第3回茨城県IT戦略会議・茨城県高度情報通信社会推進本部合同会議 議事要旨

1.日時 : 平成13年2月23日(金)14:00〜16:00

2.場所 : 県庁5F 庁議室


3.議事:
(1) 会議の冒頭,委員から,IT活用による茨城県の中小企業振興を目的とした産官学連携のポータルサイトの構築について,その位置付け,イメージ及び実現に向けての検討事項など,資料に基づいて提案がなされた。

(2) 議事内容

委員:1,2回のIT戦略会議よりは大分まとまったと思う。しかし,未だ,視点が県内に限られているのはどうもよくない。もっと目を広げてはどうか。ITは,県内や国内にとどまらない。世界との接点だということを理解するべきである。ITは技術やツールであると考える人もいるが,私は世界に通じる第3の言語だと思っている。第1の言語は英語や日本語などの自然言語,第2の言語はプログラミング言語などの人工言語,ITはそれに続く第3の言語であると思う。言語である限り,これで何をするかが問題になる。言語は覚えない限り何もできない。覚えない人は何もできないし,覚えるのも大変である。
 先日,中小企業振興公社のベンチャープラザについての一文を読む機会があったが,その中にITの本質が凝縮されていると思った。それによると,中小企業の相談にのっていて一番感じるのは,デジタルデバイドが広がっていることだということである。言語は,それを覚えている人はすぐに話せるが,覚えていない人は何も話せない。その差をどう埋めるかが問題だという話であった。
 中小企業向けポータルサイトの話にしても,一箇所ではなく,複数箇所に分けて設置した方がよい。
 世界的にみてIT技術者が多いのはインドであり,12万人の技術者がいる。次は米国であるが,ぐっと差がついて7万6千人。日本には1万人もいないだろう。こうした状況をみると,これからますますデジタルデバイドが広がっていっても不思議ではない。情報リテラシーをもっている人が周りにいない,分からないことを聞く人もいない,教えてくれる人もいない,という状況を何とかしないとITは進んでいかない。
 高速通信インフラについては,国際海底ケーブルが茨城県に陸揚げされており,国道の下にも電線にも引かれている。しかし,別々に引かれているため,数メートルしか離れていないのにつながっておらず,全体がつながらなくなってしまう。その数メートルの差をつなぐだけでも,状況は大分違ってくると思う。ただそれには,ネゴシエーションが必要であろう。そこをうまくクリアできれば,県民の利益にもなることである。

委員:今の国際的視野という話は,ERPの導入とかを含めての話か?

委員:陸揚げされている国際海底ケーブルを使うにしても,どう活用していくのかについて,視野を国外にも広げていくと大分違うのではないか。電子県庁にしてもそうである。

知事:NTTコミュニケーションの社長が「IT革命は,印刷を生み出したグーテンベルクの革命以来の大革命である」旨をおっしゃっていた。印刷技術によって情報が皆に広まるようになったのは,大きな変化であった。それでも,出版することの出来る人は限られていた。しかし,ITでは,誰もが情報を発信することができる。世界同時にそういうことが可能な状況になってきている。IT社会は,使う人によってはものすごいメリットを与えられている状況だといえる。

委員:ITは言語と思って使った方が間違いない。そうしないとデジタルデバイドの解消にならない。言語であれば,翻訳という手もあるが,その分高くつく。全体のベースアップを考えたら,できれば全員にITという言語を覚えてもらった方がいい。


委員:ITによって,時間や空間の差はなくなった。しかし,皮肉なことに,公平になるはずのITを使って茨城県をどう優位に持っていこうかという話になっている。今回の中間報告案には間違ったことは全然なく,どれも皆やるべきことだが,優先順位をつけるべきである。継続して発展していく確かな仕組みが必要である。優先度としては,1にインフラ,2に人材育成と思っている。中間報告案にもある高速大容量インフラの活用は,是非一番優先させてやってほしい。この2つを副題にするくらいの方がいい。例えば,データセンターは山奥にあればいいのでは,とも思えるが,今はまだ東京にないとだめ。故障の際とか,ほとんどの場合は遠隔操作できるが,最終的には人が行かないとだめである。

委員:最近の議論を経て,急速にローカルな部分に関心が出てきた。10箇所以上の市町村を回って講演をしたが,調べてみると,ほとんどの市町村ではERPを導入したら間違いなく倒産する。県だけを対象に対策を立ててもだめである。なぜなら,数年後の大合併時代には,市町村の首長や議員の半分は失職するのであり,県の統合によって,茨城県そのものがなくなる可能性もあるからである。例えば,千葉県や福島県などと合同でIT戦略会議を作るくらいでないと生き残れない。そういう時代には,茨城県の役割は何か,ということが問題になる。ERPを入れて,ASPサーバーを県庁内に設置するのもいいが,そういうことを各県でやっても将来的にはだめなのであって,例えば,ITは群馬県にやってもらい,茨城県は他のことをやる,というような役割分担が必要である。中間報告案にしても,方向性はいいが,もっと横の広がりを見て,茨城県の果たすべき役割を考え,他県と役割分担をしていくことが必要。「茨城県」という名前は捨てて,特徴をもつことが必要である。
 私の言いたいことは次の2つである。@平成13年度には,横のつながりを考えたIT戦略会議を作ってほしいということ。こういうものは先に言ったもの勝ちであり,それであれば,もしかしてERP導入も現実性をもつかもしれない。A市町村のITは県がやっていくと明記して欲しい。
 質問が2つある。県のシステムのアウトソーシングの状況と,大容量高速回線整備の考え方についてである。

事務局:アウトソーシングについては,現在県庁にある80システムのほとんどは外部に委託している。システムの数は,1番多いときは140程度あった。今後は,もっと統合されていくものと思う。また市町村のIT戦略については,京都府の市町村会館で,各市町村が保有する住民基本台帳等を一括管理する試みが始まった例もある。

事務局:大容量高速回線については,今後,基盤についての検討の場でやっていきたい。今回は,電子県庁と産業振興方策について,方向付けをしていくことを目的としている。

委員:パソコン入札についても,茨城県の業者はことごとく負けているのが現状。我々中小企業の団体としては,参加できる機会が少ないというのが苦しいところである。認証についても,誰がやっていくのかという問題がある。我々業界団体が参加できるような仕組みを作ってもらうとありがたい。

議長:茨城県内の回線は,まだメタリックが中心だと思う。しかし,本格的にIT化に取組む場合,こうした回線事情についてはどう思うか。

委員:県内の高速通信インフラは,今急速に普及している。高速通信を使いたい人は,恐らく,会社などで使える環境にある。ここでの話は,高速回線を使える人に限った話ではなく,もっと広く,誰にでも普及させていこうという話だと思う。すなわち,高速道路に例えれば,フリーウェイを作るということ。中間報告案には,その辺のところが,LGWANや出先機関との接続といった記述に現れている。これをバックボーン(背骨)として,中小企業向けポータルサイトなどとも連携して,だんだん広がっていくという風になるといい。早く,誰もが使える高速インフラを整備していかないといけない。我々も努力していきたい。
 IT導入を目指してきた中小企業の人たちは,この機会をチャンスと思って飛びつくだろうが,それすらできない企業の人たちとの格差が問題である。ある程度業界を一括りにして,ITを使わないと県への申請が出来ない等,半ば強制的に使わせることも有効である。荒療治ではあるが,実際に使っていった方が覚えが早い。10年前,研究所にインターネットが入ったときは,アメリカで使っていた人たちからの口コミで使う人が増えていった。ポータルサイトも,まずはある業界に導入してしまえば,意外とスムーズに立ち上がるのではないだろうか。

委員:7年位前,茨城県でテレビ放送を実施するという話があった。その時代,番組を作るためには,照明一式借りるのですら東京に行かないと用が足せなかった。つまり,テレビをやってこなかったということが,周辺企業すら育てなかったということである。ポータルサイトの構築によって,関連企業のレベルアップになると同時に,これに付帯して生じてくる企業もあると思う。例えば,ログの解析や,ネット広告の制作,ネット広告の効果に関するコンサルタント等の企業が生まれる可能性があり,大変面白い。このように,逆に新しいサービスが生まれる可能性があるということは興味深いこと。
 また,今回の中間報告案の語尾が「〜する必要がある。」となっているのは気になる。極力「平成○年までに実現する。」としてほしい。内容については,ここに挙げられていることはどれも非常にありがたい。ここに書かれた産業方策の1つ1つに期待したい。しかし,旗を振って,皆を引っ張っていく役割を誰が担うかによって,成否が決まってくる。県庁の人にやれ,というのは無理。それは能力の問題ではなく,民間に対しても強引なまでにリーダーシップを発揮していくためには,そういう役割を担う組織を作るなり,いいマネージャーを引っ張ってくるなりすることが必要かと思う。

委員:話をあまり広げすぎると議論がまとまらない。とりあえず,県内に絞って話を進めるしかないのではないか。電子県庁によって利益をこうむるのは一般県民よりも企業や団体である。企業にとっては,電子県庁化によって,役所に24時間365日,どこからでもアクセスできて申請を受け付けてもらえるのは大いにメリットがある。まずは企業を対象にできるところからやって,そうすれば県民もついてくる。一気にハイレベルの電子県庁化を進めるのは無理である。まずは,ある程度の境界範囲内で議論するしかないのではないか。

委員:私は県民の立場としてこの会議に参加させていただいている。中間報告案についてだが,行政サービスの税金納付について,電子申請・届出の中には入っていないと思われる。マルチペイメントネットワーク協議会というところがあり,100以上の自治体が参加して検討を行っている。代表的なのは自動車税の納付などであり,ITをうまく使える分野だと思う。ただ残念ながら,茨城県を含め,茨城県下の市町村はどこも参加していない。電子納付については技術的に難しい部分もあると思うが,その辺の考え方はどうか?

事務局:この協議会にはオブザーバーとして参加はしており,平成13年度からは正式に会員となる予定である。

委員:このIT戦略会議で実のある検討をしようと思えば,まず電子県庁から始めるべきであろう。電総研では,20年位前からITについて研究してきた。そして10年ほど前に,それまでの研究成果を踏まえ,これなら使ってもらえるのではないかということで,表に出てきた。そのときの目標は,まず工業技術院との接続であり,次は通産省,その次は省庁間をネットでつなぐことであり,自ら線を張ったりして運営してきたという経緯がある。しかし,線がつながっていればそれで使えるのかというとそうではなく,どう使うか,何に使うかが問題。電子県庁にしても,1つ部を立ち上げて,何人かをそこに貼り付けるくらいのことから始めないといけない。

知事:システムの性能で競争するよりも,内容で競争していくしかないかもしれない。勉強していきながらいいものを見出していきたいということで,このようなIT戦略会議を立ち上げている。茨城県ではうまくITを利用している,と言われるようなものを作っていきたいと思う。
 高速インフラについても,活用すればいいのは分かっているが,その先どうするかが問題である。


議長:ITについては,県主導で進めてもらえないか,という声もあるが。

知事:システムについては,各市町村でお金を出してそれぞれ開発している状況。最低限,県内の市町村ではシステムをそろえていけるように努力していけたらいいと思う。そこのところは,総務部でうまく市町村会と調整して欲しいと思う。

委員:県でも,臨時でいいから特別手当を出してシステム構築の人材を確保してはどうか。人材がいれば話は早いのではないか。業者側も,公共機関に食い込むのはメリットである。公共サーバーについては,そういうハコ物から入っていったほうがいい。一旦ハコができれば,公共施設予約のように,アプリケーションのアイデアは次々と出てくる。


委員:SAPは,日本の自治体で最初にERPを導入するところには無償で提供すると言っている。SAP内での順位は,一位が三重県,次が岐阜県である。

委員:SAPが一番いいかは分からない。対抗馬もある。

知事:他自治体での導入状況をみて,いいとこどりをすることはできないか。


委員:それは無理である。なぜならSAPのERPは,共通のデータベースでないと活用できないから。確かにSAPのプログラムは使いにくい。しかし,世界の80%が既に導入しているということに意味がある。

委員:重要なのは,その前に,業務や決裁の仕組みを変えることである。


委員:ゼロから改革して検討するのではだめ。企業がこれまで積み重ねてきた実績と比較検討したほうがいい。それなりに検討してきている企業が実績としてもってきたシステムに仕事のやり方を合わせるしかない。

知事:仕事のやり方そのものを変えていく検討も始めていく予定。


事務局これから検討していく。

事務局来年度,情報政策課内に作るIT推進室にも総務部から人を出してもらって,見直していく予定。

委員:ベースがないまま,今の業務を見直そうとしてもだめである。自治体の大統合時代まであと2,3年しかない。時間の節約には,今ある中でベストと思われるシステムと比較検討していく方法しかない。とりあえずベストと思われるシステムを導入してみて,それに合わせて仕事のやり方を変えていきながら見直していくという方法しかない。

議長:時間もなくなってきたので,最後に何か御意見があればお願いしたい。

委員:鹿島港や大洗港の活用について,中間報告案に一言も入っていないのはどうしたことか。

事務局今回は,電子県庁と産業振興方策に話を絞っており,基盤についての検討は来年度行う予定。

委員:了解。


事務局中間報告案にも,明文化されてはいないが,港の活用について含まれていることは間違いない。茨城県のアドバンテージは,港と高速道路とのつながりである。

委員:是非,それについての検討組織を設けて欲しい。


議長:本日の議論をまとめると,以下のような論点があったと思う。@大容量高速通信については,とりあえず中間報告案にも含まれており,実際の検討は来年度行うということで,皆さんに了解願いたい。A鶴田委員からのポータルサイトの提案を踏まえて,記述の修正をお願いすることとする。B市町村との連携協力について,知事の意見もあるので,修正の検討をお願いする。C電子県庁関係について,県民から県庁へのアプローチは,直接の来訪,電話,オンラインと様々あると思うが,それへの対応について,事務局としてはどう考えるか。

委員:情報はどんどんオープンにしていくことが大事であるが,はっきり言って,IT化に対応できない人はしょうがないのではないか。


議長:D業務見直しのスタンスを書いておいてもらった方がいいと思う。

事務局検討する。

議長:E鹿島港,大洗港の活用については,基盤ということで,来年度の検討事項とする。

事務局先ほど御指摘のあった語尾の表現についてであるが,この中間報告案は,皆様方からの提言という形をとっており,これを踏まえて県として指針等を作成するという流れになるので,今回の案では「必要である。」という表現になっていることを御了解願いたい。

事務局指針等についても,この会議で報告させていただく。

議長:修正部分については,委員の皆様方にまた見ていただくということでお願いしたい。以上の修正をするということで,この報告書案については了解としたい。


知事:委員の皆様には,大変お忙しい中,会議にご出席を賜り,また,これまで貴重なご意見・ご提案をたくさん頂き,誠に有り難うございました。
 
県といたしましても,IT革命への対応は,現下の最重点かつ喫緊の課題と考えておりまして,平成13年度の予算措置など,最優先で取り組んでいるところであります。
 このような中,昨年10月に初会合を持たせていただきましたIT戦略会議につきましては,本日まで3回にわたり,当面の緊急の課題であります電子県庁の構築と産業面におけるIT化について重点的にご審議を賜り,本日,中間報告という形で取りまとめを頂きました。大変実のある,幅広い見地からのご提言を頂いたと拝見しておりました。
 ご提言の内容につきましては,先程担当部長から説明いたしましたように,平成13年度の予算にかなり反映させて頂いているところであります。
 電子申請や電子入札システムの導入など,電子県庁を構築するための施策や,企業の経営革新を図るためのITエキスパート派遣やいばらきビジネスサイトの構築など,中小企業のIT化の支援策を中心に,限られた財源の中でできる限り措置したつもりでございます。また,4月からは,企画部情報政策課内に「IT推進室」を設置し,IT関連事業の総合調整や電子県庁の推進に力を入れてまいる考えであります。
 ITは,県民生活のあらゆる分野に影響を及ぼすものでございますので,今後とも残された課題につきまして,引き続き皆さんの幅広い識見に基づくご意見を賜りますようお願い申し上げます。
 本県は,ここ数年の間に,陸・海・空の交通基盤の整備やつくば・常陸那珂を中心とする都市整備,県内各地における新規産業の立地などが急速に進展し,いろいろな分野で様々な活動が活発に展開され,すばらしい県になるものと確信しております。
 このような中にあって,ITにつきましても,全国に先駆けて,本県独自の特色ある事業を展開して参りたいと考えておりますので,今後とも委員の皆さんからの積極的なご意見・ご提案を賜りますよう,重ねてお願い申し上げまして,簡単ではありますが,お礼のごあいさつとさせていただきます。
本日は,有り難うございました。

事務局次回の日程については,新年度に日程調整をさせていただきたい。できれば5月くらいに開催できればと考えている。