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想い Ver 3.0
                       by.清水 隆広
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異常気象か?
9月だというのに、真夏のような強い陽射しが俺に照りつける。

アスファルトからの照り返しも容赦が無く、時折吹く風も気休めにしかならない。
「暑い・・・」
天を仰ぎながら、汗を拭う。

『今日は・・・。水曜日なので1時くらいには行けると思います』
今朝、デートの誘いに楓ちゃんは頬を朱に染めながらそう応えてくれた。
『じゃ、1時に駅前のオブジェの前で!』
後先考えずに待ち合わせ場所を決めた事に今更ながら後悔する。
この日陰が全くない灼熱地獄に立ってそう思う。

結構、人通りの多い駅前でも、ここに立っているのは俺だけだ。
汗が自然とジワリと出る。

「12時50分か・・・」
オブジェの天辺にある時計を睨みながら唸るように呟く。

「耕一さん!」
声に気付いた俺は振りかえる。

「・・・遅くなって、すみません」
そこには、息を切らした楓ちゃんが立っていた。
まだ、充分余裕がある時間なのに走ってきた様だ。

「走ってきたの?」
俺が言うと、楓ちゃんはコクンと頷いた。
「まだ約束の時間の10分前なのに」
言いながら、彼女が急いで来てくれた事を嬉しく思い、自然と笑みがもれる。

そして、不意に不安になる・・・。
「あのさ・・・。楓ちゃん」
「?」
「その・・・体は・・・大丈夫なのかな?」
最初はキョトンとしていた楓ちゃんも俺の言った意味に気付いて、真っ赤になる。

「・・・大丈夫です」
消え入りそうな声で応えてくれた。

「あっ・・・、あのさ、立ち話も何だし・・・ちょっと歩こうか?」
俺は照れ隠しに提案する。
「は、はい・・・」
楓ちゃんは顔を赤く染めたまま頷いた。

とりあえず、二人は公園に避難する事にした。

駅から公園までの2分くらいの道のりを彼女の歩幅に合わせてゆっくりと歩く。

途中、会話が途切れてしまった・・・。
ちょっとした沈黙が二人の間に流れる。
何か気の利いた話題を探すが、見つからない。
楓ちゃんの趣味って何だっけ?

そして、気付く。
楓ちゃんの事を何も知らない自分に。
従妹なのに・・・。
恋人なのに・・・。
俺は何も知らないまま彼女を抱いた・・・。
・・・軽い自己嫌悪。

隣で歩く楓ちゃんを見ると、少し楽しそうに見える。

本当に、こんな俺で良かったのか?
俺は、君に相応しい男なのか?

もしかしたら、彼女は俺に次郎衛門を見ているだけなのかも・・・。

そう思って、ハッとする。

楓ちゃんの気持ちを疑うなんて・・・。
俺は最低な男だ!

ふと、前を見ると自販機があった。
途端に喉が乾いていたのを思い出す。
「何か買って行こう」
自販機を指差し楓ちゃんに言う。

「何にする?」
120円を入れて俺は楓ちゃんに訊ねる。
「あっ・・・」
自分が出すと言いたいのだろうが、そうはいかない。
「デートなんだからさ、俺におごらせてよ」
たったの120円だけど・・・。
楓ちゃんは、デートという響きが気に入ったのか、ちょっとボーッとしている。
「何にする?」
このまま、自販機の前で見詰め合っていても仕方ないので再び訊ねた。

「・・・緑茶、お願いします」
我に返った楓ちゃんが遠慮がちな控えめな声で言う。

・・・渋い。
ガタンッ。
取り口の缶を手に取ると既にびっしりと水滴が付いていた。
この湿度を考えると当然の事だろう。

缶を俺から受け取ろうとした楓ちゃんの手に俺の手が触れてしまう。
「あっ・・・」
思わず手を引っ込めた楓ちゃんは頬を赤く染め俯いてしまった。
・・・初々しい。
昨日の今日で恋人同士になった俺達はお互いを妙に意識してしまっている様だ。

これでは、まんま中学生だな・・・。
俺は意を決して行動した。

「はい」
俺は彼女の手を取って缶を渡す。
楓ちゃんは両手でそれを受け取った。
「・・・ありがとうございます」

俺はいつものスポーツドリンクにした。
さわやかな俺にはぴったりの飲み物だし、乾いた喉は350ミリ缶を欲しがっていた からだ。

俺はプルトップを引こうとして気付いた。
楓ちゃんは缶を持ったまま、じっとしている。
「どうしたの?」
俺は楓ちゃんに訊ねた。
「いえ、あの・・・立ったままで・・・」
ちょっと困った表情の楓ちゃんを見て、俺は気付く。
「あっ・・・そ、そうだね、行儀悪いよね!あはは・・・」
照れ隠しに頭を掻いた。
半ば口の開いているジュースの缶を後ろに隠しながら、再び歩く。

そうこうしているうちに公園が見えて来た。
「じゃあ、涼しそうな所でジュースを飲もうか」
「はい・・・」
楓ちゃんを促して公園に入る。

ちょうど良い具合に、涼しそうな木陰のベンチを見つけたので、そこに座ることにす る。

俺と楓ちゃんは冷たいジュースで失った水分を取り戻す。
350ミリ缶をゴクゴクと喉を鳴らして、一気に飲み干した。
「ぷは〜っ、生きかえるぅ!」 
ベンチに深く腰を落として俺が言うと、楓ちゃんクスッと微笑んだ。
見ると楓ちゃんも250ミリ缶をコクコクと両手で飲んでいた。
・・・う〜ん、可愛い。

一息ついたところで、俺は軽い倦怠感を覚える。
炎天下に長く居過ぎたせいか?
「耕一さん、気分が悪いんですか」
俺の不調を表情から読み取ったのか、楓ちゃんは心配そうに顔を覗きこむ。
「うん、ちょっと休めば大丈夫だよ」
彼女を心配させたくなかったので、俺は笑顔で応えたが、 どうも横にならないと辛くなってきた。

「うぅっ、情けない〜」
そのまま、ベンチに横になる。

たたたたた・・・。
楓ちゃんは水飲み場へ駆けて行った。
ハンカチを水で濡らしてくれている様だ。
たたたたた・・・。
戻ってきた。

そのハンカチを俺の額に乗せてくれる。
この子の気配りには、ちょっと感動する。
「ごめんね、楓ちゃん。折角のデートなのに」
ふるふると楓ちゃんが首を振る。
「気に・・・しないで下さい。それより・・・あの・・・」
楓ちゃんが恥ずかしそうに何か言おうとしている。
「耕一さん、私の・・・」
自分の膝を見つめながらモジモジしている。
ん?
「もしかして、膝枕してくれるの?」
真っ赤になりながら、コクコクと頷く。
・・・涙が出そうなくらい感動する。
俺にとって楓ちゃんの膝枕は至高の薬だった。

「・・・どうぞ」
体を寝たまま移動させて、楓ちゃんの太腿の上で頭を下ろす。
勿論、額のハンカチを落とさない為に仰向けのままだ。

ふにっ・・・。

柔らかい太腿の感触に幸せを感じる。
見ると楓ちゃんの顔は真っ赤になっている。

目を瞑り、そのまま30分くらい横になる・・・。
楓ちゃん、良い匂いがするなぁ・・・。
この場合は香りと言うべきか?

爽やかな風が、優しく頬を撫でる。
「重くない?」

ジーワ。ジーワ。ジーワ・・・。
遠くから、蝉の声が聴こえる。

「いいえ。・・・大好きな人の重さを感じられて嬉しいです」
目を開けると楓ちゃんは潤んだ瞳で俺を見つめている。

俺の心臓は激しく脈を打った。

柏木 楓・・・。
俺の想い人。
木目細やかな日本人形を連想させる物静かな少女。
昨日まで、そう思っていた。

今は違う、人形じゃなく、あたたかい、生きた女性として意識している。
その瞳には、もう冷たさや寂しさの色は無く、代わりに、強い意思を感じる。
小さな口は相変わらず多くを語らないが、真実のみを伝えてくれる。

時折、風に揺れるおかっぱの黒髪は木々の緑に映えてとても綺麗だ。

胸の鼓動が、さらに強く、激しくなっていく。
楓ちゃんに対する愛しさが、どんどんと膨れ上がっていく。

無意識に俺は寝たままの状態で手を伸ばし楓ちゃんの頬に触れる・・・。
「あっ・・・」
楓ちゃんは小さな声を上がる。

ぷにぷに・・・。
頬を指で突付いてみる。

楓ちゃんは、うっとりとした表情をする。

そして、
指はそのまま、桜色の唇に触れる。

左右に、薄い唇のラインに沿って彼女を愛撫する。

しばらく、俺はその感触を楽しむ。

次から次に沸きあがる感情。
切なさ、愛おしさ・・・。

「キスしたい」
口を突いて出た俺の言葉に、楓ちゃんの頬はポッと朱に染まった。

「きゃっ」
上半身を起こし、俺は楓ちゃんを引き寄せ、思いっきり抱きしめた。
・・・細い身体。
いきなりの抱擁に、楓ちゃんはびっくりした表情を浮かべた。

そして、ゆっくりと顔を寄せ唇を塞いだ。
お互いの鼓動を感じつつ、俺たちは長いキスをした・・・。

9月の空は何処までも高く、時折、吹く風が秋を感じさせる。
頭上には相変わらず照りつける太陽。

俺たちは時を忘れて、想いを伝えあう。
口移しで・・・。







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あとがき
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駄文を最後まで読んで頂き、有難う御座います。

私は文章を書いた事の無い人間です。
SSを書くのも当然、今回が初めてです。
その為に、たいへん読み辛い物になっておりますが、ご了承下さい。

この文章の作成にあたって、樹様とTNT様に
アドバイスを頂きました。
お二人のご協力に、この場をお借りして感謝致します。

お時間が御座いましたら、感想など頂けると有り難いです。
では、失礼します。

                  1999年 9月 清水 隆広
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へなちょこメール: Takahiro_7@msn.com
へなちょこページ: http://www3.justnet.ne.jp/~takahiro7/
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