お多福ボーイズ
さとう じゅん
1998年1月20日(火)
朝起きてワイシャツのボタンをはめると首回りがやや苦しい。体重が増える時はいつも首回りに現れるから、太ったかなと思いつつ、車を走らせて都内での打ち合せに向う。仕事を終え、夕方帰宅途中、休憩のため立ち寄ったパーキングで何となく両耳の下に手をやると何だか腫れている。「こりゃ、やばい!」と北海道の母に電話をいれ「まだオタフクをしていないかもしれない」ことを確認。家に戻ると2日前に発病した息子(4才)が「おとうさん、ボクと同じオタフクだね。これ貼るといいんだよ」と湿布を差出してくれた。息子が2日先輩なのだからしかたがない。正月、親戚が家内の実家に集まった時、5才のルミちゃんの頬が腫れはじめてグッタリしていたから、多分間違いないだろう。
- 1月21日(水)
- 翌朝、出社前の4年前にオタフクにかかった会社のT君に電話で話すとすぐさま訪ねて来てくれて「タマ!熱もって腫れてきますよ!1週間ぐらいだるくて辛いですよ。固い食べ物や唾液が出る酸っぱい物は耳下腺が痛むからとこれを飲んで下さい。」とトマトジュースを持って来てくれた。105キロの体重をもつ彼も心優しい2児のパパなのだ。息子がぷっくり顔を腫らしているのは可愛げさえあるのに、いい年をした私がクルミを頬袋につめこんだ冬眠前の「大食いリス」
あるいは演奏中のトランペッターの日野皓正氏やディジー・ガレスピー氏のように首の脇まで膨らんだら記念写真物である。彼らはたゆまぬ訓練を経て必要のために進化したのだから。息子の一輝は、1日だけぐったりしたものの大した熱もなく落ち着いている。堂々としたものである。
9時に近所のかかりつけの医者に行く。「まず間違いないですね。このウイルスに効く薬はないから、熱さましと湿布だけ出します。弱いのと強いのと2種類だしますから、忙しいでしょうが安静にして下さい。無理をするとごく希に重症の髄膜炎・膵炎・睾丸炎になりますから・・・。」T君の言った通りだ。親子で「お多福ボーイズ」の誕生である。この2週間程の潜伏期間、私と会った皆さんの何人かに移したかもしれないと思うと心苦しい気もしてきた。夕方、今週のアポをすべてキャンセルして来週に延ばしてもらう電話をほうぼうにかける。その一人、まもなく開催される長野オリンピックのIOCイスラエル代表をコーディネイトするYさんには「ハッハッハ!そ
そ そ そうだったんですかぁ」と笑われてしまう始末。
突然降ってきた1週間の休暇。外出するわけにも行かないし、去年ある人から推薦して頂いて、まだ読んでいなかった児童文学の「農場の少年」「太陽の戦士」−ワイルダーや「飛ぶ教室」−ケストナーを図書館から家内に借りて来てもらうことにする。
- 1月22日(木)
- 耳が時にキーンとするが大して発熱もしていない。腕や膝の関節に少し痛みがあるものの風邪の症状よりも軽い程度だ。但し、昨日は18時間ぐらい良く寝たのが良かったのかも知れない。手の平で水をすくうようにして丁度70%ぐらい耳の下から下顎にかけて腫れてきた。
世の中には大人でも私のようにオタフクにかかっていない人が結構いることが分かってきた。隣のIさんはお父さんとお嬢ちゃんのヤヨイちゃん親子がそうであることが分かった。会社にも2人いる。一週間の休養をメールで流したら何通かすぐ返事が届いた。冷やかしもチョッピリあるがパソコン仲間の友情はありがたいものだ。
- えっ!ほんとですか?まさか まさか 実は、私もまだなんです。
- へぇ、知らなかったっ。役にたつねぇ。きゃははっ(~O~)ホント、写真が出来たらメイルしてきてっっ(^_^:)これは、神からの「休めっ」てメッセージなのですぞっ。That’s
good!必要だったから、こうなっているのよ。必然だったんですっ、必然。偶然と思うことも必然っ。この世に起こる、全ての事柄には意味があるんだからぁっ。ま、有効に時間をつかって、ゆっくりオヤスミになってくださいましっ!
- アクセスすると「福を呼ぶか?お多福の中年男!」のメールがあり、覗いてみると中年おじさんのお多福に笑っていいやら・・しかし拗らすと取り返しのつかない病になりますよ。お大事に!!
- 調子はどうですか?オタフクは自分もやったかどうか不明なのその病気にかかるとどのようになるのか。私もわからないので・・・高い熱がでるのでしょうか?苦しいのでしょうか?痛いのでしょうか?どうぞ ゆっくりなさってください。・・・・・でも きっと 明日は今日よりよい日に違いありません。では、お大事にしてください。
- ご愁傷様です。何といっていいのかわかりませんが、これだけは言えます「わがクラブへようこそ」。実は昨年の今ごろ私も大いなる福を頂きまして、あの半月の間のつらいことつらいこと、気持ちは充分に分かるつもりです。これも運命と考えて半分あきらめている毎日です。もっとも父一人娘一人、おふくろと妹の4人暮らしの中で特に不便を感じることもありませんが・・・・。とにかく早く謹慎が解けることをお祈り申し上げます。
- 大変なことになってしまいましたね。ちまたでは、インフルエンザがはやっているとのことですが。大人になってからの「おたふく」はひどいと聞いています、無理をなさらずに、くれぐれもお大事になさってください。私も、まだやったことはないのですが、職場で生徒がかかっても移らなかったので、大丈夫でしょう。ご心配なく。
- そういえばおたふく風邪はわたしはすでに子供のころに経験済みです。まだ子孫を残していませんが一応そちらの心配はありません。不意のアクシデント(?)ちょうど良い骨休めにしてくださいな。
金曜日に完全な「お多福の出来上がり」喉仏のあたりまで腫れている。だが幸いなことに痛みは殆ど感じないが土・日と安静にすごす。
1月26日(月)
夜明けからゾクゾクッ寒気がする。後頭部が痛いっ!こりゃいよいよ本番か?昨夜の眠る前の読書が災いしたのか、最悪のゲームを延々と15時間以上も夢状態で見続けることになった。何十枚かの約10センチ四方の紙に書かれた文章を正確な順番に戻して行かなければならない。その度に「ディスオーダー(順序が違うの意)」disorderと言って目が覚めて体の向きを変えて又、吸い込まれるように眠る。そして同じ夢とも現実とも言えない状態が延々と続いたから本当に困り果てた。絶対に出来っこない悪夢にうなされ続けたのだった。
1月27日(火)
嘘のように頭痛と悪寒がとれた。安静にと一日中、寝て過ごす。
1月28日(水)
腫れが殆ど消える。食事2食。
1月29日(木)
昨日で自宅療養が解けた2日先輩の息子を幼稚園へ送り出す。私は午後から出社。6時帰宅。久しぶりにパソコンのキーをたたく。元の健康を取り戻した喜びは大きい。悪夢のdisorderを辞書で調べると「(かるい)病気」の意味があったのを見つけて驚いた。私の「お多福」の場合は比較的軽く済んだのが「福」だったと言える。プライベートな恥ずかしい「福」の話だが世の中には未体験のご同輩の少しでも参考と笑いのタネにでもなれば幸いである。メールを下さった皆さんありがとう!
現在、茨城全般で集団風邪が猛威を振るっており、市内中学ではクラス閉鎖も先週あったばかりだからオタフクと重なって発病したら気の毒だがなす術がない。受験を控えた学生の健闘と幸運を祈る!君自身の人生だベストを尽くせ!
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