ワークショップで公園づくり(公園のできるまで)

 日立市水木町2丁目にある泉が森湧水。ここは七世紀に書かれた『常陸国風土記』に「いはゆる高市、ここより東北のかた二里に密筑の里あり。村の中に泉あり云々」とある「蜜月の大井」であるといわれています。
 この湧水は泉神社境内の一角にあり、毎分約3t以上の湧水量があります。この神社に隣接した養魚場では、この湧水を引き入れてニジマスの養殖を行なっていましたが、その後閑鎖され、平成元年には埋め立てて、宅造する計画が持ち上がっていました。
       

         
(泉が森湧水)  (旧 養 魚 場)

                         

 ここで旧養魚場の生簀に生息する貴重な淡水魚・イトヨの存在が問題になったのが平成3年のこと。この問題をきっかけに平成5年、地元の水木学区市民運動堆進会から養魚場跡地の造成計画の中止と、イトヨの保護を目的とした親水公園整備の請願書が市議会へ提出され、採択されました。公園にすることは決まったのですが、用地取得等の諸問題の解決に5年間を要し、本格的に公園の事業が動き出したのは平成10年からとなりました。

 イトヨが生息する泉が森養魚場跡地の公園化には、二つの大きな課題がありました。第1は、イトヨの生息地がすぐ新興住宅地に接しているため、イトヨの保護には地域住民の理解が不可欠であったこと。第2は、普通の公園と比べて維持管理に格段の手間がかかることが予想され、ここにおいても地域住民の協力が不可欠であったこと。このため、泉が森の公園事業は基本計画段階から住民参加のワークショップ方式で行うことで進められました。

 平成10年10月21日、公園の基本計画づくりを検討するワーキンググループが地元に発足。日立市における最初の市民参加による公園づくりが本格的にスタートしました。ワークショップ活動の前から、水木学区市民運動推進会と市が中心となって県立自然博物館を視察したり、イトヨの研究者を招いた講演会を開催するなど様々な活動が展開され、徐々に地域住民の間に公園づくりの気運が高まってきました。
 当初ワーキンググループへの参加者は14名でしたが、回を重ねるごとに人数が増え、最終的に42名にまで達しました。

 ワークショップとは実際に頭と体を使って、皆で共同作業をしながら計画をまとめ上げて行くことです。この作業で課題となったのは、イトヨという特殊な生き物をどう公園計画に取り入れるかでした。未知のことだけに悩みも大きなものがありました。そこで、ワークショップの前半3回は公園の勉強会にカを入れ、イトヨを公園のテーマとしている福島県喜多方市の押切川公園をはじめ、他の先進事例を視察し、イトヨと公園づくりへ対する理解を深めることに努力しました。後半4回は公園の計画検討作業に当て、喧喧諤諤の議論の末、なんとか基本計画案がまとまりました。
  この間、作業はできるだけ具体的に目に見えるスタイルで進め、現地において実寸大で公園施設の配置を縄張りで示したりする手法も行なってきました。

      
(ワークショップ活動)

                 
 翌平成11年度には、実施設計案を同じワークショップ方式でまとめてきました。実施設計のワークショップは、完成後の公園を地域がどう利活用するかを目標に掲げ、公園を使った地域活動、さらには地元小中学枚の環境学習の場となるよう、より現実的な方向から公園の計画案を検討してきました。
 そのため、近くの公民館に水槽を置いて、ワーキンググループの手でイトヨを飼育することで近隣住民にイトヨ保護への協力を求めたり、地元小学校の野外学習で、ワークショップメンバーの1人がイトヨの講義を行なうなどの活動も始められました。

 平成12年度からはワークショップでまとめられた設計にしたがって工事が始められました(工事期間は平成12、13年度)。工事期間中でありましたが、できることは協力しようという考えでワークショップ活動は継続されました。工事期間中旧養魚場の中のイトヨやカワニナ(ホタルの餌)の引越しをワークショップの活動で行いました。そしてこれは地元水木小学校の総合学習の中で、子どもたちと一緒に行われました。
 翌13年度は公園のシンボルとなる東屋の設計をワークショップで議論したり、公園の名称を公募する作業を進めてきました(それまでは(仮称)水木水公園という名前で進めてきましたが、たくさんの応募作の中から水木小学校生徒、土屋信吾君の考えた園名「イトヨの里泉が森公園」が正式名称と決まりました)

     
 (野外学習会)  (水木小学校総合学習)

                     

 この4年間に渡るワークショップ活動の中であきらかになって来たのは、メンバーに参加している地域の人々が、公園づくりを通して一つの方向性を見出してきたことでしょう。「人とイトヨが共存・共棲する場づくり」、これがワークショップの中で導き出された泉が森公園のテーマでした。そして更に大きな成果は、公園の計画づくりのワークショップで、(相反する様々な意見が出されましたが)、共同作業を通じ、考え方の相違を克服し、新たな人間関係、人づくり、地域づくりができたことだったでしょう。

(ワークショップ活動を進めてきた組織について)
 ワークショップ活動は地元組織と市の都市計画課が共同して進めてきました。地元組織は当初から継続した組織でしたが、平成10,11年度は(仮称)水木水公園ワーキンググループ、平成12,13年度は(仮称)水木水公園運営委員会、そして公園が完成した平成14年度からは「イトヨの里泉が森公園運営委員会」と発展的に改組されてきました。地元組織は地元水木学区の住民が多く参加していますが、自由参加を基本とし、市報を通じ広く参加者を募ってきたため、他学区や市外の住民まで幅広いメンバー構成となっています。

(広報活動)
 市民参加で公園づくりを行っているといっても、住民全体からみれば参加者はごく一握りです。この問題に対し地域住民全員にできるだけワークショップ活動を理解してもらうために、広報誌(ワークショップだより、運営委員会だより)を学区全世帯に継続して配布してきました。

ワークショップ活動の記録

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