン対策の旗振り役を担ってきた私達にとっても、ショツキングな内容でした。
 以下、その神話の「神話の終焉」の要点を整理し、皆さまとの議論の糧としてみたいと思います。
 なお、要約文の責任は井手よしひろにあります。

第1 「サリンの2倍」は筋ちがい

 ダイオキシンに一番弱い動物(モルモットのオス)のLD50(半数致死量)を使って、人間の致死量を推計すると、300,000日(820年)分の食物を「イッキ食い」しない限り、ダイオキシン急性毒性で倒れることはない(P34)。
 モルモットではなく、ヒトに近いサルのLD50値を使えば25,000,000日(70,000年)の「イッキ食い」が必要である。
 事故例でみても急性毒を示す事例はない(P36)
 イタリア・セベソの農薬工場爆発事故では、最大摂取量は8.4μg/kgと推定された。これは、モルモットのLD50値の14倍にあたる。
 したがって、モルモットなら死ぬ量のダイオキシン含有物をあびても、ヒトはかるい皮膚炎を起こす程度でしかなかった。
 私たちは、ダイオキシンよりずっとあぶない物質にいつも接しながら暮らしている。
 例えばアルコールの致死量は「体重50kgの人で400g」とみてよい。ビールなら缶ビール16本分である。ダイオキシンは、30万日分の食物を一気に食べないかきり致死量には届かない。この意味では、ダイオキシよりアルコールの方が危険な物質である。

第2 どこでどれだけ生まれるか

ダイオキシン排出源
環境庁資料(2001/12/18付)
 97年98年99年2000年
焼却94%91%89%88%
産業6%9%11%12%

ダイオキシン排出量
 97年98年99年2000年2001年
総量7400g3500g2700g2200g1800g

 ダイオキシンは天然には在存しない毒物−−という表現は根本のところでまちがっている。(P66)
 長期にわたっての測定や土壌分折の結果によると、20世紀に入ってからゴミ焼却や農薬使用によってダイオキシン濃度は3倍程度になっているが、それ以前でも現在の1/3程度のダイオキシが、検出されていた思われる。ダイオキシ類も経年で、分解されることも考え合わせると、産業革命以前のダイオキシン濃度は現在のそれと同じくらいだった可能性がある。
 ダイオキシンをつくる主犯人は「塩素を含むプラスチック(塩ビなど)の燃焼」だと決めつけられている。
 しかし、無機塩(食塩)を燃してもダイオキシンは発生する。ヨーロッパでは、塩ビ主犯説は下火になっている。
 そうした状況の中、ダイオキシンの発生源について「農薬ルート」が発見された。
 特に1960年から70年代未に大量に使われた水田除草剤(PCP,CNP)は、ダイオキシンの主要な排出源となっている。
 60年代にはPCPだけでも年に2万トンが使われ、TEQ値にして50kgものダイオキシンが環境中に放出された。使用が禁止されるまでに、600kgのダイオキンが出たと推定されている。
 また、ダイオキシ騒ぎの中で、焼却炉などの発生源の周辺でダイオキシン濃度が高いと喧伝されていたが、環境省が2000年に詳しく測定した結果では、ほとんど差異がみられなかった。
発生源(焼却炉)周辺0.15pg
道路周辺0.17pg
一般環境0.14pg

こうしたことから、主なダイオキシン排出源は塩ビなど焼却によるという論は説得性に欠けるものである。

第3 人体のダイオキシン汚染

 日本人のダイオキシン摂取量は、1970年代からどんどん減り、現在は、1日に1〜2pg/kg程度である。
 一方体内に蓄積されたダイオキシン濃度を、母乳中の数値をもって調査してみると、1975年以降の20年あまりで1/3近くに減ってきている。(60pg-TEQ/g程度から20pg-TEQ/g程度に減少)P98
 結論として言えば、Γからだに入るダイオキシン」の大半は、かつて環境に出た負の遺産ということになる。
 横浜国大の中西先生は日本人のダイオキシン摂取量と体内量を推定した結果を公表した。
摂取量自然界40%農薬30%焼却30%
体内量自然界30%農薬50%焼却20%

 さて、こうして摂取されたダイオキシンが体内にどれだけ蓄積されてるかを計算してみると、自然に分解されたり、排出される量との差し引きで、図3-4に年齢とともに変化すると推計される。
 こうしたデータに若干の補正を加えると、ダイオキシンの体内濃度は10ng/Kgをまず超さない。
 この数値は、さまざまな研究結果から判断して、一般市民が発がんを恐れる理由となるとは思えない。

第4 亡国の「ダイオキシン法」

 ダイオキシン類特別措置法(ダイオキシン法)は、正確ではない情報を元に作られた法律である。
 ダイオキシン騒ぎと「社会不安」がなければ、立法化もなかった。被害の実態がないのを承知の上で、十分あった「科学的知見」をことごとく無視し、すべてを「社会現象」に添加させてできた法律、見直しの必要ない「特別措置」法−それがダイオキシン法の素顔だろう。(P130)
 このダイオキシン法に基づいて、市町村は新たな焼却炉を設置するために、巨額の支出を迫られた。
 焼却炉対策について地方自治体を指導するために、「破棄物処理におけるダイオキシン類削減対策の手引き書」(新手引き書)が1998年8月に出た。このなかでは、日本人は一日にダイオキシンを最高6pg/kgとると仮定して、4pg/kgが排ガスから来るとみて、排ガスのダイオキシン濃度と摂取量の関係を推定している。
 だが、96年当時であっても、日本人のダイオキシン摂取量は2〜4pg/kgでしかなく、摂取量のほとんどは食品だとわかっていた。そのために、焼却炉から排出されるダイオキシン分が4pg/kgになることは絶対にあり得ない。
 ダイオキシン措置法の基礎的な資料を提供した「検討委員会」は、焼却炉の出すダイオキシンをずいぶん過大評価したことになる。
 更に、焼却施設からのダイオキシン排出が1ngから0.1ngへと減少し、限りなくゼロになったとしても、ダイオキシンの総量は1%も減らないことを理解すべきである。黒煙をまき散らしながら走る車の対策や焼却施設の温度管理、バグフィルターなどの整備で大きな効果が生まれる。巨費を投じる必要はない。ダイオキシンが心配なら焼却炉に固執するのは全くの見当違いである。
 ダイオキシン法は誰のために作られたのか−−そのことを冷静に考えてみることも必要ではないだろうか。

第5 ダイオキシン法の誕生秘話

 1999年2月1日、テレビ朝日の「ニュースステーション」が「所沢産ホウレンソウに高濃度ダイオキシンを検出」と報じ、世間の大きな話題となった。そのわずか4日後、農水省と厚生省、環境庁が「ダイオキシン対策連絡会議」を作る。つい5日前の1月27日には、公明党が「ダイオキシン類対策特別措置法案」を国会に提出した。この後、堰を切ったように反ダイオキシン運動勢力が活動を起こす。2月17日には、民主党も「ダイオキシン類汚染緊急対策措置法」を提出し、超党派国会議員200名が議員連盟を結成する。こうして雪崩を打つように、5ヶ月後にはダイオキシン法が成立する。
 ダイオキシン法の意味は、「科学知見が十分にないため環境基本法にもどづく立法はできないが、大きな社会問題になったことを重視し、予防原則の立場で作った特別な法律」であった。テレビ朝日の報道がなかったならば、ダイオキシン法の成立はなかったか、少なくても考え直す時間もとれただろう。(P149)
 ごくわずかな研究者の思いこみ発言に、市民・教師・ジャーナリスト・弁護士・官僚・国会議員が踊らされて、意味もない騒ぎを起こし、あげくの果てはとんでもない法律をつくってしまった−−というのが、日本の「ダイオキシン問題」だったといえよう。

第6 つくられたダイオキシン禍

 ダイオキシン問題の中でとり上げられ、国民を惑わせた話の裏を暴いておきたい。
 ●産廃焼却から出るダイオキシンで赤ちゃんが死んでいる
 ●家庭ゴミ焼却から出るダイオキシンでも赤ちゃんが死ぬ
 ●母体内のダイオキシンが新生児の6%以上をアトピーにする
 ●母乳中のダイオキシンがアトピー児をさらに増やす
 ●カネミ油症ではダイオキシン類が死亡率を上げ、がん死をふやした
 ●ダイオキシンの「環境ホルモン」作用で動物がメス化する


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