日本の南海上を北北西へ進んできた台風第26号は、中国大陸から東進してきた上層の気圧の谷に引き込まれる形で15日の昼には北東へ向きを変えました。その後、しだいに速度を上げて16日の明け方には八丈島の北を通過し、鹿島灘を北上して昼には三陸沖へ進みました。台風と中国大陸から張り出す高気圧との間で気圧傾度が大きくなったため、関東地方では南部を中心に15日の夜から16日の昼過ぎにかけて平均風速で20m/sを超える北東から北西の強い風が吹きました。関東地方における日最大風速は、千葉県銚子市で33.5m/s、成田市で23.5m/s、東京都羽田空港で22.9m/sでした。日最大瞬間風速は、千葉県銚子市で46.1m/s、館山市で38.5m/s、神奈川県三浦市で37.0m/sなど広い範囲で風速が30m/sを超えました。
日立市役所における風速の推移をみると、15日18時頃から北東の風が強くなり始め、16日0時過ぎには平均風速が10m/sを超えるようになりました。その後も風は徐々に強くなり、06時09分に最大平均風速16.0m/sの北東の風を記録しました。8時になると風向が北西に変わり、風は少し弱まりました。しかし、9時を過ぎると吹き返しの北西の風が強まり、一時的に平均風速が15m/sを超えました。日最大瞬間風速27.7m/sの北西の風は、この吹き返しの時間帯の09時34分に記録しました。上層の気圧の谷が近づいてきた影響で昼前には風向が東寄りに変わるとともに、風は急速に弱まりました。
●10月16日の風と気圧の記録
| 地点 | 最大風速(m/s) | 最大瞬間風速(m/s) | 海面気圧(hPa) | |||||
| 風速 | 同風向 | 同時刻 | 風速 | 同風向 | 同時刻 | 最低気圧 | 同時刻 | |
| 日立市役所 | 16.0 | 北北東 | 06:09 | 27.7 | 北西 | 09:34 | 972.5 | 09:12 |
| 南部支所 | 14.7 | 北東 | 06:30 | 33.0 | 北北西 | 09:05 | - | - |
| 水戸(金町) | 17.4 | 北北東 | 05:28 | 26.7 | 北北東 | 05:24 | 974.0 | 07:57 |
●日立市役所における最大風速(m/s)の記録
|
|
※最大平均風速は1979年2月1日以降の統計。
また、今回の台風は北側の進行方向に雨雲が広がっていたため、関東地方では台風が日本のはるか南に離れていた15日の朝から弱い雨が降り出しました。そして、台風が北緯30度線を越えた夕方からは、雨は徐々に強く降るようになりました。特に、16日の未明から朝にかけては茨城県南部から千葉県、伊豆大島にかけて局地的な前線が形成され(下のアメダスによる風の分布図参照)、この地域で雨量が多くなりました。茨城県南部では、総降水量が400mm近くになりました(行方市北浦庁舎で総降水量389mm、鹿嶋で総降水量362.5mm)。日立市は前線の北側に入ったため、強い雨の降ることはありませんでした。15日の夜から16日の朝にかけて1時間に10〜20mmの雨が降り続き、市内の総降水量は101.5〜148.0mmでした。
今回の台風は、北上に合わせるように上層の気圧の谷が西から進んできたため、偏西風の影響を受けて北東へ転向後は急速に加速していきました。茨城県の東を北上した16日09時には進行速度が70k.m/hに達しました。また、気圧の谷の西側から高気圧が張り出してきたことから台風との間で気圧傾度が大きくなり、直接の影響を受けた関東地方だけでなく北海道から九州地方にかけての広い範囲で強い風が吹きました。16日の最大風速の記録の第1位は宮城県女川町江の島の33.6m/s、第3位は北海道根室市納沙布の25.1m/sでした。
|
|
総降水量 |
|
|
|
|
日時 | ||
| 日立市役所 | 101.5 | 12.0 | 16日04時23分 |
| 北部消防署 | 138.5 | 17.0 | 16日06時00分 |
| 本山 | 140.0 | 19.0 | 16日06時00分 |
| 西部出張所 | 106.5 | 16.0 | 16日07時00分 |
| 諏訪広場 | 137.0 | 18.0 | 16日06時00分 |
| 南部支所 | 110.0 | 12.0 | 15日22時00分 |
| 十王交流センター | 148.0 | 19.0 | 16日07時00分 |
| 日立会瀬 | 139.0 | 19.0 | 16日06時36分 |
| 水戸(金町) | 140.0 | 18.0 | 16日04時08分 |
※総降水量は、15日15時〜16日10時までの合計。
●10月15日〜16日の風速と風向の推移(日立市役所)
|
|
●10月15日〜16日の海面気圧の推移(日立市役所)と1時間降水量の推移(十王交流センター)
|
|
●参考:10月16日05時のアメダスによる降水量の分布と04時30分の降水レーダー図
|
|
●参考:10月16日05時と09時のアメダスによる風の分布
05時のアメダスでは房総半島に東風と北風の収束域が見られ、この領域に沿って雨量が多くなっています。
|
|
●参考:台風第26号の経路図と10月15日15時00分の気象衛星可視画像
|
|
●参考:10月16日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
|
|
Amagai Daizo