2000/10/23update

第3回公明党全国大会 重点政策(案)
21世紀「健康日本」の構築 ―― “活力と安心の生活大国”をめざして ――


第2部


十二 ソフトパワーを背景に「対話」外交で平和構築を推進します

 21世紀の地球では、異人種同士があたかも一つの民族であるとの自覚に立つことが今まで以上に要求されてきます。20世紀が結局は「戦争の世紀」であったと言わざるを得ないだけに、新しい世紀を「平和の世紀」へとするために、人類の叡智を結集する必要があるのです。日本も一国平和主義、一国繁栄主義的生き方から世界平和主義、相互繁栄主義へと、その外交姿勢を転換する必要があります。
 公明党は、日本が過去の戦争においてアジアの民衆に多大の犠牲をもたらしたとの反省に立った歴史観のもと、平和な世界実現に全力を上げてきた政党です。日本外交が独自のソフトパワー(具体的には、<1>世界でたった一つの被爆国であることがもたらす、核軍縮や非核に向けての推進力、<2>世界第二の規模を持ち、アジアでは最大の経済大国であることがもたらす、平和実現に実効のある経済協力を可能にする推進力、<3>先端技術、医学先進国であることがもたらす、情報インフラの整備力、生命を蘇生させる力、<4>文明の融合の華開く文化立国であることがもたらす、日本文化独自の影響力)を背景にしながら「対話」を重視し、平和構築に向けて紛争予防に、積極的な役割を果たすことを強く求めます。また、深刻さを増す“国境を越えた人道の危機”に対し、「人間の安全保障」を確実なものとするために、各国政府、国連機関、NGOそれぞれがあらゆる努力を傾注し連携せねばなりません。国際人道援助の分野で日本が世界の中核としての働きができるよう、わが党は効果的なシステムをつくりあげていきます。

1 国際人道援助と核廃絶への道すじ

(1)国際人道援助システムの構築

 「人間の安全保障」の見地から、国際社会において、医療、福祉厚生の面での人道援助を日本が積極的に果たすことが求められています。具体的には、わが国のイニシアティブで国連内に設置された「人間の安全保障国際基金」を積極的に活用すべきです。また、ODAの見直しや、国連機関への援助の点検などを踏まえ、既存の経済協力機関の役割の拡大などをはかることが重要です。今後、特に、地球的視野に立って国内外で活動しているNGO、国際ボランティアを力を入れて支援します。そのために「国際人道援助センター」を創設し、そこを中核軸として、こうした関係機関の総力が結集され、日本の「平和の文化」としての国際人道援助システムをつくり上げていくことが大切だと考えます。
 具体的には、<1>青年海外協力隊等の大幅拡充と社会的地位の向上、<2>各国の日本大使館に人道援助担当官を設置し、政府機関とNGO、国際ボランティアとの連携をはかる、<3>国際緊急援助隊を見直し、各種災害の被災民や、難民への緊急生活支援に対応する、<4>ケシの転作への技術面や財政支援などを含む麻薬撲滅への徹底したキャンペーンに取り組む――などを提案します。

(2)核廃絶と紛争のない地域へ、北東アジア安全保障会議の設置を

 日本が堅持してきた非核三原則を一歩進めて、北東アジア地域関係諸国に新非核三原則とでもいうべきものを導入するよう日本がイニシアティブをとるべきだ、ということを提案します。<1>持たず、<2>作らず、<3>持ち込ませず、の非核三原則は日本の自制心の表明だけに終わっています。それを、中国、韓国、北朝鮮、モンゴル、ロシア、米国などの北東アジア地域関係諸国などに広げようという提案です。つまり核を、<1>持たせず、<2>作らせず、<3>使わせず、ということをこの地域のお互いの目標にしようという呼び掛けに日本が取り組むべきだということです。また、具体的には、NPT(核拡散防止条約)体制を強化するとともに、CTBT(包括的核実験禁止条約)への各国の署名を推し進めることが大切です。一方、核保有国の核兵器削減に向けての交渉進捗を促していきます。
 加えて、北東アジアの抱える諸問題を検討し、ともに、解決を探るために、北東アジア安全保障会議(NASC)の設置を提案します。そこでは、世界唯一の被爆国・日本として北東アジアにおける非核地帯構想を提案し、その具体化に向けての対話が行われるべきです。
 具体的な第一歩として、関係各国の民間の各分野から、学者や知識人等の専門家の参加をもとに、各種フォーラムの開催をすることを提案します。

2 平和構築へ具体的提案

(1)基本法の制定でODAの新展開

 21世紀の世界のなかで、日本の政府開発援助(ODA)は、ますます重要な役割が求められます。ODA大綱を踏まえつつ、新時代にふさわしい経済協力の理念、哲学を盛り込んだ基本法を制定し、開発途上国の自立的発展、そしてその国の国民の豊かな、かつ人間的な生活に役立つことが重要です。さらに、それが人道援助にも貢献し得るものとなるよう多彩な意義を持つべきであると主張します。

(2)「円の国際化」推進へAMFの設置

 「円の国際化」は、21世紀のアジアの経済的発展を考える時に、重要な意味を持ちます。そのためには、これまで、日本やアジア諸国が提案してきたアジア通貨基金(AMF)を、IMFを補強するものとして設置することを、改めて提案するべきです。

(3)「平和の文化」へ「子ども兵士禁止条約」の制定

 「戦争の文化」から「平和の文化」へと国際社会の流れを逆転する必要があります。そのための第一歩として、18歳以下の子どもを兵士に駆り立てることを禁止する条約の制定を進めることを提案します。

(4)世界各都市と自治体外交を推進

 すでに各地方自治体では海外各都市と姉妹交流や友好都市提携が行われています。これを一歩進め、「人権」「平和」「環境」「女性」「開発」などの面で自治体主導型の外交を積極的に展開する必要があります。自治体の基礎体力の強化をはかる地方主権を強力に推進するなかで、国家レベルや経済レベルに偏重した国際化戦略の見直しを進めることを提案します。

(5)留学生受け入れ体制の強化

 各国からの留学生の受け入れ体制を強化するために、奨学金制度の拡充および住環境整備などを図っていきます。

3 平和な環境を醸成する積極外交の推進

(1)対米積極外交の推進

 日米関係は、わが国外交の基軸であると同時に、アジア・太平洋地域を含む世界全体の平和と繁栄にとっても極めて重要です。同盟関係を成熟化させるなかで、言うべきは言い、けじめをつけるべきはつける、という姿勢で、日米パートナーシップを再構築するべきです。

(2)朝鮮半島の平和へ積極的な関与政策

 対北朝鮮政策については、国内における多様な世論を踏まえながら、諸問題を解決しつつ、国交正常化交渉を進める機会を粘り強く探る必要があると考えます。国際社会に北朝鮮を引き入れるためのあらゆる努力を傾ける必要があることを主張します。
 韓国と日本の間に双方の歴史学者らによる、学術レベルでの共通の歴史認識構築に向けての作業をすることを提案します。
 また、永住外国人に地方選挙権を付与する問題は日韓関係の新たな基礎を築くものとして、法制化を推進します。

(3)対中国平和友好外交と経済協力の推進

 日本としては、中国が進める開放・改革政策に十分な協力を惜しまない姿勢が求められます。日中間の一段の経済協力は当然のことながら、文化、科学技術、教育などの諸分野での人的交流の推進を一層進めるべきです。ただし、中国の軍事力増強については、アジア各国における脅威とならぬよう、その動向を注視し、一層の透明度を増すように求めてまいります。

(4)日ロ平和条約の締結と領土返還の実現

 北方領土問題を解決し、日ロ平和条約を締結することは、ロシアの経済的自立に向けての効果的支援と同様に、残された重要な外交懸案の一つです。わが党は、北海道の一部であった歯舞諸島、色丹島、かつて外交交渉の対象となったことのない日本固有の領土である国後、択捉島―との認識のもと、四島返還を実現する、日ロ平和条約が締結されるよう主張します。

4 国連の機能強化を推進

(1)国連の改革と機能強化への提案

 国連において、日本が安全保障理事会の常任理事国となることを強く主張します。ソフトパワーを重視する国としての立場から、国際世論をリードする役割を安全保障理事会の場で担っていくべきです。
 国連改革には財政的基盤をはじめ安保理の運営や機構見直しなど種々の側面があります。機構改革の具体例として、長期的な地球的課題に対処するための、「環境・開発理事会」の設置を提案します。
 また、国連総会のもとに「紛争予防委員会」を設置し、早期警戒や紛争予防のための能力を高めるとともに、調停できる機能を持たせることを提案します。

(2)地球環境の保全への日本の先駆的役割

 日本は、公害、環境破壊に悩み、対処してきた先駆的経験から、科学技術先進国としての能力を存分に発揮する義務があります。「環境・開発理事会」を新設することで、種々の問題への対応をはかることが可能になります。
 具体的には、地球環境問題に関し、監視・査察などの執行能力を十分持つ組織として、国連関係機関としてのUNEP(国連環境計画)、UNDP(国連開発計画)などのあり方を見直し、総合的で有効な機能強化をはかることが必要です。わが国はこの分野でイニシアティブを発揮し、国際的な統合的メカニズムの形成を行っていくべきです。

 

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