◇寒冷渦が頻繁に通過し、不安定な天気となる

 梅雨前線は日本の南に離れて停滞し、本州付近は高気圧におおわれて平年よりも晴れる日が多くなりました。このため、月の日照時間は157.4時間(平年比139%)と平年より多くなりました。しかし、5月の終わりから日本付近で偏西風が南北に大きく蛇行するようになり、上層へ周期的に寒気が入りました(下のつくばにおける500hPa気温の推移図を参照)。この寒気の影響で大気の状態が不安定となり、にわか雨の降る日や雷雨となる日が多くありました。この結果、月の降水量は254.0mm(平年比154%)と平年をより多くなりました。一方、例年のようにオホーツク海高気圧が出現することがなく、冷たい北東の風のが入って気温の低くなる日がなかったことから、月平均気温は20.5℃と平年より1.3℃高くなりました。

6月の気象観測値
観測要素 観測値 平年値
月平均気温(℃) 20.5 19.2
月降水量(mm) 254.0 165.1
月日照時間(時間) 157.4 113.3
旬平均気温(℃)
順位 観測値 平年値
上旬 19.9 18.3
中旬 21.1 19.3
下旬 20.6 20.1
旬日照時間(時間)
順位 観測値 平年値
上旬 43.2 48.5
中旬 67.5 36.3
下旬 46.7 28.5

 ●6月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移

2014年6月の日立市役所における日平均気温の推移 2014年6月のつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移

 ●6月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移

2014年6月の日立市役所における日照時間の推移 2014年6月の日立市役所における風向頻度分布

 初めに述べたように今年の6月は偏西風の南北蛇行が大きく、南へ蛇行した部分が偏西風から分離して寒冷渦となり、日本付近へ進んでくることが多くありました。特に、5日から9日にかけては寒冷渦が本州上をゆっくりと東へ進んだため、日立市では5日連続して雨降りの天気となりました。また、寒冷渦の影響で梅雨前線が本州上に北上してくることがなかったことから下層へ南から暖かい空気が入ることがなく、さらに前線に向かって北東の風が吹くことも多かったことから、月平均気温が高かった割には気温が極端に上がることはありませんでした。6月の最高気温は13日に記録した28.5℃で、最高気温が30℃超えた日はありませんでした。一方で、オホーツク海高気圧の影響がなかったことから、気温はあまり下がりませんでした。6月の最低気温は15日の16.4℃までしか下がらず、6月としては観測開始以来最も高い最低気温でした。また、日最低気温の月平均も18.1℃と、6月としては観測開始以来4番目に高い気温でした。

 ●6月の気温(℃)の記録

月平均気温
順位 気温
1 1979 21.8
2 1991 21.4
3 1980 21.2
4 1978 20.9
10 2014 20.5
月最高気温
順位 月日 気温
1 2011 06/24 33.5
1 1991 06/13 33.5
3 1998 06/27 32.7
4 1998 06/26 32.6
33 2014 06/13 28.5
月最低気温
順位 月日 気温
1 2014 06/15 16.4
2 1980 06/05 14.9
3 1975 06/01 14.4
4 1990 06/07 14.0
5 2001 06/02 13.9
最低気温の月平均
順位 気温
1 1979 18.8
2 1991 18.3
3 1980 18.1
4 2014 18.1
5 1967 17.6

 ※順位は数値の高い方からで、1953年から2014年の統計。


◇2012年6月との比較

 2012年6月も偏西風の蛇行が大きくなりました。しかし、南への蛇行部分が中国大陸に位置し、シベリアから日本の東にかけては気圧の尾根となりました。このため、オホーツク海高気圧が周期的に現れ、関東地方には北東の風ととともに冷たい空気が流れ込みました。この結果、月平均気温は18.2℃と今年に比べて2.3℃低くなっています。一方、オホーツク海高気圧におおわれることが多かったことから、降水量は少なくなりました。ただ、19日に台風第4号が紀伊半島に上陸した後、東海、関東地方を進んだため、19日から20日にかけて86.0mmの降水量があったことから、月降水量は164.0mmと平年並みになりました。

 それに対して、今年の6月は偏西風の蛇行の位置が日本付近にあることが多かったため上層に寒気が入りやすくなり、にわか雨の降る日が多く、降水量も平年を上回りました。降水量1mm以上の日数を比べると、2012年の8日に対して今年は17日と倍近い日数になっています。また、オホーツク海高気圧の影響を受けなかったことから、月平均気温も2012年の18.2℃に対して今年は20.5℃と2.3℃も高くなりました。なお、2012年6月の平均気温18.2℃は、近年では1995年6月の17.8℃以来の低い気温です。

 ●2012年と2014年6月の気象観測値の比較

観測要素 2012年 2014年 平年値
月平均気温(℃) 18.2 20.5 19.2
最高気温の月平均(℃) 21.6 23.4 22.7
最低気温の月平均(℃) 15.6 18.1 16.2
降水量(mm) 164.0 254.0 165.1
降水量1mm以上の日数 8 17 12.3
日照時間(時間) 166.9 157.4 113.3

 ●2014年と2012年の6月気温の推移

2014年6月の気温の推移(日立市役所) 2012年6月の気温の推移(日立市役所)

 ●参考:2014年と2012年の6月15日09時の地上天気図

2014年6月15日09時の地上天気図 2012年6月15日09時の地上天気図

 ●参考:2014年と2012年の6月15日09時の500hPa面高層天気図

2014年6月15日09時の500hPa面高層天気図 2012年6月15日09時の500hPa面高層天気図

 2014年と2012年の6月15日の気象衛星可視画像を比べてみると、梅雨前線に伴う雲の位置に違いがあることが分かります。今年の6月の場合、前線の雲は北緯30度線より南に位置し、その北側の関東地方の東海上から本州中部、日本海にかけては晴れの領域に入っています。一方、2012年6月の場合は、前線は北緯30度線より北に位置しています。ただ、オホーツク海高気圧の勢力が強く、前線の東側では活動が弱く、北海道から東海、北陸地方にかけては晴れています。また、北東の冷たい風が入り、東北地方から茨城県の太平洋岸にかけて下層雲が広がっています。

 ●参考:2014年6月15日11時の気象衛星可視画像

2014年6月15日11時の気象衛星可視画像

 ●参考:2012年6月15日11時の気象衛星可視画像


y4.gif (1703 バイト)【観測日誌2014年へ】 home_h2.gif (1545 バイト)【ホームページへ】

作成日 2014/07/09
名前 日立市天気相談所