◇遅い春

 天気は周期的に変わりました。上旬は日本付近を低気圧が発達しながら通過することが多く、雨量が多くなりました。上旬の後半から中旬にかけては、低気圧の通過後に強い冬型の気圧配置になる日が多くなりました。上層の大気の流れをみると、日本の東が低圧部になり寒気は北日本から東日本を中心に南下する形となったため、上旬から中旬にかけて気温が低くなりました。下旬に入ると、南から移動性高気圧におおわれることが多くなり、気温は平年より高くなりました。この結果、3月の月平均気温は6.4℃と久しぶりに平年の値(6.8℃)を下回りました。月平均気温が平年の値を下回ったのは、1994年の6.1℃以来9年ぶりのことです。一方、降水量は中旬から下旬にかけては平年の降水量の1/2から1/4程度しかなかったものの、上旬に平年の6倍近い降水量があったため、月降水量は166.5mm(平年比161%)とかなり多くなりました。また、月の日照時間も205.8時間(平年比114%)と平年より多くなりました。

3月の気象観測値
観測要素 観測値 平年値
月平均気温(℃) 6.4 6.8
月降水量(mm) 166.5 103.6
月日照時間(時間) 205.8 181.3
旬平均気温(℃)
観測値 平年値
上旬 5.7 5.7
中旬 4.3 6.7
下旬 9.0 8.0
旬降水量(mm)
観測値 平年値
上旬 137.0 22.6
中旬 16.0 28.2
下旬 13.5 52.8

 先に述べたように、上旬の後半から中旬にかけては寒気が入りやすく、気温が低くなりました。特に、11日と19日前後は上層に強い寒気が入り、気温が下がりました。このため、中旬の平均気温は4.3℃と平年の値(6.7℃)より2.4℃低くなりました。また、中旬をを中心に最低気温が0℃未満(冬日)となり、月の冬日の日数は11日となりました。これは平年の2倍近い日数で、2000年の10日と並んで春の訪れは遅くなりました。

 24日になると上層の大気の流れが変わり、暖かい空気におおわれるようになりました。また、移動性高気圧が日本の南海上を進むようになり、ようやく晴れて気温の上がる日が続くようになりました。

●過去5年間の3月の気温の記録

月平均気温(℃)
平均気温
2003 6.4
2002 9.9
2001 7.3
2000 7.5
1999 8.4

平年

6.8

日最低平均気温(℃)
最低平均
2003 1.6
2002 4.9
2001 2.5
2000 2.2
1999 3.8

平年

2.6

冬日の日数
日数
2003 11
2002 1
2001 7
2000 10
1999 4

平年

5.9

 ●3月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPa気温の推移

3月の日立市役所における日平均気温の推移

3月のつくばにおける500hPa気温の推移(09時)

◇上層の大気の流れの変化

 21日に、北日本から東日本をおおっていた上層の寒気が東へ抜けた後、大気の流れが変わりました。それまでは、日本の東の上層は低圧部となっていました。このため、500hPa高層天気図で見るとおり、北日本から東日本の上層では北西の風が吹いていて、北からの寒気が流れ込みやすい気圧配置になっていました。

 その後、上層の低圧部はゆっくりと東へ進み、24日の500hPa高層天気図では日本付近の上層は西南西から西寄りの流れとなりました。このため、北からの寒気に替わって南からの暖かい空気が入りやすい気圧配置に変わり、地表付近の気温も平年の値を上回るようになりました。

  ●参考:21日と24日の気圧系の違い

2003年03月21日09時の天気図

2003年03月24日09時の天気図
2003年03月21日09時の地上天気図 2003年03月24日09時の地上天気図

2003年03月21日09時の500hPa高層天気図

2003年03月24日09時の500hPa高層天気図
2003年03月21日09時の500hPa高層天気図 2003年03月24日09時の500hPa高層天気図

◇低気圧の発達(3月1日〜2日)

 上旬の1日、3日、7日と、低気圧が発達しながら日本付近を通過しました。この内、3日は低気圧が日本海から三陸沖へ進んで発達したため、日立市への影響はありませんでした。一方、1日と7日の場合は本州南岸を東北東へ進んだため、日立市でも一時的に強い風が吹き、まとまった雨が降りました。ただ、低気圧の速度が速かったため、市内の降水量は両日とも50〜90mmと多い所はありませんでした。風は低気圧の通過後または通過時に一時的に強く吹きました。2日の最大瞬間風速は低気圧が東海上へ抜けた04時41分に西北西の風29.9m/sを記録しました。7日は低気圧の中心が通過した21時47分に北西の風23.9m/sを記録しました。

 特に、1日の低気圧は発達が著しく、中心気圧が急激に深まりました。低気圧は、09時には九州の西にあって中心気圧は1004hPaでした。その後、夜には関東地方を通過して2日09時には三陸沖へ進み、中心気圧は976hPaと24時間で28hPa下がりました。例気圧の通過時における日立市役所の観測結果を見ると、下のグラフのようになっています。低気圧が日立市の北側を通過」したことから、1日19時から2日1時にかけて気温が上がっていきました。それと同時に、気圧も急速に低下していきました。ただし、風の方は低気圧が近づいてもあまり強まりませんでした。

 低気圧の中心が東へ抜け、1時頃に寒冷前線が通過すると気温は3℃近く下がりました。そして、低気圧が東海上へ離れた2時頃から北西の風が強く吹き始め、4時30分過ぎに最大風速14.6m/sを記録しました。強い風は、5時には平均風速で5m/s前後まで弱まりましたが、夕方までやや強い風が続きました。

 ●3月1日〜2日と6日〜7日の市内の降水量

3月1日〜2日の降水量(mm)
観測地点 総降水量 最大1時間降水量
降水量 日時
日立市役所 65.5 15.5 2日00時52分
北部消防署 66.0 15.5 2日01時00分
本山 90.0 15.0 1日24時00分
西部支所 65.0 15.0 1日24時00分
諏訪広場 61.5 11.5 2日01時00分
南部支所 48.0 12.5

2日01時00分

3月6日〜7日の降水量(mm)
観測地点 総降水量 最大1時間降水量
降水量 日時
日立市役所 67.0 10.5 7日16時30分
北部消防署 73.0 11.0 7日18時00分
本山 85.5 12.0 7日16時00分
西部支所 60.0 7.0 7日17時00分
諏訪広場 62.0 10.0 7日17時00分
南部支所 57.5 11.0

7日17時00分

 ●日立市役所における風速と気圧の観測記録(3月2日と7日)

最大風速(m/s) 最大瞬間風速(m/s) 海面気圧(hPa)
風速 同風向 同時刻 風速 同風向 同時刻 最低気圧 同時刻
03月02日 14.6 西北西 04:32 29.9 西北西 04:41 981.6 03:28
03月07日 11.9 北西 21:36 23.9 北西 21:47 987.5 21:11

 ●3月1日から2日の気温と海面気圧及び風速の推移(日立市役所:10分値)

3月1日から2日の気温と海面気圧の推移(日立市役所:10分値)

3月1日から2日の風速の推移(日立市役所:10分値)

 ※上のグラフの元データ:030302da.xls(エクセル2000ファイル、330KB)

 ●3月1日21時と2日09時の地上天気図

2003年3月1日21時の地上天気図

2003年3月2日09時の地上天気図

 ●3月1日21時と2日09時の気象衛星赤外画像

2003年3月1日21時の気象衛星赤外画像

2003年3月2日09時の気象衛星赤外画像


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作成日:2003/03/26
訂補日:2013/01/16
訂補日:2014/11/25
名前 日立市天気相談所