◇周期的に寒気が入り気温の変動が大きくなる

 月の初めは、南岸に停滞した気圧の谷と前線の影響で曇りや雨の日が続きました。6日に台風第18号が関東地方を通過した後は、大陸から移動してくる高気圧におおわれるようになり、晴れる日が多くなりました。このため、月の日照時間は172.1時間(平年比114%)と平年より多くなりまいた。一方、台風第18号に続いて14日には台風第19号が関東地方を通過したため、月の降水量は225.0mm(平年比130%)と平年より多くなりました。また、偏西風が日本の東で南へ蛇行して日本付近へ周期的に寒気が入り、気温の低くなる時がありました。しかし、台風や低気圧の通過に伴って南から暖かい空気が流れ込み気温が上がることもあったため、月平均気温は17.1℃とほぼ平年並みになりました。

10月の気象観測値
観測要素 観測値 平年値
月平均気温(℃) 17.1 16.8
月降水量(mm) 225.0 173.3
月日照時間(時間) 172.1 151.2
旬平均気温(℃)
観測値 平年値
上旬 19.1 18.4
中旬 16.4 17.0
下旬 15.9 15.0
旬日照時間(時間)
観測値 平年値
上旬 42.6 43.0
中旬 66.7 49.1
下旬 62.8 59.1

 ●10月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移

2014年10月の日立市役所における日平均気温の推移 2014年10月のつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移

 ●10月の日立市役所における日最高気温と日照時間の推移

2014年10月の日立市役所における日最高気温の推移

 上層の天気図を見ると、月の初めは関東地方の南東で太平洋高気圧の勢力が強く、偏西風も北日本を流れていました。このため、台風第18号は太平洋高気圧の西側を北上し、東海地方へ上陸しました。台風が通過した後、上層の大気の流れが変わり偏西風が南へ蛇行するようになりました。蛇行に伴って日本の東で気圧の谷が深まることが多く、この西側を回る形で周期的に日本付近へ寒気が入りました。特に、27日は強い寒気が入ってきたため、日立市では雷雨となり金沢町からみかの原町にかけては直径8mmのひょうが降りました。

 ●参考:10月4日09時と28日21時の500hPa面高層天気図

2014年10月4日09時の500hPa面高層天気図 2014年10月28日21時の500hPa面高層天気図

◇2週続けて、台風が関東地方を通過

 今月は、6日に台風第18号、14日には台風第19号と、2週続けて台風が関東地方を通過しました。例年であれば、10月には太平洋高気圧の勢力が南へ後退していて、台風は高気圧の北縁に沿って日本の南海上を北東へ進むことが多くなります。しかし、今年の場合は太平洋高気圧の後退が遅れたことと偏西風に伴う気圧の尾根の影響で二つの台風とも北東への転向が遅れ、北緯30度線まで北上してきました。その後、本州上を流れる偏西風に取り込まれる形で台風は向きを北東へ変え、台風第18号は東海地方へ上陸して関東地方へ、台風第19号は九州地方へ上陸して四国から近畿、東海、関東地方を通過して、ともに三陸沖へ進みました。

 二つの台風とも陸上を進んできたことから、関東地方へ近づいてきたときは勢力が衰えていたため、日立市では大きな被害はありませんでした。ただ、台風第18号の場合は、台風の東側を北上する湿った空気が関東地方へ流れ込み、台風の接近する前から雨が降り出して1日近く降り続いたため、関東地方南部から東海地方の沿岸部にかけては、総降水量が200mmを超える大雨となりました。日立市内でも雨が5日の朝から6日の昼過ぎまで降り続き、降水量は130〜200mmになりました。

 日立市役所における台風通過時の気圧の変化を比較すると、陸地を通過した距離の短かった台風第18号の方が勢力の衰えが小さく、最低気圧は低くなりました。また、気象衛星水蒸気画像を比較すると、二つの台風とも関東地方通過時には中心付近に発達した雲がなくなっており、勢力が衰えていることを示しています。特に、台風第19号では西側から南側へ乾燥した空気(画像の暗黒域)が入り込み、台風の円形構造が完全に崩れています。

 なお、関東地方を10月に台風が2個通過したのは、気象庁が1951年に統計を開始してから2004年10月9日の台風第22号と10月20日の台風第23号のとき以来2回目のことです。この時も、台風が関東地方に近づいてきたときには勢力は衰えていました。このため、台風本体による雨は、それほど多く降りませんでした。しかし、太平洋高気圧の勢力が強く、南からの暖湿気流や前線の影響で台風の接近前からまとまった雨が降ったことから総降水量が多くなりました。この結果、2004年10月の降水量は478.0mmと、10月の降水量としては観測開始以来第1位の多い降水量となっています。

 ●台風第18号と台風第19号通過時の気圧変化と気象衛星水蒸気画像の比較

台風第18号と台風第19号通過時の気圧変化の比較 台風第台風第18号と台風第19号通過時の気象衛星水蒸気画像の比較

◇台風第18号(10月6日)

 沖縄の東をゆっくりと北上してきた台風第18号は、5日昼前には九州の南まで北上してきました。その後、向きを北東へ変え、しだいに速度を上げて四国の南から紀伊半島の南を通り、6日8時過ぎには静岡県浜松市付近に上陸しました。この後、関東地方南部を通過し、12時前には茨城県の東海上へ抜け、夜には三陸沖へ進んで温帯低気圧に変わりました。

 台風の東側を北上する湿った空気の影響で、関東地から東海地方では台風が接近する前の5日午前中から雨が降り始め、台風が通過した6日昼まで降り続きました。このため、関東地方南部から東海地方の沿岸部にかけては、総降水量が200mmを超える大雨となりました。関東地方における5日0時から6日12時までの総降水量は、神奈川県箱根で360.5mm、茨城県石岡市柿岡で278.5mm、東京都府中市幸町で267.5mmなどでした。また、台風の南側に入った関東地方南部では、台風の通過に伴って南寄りの風が強まりました。関東地方の最大瞬間風速は、千葉県銚子で44.3m/s、勝浦で42.8m/sなどでした。

 日立市でも、台風が奄美大島の東にあった5日8時頃から雨が降り始め、夕方から6日の未明にかけて1時間に5〜15mmの雨が降り続きました。雨雲が東北地方へ移動した6日の朝には、雨の降り方が弱まりました。しかし、台風が近づいてきた7時頃から再び雨が強まり、台風の北側に広がる発達した雨雲がかかった10時前後には、1時間に30mmの激しい雨が降りました。台風が茨城県の東へ抜けた12時30分には雨が止み、晴れ間が広がってきました。5日から6日にかけての市内の降水量は下表のとおりです。5日の降水量は湿った空気によるもので、台風による降水量は6日の分になります。

 一方、東海地方へ上陸した後、台風の勢力が急速に弱まったことと、北から寒気が南下してきて南からの暖かい風が関東地方北部まで入らなかったことから、日立市では予想ほど強い風は吹きませんでした。日立市役所における最大瞬間風速は、13時44分の北西の風19.9m/sでした。これは、台風が通過した後の吹き返しに伴う一時的な強風でした。なお、水戸では吹き返しの風はあまり強まらず、最大瞬間風速は台風の接近前の08時10分に記録した東北東の風21.4m/sでした。

 ●10月5日から6日の降水量(mm)

観測地点

日降水量

総降水量

最大1時間降水量

最大10分間降水量
5日 6日

降水量
日時

降水量
日時
日立市役所 59.5 110.5 170.0 30.0 6日10時46分 7.0 6日10時23分
北部消防署 65.5 135.0 200.5 32.0 6日10時46分 7.0 6日10時22分
本山 63.0 120.5 183.5 25.0 6日11時02分 5.5 6日10時21分
西部支所 57.5 75.0 132.5 17.0 6日01時44分 4.5 6日01時20分
諏訪広場 66.0 107.5 173.5 28.0 6日10時42分 6.5 6日10時21分
南部支所 71.0 94.5 165.5 29.0 6日10時38分 8.0 6日10時13分
十王交流センター 69.5 147.5 217.0 31.5 6日10時50分 6.5 6日10時22分
日立会瀬 67.5 108.5 176.0 30.5 6日10時42分 7.5 6日10時18分
水戸(金町) 88.0 103.5 191.5 30.0 6日10時04分 7.0 6日09時56分

 ※総降水量は、5日08時〜6日13時までの合計。

 日立市内の最大風速の記録を見ると、

  ●10月6日の風と気圧の記録
地点 最大風速(m/s) 最大瞬間風速(m/s) 海面気圧(hPa)
風速 同風向 同時刻 風速 同風向 同時刻 最低気圧 同時刻
日立市役所 11.8 北西 13:51 19.9 北西 13:44 981.9 12:25
北部消防署 5.6 北北西 14:27 15.0 北北西 13::31 - -
南部支所 10.6 北東 09:23 21.7 北東 09:51 - -
十王交流センター 8.3 北西 13:39 20.4 北西 13:35 - -
日立会瀬 9.8 北西 13:43 21.1 北西 13:34 - -
水戸(金町) 12.4 北東 08:15 21.4 東北東 08:10 980.3 12:05

 ●10月5日〜6日の風速と風向の推移(日立市役所)

2014年10月5日〜6日の風速の推移(日立市役所) 2014年10月5日〜6日の風向の推移(日立市役所)

 ※上のグラフの元データ:141006da.xls(エクセル2000ファイル、289KB)

 ●10月5日〜6日の1時間降水量の推移(日立市役所)と10月06日10時00分の降水レーダー図

2014年10月5日〜6日の降水量の推移(日立市役所) 2014年10月06日10時00分の降水レーダー図

 ●参考:10月05日15時00分の気象衛星可視画像と降水レーダー図

2014年10月5日15時00分の気象衛星可視画像 2014年10月05日15時00分の降水レーダー図

 ●参考:10月06日11時のアメダスによ降水量と風の分布

 台風の中心が千葉県北西部にあり、この周辺で風が反時計回りに回転している。

 ●参考:10月5日09時の地上天気図と台風第18号の経路図

2014年10月5日09時の地上天気図 2014年台風第18号の経路図

 ●参考:10月06日12時の地上天気図と09時の500hPa面高層天気図

2014年10月6日12時の地上天気図 2014年10月6日09時の500hPa面高層天気図

◇台風第19号(10月14日)

 沖縄の西をゆっくりと北上してきた台風第19号は、北緯30度線に近づいた12日夜遅くには向きを北東へ変え、13日08時30分頃に鹿児島県枕崎市付近に上陸しました。その後、しだいに速度を上げて四国から近畿地方を通り、14日00時には岐阜県郡上市付近、14日03時には栃木県宇都宮市付近に進み、14日06時には三陸沖に進んだ後、14日09時には温帯低気圧に変わりました。

 台風は日本の南で大型で猛烈な勢力に発達し、8日から9日には中心気圧が900hPaまで低下しました。しかし、東シナ海をゆっくりと北上する間に徐々に勢力を弱め、九州へ上陸する前には中心気圧が970hPaまで上昇しました。九州へ上陸した後も、四国から本州の陸地を東北東へ進んだため徐々に衰え、茨城県に最も近付いた14日03時には中心気圧は985hPaまで上がりました。

 このため、日立市では予想ほど雨や風は強まりませんでした。13日12時から14日08時までの市内の総降水量は、山間部の本山を除いて20.5mmから52.5mmと多くはなく、先週の台風第18号による降水量の1/3から1/8でした。また、台風が四国地方を通過した13日17時から風向が南東に変わり、風がやや強く吹き始めました。しかし、日立市では関東地方南部ほど風は強まらず、日立市役所における最大瞬間風速は台風が通過した後の04時10分に記録した南西の風15.0m/sでした。なお、台風が三陸沖へ進んだ後、日本付近は一時的に冬型の気圧配置となりました。上層の気圧の谷が日本海に残っていたため、すぐには風が強まりませんでしたが、気圧の谷が通過した昼過ぎから夕方にかけて一時的に北西の風が強まり、14時26分に最大瞬間風速16.2m/sを記録しました。台風に伴う風よりも強かったため、これがこの日の最大瞬間風速になりました。なお、どちらも台風第18号に伴う最大瞬間風速19.9m/sよりは弱いものでした。

 先週、台風第18号が通過した後から関東地方には強い寒気が南下してきました。このため、13日も内陸部を中心に寒気が滞留し、気温の低い状態が続いていました。台風が近づいてくるにつれて南部から南東の風が強まってきましたが、内陸部では暖かい南東の風が滞留する寒気の上を滑っていく形となり、帯状に雨雲が発達しました。このため、神奈川県西部から栃木県にかけて、降水量が多くなりました。発達した雨雲は台風の進行に伴って北東へ移動していったため、14日の未明には茨城県北部でも強い雨が降りました。各地の13日から14日にかけての総降水量は、神奈川県相模原中央で104.5mm、東京都府中で115.0mm、栃木県今市で173.0mm、茨城県花園で187.0mmなどでした。また、南東の風が入った関東地方南部では、13日夜から14日の明け方にかけて南寄りの風が強まりました。各地の最大瞬間風速は、、東京 都八王子市元本郷町で30.2m/s、江戸川臨界27.7m/sなどでした。

 ●10月13日から14日の降水量(mm)

観測地点

日降水量

総降水量

最大1時間降水量

最大10分間降水量
13日 14日

降水量
日時

降水量
日時
日立市役所 18.5 13.0 31.5 9.5 14日02時46分 4.0 14日02時26分
北部消防署 15.5 8.0 23.5 5.0 14日00時05分 2.5 13日23時15分
本山 61.0 41.0 102.0 21.5 14日02時27分 8.5 14日02時11分
西部支所 31.0 21.5 52.5 9.5 13日21時44分 3.5 14日05時53分
諏訪広場 18.5 10.5 29.0 7.5 14日02時47分 4.0 14日02時10分
南部支所 13.0 7.5 20.5 7.0 14日02時33分 3.0 14日02時12分
十王交流センター 20.0 15.5 35.5 10.5 14日02時44分 5.0 14日02時25分
日立会瀬 15.0 11.0 26.0 8.0 14日02時32分 3.0 14日02時21分
水戸(金町) 19.5 3.5 23.0 5.0 13日18時47分 3.0 13日18時00分

 ※総降水量は、13日12時〜14日08時までの合計。

  ●10月14日の風と気圧の記録
地点 最大風速(m/s) 最大瞬間風速(m/s) 海面気圧(hPa)
風速 同風向 同時刻 風速 同風向 同時刻 最低気圧 同時刻
日立市役所 7.8 13:59 16.2 北北西 14:26 986.2 04:16
北部消防署 7.7 02:06 16.6 南南東 02:03 - -
南部支所 8.9 南南東 01:07 16.9 01:35 - -
十王交流センター 8.0 南南東 01:49 16.1 南東 02:18 - -
日立会瀬 8.1 01:49 15.4 14:10 - -
水戸(金町) 7.3 南南西 05:29 16.1 南南西 02:09 985.2 05:14

 ●10月13日〜14日の風速と風向の推移(日立市役所)

2014年10月13日〜14日の風速の推移(日立市役所) 2014年10月13日〜14日の風向の推移(日立市役所)

 ※上のグラフの元データ:141014da.xls(エクセル2000ファイル、315KB)

 ●10月13日〜14日の1時間降水量の推移(日立市役所)と10月14日02時00分の降水レーダー図

2014年10月13日〜14日の降水量の推移(日立市役所) 2014年10月14日02時00分の降水レーダー図

 ●参考:10月13日10時00分の気象衛星可視画像と09時00分の降水レーダー図

2014年10月13日10時00分の気象衛星可視画像 2014年10月13日09時00分の降水レーダー図

 ●参考:10月14日02時のアメダスによ降水量と風の分布

 台風の中心は、宇都宮市の東にある。関東地方では全体に南寄りの風が強く吹いており、台風第18号のような風が回転する様子は見られない。

2014年10月14日02時のアメダスによる降水量の分布 2014年10月14日02時のアメダスによる風の分布

 ●参考:10月13日09時の地上天気図と台風第19号の経路図

2014年10月13日09時の地上天気図 2014年台風第19号の経路図

 ●参考:10月14日03時の地上天気図と09時の500hPa面高層天気図

2014年10月14日03時の地上天気図 2014年10月14日09時の500hPa面高層天気図

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作成日 2014/11/11
名前 日立市天気相談所