国連「安保理決議1368」

 2001年9月11日に発生した米国での同時多発テロについて、国連安全保障理事会(以下、安保理)は翌12日、即座に、今回のテロを「国際の平和及び安全に対する脅威」と認め、国連としてあらゆる手段を用いて闘うことを決意する非難決議を全会一致で採択しました。これが「安保理決議1368」といわれるものです。
 同決議には、今回のテロの主要容疑者とされるウサマ・ビンラディン氏と、アフガニスタンを実効支配し、同氏をかくまっていると見られるイスラム原理主義勢力・タリバンの名は記されていません。しかし、事件への関与が極めて濃厚視されており、その証拠が明らかになれば同決議は事実上、両者に対するものと解釈できます。
 決議は冒頭で、国連憲章に基づき、加盟国は個別的または、集団的自衛の固有の権利を持つことを確認する一方、今回のテロ攻撃の実行者、組織者及び支援者を法に照らして裁くために、すべての加盟国に共同して迅速に対処するよう強く要請しています。
 さらに、国際社会に対し、国際テロ条約並びに、同条約の履行や締結促進などを求めた「安保理決議1269」(1999年10月)をはじめとする安保理決議の完全な実施により、テロ行為を防止し抑圧するため一層の努力をするよう呼び掛けています。
 ビンラディン氏とその背後にあるとされるタリバンをめぐって採択された安保理決議は、今回が初めてではなく、過去に2回決議されています。1998年8月にアフリカで起こった米国大使館連続爆破事件などに関するもので、最初が1999年10月に、ビンラディン氏の身柄引き渡しを含めたタリバンに対する経済制裁決議(全会一致)です(「安保理決議1267」)。その次が、2000年12月に行われた経済制裁強化と国連加盟国に対して武器禁輸を求める決議です(「安保理決議1333」)。
 現在、日本国内の一部に、米軍が軍事力行使に出る場合、「安保理決議1368」以外に新たな安保理決議が必要との意見もありますが、公明党は、新たな決議ができれば望ましいが、「今、国連決議が期待できる状況ではない。国連決議1368を根拠にするのもやむを得ない」(神崎武法代表)と考えています。