ほのぼの小説企画 参加作品

暇な人

作 かば

 気持ちの良い秋晴れの下で、一匹の老犬が昼寝をしていた。
「よう寝とるわ」
 老犬はそうつぶやいた老人の飼い犬で、さっきからずっと昼寝をしていた。
「気持ち良さそうだな」
 老人もさっきからずっと縁側に座って老犬を見ていた。
 風はまだ冷たくなくほど良く吹いていて、花壇のコスモスも気持ち良さそうに揺れていた。
「本当によう寝とるわ」
 老人も一緒に昼寝をしたくなるような、本当に気持ちの良い日だった。
 犬舎の前で足を完全に投げ出して寝ていた老犬の後足がピクリと動いた。
「お、起きるかな」
 老人が見ていると、老犬の足はさらにピクピクと動いた。
「フワー」
 老犬は大きくあくびをしただけで、寝返りを打って反対側を向いてしまった。
「起きた訳じゃないのか」
 老人はがっかりしてしまった。でも、老犬は老人のことなどまったく知らない様子で昼寝を続けた。
「フワー」
 さすがに老犬も、そういつまでも寝ていられないようだった。もう一度あくびをすると、寝そべったまま老人の方に向き直った。
「横着なやつだ」
 老犬は寝そべったまま、つまらなそうに老人を見ていた。秋晴れの気持ち良い日だというのに、「あんたいたの」と言わんばかりの様子だった。でも、考えてみれば十年以上飼っていたから、人間の年で言うと老人と同じ年ぐらいなのかもしれなかった。
「おい、ばあさん。シロのやつやっと起きたぞ!」
 老人は家の中に向かって呼び掛けた。
「はいはい、そんなに大きな声を出さなくてもちゃんと聞こえますよ」
 老人が呼び掛けると、取り込んだ洗濯物を抱えた妻が縁側に続く部屋に入ってきた。
「シロが起きたことだし、ばあさんも一緒に散歩に行かんかね」
「良いですねえ。一緒に行きましょうか」
 妻は抱えていた洗濯物を降ろしながら言った。
「でも、おじいさん。もしかして、ずっとシロのことを見てたんですか?」


 ひたすら穏やかな雰囲気が気に入って残しました。
 修正箇所も感嘆符や疑問符の追加とカタカナへの置き換えだけですし、結構完成度が高いのかもしれないと思いました。
(02/09/21 制作、07/06/18再修正の上再掲載)

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