2000/10/23update

第3回公明党全国大会 重点政策(案)
21世紀「健康日本」の構築 ―― “活力と安心の生活大国”をめざして ――


第2部


八 地球環境に配慮しつつエネルギーの安定供給を確保します

 安定したエネルギー供給こそ、安定した国民生活・経済活動の基礎です。人類全体の問題と言われている人口、食糧そして環境問題も基本的にはエネルギーと深く関わっています。したがって、国は、例えば産油地域の政情不安などいろいろな要因によって引き起こされるエネルギー安定供給の危機を最小にする努力を払う義務を負っています。国のエネルギー政策は、経済原則のみではなく、この安全保障の観点からも実行されなければなりません。経済状況、国際政治状況に左右されないエネルギー安定供給の確立こそ、国の安全保障の第一歩です。
 また、もう一つ重要な視点は、地球環境の保全です。二酸化炭素排出抑制の国際公約は、先進国・日本として必ず達成しなければなりません。しかしながら、産業部門の省エネは進んでいますが、民生部門・交通部門のエネルギー消費は飛躍的に伸びており、公約達成は非常に難しい状況です。国民レベルの省エネ意識の高揚、そして二酸化炭素を排出しない非化石燃料発電の充実等に最大限の努力を重ねていかねばなりません。また、電熱併給(コジエネ)等を推進し、エネルギー効率を飛躍的に向上させる必要があります。

1 安定したエネルギー供給体制の確立

 エネルギー供給体制を安定したものにする戦略の第一歩は、供給源の多様化です。化石燃料(石油、石炭、天然ガス)、原子力、水力や風力、太陽光、バイオマスなどの自然エネルギー、燃料電池等エネルギー源の多様化を推し進めることが肝要です。
 その際、化学原料物質として無限の可能性を秘める石油を単にエネルギー源として燃やすのは賢い石油の消費方法ではありません。エネルギー源としての石油への依存度を低めなければなりません。また、二酸化炭素排出抑制という観点から、石炭など化石燃料への依存度を小さくしていく努力が重要です。
 また、国産エネルギー源である自然エネルギーの割合を高め、準国産とも言える原子力などとのベストミックスに向けた比重の強化をはからなければなりません。
 ベストミックスの割合については、後節で述べる「総合エネルギービジョン2050」の策定で将来の技術開発の可能性を含めて議論されなければならないと考えます。

2 天然ガスを化石燃料の主役に

 石油・石炭などの化石燃料については、地球環境問題、そして化学原料物質の保存という観点から、その比重を減らしていかなければなりません。その上で、化石燃料のなかでの天然ガスの活用をはかる必要があります。天然ガスは、賦存量も多く、単位エネルギーあたりのCO2排出量も少ないからです。そのためにも、ユーラシア大陸の国際的ガスパイプライン網へのわが国の積極的な参画をはかります。
また、従来の化石燃料について革新的燃焼技術の研究・開発、例えば、エマルジョン燃料などの導入による燃焼効率化を検討します。

3 核燃料サイクルの確立と原子力の安全性向上

 原子力発電は、現実的な代替エネルギー源がないことから、また、エネルギーの安全供給の確保の観点からも、当面、主要なエネルギーとして使わざるを得ません。また、原子力には、ほとんど二酸化炭素を排出しない、核燃料サイクルを確立すれば、純国産エネルギー源となるなどの特性もあります。したがって、国民の信頼を得るため、高レベル放射性廃棄物の処分などバックエンド対策も含めて、原子力の情報公開、住民参加、安全性の追求、研究に最大限の努力を払わなければならないと考えます。
 長期的な準国産エネルギーの安定供給につながる高速増殖核燃料サイクルについては引き続き基礎的な研究を続ける必要があります。また、核融合研究は国際協力での基礎的研究を進めます。

4 自然エネルギーの拡充

 再生可能である自然エネルギーは地球温暖化対策、また21世紀の安定的なエネルギー供給を考えていく上で、大きな柱の一つであり、積極的に技術開発も含めて進めなければなりません。と同時に、関連の産業を大きく振興させ国内に限らずアジア・太平洋への国際貢献に資する政策展開を行う必要があります。

(1)バイオマス・風力・小水力・太陽光などの積極的利用

 わが国の新エネルギーの全体に占める率は1%にすぎなく、2010年には3%程度の見通しであり、2010年の太陽光発電500万Kwの見通しも実現の目処が立っていません。これらのエネルギーを確実に拡充し、バイオマス、小水力、風力などについても積極的に活用する必要があり、特に潜在性の大きいバイオマス関連の研究・技術開発を強化しなければなりません。

(2)太陽光発電衛星(SPS)の研究開発

 自然エネルギーのなかで重要な位置を占めるのが太陽光発電です。しかし、天候などの制約があり、利用が進んでいません。太陽光発電衛星は、地球周回軌道上で発電し、それを地上にマイクロ波送電するというもので天候の制約を受けない、エネルギー転換効率が高いなどの利点があります。この研究開発・実用化を進めます。

(3)雪氷エネルギーの有効利用

 豪雪地帯(国土庁指定)の大きな課題の一つは、除排雪問題ですが、年間わが国は700億トンから900億トンの降雪量があり、これは時には"やっかいもの"ですが、別の視点からは豊かな冷熱源です。これら除排雪や氷(雪の廃棄物ともいえる)を活用した冷房施設、農業生産物の備蓄施設などの整備を進め、新しいエネルギーとして有効活用をはかります。

(4)「自然エネルギー発電促進法」の制定

 再生可能な自然エネルギーに関する法的整備を進めることによって、将来のエネルギーの多様性、安定供給、また分散型エネルギーの拡充を確かなものにします。

5 省エネ政策と省エネ意識の啓発・高揚

(1)省エネ表示機器の導入及び普及

 地球温暖化対策、京都議定書の国際的公約の実現のためには、温暖化効果ガスなどへの負荷が小さいエネルギー源が必要です。一方、同時に省エネルギーを進めることであり、運輸、民生関係のエネルギー消費が増大していることから国民の責務として、省エネ意識を向上させるため省エネ表示機器などの開発普及を進めます。

(2)鉄道等公共交通機関の充実

 環境負荷が小さく、エネルギー効率のよい大量輸送機関(マストラ)の整備拡充をはかり、石油資源消費の交通エネルギー措置の変換をはからなければなりません。そのため、単位エネルギーあたりの輸送効率の高い鉄道の整備などを進めます。

(3)環境税の導入

 税制改革の一環として、単なる財源目的による課税体系から環境保全の視点を含めた、いわゆる環境税の導入をめざします。

6 太陽・水素系エネルギー経済社会への転換

(1)CO2排出抑制国際公約の達成

 1997年に京都議定書において、わが国は二酸化炭素の排出量を1990年比6%削減することを国際公約にしました。この公約の達成のためにも、温暖化対策推進法の抜本的な改正、種々の削減政策メニューの強化・充実をはかります。

(2)「総合エネルギービジョン2050」の策定

 人口問題などからエネルギーの安定供給は重要な課題ですが、依然としてエネルギー消費は急速に伸びています。あと40年から50年で、天然ガス、石油、そしてウランも枯渇するといわれています。これに対応するためには、化石燃料など“つなぎ(過渡的)”エネルギーの供給構造から、太陽エネルギーの利用や燃料電池などの導入による太陽・水素系エネルギー供給構造の転換を考えなければなりません。そのためにも、超長期の戦略ビジョンとして「総合エネルギービジョン2050」を策定します。

 

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