◇上旬の大雨の後、秋晴れの日が多くなる 

 上旬は短い周期で低気圧が通過し、天気の崩れる日が多くなりました。10日から11日にかけては動きの遅い寒冷渦の影響で大雨となりました。その後、中旬から下旬にかけては高気圧におおわれて晴れる日が多くなりました。18日に台風第18号が関東地方の南を東へ進んだ後、一時的に寒気が入り気温が低くなりました。しかし、それを除くと南から周期的に下層へ暖気が入り、気温は平年を上回りました。このため、月平均気温は17.0℃と平年より0.4℃高くなりました。また、月の日照時間も185.2時間(平年比121%)と平年より多くなりました。一方、10日から11日にかけて200mmの雨が降った影響で、月降水量は356.0mm(平年比224%)と平年よりかなり多くなりました。

10月の気象観測値
観測要素 観測値 平年値
月平均気温(℃) 17.0 16.6
月降水量(mm) 356.0 159.2
月日照時間(時間) 185.2 152.5
旬平均気温(℃)
観測値 平年値
上旬 18.2 18.3
中旬 16.6 16.8
下旬 16.4 15.0
旬降水量(mm)
観測値 平年値
上旬 233.0 53.7
中旬 77.0 59.7
下旬 46.0 45.8

 ●10月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPa気温の推移

2001年10月の日立市役所における日平均気温の推移 2001年10月のつくばにおける500hPa気温の推移

◇動きの遅い寒冷渦による大雨(10月10日〜11日)

 10日から12日にかけて朝鮮半島から日本海を、上層の寒冷渦が東北東へ進みました。一方、オホーツク海には勢力の強い高気圧があって南東へ進んでいたため、東日本では気圧の傾きが大きくなりました。このため、関東地方では、8日から11日の朝にかけて、北東の風が強く吹きました。

 寒冷渦の進行前面にあたる東側では、雨雲が発達することが知られています。今回の場合、特に関東地方においては、上層の南西の風に対して地上付近では北東の風が強く吹いてい冷たい空気が入り込んだため、雨雲が発達しやすい状況になりました。また、寒冷渦の進行前面で高気圧が強まったため、進行速度が遅く雨が長時間降り続いて総降水量が多くなりました。

 日立市役所では、10日の降り始めから11日明け方までの総降水量が200.0mmになりました。また、10日の日降水量は155.5mmで、10月の日降水量としては観測開始以来3番目に多い記録となりました。この結果、10月の降水量は356.0mmとなり、10月の降水量としては1953年の観測開始以来2番目に多い記録になりました。

  ●10月の降水量の記録(日立市役所)と10日から11日の市内の降水量
月降水量(mm)
順位 降水量
1 1991 475.0
2 2001 356.0
3 1979 339.0
4 1961 306.1
5 1981 292.0
日降水量(mm)
順位 月日 降水量
1 1999 10/27 182.0
2 1981 10/22 174.0
3 2001 10/10 155.5
4 1976 10/09 154.0
5 1979 10/19 130.0
10月10日〜11日の降水量(mm)
観測地点 総降水量 1時間最大
降水量
時刻
日立市役所 200.0 22.0 10日13時13分
北部消防署 207.5 27.0 11日02時10分
本山 240.5 26.5 10日11時35分
西部支所 143.5 15.0 10日12時06分

南部支所

169.0 16.5 10日13時00分

 ※順位は降水量の多い方から(1953年〜2001年の統計)。

 ※総降水量は、10日00時から11日の09時までの降水量。

 1999年10月27日にも、関東地方の南岸を低気圧が発達しながら通過したため、182.0mmの雨が降りました。この時の雨の降り方と今回の雨の降り方を比べてみると、下の図のように大きな違いが見られました。1999年の場合は、2時間という短い時間に140mmの雨が降りました。今回の場合は、1時間の最大降水量が22mmと少なかったのに対して、1時間に5から20mmの雨が長い時間降り続いたため、総降水量が多くなりました。このため、今回は降水量の割には被害はほとんどありませんでした。

 なお、雨雲が東海上へ抜けかけている10月11日01時の地上の風の分布をアメダスから見ると、乾燥域に入ってきた関東地方南部では西よりの風に変わり雨は止んできています。一方、茨城県北部から栃木県にかけてはまだ北東の風が強く吹いており、沿岸部を中心に1時間に10mmを超えるやや強い雨が降っています。このように北東の風が強い場合、日立市では他の地域に比べて雨の止むのが遅くなり、降水量も多くなる傾向があります。

 ●2001年10月10日と1999年10月27日の1時間降水量の推移(日立市役所)

2001年10月10日から11日の降水量の推移

参考:1999年10月27日の降水量の推移
2001年10月10日から11日の降水量の推移 参考:1999年10月27日の降水量の推移

 ●10月10日から11日の日立市役所における風速と風向の推移

2001年10月10日から11日の日立市役所における風速の推移 2001年10月10日から11日の日立市役所における風向の推移

 ●10月11日01時のアメダスによる降水量と風の分布

2001年10月11日01時のアメダスによる降水量の分布 2001年10月11日01時のアメダスによ風の分布

 ●10月10日06時から11日0時の降水レーダー図

2001年10月10日06時00分の降水レーダー図 2001年10月10日12時00分の降水レーダー図
2001年10月10日18時00分の降水レーダー図 2001年10月11日00時00分の降水レーダー図

 ●参考:10月10日と11日09時の地上天気図

2001年10月10日09時の地上天気図 2001年10月11日09時の地上天気図

 ●参考:10月10日と11日09時の500hPa面高層天気図

2001年10月10日09時の500hPa面高層天気図 2001年10月11日09時の500hPa面高層天気図

 寒冷渦を気象衛星から見ると、渦の東側で雨雲が発達していることがわかります。さらに、水蒸気画像では渦状の形をはっきりと見ることが出来ます。下の写真では、日本海西部に寒冷渦の中心があります。この渦の南側を回るようにして、水蒸気画像では黒く見える乾燥域が九州地方から近畿地方に入り込んでいます。そして、この乾燥域の東側にあたる関東地方には、白く輝く雨雲が南北に伸びています。

 ●参考:10月10日16時の気象衛星可視画像と22時の赤外画像

2001年10月10日16時の気象衛星可視画像 2001年10月10日22時の気象衛星赤外画像

 ●参考:気象衛星水蒸気画像(10月9日09時〜12日21時)

2001年10月09日09時の気象衛星水蒸気画像 2001年10月09日21時の気象衛星水蒸気画像 2001年10月10日09時の気象衛星水蒸気画像 2001年10月10日21時の気象衛星水蒸気画像
2001年10月11日09時の気象衛星水蒸気画像 2001年10月11日21時の気象衛星水蒸気画像 2001年10月12日09時の気象衛星水蒸気画像 2001年10月12日21時の気象衛星水蒸気画像

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更新日:2001/11/26
訂補日:2014/10/23
名前 日立市天気相談所