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 ITで市役所を変える
 神奈川県横須賀市の電子市役所へのアプローチ<1>

横須賀市役所 井手県議らは、2001年9月20日。神奈川県横須賀市役所(横須賀市のホームページ)を訪問し、企画調整部参事・情報政策課長廣川聡美さんより、行政情報化の戦略について、お話を伺いました。これには、日立市議会議員の館野清道さん、日立市IT市民の会代表の野地均一さんも同行しました。

 横須賀市は、様々の雑誌やマスコミに、IT先進都市として評せられている街です。人口43万人の街は、今、NTTドコモの研究施設を中心とする横須賀リサーチパーク(YRP)を整備し、情報通信の中核都市として力強く街づくりを行っています。

横須賀市企画調整部参事・情報政策課長廣川聡美さん 廣川さんのお話にも、そういった気概と覇気が感じられ、そのエネルギーを私たちもいただいて、一段と元気になって帰ってきました。

 すでに、横須賀市は自前で約30ある出先機関や小中学校を100Mbpsの光ファイバーでイントラネットを整備完了しています。もともと、海と山とに囲まれた地形のため、テレビの難視聴対策としてCATVが市内全域に発達していました。その施設が陳腐化した折りに国の補助も加えて、光ファイバー網やCATVによるブロードバンドアクセスを整備しました。したかって、市内全域で希望する人はブロードバンドのサービスが受けられるという、大変うらやましい環境にあります。

 「ITで市役所を変える」まさにこの言葉が、横須賀市のIT戦略のキーワードとなっています。どちらかというとハード優先、基盤整備先行の自治体のIT戦略の中で、「市民というお客様にいかに良質なサービスを提供するか」という行政の仕組みの改革、ソフトウェアの開発に多くの労力を割いているところに、横須賀市のIT戦略の真骨頂があると思います。

 その中でも、公共工事の入札システムは特筆されます。(横須賀市の電子入札のホームページ)

 横須賀市においては、1999年4月より、電子入札制度が施行されています。その流れは以下のようになります。

  1. 工事が発生すると、市のホームページ上でその情報を公開します(紙での掲示はしません)。入札参加申込書などは、インターネットでダウンロードできるようにしました。
  2. 横須賀市の入札制度は、大多数の自治体にように指名競争入札(自治体が数社の業者を指名して、その指名された業者が入札に参加する方法)ではなく、一定の資格があれば誰でも入札に参加できる一般競争入札方式です。入札参加希望者はFAXにより入札参加申込書を市に提出します。
  3. 参加資格審査を行い、結果を業者に連絡します。
  4. 郵便により入札書類を受付(書留郵便で局留めにする)。
  5. 事業者の代表3社(抽選で決定)の立ち会いによる改札。落札者が決定されます。
  6. 落札結果は、市のインターネットホームページに掲載されます。

という仕組みです。

 この電子一般競争入札制度の導入で、市民にとって入札という密室での行為がオープンになり、入札の信頼性が高まりました。「談合」などの不正行為も排除されました。業者にとっては、入札への参加機会が増加し(入札参加者が2.5倍に増加)、市内業者の受注率が向上しました(68.4%から80.1%に向上)。更に、行政にとっては、入札価格が低減し(予定価格に対する落札価格の割合である落札率が95.7%から85.7%に低下)、貴重な税金を効率的に運用できるようになりました。こうした劇的な入札制度の改善をITを武器に横須賀市は勝ち取ったのです。電子入札導入前と導入後では落札価格が10%下がり、20億円の経費削減となりました。

 この電子入札制度を2001年9月25日よりは、いよいよ完全にインターネットによる電子入札に切り替えます。すなわち、

  1. 工事が発生すると、毎週月曜日の夕方にサイトで掲示します。そこには工事名や場所入札の条件などが記載されています。
  2. 条件をクリアしていれば誰でも入札に参加できるのは今までと同じです。インターネット上の専用のページから直接入札金額を書き込みます。入札に当たっては、事前に登録している業者にアクセスのためのカギを渡します。そのカギを使ってサイトにアクセスして入札して電子署名を付けてなおかつ暗号化して送ります。
  3. 市役所内の公証担当(入札を担当する部署とは別の部署)が電子署名を確認して、公証局は札のハッシュ値(入札文書を単純化・暗号化したアルファベットと数字の列)だけを公表します。
  4. 入札の当日、決められた時間に、入札に参加した代表者3社に立ち会ってもらい、札を改札します。札を開いた時にそのハッシュ値と事前の公表ハッシュ値が同じなら入札は公正に行なわれたことになります。これで落札者が決まります。
  5. 入札が終わると、翌日には結果をすべて公表します。落札した業者とその金額だけではなく、どの業者がいくらで入札したかをすべて公表します。
右から廣川参事・舘野市議・井手県議・野地代表
右から廣川参事・舘野市議・井手県議・野地代表
 このシステムでは、公証局(公証用サーバー)を庁内に設置しているところに特徴があります。将来的には、公的な第三者機関に依頼することが望ましいと思われます。

 この電子に入札の取り組みは全国自治体のモデルケースとなります。新たな自治体のビジネスモデルとして、全国に展開することを検討していると廣川さんは語っていました。

 廣川さんのお話のまとめは、近未来の市役所のホームページのデモでした。ICカードによって個人認証された、住民一人ひとり別々のポータルイサイトのイメージが紹介されました。

 市民ポータルサイトは、まさにITを媒体とする市民と行政のフェイス・トゥー・フェイスの行政サービスであり、縦割り行政や民間と行政との壁を越えた総合型の情報提供サービスです。そして、今まで常に受け身であった行政のサービスが、ご用聞き型に、出前型に180度転換できる画期的なサービスです。

 「ITで市役所を変える」そのキーワードの具体的な回答の一つが、「市民ポータルサイト」であると確信しました。

廣川さんのご説明を、時間の過ぎるのも忘れて伺いました。予定の時間を大幅に超過し、市役所を後にしたのは、夕刻の5時半を回っていました。


 市役所の出先窓口が、京浜急行の横須賀中央駅に隣接するデパートにあると教えていただき、帰り道に足を延ばしてみました。

 モアーズシティ7階には、「サービス工房・役所屋中央店」が開設されています。お役所の窓口という常識を覆して、土・日・祝日、 平日の19時30分まで住民票の写しなどが受け取れます。平日の10時から17時までは、テレビ電話を使った健康相談システムで、横須賀市の保健婦が、市民の健康について様々な相談を無料で受け付けています。ブロードバンドインターネットやパソコンも気軽に体験できるようになっていました。

 ここを訪れると、担当の職員さんは、「いらっしゃいませ」と声をかけてくれます。「サービス工房・役所屋」というネーミングに、横須賀市の住民サービスの姿勢が込められています。

あ
「サービス工房・役所屋」中央店

テレビ電話を使った健康相談システム





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